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14. デービーバックファイト
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翌朝。
"クァ~、クァ~……"
カモメが鳴く中、メリー号は碇を上げた。
朝方までシーモンキーに追いかけられていたため、みんな寝た気がしない。
見張り台に立つのはウソップ。
ゾロとサンジは甲板から周囲を見渡した。
「やっと落ち着いたな」
「あぁ。まだ油断はできねぇがな」
「結局なんだったんだ? あの猿ども」
「俺が知るかよ」
「あー、緊急報告!緊急報告! 12時の方角に船発見!」
ウソップが双眼鏡を覗きながら言うと、ルフィが船尾から走ってきた。
「何だ? 敵か?」
「いや、それが、旗もなけりゃ帆もねぇ。何の船か分かんねぇ!」
「何だそりゃ。何も掲げてねぇだと? 何のために海にいるんだそいつら」
「分からねぇ。……だが、乗ってるクルーが少ねぇ上にすげぇ勢いでイジけてるぞ。まるで生気を感じねぇ!」
ティオは目視しないまま、覇気だけで船の情報を探った。
「ほんとだ。8にん、しか、いない」
「あんなでけぇ船、あの人数じゃ動かせねぇはずなんだが……」
「それと、うしろ。3びき」
「は? 何が―――"ウッキキ~!"
"ザバァ!"
「逃げろーっ! シーモンキーだーっ!」
「またかよ!」
「ついてきてやがったのか! お前も気づいてたなら早く言えよ!」
「しった、ところで、たおすわけ、でも、ない。にげるだけ、でしょ?」
「マズイ、風がねぇ!」
「帆をたたんで! 漕ぐのよ!」
メリー号備え付けのオールを出し、男たちが必死こいて漕ぎまくる。
しかして、前方から来ていた謎の船は一向に進路を変える様子がない。
ティオは欄干に寄ってその船を見た。
「きばがえる、かいぞくだん」
ルフィが隣へやってくる。
「キバガエル? うぉ、ホントだ。船首のカエルにキバが生えてる。お~いお前ら~! 波とサルが来てるぞ~! 逃げろ~!」
親切心で教えてやると、キバガエル海賊団はまばらに立ち上がり始めた。
「海賊船だ!」
「おいみんな、立ち直れ! 宝を奪うぞ!」
「いや、大波が来てる! 逃げるのが先だ!」
「船に逃げられちまうぞ!」
「大砲用意しろ!」
「誰に命令してんだ! テメェがやれ!」
船員たちは喧嘩しながら、ただ甲板を走り回る。
「なんつーまとまりのねぇ船だ…」
「宝を奪えだとよ。敵だ。ほっとけ」
「舵はどっち切りゃいいんだ?」
「知るか!」
「航海士ぃ!」
「いねぇよ!」
「船長ぉ!」
「それもいねぇ!」
喧嘩している間に、キバガエル海賊団の船は、高波に飲まれて海の底へ消えていった。
対してメリー号は切り抜けられたので、一息つく。
「ふ~……何なんだよ次から次へと」
「あの波はただのシーモンキーのいたずら。もう気温も湿度も安定してるから、次の島の気候海域に入ってるはずよ?」
ウソップは見張り台のロビンに訊いてみた。
「ロビ~ン、何か見えるか~?」
「島がずっと見えてるわ」
「言えよそういうことは! いいかロビン! 島が見えたらこう言うんだ! どうぞ船長!」
「野郎どもぉ! しぃまぁが見ぃえったぞ~! いやっほ~い!」
「言ってみろ!」
「わりと霧が深いわ」
「無視かよ!」
ナミが顎に手を当て、つぶやく。
「霧か、危ないわね……。チョッパー、前方確認任せたわ! ティオは周囲の反応をチェック!」
「おう!」
「(コクン)」
チョッパーは船首に行き、ティオは覇気で周囲を探った。
「ところでよぉ、さっきの船、気にならねぇか? 海賊の一団として大事なモンが色々抜けてた」
