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13. 海軍要塞ナバロン
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翌朝。
一晩、背の高い草むらに隠れて眠ったティオは、朝日と共に目を覚ました。
寝惚け眼で周囲を見渡せば、ちょうど、メリー号が軍艦に引っ張られて、88番ドッグへ向かうところ。
メリーの表情が、何となく沈んで見えた。
「……」
……いや、もう関係ないんだ。
自分は海兵。
ここで麦わら一味が捕らえられようと、逃げ
機を見て、麦わら一味の情報をこの要塞に渡し、左腕の傷がしっかり塞がったら、本部へ飛び帰る。
それまでの数日間、このナバロンで休ませてもらおう。
そう思って歩き出した矢先……
"きゅるるる……"
(おなか、すいた……)
思い返してみれば、昨日の朝から今朝まで、丸一日ほとんど寝て過ごしていて、何も食べていない。
まずは食堂に行こう。
ナバロンには何度か訪れている。
目を瞑っていたって、目的地に辿り着ける自信があった。
ティオは頭の中の地図に従って、真っ直ぐ食堂へと向かう。
"ギィ……ッ"
「?」
食堂への扉を開けてすぐ、異様な光景に目を見張った。
100人近い海兵が、みんなして厨房を覗き込んでいたのだ。
その先にいる人物を見て、ティオは思いきり目を見開く。
(……さんじ、くん……るふぃ)
咄嗟に、ティオは柱の影に隠れて様子を伺った。
昨晩、ロビンとウソップに別れを言ってきた手前、一味の誰かと接触するのは嫌なのだ。
また"ばいばい"を言わなくてはならない…
何故か、サンジもルフィもコックの装いで、ナバロンのコックたちが料理するのを眺めていた。
状況を知るため、ティオは近場の海兵に話を聞く。
「ねぇ」
「ん?」
「いま、ちゅうぼう、なにしてる?」
「あぁ、あれか? 1回の食事に100万ベリーもかけるマリージョアの料理人が2人、今日からここに赴任するらしくてなぁ。厨房に入る前に、うちのコックたちと料理対決するらしいんだ。100人前を作って、俺たち海兵にどっちがうまいか決めさせるんだと」
マリージョアから来たコック。
サンジとルフィは、上手いこと人違いされているらしい。
「ところで嬢ちゃん、見ない顔だが新入りかい?」
そう問われ、ティオはカードサイズの証明書を出した。
「かいぐんほんぶ、にとうへい」
「へぇ~。小せぇのにもう二等兵か! やるなぁ嬢ちゃん!」
「どう、も」
諜報員であることは言わない。
あまり多くに知られても、メリットはないからだ。
ティオが厨房の方へ向き直ると、ナバロンのコックたちの料理が、佳境を迎えていた。
「この戦い、死んでも負けられねぇ!」
「旨みの乗った部分だけをたっぷりと!」
額に緊張の汗を浮かべ、丁寧に、かつ素早く料理を仕上げていく。
そんなコックたちを尻目に、競争中であるはずのサンジは、腕を組んで見ているだけ。
ルフィもぼけっとしている。
「完成!」
「100人前!」
「どうだ!」
ナバロンのコックたちが大量の皿を出すと、ルフィが目を輝かせた。
「すっげぇなぁ! もう出来たのか! うまそ~っ」
「あたぼうよ! 俺たちは毎食1000人分つくってるんだ」
「速きこと海をかけるサメのごとし!」
「これぞナヴァロンの真髄だ!」
鼻を高くするコックたちの横で、サンジは、コックたちが料理で使わずに残した部分をかき集めていく。
「……勿体ねぇことしやがる」
「「「?」」」
コックたちが首をかしげる中、サンジは二丁の包丁を握った。
「マグロの骨や頭は叩き潰し、
ナバロンのコックたちよりもさらに素早く、サンジは100人前を作り上げた。
いつもルフィのブラックホールな胃袋を満たしていることを考えれば、当然ではあるが。
「ここは海軍で、戦場なんだろ? 料理が美味いに越したことはねぇが、食材が尽きるのが一番マズイんじゃねぇのか?」
そう言われ、料理長のジェシカを始め、コックたちは全員ハッとする。
「1万ベリーだろうが100万ベリーだろうが、食材は一片たりとも無駄にしちゃいけねぇ。どんな食材にも丸ごと愛を注ぐのがコックの嗜みだ。レディの全てを愛するようにな……。あるジジィからの受け売りだ」
最後にタバコを1本。
そのクールな姿に、コックたちは絶句し、海兵たちは呆けていた。
もちろんティオも例外ではない。
……なるほど、麦わら一味で食べたご飯が美味しかったわけだ。
サンジは、料理と女性への愛なら誰にも負けない。
「何だこりゃ! うめぇ!」
「今まで食ったことのねぇ味だ!」
「こりゃ精がつくぜ!」
夢中でサンジの料理を食べていく海兵たちに混ざって、ティオもこっそり料理に手を伸ばした。
「……おい、しい」
ナバロンのコックたちの料理と食べ比べてみると、やはりサンジの料理の方が、味の深みが違う。
「くそっ、有名なコックに負けたくねぇからって、俺たちはやっちゃいけねぇことをやっちまった……」
「食材の一番旨い部分しか使わなかった……」
「ナバロンの料理はお偉いさんに出す料理とは違う。今日を生き抜く兵士たちのための料理だ。それが、ジェシカさんの信念だったのに……」
「その俺たちが、食材を選り好みしちまったなんて……」
コックたちは皆、肩を落とした。
しかし、これで彼らは一つ、成長することだろう。
「……ごちそうさま」
食べ終わって小さく呟いたティオは、ルフィとサンジに見つからぬよう、こっそりと食堂を出ていった。
心の内で、さようなら、と呟きながら……
廊下に出ると、気を取り直すように、軽く頭を振った。
次に向かうのは、このナバロンの司令官、ジョナサンの元だ。
しばらくここで休養させて欲しい旨を伝えなければ。