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15. 海軍本部大将青キジ
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クザンはティオから目を逸らし、もう一度深いため息をついた。
「そこに疑問を持っちまったか……」
感情のほとんどない、人形。
それは一見すると不憫なようでも、実はティオ自身を守るために改善させなかった部分なのだ。
仕事で見たことや得た知識を、ただの事実として受け止めるだけでいられれば、政府の庇護のもとで安全に生きていける。
現に、今まではどんな仕事にも情報にも何も感じることはなく、何の問題も起こらなかった。
「……麦わら一味がここまで影響するとはな」
クザンは氷漬けのルフィを見た。
幾多の海賊たちの中で、何故この麦わら一味だったのだろうかと考えながら。
いつかはティオにも感情が芽生えるであろうことは分かっていた。
しかし、もっと大人になるまで芽生えないよう配慮してきた。
感情が芽生えたとき、同じくらい理性もあれば、海賊になどならなかったはずだ。
「それは、ない」
「?」
クザンはティオを見下ろし、その手が自分の服を掴んでいるのを見て、わずかに眉を動かす。
……思考を読まれていた。
「てぃお、かんじょう、だけで、かいぞく、なったわけじゃ、ない。くざんの、おしえて、くれた、せいぎに、したがって、きめた。きっと、いつ、かんじょう、めばえても、けっか、おなじ、だった」
ティオはクザンを見上げ、青い瞳に静かな炎を灯した。
「てぃおのせいぎ、かいぐんにも、せかいせいふにも、ない。だから……」
「本当に覚悟出来てんのか?」
「?」
「お前は世界政府の力を、知識では知っていても理解はしていない。俺の力の底すら知らないんだからな」
"ゾワ……ッ"
「!」
"パキキ……"
ティオは殺気を感じ、身を引いた。
しかし一歩遅く、両手からヒジまでを凍らされてしまう。
「ほら見ろ。お前は俺の殺気を感じることが出来るが、身体能力や武装色の覇気がまるで追いついてねぇからそうなる。そんなんじゃこれから生き残ってくなんざ到底無理だ。もちろん、お前が仲間だと思ってるアイツらもな」
「……っ」
両腕が冷たくて痛くて熱い。
風邪による眩暈も手伝って、今にも気絶しそうだ。
……でも、言わなくてはならないことがある。
「なに、いわれても、てぃお、もどらないっ」
クザンは冷たい目でティオを見下ろした。
「次の島で死ぬことになってもか?」
次の島……ウォーターセブン。
造船技師の間で、古代兵器プルトンの設計図が代々受け継がれている街。
その設計図を狙って、5年前からCP9が潜入している。
長官はオハラの事件と因縁深いスパンダム。
麦わら一味には何の興味もないだろうが、ロビンにだけは目を剥いて襲い掛かってくるだろう。
「……」
ティオは荒い呼吸を押さえ込んで、まっすぐにクザンを見据えた。
「……なら、かけ、しよう?」
「賭け?」
「(コクン)…もし、CP9との、たたかい、かったら、いっかいだけ、てぃおたち、みのがして」
「六式の達人集団に勝つ気か?」
「(コクン)」
ティオは氷漬けのルフィをチラリと振り返った。
「るふぃ、いった。なかま、だれひとり、しんでも、やらん、て。それで、しぬなら、そのときは、そのとき。あきらめて、みんなと、えがおで、しぬ」
「……」
風が長い金髪を揺らした。
瞳に灯った炎は本物だ。
クザンは深いため息をつき、頭を掻いた。
「……ったく、いい顔しやがって」
ティオは、先程まで凍てついていたクザンの気配が和らいでいくのを感じた。
そしてまばたきをした次の瞬間……
「!」
目の前にクザンの姿はなく……
"―――ポン"
頭に大きな手が乗っていた。
とても懐かしい、暖かい手が。
「……腕、ちゃんと溶かせよ」
目を見開いていたティオの顔が、ホッとした表情に変わる。
「(コクン)」
クザンは上着を肩に引っ掛け、ティオとすれ違うように、ゆらゆらと歩き去っていった。
ティオはその後ろ姿を、見えなくなるまで見送る。
「……」
最後に触れられたとき、分かったことが1つだけあった。
(……くざん、さいしょから、だれも、ころすき、なかった)
ただ麦わら一味に釘を刺しに来ただけ。
「……ばすたーこーる」
クザンは、ロビンとの因縁とティオとの別れに、ケジメをつける気らしい。
このくらい乗り越えられなきゃ、この先の海は生き残れないぞと、試練を与えに来たかのようだ。
「……だから、すき。くざんの、せいぎ」
いつだって優しい、そのダラけきった正義が。
しばらくして。
「おーいティオちゃーん!」
サンジの声が聞こえてきた。
ティオがゆっくりとそちらを向けば、ゾロとサンジが全速力で走ってくる。
凍らされたはずの右肩と右足には、それぞれ包帯が巻いてあった。
チョッパーに処置されたのだろう。
「ティオちゃ……腕が!」
「あの海軍大将はどうした!」
息を切らせて辺りを見渡す2人に、ティオは首を横に振って言った。
「もう、いない。だいじょぶ。……それより、るふぃ、を……はや……く……」
緊張の糸が解けたのか、フラっと、ティオは気を失う。
「お、おいっ」
すかさずゾロが受け止めた。
万が一にも凍った両腕が割れないよう、そっと抱き上げる。
ティオの顔は青白く、まるで死んでいるかのようだ。
呼吸も虫の息。
白い額にサンジが手を乗せる。
「おいおい、すげぇ熱だぞ! お前はこのままティオちゃんを船まで運べ! 俺はルフィを担いでいく!」
「分ァってるよンなこたァ! 俺に指図すんなアホコック!」
「ンだとテメェ!」
いつものように喧嘩モードに入る2人だが、すぐに止めた。
「……今はテメェと睨み合ってる場合じゃねぇ」
「……あぁ、同感だ」
ゾロがティオを、サンジがルフィを、それぞれ船まで運んでいく。
走りながら、サンジがゾロに訊いた。
「……おい」
「……なんだよ」
「ルフィがこの状態ってことはよ、あの大将を追っ払ったのは……」
「あぁ。だろうな」
「……」
「……」
それから、2人は無言で走った。
どちらも無表情だが、どこか怒りに似たオーラを放っている。
海軍大将に全く歯が立たなかった自分たちに、思うところがあるのだろう。