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16. 夢とカエルと海列車
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「すか~……くか~……」
「すぴ~……ふがっ…………すか~……」
いびきが聞こえる。
「……」
ティオはうっすらと目を開けた。
ぼんやりした視界が次第に鮮明になり、暗がりの中に天井を見い出す。
それがゴーイングメリー号の船室の天井だと気付くのに、少し時間がかかった。
「……」
ゆっくりと身を起こし、ふうっと息をつく。
懐かしい夢を見たな、と、長く垂れ下がった髪を見て思った。
「……」
記憶を引き継いで正式な伝承者となったティオは、もう一度海軍へ戻された。
世界政府がクザンの申し入れを受けたのだ。
それからクザンに鍛えてもらい、元帥付きの諜報員として諜報訓練をしつつ、世界中の情報を頭に刻んできた。
「……」
枕元に置かれていた羽ペンを手に取り、見つめる。
感情が豊かになりつつある今だからこそ、あの時のクザンの言動が理解できた。
クザンは自分の元に戻すことで、まだ人間として未熟なティオを守っていたのだ。
もしあのまま世界政府に置かれていたら、心を持つことを許されない本物の人形に……
「……」
ティオは羽ペンをきゅっと握った。
新品だったあの頃から約2年。
さすがに日に焼けて、所々汚れもあり、傷もついている。
その羽ペンで、ゆっくりと髪を結い上げた。
あの日から変わらないやり方で。
クザンが最初にやってくれた時と、全く同じ手つきで。
そして、辺りを見渡した。
「……」
船室には麦わら一味全員が集まっていた。
ルフィとロビンとティオが布団に寝かされているところを見ると、看病のためにみんな傍にいてくれているようだ。
「……」
ティオの目は、自然とゾロを探していた。
扉付近の壁に背を預け、いつものように傍らに刀を立て掛け、座ったままの姿勢で寝ているのを見つける。
ティオは布団から抜け出した。
「すか~……すか~……」
そっとゾロのそばへ忍び寄る。
懐かしい夢を見て、今さらながらクザンの優しさを知って、何となく寂しくなってしまったのかもしれない。
"もそもそ……"
「……どうした」
ある程度近づくと、気配で分かったのか、ゾロが片目を開けて訊いてきた。
ティオは何も答えず、ゾロの膝の間に潜り込む。
「……何だよ。布団で寝てりゃいいだろ」
「……ここが、いい」
定位置に丸まって、ゾロの膝に頭を預ける。
ちょうどいい高さ、硬さ、脈拍……
すぐさま眠気が襲ってきた。
ゾロは眉をひそめて、僅かに首をかしげる。
しかし、やがて諦め、小さくため息をついた。
「……お前、熱は?」
訊きながらティオの額に手を乗せる。
「……だいじょぶ。ちょっぱーの、くすり、きいた」
「ふーん」
……それ以降、交わされる言葉はなかった。
ただ静かに寝息が響き始めるだけ。
それから朝まで、船室は暖かな静寂に包まれていた。