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誘惑小悪魔



arside

こうなってしまったのは、いのちゃんときちんと話す事が決まった矢先の出来事だった。

最初は落とし物をした女性に声をかけて、落とし物を渡してあげた親切心からだったのに…。

「あの、これ落としましたよ。」

「ありがとうございます。お礼がしたいのでお名前教えて貰えませんか?」

「いや、お礼されるほどのことはしてませんから。」

「あら、あなたテレビで見たことあるような…?」

「では、急いでるので失礼します。」

あの時迂闊に声なんてかけなければこんなことには…。


















それから数日後、俺はまたあの女にばったり会うことになる。


「また会いましたね。あなた芸能人だったのね?」

「そうですね。」

「名前は有岡大貴君、人気グループHey!Say!JUMPのメンバーだとか!こうして2度も会うなんて運命じゃない?」

俺は何かこの女に不穏な空気を感じ始めており、一抹の不安はさらに増すばかり。
それでもなお、話続けるこの女、一体なんなんだ?


「有岡君?黙ってないで何か言ったらどうなの?」

「あなたは何なんですか?俺は用ないんで帰ります。」

帰ろうとすると、俺の耳元まで歩み寄りメンバーにも内緒にしていた事を囁き始めた。

「そうねぇ、有岡君が伊野尾君と付き合ってるってのは本当なのかしら?」

びっくりしすぎてその場に固まっていると、

「その反応は本当みたいね。ふふっ。」

「そんな訳ないじゃないですか。第一メンバーですよ?」

こんな見ず知らずの女に俺といのちゃんが付き合ってることバレてるのは何でだよ?

「メンバーだからとか好きになっちゃったら関係ないの。とりあえずー、その関係がバレたくなければ私の言う通りにしないと、マスコミにこのことバラすわよ?」

なんて女なんだ…。
脅しかよ。
この女の言う通りにしたら、まずいよな…。
かと言って言う通りにしなかったら、マスコミに俺らの関係バラされて大変なことになるのは目に見えてる。
とりあえずは言う通りにするしかないのか。

「とりあえず、私の彼氏になって貰うわね?有岡君の連絡先教えなさい。」

いのちゃん、裏切ることになってごめん…。
かなり癪だけど、今はこの女の言う通りにするしか思いつかなくて…。


この頃の俺はあの女といる所をいのちゃんに見つかるなんて思いもしなかったんだ。

















「話せる時が来たら、きちんと話すから、俺のこと信じていて。」といのちゃんに連絡だけ残し、俺はいのちゃんからの連絡を一方的に一切受け付けないことにした。
それでも仕事で顔を合わせるし、そこでいのちゃんに何か言われても、俺は申し訳なくもかわし続けていた。







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