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16. 夢とカエルと海列車
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ゴーイングメリー号は、ルフィとロビンとティオの安静のために、無人島に4日間停泊した。
そうして完全回復を遂げた5日目。
晴れ空の下、再び航海が始まった。
「んーっ、いい天気~」
初夏のような風に吹かれて、ナミは大きく伸びをした。
そこへ……
「ナミすゎぁ~んぬ!」
サンジがハートを飛ばしまくりながらやってきた。
手には皿の乗ったお盆。
「じゃがいものパイユ作ってみたのですが、マドモアゼル?」
「あら、ありがと。……ん、おいし~!」
「あはっ、幸せだぁ~!」
海に向かって叫ぶサンジに答えるように、波がザパ~ンと跳ね上がった。
それに眉を潜めたのはもちろん……
「……るっせぇな、眠れねぇじゃねぇか」
「……んぅ」
甲板で寝ていたゾロとティオ。
「おっと、ごめんね~ティオちゃん」
「……んーん、またねる、から、いい……」
「おいコラ聞けよダーツ!」
「あぁん!? テメェ今なんつった!」
「ダーツ眉毛」
「ぞろ、うごく、な。ねれ、ない」
さてその頃、船室の前ではウソップとチョッパーが手拍子をしていた。
「あ・そ~れル・フ・ィ!」
「あ・どしたル・フ・ィ!」
"バタン!"
勢いよく船室の扉が開き、小麦粉の袋を手にしたルフィが走り出てくる。
「ぅおりゃああっ!」
"パァン!"
小麦粉の袋を割って粉を全身に浴びると、ルフィは止まった。
「んがっ、凍った俺のマネ!」
「「ぎゃははははっ!」」
ナミはその馬鹿トリオを見下ろして、ため息をつく。
「まったくもう、凍って死にかけといてよくやるわよ」
笑い声に釣られて、ゾロ、サンジ、ティオも3人を見下ろした。
「呑気なもんだぜ」
「まったくだ」
2人は呆れていたが、ティオは楽しそうに見下ろしていた。
……ルフィを見ていると、数日前のことを思い出す。
ティオは目が覚めてすぐのルフィと、ある話をしたのだ。
『オメェが青キジ追っ払ってくれたんだってな、ティオ』
『? ……ちがう』
『ん、そーなのか? ゾロとサンジが言ってたぞ?』
『かいぐん、たいしょう、おっぱらう、むり。くざん、もともと、ころす、き、なかった』
『でもアイツ、ロビンとティオを狙って……』
『ちゅうこく、しにきた、だけ。これからさき、もっと、きけん。いきのこりたければ、もっと、つよくなれ、って』
『……』
珍しく難しい顔で黙るルフィを、ティオはチラリと見て、訊いた。
『ねぇ』
『ん、何だ?』
『もし、また、なかま、ぴんち、なっても、たすける?』
ルフィは真剣な顔で返した。
『当たり前だ!』
『……』
当たり前、か。
ティオはわずかに微笑んだ。
『それじゃ、しんじてる、ね』
『おう! まかしとけ!』
……いったいどれだけの覚悟を持って"信じている"と伝えたのかを、ルフィはきっと分かっていない。
ティオが背後に抱える巨大な影も、分かっているはずがない。
けれど、それでこそルフィだ。
何があっても船長と仲間たちを信じて、最期まで一緒にいるともう一度決めた。
たとえこれから、想像を絶する大きな試練が立ちはだかるとしても。
それを超えられる可能性が、限りなくゼロに近いとしても―――
「「「ぎゃははははっ!」」」
「どーだ、似てたか?」
「あはははっ、そっくり!」
「もう一回やってくれ、ルフィ!」
ルフィは笑いながら、凍ったマネに使った小麦粉を払い落とす。