ウソップが首をかしげるも、ゾロはフンと鼻で笑う。
「海戦で負けたんだろ。船長が死んで、いろんなモン奪われて」
「いや、船が壊れたような形跡はなかった。海戦はたぶんしてねぇ」
「どっちにしろ敵船だ。気にすんな」
「ん~……何か嫌な予感が」
「いつものことだろうが」
ウソップのモヤモヤをよそに、ルフィは底抜けに明るい。
「さ~て、街はねぇかな~。造船所があるといいな!」
「ちょっ、ルフィ! 着いてもすぐに上陸しちゃダメよ!?」
「え~何でだよ~」
やがて、メリー号は霧の中へと入っていく。
ティオが突然、3時の方角を指さした。
「あっち、なにか、いる」
ウソップが大袈裟に身構えた。
「て、敵船か!?」
「わからない。かなり、おおぜい、のってる。……でも、つかずはなれず、いっていきょりで、めりーのまわり、うろついてる」
ティオの横にゾロがやってきた。
「攻撃は仕掛けてきてねぇのか?」
「(コクン)」
どうしたものか。
ナミが首をかしげた。
「ん~……まぁ、戦う意思がないならこっちからどうこうすることもないけど……」
そうして悩むクルーをよそに、船長は目の前のことしか見ていない。
「うおっ! 海岸が見えてきたぞ~!」
「ぐっ、うぅっ……みんな、聞いてくれ」
「チョッパー、ウソップが島に入ってはいけない病だ」
「それは治せねぇ」
メリー号はようやく霧から出て、島の沿岸にたどり着いた。
いったいどんな島なのだろうか。
期待に胸を膨らませる一味。
しかし、目の前の光景に全員顔をしかめた。
「ん?」
「こりゃ……」
「何もねぇ~っ!」
目の前に広がっていたのは、見渡す限りの大草原。
「何だここは! 何もねぇなぁ! アッハッハッハッ!」
「なんて色気のねぇ場所だ……」
見張り台から降りてきたロビンがティオに訊く。
「人は住んでいるのかしら?」
「ん……ひとり。よくわかんない、けど、くうちゅうに、いる」
「空中?」
「いやっほ~い!」
ルフィがいち早く飛び出して、そのあとをチョッパーとウソップも追っていった。
「ってコラァァァァッ! 勝手に上陸するなって言ったばかりでしょーが! ……まったくもう、得体の知れない土地にずかずかと」
ナミが頬を膨らませている間に、ゾロは碇を降ろした。
「これだけ見通せりゃ危険も何もねぇだろ。万が一にも危険が近づきゃ、コイツが分かるだろうし?」
言って、傍に立つおチビさんの頭をポンポン叩いた。
「(コクン)…このしま、どうぶつ、ばかり。おっけー」
すると早速、チョッパーたちの目の前に一匹目の動物が現れた。
「な、なっ……」
「んぉ? どうしたチョッパ……ぃいっ!?」
「ぬぁっ!?」
見開いた3人の目に映ったのは、二足歩行する熊。
その歩行慣れした感じはもはや人間。
「人!?」
「こんなフカフカボウボウの人がいるかよ! 熊だぞコレ!」
「長げぇ! 熊が長げぇ!」
よく見てみれば、周囲の木も長く高く、実っている果実まで長い。
サンジが引き気味に呟いた。
「何だここは……」
すかさずティオが説明する。
「ろんぐりんぐろんぐらんど」
「ロ、ロングリング、ロング……?」
「りんぐのかたちした、きょだいなしま。ただし、いつも、うみのなか、りく、かくれてて、ちいさなしま、10こ、ならんでるじょうたい。ここ、10このうちの、ひとつ。ひきしお、なると、しま、くっついて、りんぐ、なる。ゆうぼくみんのむら、ひとつ、いどうしながら、せいかつしてる。どうぶつも、しょくぶつも、みんな、てきもなく、のびのびそだったから、ながくなった、いわれてる」
「つったって、限度ってもんがあんだろ……」
