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2. 麦わらの一味
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アラバスタの内乱が終わった翌日の昼。
スモーカーの元に連絡が入った。
今回のクロコダイル捕獲の功績を讃え、スモーカーとタシギに勲章を与えると。それも、階級を一つ昇格させるというのだ。
もちろんスモーカーは、今回のことは自分の功績ではないために拒否したが、上層部の決定は覆せない。
上層部は口が裂けても、海賊なんぞに助けられたとは公言できないのだ。
それからさらに数日後。
世界中に新しい手配書がばらまかれた。
ロロノア・ゾロ、懸賞金6000万ベリー。
モンキー・D・ルフィー、懸賞金1億ベリー。
それが本人たちの手元に届くのは、かなり先の話になるが、届こうが届くまいが知ったことではないだろう。
ルフィとゾロの手配書が発行されると、それはすぐさまティオの手元にもやってきた。
諜報員として情報が武器になる彼女には、率先して新しい情報が流されるからだ。
"ギィッ……"
ティオは手配書を持って、海軍本部の上層階にある部屋に入っていった。
そこはある人の個室で、ノックもなしに入る度胸のある海兵はそうはいない。
部屋の主は、昨日ようやく遠征から帰ったところで、今日は久々の休日。
朝からリクライニングチェアに寝そべって、
「ん……おー、任務お疲れさん。今回はだいぶデカい案件だったんだって?」
「(コクン)」
「しかも、帰ってから2日間、寝込んでたんだってな」
「(コクン)」
確かにティオは寝込んでいた。
嵐の中をアラバスタから帰ってきた日、報告後に自分の寝床へ戻ったティオは、そのまま寝てしまったのだ。
「次、雨ん中帰ってくることあったら、あのー、あれだ……」
「?」
「んー……あれだよ……」
「……」
「……まぁいっか。忘れた」
「(コクン)」
ティオはツッコミを入れることなく、その人の元へ寄っていった。
海軍本部大将、青キジことクザンの元へ。
"ピラ……"
ティオはクザンの膝の上に、持っていた手配書を置く。
「ん~? 新しい手配書か……へぇ、こんな顔して1億ベリーねぇ」
「(コクン)」
「なんだ? やけに楽しそうじゃねぇか」
「?」
クザンの言っていることの意味が分からず、ティオは首をかしげた。
その頭の上に大きな手が乗り、少し乱暴に撫で回す。
「麦わらの一味、面白かったのか?」
ティオは微かに口角を上げて頷いた。
他人から見ればいつもの無表情と変わらないが、見る人が見れば分かる表情の変化だ。
「みる?」
ティオと目があった瞬間、頭に乗った手を通して、クザンにアラバスタでのティオの記憶が流れ込んだ。
「……へぇ……こりゃ、先が面白そうな新人たちだな」
「それと、にこ・ろびん、いた。しりあい、でしょ?」
「……」
ティオが流し込んできたニコ・ロビンの記憶を見るなり、クザンの手が止まる。
しばらくすると、大きな手は再びティオの頭を撫で始めた。
「……相変わらず、お前の記憶力には恐れ入るねぇ」
「なに、かんがえてる、の?」
「ん~?」
「あいまい、な、かんじょう。くざん、なにかんがえてるか、わからない」
「お子ちゃまは分かんなくていいの、おしまい。……つーか、勝手に人の心読んじゃダメでしょー」
軽く説教するように言うと、ティオはわずかにほっぺたを膨らませた。
「……わかった」
「拗ねるなよ」
クザンは苦笑しながらティオを抱き上げ、膝の上に座らせる。
そして頭をポンポンと叩いてやれば、ティオはあくびをひとつした。
とろんとした目のまま、のそのそと体を横向きにして、クザンの胸に頭を預ける。
「なんだ、寝るのか?」
「(コクン)」
ティオの目が閉じられた。
クザンはおもむろに、ティオの額へと手を伸ばす。
(……そういや病み上がりか。まだ若干、熱があるな)
しばらく、仄かに熱っぽいティオの頭を撫でていたが、やがて自分も大きなあくびをする。
