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13. 海軍要塞ナバロン
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チョッパーを除いて、一味のみんなが出発したあと。
ティオは、留守番のチョッパーにバレないよう、その場を離れ、要塞の中に戻った。
溢れて止まらない涙を拭いながら、覇気を使って、誰もいない道を選んで進む。
正直なところ、ルフィの言う通りだった。
ルフィの一言で、ようやく、この胸の痛みが分かった。
「……ぼうけん……もっと、したいっ」
このまま麦わら一味と離れるのが嫌だったから、胸が痛んだんだ。
もっといろんなワクワクを追い求めて、冒険を続けていきたかった。
あれは海軍では決して味わえない、海賊だからこそ味わえる気持ち。
……でも、海賊になるわけにはいかない。
この頭の中には、世界中のあらゆる情報はもちろん、世界政府の秘密まで入っている。
生きた情報爆弾の自分が存在していられるのは、世界政府直下の海軍にいるから。
そんな自分が麦わら一味に加わったら、一体どれほどの猛者が追い掛けてくるだろう。
……正直、麦わら一味には、信じられないような素性の者ばかりが集まっている。
彼らがこのまま海を進み続ければ、世界に大きな波乱を巻き起こすかもしれない。
その波乱の先には、今よりも自由な世界があるのかも……
……けれど、彼らはまだ発展途上だ。
成長スピードには目を見張るものがあるが、それでも、政府や海軍の猛者を相手にすれば、間違いなく潰される。
自分が同行すれば、麦わら一味の寿命を早めてしまうのは確実。
でも……
ティオの中には今、大きな天秤が出現していた。
海軍と海賊。
2つの道を乗せた天秤が、交互に傾きあっている。
ティオはあてもなくさ迷い歩いた。
「……」
いつの間にか辿り着いたのは、一度来たことのある、見張り用のバルコニー。
輝く月と星。
その光に照らされて、金色の髪が揺らめく。
"ブウウゥゥゥン……"
特徴的な音がティオの耳朶を打った。
ナミのウェイバーだ。
とりあえずウェイバー奪還は成功か。
サンジが一緒に乗っているのが感知できる。
ならば、あとは黄金を取り返すだけ。
「……」
しばらく一味の所在を覇気で探っていると、ナミとサンジは一度メリー号に戻り、ナミだけがウェイバーで再度出てきた。
ナミはそのまま黄金奪還班に合流し、ルフィだけを乗せて司令官室まで爆走していく。
どうやら、黄金は司令官室にあるようだ。
その間に、残ったクルーは、軍艦のハリボテを装着したまま迎えに来たメリー号に乗り込んだ。
「……」
これでルフィとナミが戻り、自分が一味の前に姿を現さなければ、本当に行ってしまう。
……できることなら、一緒に行きたい。
でも、一味を危険にさらしたくない。
ずっと悩んでいるのに、まだ答えに辿り着けずにいた。
"ブウゥゥン!!"
ルフィと黄金を乗せて、ナミがウェイバーをフルスロットルで走らせていく。
それを見つめていると、小さくだが、ティオの耳に声が届いた。
「ティオ~!どこだ~! 一緒に海賊やろ~!」
動物並みの五感を持つティオだからこそ、聞こえた声。
その声の主を間違えるわけがない。
「……る、ふぃっ」
せっかく収まりかけていた涙が、再び溢れてきた。
ティオはバルコニーに座り込み、嗚咽と共に小さく呟く。
「いき、たいっ……ひっく……でも、いけな、い……いけない……だよぉ…」
「お~い! ど~こだ~!」
この暗がりだ。
ルフィたちにティオは見つけられない。
ウェイバーはそのまま、メリー号に合流していった。
メリー号は、ようやくハリボテを脱ぎ捨てて走り出す。
あとはこの要塞から出るだけ。
……本当に行ってしまう。
どうする、どうすればいい?
ティオは唇を噛んで、両腕で自分の身を抱き締めた。
……と、そのとき。
"ザバアァァ……"
「?」
急に波の音が激しくなり始めた。
ティオの耳はすかさずその異変を察知する。
「……まさかっ」
ナバロンが最強の要塞である所以、引き潮。
引き潮になれば、要塞内部の海は枯れ、船は立ち往生する。
それがまさか今夜だったとは、さすがのティオも知らなかった。
ティオはバルコニーから身を乗り出してメリー号を見た。
水位がどんどん下がっていく。
"ズガガガガガッ!"
海水がなくなって現れ始めた岩礁に、メリー号の船底がこすりつけられた。
やがて、船底に大穴を開けて、メリー号は停止する。
……なるほど、ジョナサン司令官はこれを狙っていたからこそ、ずっと手ぬるい捕獲作戦を実行していたのだ。
瞬く間に水音もなくなり、辺りはしーんと静まり返った。
おかげで、ルフィの声が、もう一度ティオに届く。
「ティオ~! 出ぇてこ~い!」
「……」
絶体絶命の状況なのに、まだ誘うのか。
ティオは拳をぎゅっと握って、メリー号を見つめた。
……とりあえず、行こう。
このまま姿を現さないのは失礼だ。
お礼だって、ロビンとウソップにしか言ってない。
ちゃんとお礼を言って……
行かないって、伝えよう。
"ボンッ"
ティオは鳥に変わり、闇に飛び立った。
東の空が白み始めている。
もうすぐ朝だ。