そう言ってサンジが指差す先には、ものすご~く長いダックスフント。
軽く100mは超えていそうだ。
「おて!」
「ワン!」
どうやらしつけが行き届いているようで、ルフィの指示にしっかり従う。
「おすわり!」
「ワン!」
「どぉぁっ!」
ダックスフントの下を通り抜けようとしていたウソップが下敷きになった。
「ちんちん!」
「ワウ……」
……それを俺にやれというのかい、兄ちゃん。
そう言いたげに目を光らせたダックスフントは、思いっきり身を持ち上げた。
「うっほ~!」
「頭が見えねぇ……」
一瞬にして、細い高層ビルのようになってしまった。
そうして3人がはしゃぎ回る中、船の方では……
「……」
「……」
見張り台の上で、ロビンもティオも霧の向こうを見つめていた。
さっきから一定距離を保ったまま、一隻の船がこちらの様子を伺っているのだ。
甲板では上陸準備が進む。
「おい、あのバカ3人はどこ行ったんだ?」
「え? さっきまでその辺で転がって遊んでたけど……」
「迷子か? 仕方ねぇ奴らだな」
「お前が言えたことかよ。……とりあえず、俺たちも行くか。何か食いモンがあるかもしれねぇ。お~いロビンちゃん、ティオちゃん、上陸するぜ?」
「……えぇ」
「(コクン)」
気になるが、攻撃してこない以上は何もできない。
ロビンもティオも、半信半疑ながら船を降りていった。
すると、それを狙っていたかのように……
"ガラガラガラ……ズドォンッ"
メリー号の後ろに巨大な船の影が現れ、メリー号の前後を塞ぐように鎖を放ってきた。
「えっ、ちょ、何!?」
ゾロとサンジの闘争心に火がつく。
「何だお前ら」
「闘るんなら降りてこい」
すると、拡声器で何者かが語りかけてきた。
『我々はフォクシー海賊団! 早まるな、我らの望みは決闘だ! デービーバックファイトで決着をつけよう!』
「フォクシー海賊団……?」
ロビンは呟きながらティオを見た。
「そこそこ、ゆうめいな、かいぞくだん。せんちょう、ぎんぎつねの、ふぉくしー。2400まんべりーの、しょうきんくび。のろのろのみの、のうりょくしゃ。てあたりしだいに、でーびーばっくふぁいと、しかけては、くるー、ふやしていく」
ナミが首を傾げる。
「でーびー……? って何?」
サンジとロビンが答えた。
「海賊の間に伝わる決闘だよ、ナミさん」
「この世界のどこかにあるとされる海賊島。そこで生まれたと言われているゲームよ。より優れた船乗りを手に入れるため、海賊が海賊を奪い合うの。要するに人取り合戦。仲間と海賊の誇りをかけて戦うのよ」
『現在、我らが船長フォクシー様が、お前らの船長、モンキー・D・ルフィに決闘を申込みに行っている!』
すると、ゾロが眉を顰める。
「なに眠てぇこと言ってんだ? 喧嘩ならさっさとかかってくりゃいいだろうが」
「お前知らねぇのか。喧嘩じゃねぇんだよ、これは」
「でーびーばっくふぁいと、せんちょうどうし、たたかうかどうか、きめる。ふたりどうじに、ぴすとる、うったら、かいせんの、あいず」
「えっ、じゃあもしかして、さっき海の上で会った帆もない海賊旗もない船長もいない船は、このゲームに負けて全て取られたってこと!?」
『ほう、あの船に会ったのか。ご名答! キバガエル海賊団の船長もそのほかのクルーも、帆も海賊旗もみんな俺たちが奪ったのさ!』
「……マズイわ。ルフィのことだもの、勝負を受けかねない!」
ナミはルフィたちを探しに行こうと、慌てて走り出した。
しかし……
"パァンッ……"
小さなピストルの音が、響き渡る。
「……遅かった」
「あ~あ、受けやがった」
「フン、望むところだ」
ルフィの独断により、麦わら一味はデービーバックファイトを受けることになった。