再び両手を頭の後ろに組んで枕がわりにし、いつものアイマスクをかけて眠りについた。
開け放たれた窓からは、暖かく穏やかな風が舞い込む。
まだ午前中だというのに、部屋の中では静かな寝息が響いていた。
数時間後。
"コンコン"
「大将、よろしいでしょうか!」
部屋の扉がノックされた。
クザンはアイマスクを片方だけ引き上げ、眠そうな眼差しで扉を見る。
「開いてるよ。勝手に入って来な」
「失礼いたします!」
ギィっと音がして、緊張気味の海兵が入ってきた。
「なんだ?」
「あ、はい! センゴク元帥がティオを呼べと……部屋にいなかったのでここかと思いまして」
「あーそう」
クザンは面倒くさそうに、まだ眠っているティオを見下ろした。
いつもなら物音一つですぐに目覚めるティオだが、病み上がりな上、クザンのそばにいる今は何も警戒する必要がない。
完全に気を抜いて眠っていた。
「おーい、起きろ」
声をかけつつ頬をつつく。
「……ぅぶ……?」
ティオは薄く目を開いて頭を持ち上げた。
「仕事だとよ」
「し、ごと……」
「元帥が呼んでる、行ってこい」
「(コクン)」
ティオはのろのろとクザンの膝から降りた。
「……いって、きます……ふぁ~」
目をこすりながら眠たそうな声で言う。
「おー」
クザンはアイマスクをかけ直し、すでに寝る体勢に入っており、声だけで答えた。
いつものことなので、ティオはそのまま身を翻し、部屋の出口へ向かう。
そして、呼びに来た海兵と一緒に、センゴクの元へ向かった。
"コンコン……ガチャッ"
いつも通り、ノックから返事を待たずに、センゴクの部屋へ入り込む。
一緒にいた海兵は青ざめた。
そんな失礼な入り方をする海兵は、ティオ以外にいない。
「来たか」
「(コクン)」
センゴクは机の上の紙を手に取った。
「次の仕事は、コイツの船の調査と拿捕誘導だ」
見せられたのは手配書で、写っているのは満面の笑みを浮かべた少年。
「……もんきー・でぃー・るふぃ」
「そうだ。最近は各地でルーキーが勢力を伸ばしている。お前も以前、ユースタス・キッドやトラファルガー・ロー、その他大勢のルーキーを調査に行っただろう」
「(コクン)」
「今回も同じだ。未だ不明の仲間の人数、顔写真の撮影、特徴、必要であれば賞金額の算出、そして、これからの動き、伸びしろ。できる限りの情報を引き出し、最も近い駐屯地に引き継いで、レベルに見合った部隊を出させろ。その後、こちらに報告だ。報告までの期限は、二週間と定める」
「(コクン)」
承諾するなり、ティオは踵を返した。
前回のクロコダイルの調査より、かなり楽な仕事だ。
ルーキーの調査・拿捕誘導は、今まで何十件も行った。
そのうち、8割の海賊団を捕えることに成功している。
今回もその延長線である。
"ギィッ……バタン"
―――このあと、小さな歯車は思わぬ方向に動くことになるのだが、それはまだ、世界の誰も知らない。
(あらばすた、つぎ、じゃや)
ティオは部屋で、グランドライン前半の地図とにらめっこしていた。
既に準備を整えたウエストポーチには、アラバスタとジャヤのエターナルポースも詰め込まれている。
数日前の情報になるが、海軍本部大佐のヒナが、アラバスタを出航する麦わらの一味を待ち伏せし、取り逃がしたそうだ。
その日時と今日の日付、アラバスタからジャヤへの距離、観測できている範囲での最近の天気の移り変わりを考慮し、計算すると……
"ボンッ"
ティオは鳥に変身した。
(みっかご、むぎわらいちみ、じゃやまで、もうすこし)
天気が変わりやすいこの海では、予測値に数日単位の誤差が生じるが、アラバスタからジャヤへの直線航路を逆走するように飛行すれば、必ず辿り着けるだろう。
その上、鳥になれるティオが向かえば、軍艦よりも速く、捜索範囲も自由が利く。
"バサッ"
濃紺の翼が空を切り、真昼の太陽が輝く青空の中を駆け抜けていった。
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