「……くそっ」

どんどん開いていく両チームの差を、悔しそうに見つめて。

腹いせのつもりか、フォクシーチームのジュウベイが、ティオを襲おうとこっそり手を伸ばしてきた。

彼はタコのごとく関節がないので、６本の手を自由に伸ばせるのだ。

……しかし。


"シャキン……"


「！」

ジュウベイは伸ばしていた手を止めた。

行く手に刀が一本突き立てられたからだ。

それが誰の刀かなんて、言うまでもない。

「焼き物か揚げ物、どっちがいい」

末恐ろしい表情と声で言いつつ、ゾロはティオの頭に手を乗せる。

「てぃお、さしみ、すき」

「やめとけ。生はさすがに腹壊すぞ」

「ひぃ……っ」

そこへ、司会の声が響いた。


『終了～！ 第三回戦、勝者は麦わらチーム！ 逆転勝利～！！』


「「「うおおぉぉっ！」」」


会場は大盛り上がり。

「よっしゃ～！」

「やった～！」

「結果オーライだ」

「あぁ」

「(コクン)」

「ふふっ」

ルフィが満面の笑みで一味のもとへ戻ってくる。

そこに司会が声をかけた。

『さぁ待望の取引だぁ。麦わらのルフィ、いったい誰を～？』

「にっしっしっ、決まってんだろ？ チョッパー！ 帰ってこーい！」

チョッパーは号泣しながらトテトテ走ってくる。

「うわああん！ ルフィっ、みんなぁっ、ありっ、ありがどぉっ、お、おでっ……」

「ははっ、泣くなよ。俺たちが負けるわけねぇだろ？」

「うんっ……ずびっ」

チョッパーが涙を拭い鼻をすすっていると、ティオが進み出てきて、あるものを渡した。

「やくそく」

「ティオ……」

渡されたのは、りんご飴。

ティオも自分の飴を持っている。

チョッパーは、涙を振り払って満面の笑みを浮かべると、りんご飴にかじりついた。

ティオもちょっと口角を上げてかじりつく。

そんな２人を、一味は温かく見守った。

「……まぁ、何とかなったわね」

「一時はどうなることかと思ったぜ……」

これにてデービーバックファイトは終了だ。

司会が締めくくるように言葉を放つ。

『さぁてさて、汗と涙のデービーバックファイト、麦わら一味が船医チョッパーを取り戻し、痛み分けで決着だ！ これにて閉か「待て待て待て～ぃ！」……え？』

口を挟んだのはフォクシー。

「両者痛み分けなんざ海賊の世界にゃありえねぇ。取るか取られるか、それだけだ。違うか、麦わら！」

「ん？」

「何が言いてぇんだ？」

「どうだ、ここはもう一度、スリーコインゲームで再戦といかねぇか？」

つまり、結果が気に食わないからもう一度三回勝負をしようということだ。

「バカかアイツは」

「ホントよまったく。こんな最悪なゲーム、誰が二度と……"パァン！"

「……え？」

響き渡ったピストルの音に、嫌な予感がしながら振り返れば、案の定……

「望むところだ～！ あっはっはっはっ！」

「何してんだテメェは！」

「アンタって何なの！？ バカなの！？ バカなのよね！！」

ルフィはウソップとナミにボコボコにされた。

「ず、ずびばぜん……」

「ったくよぉ！」

「いい加減、海に沈めるわよ！」

「ふぁぃ……」


「……ほんと、よそうの、ななめうえ、いく」

ティオは半目でその様子を見つつ、少し笑いながら、りんご飴を齧っていた。