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1. アラバスタ戦線
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ティオが空に舞い上がった頃、時計台では今まさに、砲台が文字盤の後ろから姿を現すところだった。
ゾロは、なんと目的地である時計台に来ていた。
来るどころか、登っている……
もちろん、ゾロを探していたティオも、ゾロの"声"を辿って時計台の元へ来た。
時刻は16:29。
もう砲弾発射まで1分もない。
「おいナミ! 一体何しようってんだ!」
砲台の下から聞こえてきた声。
ティオが見下ろせば、ウソップ、チョッパー、ビビの順で下から三段重ねになっている。
「ホントに時間がねぇんだぞ! しくじったら死ぬんだぞ!? 聞いてるか!?」
「分かってるわよそんなこと! おとなしく立ってて! 今計算中なの!」
「おとなしくって、この体勢も意味わかんねぇぞ! いったい何する気なんだテメェは!」
「やれば分かるから! ……行くわよ~っ」
ナミはクリマ・タクトを構えた。
「……」
ティオが時計台の下から中腹へと視線を移していくと、三階辺りにサンジが、そのさらに上、建物と時計台の中継地点にゾロがいる。
そして頂上には、砲撃手であるMr.7とMs.ファザーズデイ。
これだけの情報があれば、ティオにはナミがやろうとしていることが容易に分かった。
途端に最速で砲撃手の元へ飛び始める。
「天候は台風!」
ナミはクリマ・タクトを交差させた。
そしてウソップに向けて振る。
「「13秒前~!」」
砲撃手2人がカウントダウンを始めた。
「サイクロンテンポ!」
「おいっ、サイクロンテンポはただの宴会用のブーメラン遊びで……」
「目指すは時計台よ!」
ナミが放ったクリマ・タクトの一部は、まっすぐウソップまで飛んで行き、そして……
"ズドンッ!"
軽めの爆発と共に、ウソップ、チョッパー、ビビの3人を空中まで押し上げた。
「チョッパー、サンジ君のところまでジャンプよ!」
「えええええっ!?」
「まさかこの作戦って、このまま飛んで上まで上れってことなの!?」
「サンジ君! あとは分かるでしょ! 時間がないの!」
「大体見当はつくものの……よしっ、やるしかねぇか!」
サンジは3階の窓枠に足をかける。
「考えてる暇は無いみたい! お願い、トニー君!」
「よしっ、しっかり掴まってて、ビビ!」
チョッパーはウソップの背を蹴って、サンジのところまで飛び上がった。
「ぐぉっ!?」
ウソップはまっすぐ地上へ落ちていく。
「「11~!」」
カウントダウンはなおも続いた。
「チョッパー! 右足に乗れ!」
サンジは仰向けになるように窓から飛び降りる。
「おう!」
チョッパーが器用に足の上に乗ると、サンジは時計台の上を見据えた。
そしてビビを乗せたチョッパーを思いっきり蹴り上げる。
「ほらよ行ったぞゾロ!」
ゾロは刀に手をかけ、時計の文字盤を見上げた。
「あのてっぺんへ吹き飛ばしゃいんだな?」
2本の刀を構えたゾロは、建物の縁に足をかける。
「「10~!」」
「ゾローっ!」
「よしっ、任せろ!」
「って刀ぁ!?」
「馬鹿、ビビるなチョッパー。斬らねぇよ。峰で行く。しっかり乗れ!」
「お、おう!」
仰向けに飛び降りたゾロが刀をクロスさせると、チョッパーはその上に乗った。
「「9~!」」
「気ィつけろビビ! 上に変なのがいるぜ!」
「えぇ! 顔なじみ!」
「「ん~?」」
「!」
砲撃手の2人が、揃って下を見下ろした。
まさか気づかれるとは思わなかったビビ。
「うそ……」
「ほっほっほっ、Ms.ウェンズデー!」
「ゲロゲロゲロ! あたし知ってんの! アイツ我が社の裏切り者よ~!」
「ちょっと待て! ここは空中だぞ! 狙い撃ちにでもされたらっ」
ゾロの悪い予想は的中する。
「アジャ~スト! ゲロゲロ
「アジャスト、黄色い銃~! ほほほほほっ! いいね、いいね! 恰好の餌食だ~ね~!」
「マズイわ! アイツら、狙撃手ペアよ!」
そうは言っても、空中では成すすべがない。
「チョッパー! とにかく打ち上げる! あとはお前がなんとかしろ!」
「ぅぇえっ!? 俺が!?」
(まに、あえっ)
「いいか! 飛ばすぞ!」
ゾロの声に、2人は決意を固めて頷いた。
それとほぼ同時に、砲撃手の2人も引き金に指をかける。
「もう遅いのよ~!」
「遅いだ~ね~!」
と、そのとき……
"ドカッ!"
