夏祭り
arside
いのちゃんの言葉に1つだけ引っかかってる言葉がある。
いのちゃんは好きな人ならいるかな。と言った。
あれからほろ酔いで帰った俺はずっと頭の中がいのちゃんの言葉でぐるぐるしていた。
いのちゃんが俺ん家で飲まない?って誘ってくれた時、正直チャンスだと思った。
だって、この戸惑った感情に答えが出ると思ったから。
酔ったフリして俺のこと好き?って聞いたのは良かったんだけど、何かはぐらかされた様な気がして、俺はモヤモヤした。
だけど、いのちゃんの好きな人はいるって言葉でますます分からなくなった。
どうしてあんなこと言ったの?
いのちゃんが好きなのは俺じゃないの?
確かにこの感情はおかしいと思うよ?
だけど仕方ないじゃん。
あの夏祭りから、いのちゃんがかっこよく見えて仕方ないんだよ。
これって何?
そんなことを頭の中で考えていると、楽屋にいのちゃんが居ないことに気付く。
「あれ?いのちゃんは?」
「いのちゃんなら、さっき女性スタッフに呼ばれて打ち合わせ行ったよ?」
高木がそう答えてくれて、何故か俺は心配になり、いのちゃんを探しに行く。
いのちゃん、何処だよ?
しばらくいのちゃんを探して走っていると、誰もいないはずの空き部屋から、何やら声が聞こえてきた。
「伊野尾さん、私伊野尾さんの事が。」
「あー、ごめんね。俺好きな人いるから、その人以外は考えられない。」
「そんな…。その好きな人って誰なんですか?」
「それは教えられないけど、強いて言うなら、明るくて元気で笑顔が最高に可愛い人かな?」
女性スタッフはいのちゃんに告白してて、それを聞いてた俺は静かにその場をあとにした。
いのちゃんにそんな風に思われる人は幸せものだな。
女性スタッフに告白された日から、俺はいのちゃんを避けてしまっていた。
「大ちゃん、ちょっと話あるんだけど。」
真剣な顔でそう言ったいのちゃんは、有無を言わさず俺の手を取り、空いたスタジオまで連れてこられた。
「いのちゃん、痛いって。」
やっと手を離してくれたいのちゃんは、
「大ちゃん、俺のこと避けてるでしょ?」
開口一番そう言い放った。
「別に避けてなんか…。」
「嘘だ。俺が話しかけようとすると、俺以外のメンバーにちょっかいかけに行くでしょ。俺が気付かないとでも思った?」
図星だった。
いのちゃんと話したくないが為に、他のメンバーにちょっかいかけに行ってることが。
「ねぇ、俺なんかした?そうやって避けられると傷付くんだけど…。」
それを聞いた途端、俺は、今までの思いが溢れていのちゃんにぶつけることを止められなかった。
「何であの時好きな人ならいるかな?って言ったの?いのちゃんって俺のこと好きなんじゃないの?違う?俺はあの時本音話したけど、いのちゃんはぐらかしたじゃん!!俺の心乱しといて、女性スタッフに告白されてるし、そりゃ避けたくもなるだろ!!!」
「大ちゃん、それって俺のこと好きだって言ってるみたいだよ?」
あっ!!
「俺が好きな人ならいるかなって言ったのは、大ちゃんが本音言ってくれたから、そのお返しだったし、好きだって言わなかったのは、酔った勢いだと思われたくなかったから。大ちゃんもようやく俺のこと好きになってくれたみたいだし?」
何勝ち誇った顔してんだよ。
「あ、あの女性スタッフにいのちゃんが言ったことって、もしかして俺のこと?」
「もしかしなくても、大ちゃんのことだよ。」
このモヤモヤしてた感情が恋だと分かった途端、俺は顔が真っ赤になっていた。
「い、いのちゃんは俺のこと好きなのかよ?//」
「だーい好きだよ。もちろん、付き合いたい意味で。」
「お、俺もいのちゃんのことが…。」
正直に好きと言えない俺を
「何だって?」
「だからいのちゃんのことが好きだって言ってんだよ/////」
勢いで言わせてしまういのちゃんは勝ち誇った顔をしていて、ムカつくけど、これからは恋人としてよろしくな!!!
END
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