ナミがため息混じりに言った。
「ちゃんと掃除しときなさいよ?」
「ほーい。……ん? オメェ何食ってんだ?」
「あぁコレ? パイユ。じゃがいもよ」
「おぉ、芋か! お~いサンジ! 俺もパイユ食いてぇ! 腹減ったぞ~!」
ルフィが呼ぶも、サンジは未だにゾロと喧嘩中。
「大体テメェ、どんだけ寝りゃ気が済むんだ」
「どんだけ寝ようが俺の勝手だろうが。何なら闘るぞ」
ティオがジト目で2人の服を引っ張る。
「けんか、そこまで」
「だぁってティオちゃんコイツがさぁ!」
「フン、アホコック」
「あぁん!? 闘んのかアホ剣士!」
「……もう、すきに、する、の……ふぁ~」
仲裁を諦め、甲板に寝転がって眠り始めるティオ。
ナミがため息混じりに声を張り上げた。
「ほらサンジ君、船長がパイユ食べたいって」
「はぁいナミすゎん!」
「おう、サンジ! 芋、芋~!」
「ったく、テメェは病み上がりだってのに相変わらずだな」
サンジはキッチンに戻り、追加のパイユを作ってきた。
ルフィだけでなく、チョッパーやウソップ、ゾロにも皿を渡す。
「モグモグ…パイユだってよ、うんめぇ!」
「ングング…パイユって何だ?」
チョッパーの呟きにウソップが答える。
「モゴモゴ…パイユってのはなぁ、大怪獣パイユの尻尾の肉だ。俺がさっき仕留めたのさ。全長100mはあったぞ」
「ンゴッ…100m!? すげぇなウソップ」
「なぁに朝飯前さ」
「え? 早起きして倒したのか?」
「……チョッパー、俺の名を言ってみろ?」
「え、それはもちろん、キャプテン…」
「そう! キャプテ~ン・嘘ツプ!」
その頃、船の前方を見ながらパイユを食べていたゾロは、何かに服を引っ張られた。
……誰の手かは決まっている。
「寝てたんじゃねぇのかよ」
手の主は案の定、ティオ。
「いい、におい、した」
パカッと、小さな口が開く。
「食いてぇのか?」
「(コクン)」
ゾロはその口にパイユを入れてやった。
まるで鳥のヒナに餌を与えているようだ。
……そのとき。
"ガチャ……"
船室の扉が開いた。
一味全員の目がそちらへ向く。
現れたのはロビン。
「あら、ロビン!」
「うぉぉ~ロビンちゅわん!」
チョッパーが一目散に駆け寄る。
「ロビン、気分はどうだ? 寒気はあるか?」
「ふふっ、おかげさまで大分いいわ。ありがとう、名医さん?」
「ふがっ……そんな、名医だなんて言われても…にへへっ、嬉しかねぇぞコノヤロが!」
否定しながらもクネクネくるくる……
「嬉しそーだな」
「だな」
「無理しないでねロビン。同じ目に遭ったルフィがこうピンピンしてちゃ、気兼ねしちゃうでしょうけど、まだゆっくり休んでていいのよ?」
「イエ~イ!」
「褒めてないわよ!」
「ロビンちゃん、何か体のあったまるモン作ろうか。食欲あるかい?」
「じゃあ、コーヒーを頂ける?」
「はぁ~いっ喜んで~!」
ロビンとナミは船室へ入り、サンジの淹れるコーヒーで一服することにした。
甲板では他のクルーたちが、パイユをつまみながら思い思いに過ごす。
ゾロとティオも、前方の海を眺めながらパイユをつまんでいた。
すると……
"バシャ、バシャ"
何やら水音がしてくる。
「何だ? 魚でも跳ねてんのか?」
「ん、なにか、いる」
音に合わせて、波間から何かが見え隠れしていた。
泳いでいるようにも見えるが……
「クロールしてんな。人間か?」
見聞色の覇気で探ってみるが、人の気配ではない。
「ひと、じゃ、ない。なんだろ」
またしばらく様子を見ていると、クロールで泳ぐそれが息継ぎをした。
そのとき見えた正体は……
「「むぐっ」」
2人は一緒にパイユを詰まらせた。