鈍い音が響いた。
「ゲ、ゲロ~!?」
「な、何だね!?」
砲撃手2人は時計台から飛び出した。
「えっ、何、どうしたの?」
「何してんだアイツら?」
「自分から飛び降りた?」
麦わら一味の不思議そうな視線の中で、砲撃手2人の背後に金髪が揺れる。
「あっ! あの子!」
「海軍のチビ助!?」
「うおっ! メラかわい子ちゃぁん!」
砲撃手2人の背後にいたのは、人間姿に戻ったティオだった。
「はぁっ、はぁっ、まに、あった……」
最速で飛んだ影響か、息を切らせている。
砲撃手2人がビビを狙撃する前に、なんとか砲台へ辿り着いたティオは、2人を時計台の外へと蹴り飛ばしたのである。
「ゲロ~っ、このガキいつから!」
「何するんだ~ね!」
ゾロはティオを見上げ、ニヤリと口元を歪めた。
「ありがてぇ……よしっ、飛ばすぞ!」
「おう!」
「分かったわ!」
「オラァッ!」
ゾロはクロスさせた刀を思いっきり振り抜いた。
飛び上がったチョッパーとビビ。
空中でチョッパーが形態を変化させ、ビビを腕に乗せた。
「行くよ! ビビ!」
「思いっきりお願い! トニー君!」
「オラアァァッ!」
大きく振りかぶって、思いっきり砲台へと投げ飛ばす。
ビビはちょうどそこで、落下する砲撃手2人とティオの、3人とすれ違った。
「ありがとう!」
すれ違う一瞬でティオに叫ぶ。
「(コクン)」
ティオは頷いて見せ、空中でくるりと仰向けになってビビを見上げる。
太陽の光の中を飛んでいくビビの姿は、まさに最後の希望。
"ボンッ"
ティオは鳥に変身し、重力に逆らって力強く羽ばたき、上昇を始めた。
その頃ビビは、服の内部に隠し持っていた武器を出す。
砲台に辿り着いてから火を消すまでの時間短縮のため、リーチを伸ばしたいのだろう。
「クジャッキー・ストリング!」
叫びながら武器を振り下ろした。
"カチ"
時計の文字盤が16:30ちょうどを指し示す。
"ドサッ"
「ぐあっ」
時計台の下では、ちょうどゾロが落ちてきたところだった。
「なんだ生きてたのか」
サンジが眉を顰めて見下ろす。
「ゲホッゲホッ……砲撃はどうなった?」
ナミが最初にサイクロンテンポで3人を飛ばしたときには、もう13秒前だったはず。
それから軽く見積もっても20秒近く経過しているということは、砲撃は止まったのだろうか。
"バサッ"
ティオはようやく砲台までのぼり詰めた。
そこにはビビがいて……
「!」
見えた光景に、ティオは思わず目を見開く。
"カチ、カチ、カチ……"
砲身の中から聞こえる規則正しい音。
その正体は、巨大な砲弾に取り付けられた残り10秒のタイマー……
「だめ! みんなぁ!」
ビビは時計台の下に向かって叫んだ。
「砲弾が時限式なの! このままだと爆発しちゃう!」
「「「なにっ!?」」」
麦わら一味は皆一様に驚愕の色を浮かべた。
砲撃が阻止されることを、クロコダイルは最初から想定していたようだ。
「どうしよう……どうしよう!」
ビビはパニックに陥って、声を震わせながら砲弾を見つめている。
背後のティオには気づいていないらしい。
(ばくだんかいたい? ……じかんたりない。……みずかける? ……みずない。……いどうさせる? ……しゅだんない。……うちあげて、そらでばくはつ? ……あのかやくのりょう、もともとほうげきするつもり、ない。ここでばくはつさせるつもりだった、みたい……)
"バシッ、バシッ"
ビビは砲身を叩き始めた。
その拳からは、嫌というほどの悔しさがにじみ出ている。
「ここまで探させておいてっ、砲撃予告までしておいてっ……いったい、どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのよ! ……どこまで人を嘲笑えば、気がっ、済むのっ……クロコダイルーっ!!!」
国中に響きわたりそうなくらいの、大声。
―――その声に、応えるように。
"バサッ"
大きな羽が影を落とした。
「!」
ビビはその羽音を知っている。
驚きとわずかな望みを持って後ろを振り返った。
「ペル!」
幼い頃からいつも一緒で、何があっても必ず何とかしてくれた、そんな、王宮の戦士。
「懐かしい場所ですね、スナスナ団の秘密基地」
「聞いて! 砲弾が時限式で、今にも爆発しちゃいそうなの!」
「……まったく。あなたの破天荒な行動には、毎度、手を焼かされっぱなしで……」
ビビの言葉を聞くことなく、ペルは目を閉じ、懐かしむように言葉を連ねた。
ティオは黙ってその様子を見守る。
……ペルというこの男。
大きな翼と、大きな力。
全てを悟ったような遠い眼差し。
これからすることは、おそらく……
「私は、あなた方ネフェルタリ家に仕えられたこと、心より誇らしく思います」
「……え?」
"―――ガコンッ"
砲身に砲弾が擦れて、固く高い音がする。
"バサッ"
強く逞しい羽音も響いた。
「ちょ、ちょっと、ペル!?」
ビビは目を見開いてペルを見つめる。
砲弾は、力強い
時計台から少し離れると、ペルはまっすぐに青空を見据え、上へ上へと上昇していく。
ビビはペルが飛び去っていく方向へ手を伸ばした。
(……我、アラバスタの守護神、ファルコン。王家の敵を、討ち滅ぼす者なり!)
ペルは、時間が際限なく引き伸ばされる、まるで無限のような時空間を味わっていた。
1m、1cmでもいいからビビ様より遠くへ。
その思いが、ペルをぐんぐん上昇させる。
"―――カチッ"
"ズドオオォォンッ!"