誘惑小悪魔
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あれから、大ちゃんと連絡を取り、俺らはきちんと話し合いの場を設けたかったのだが、仕事が忙しく、なかなか連絡さえままならない日々が続いた。
それは大ちゃんも一緒だったようで、俺は一安心したのだが、後日衝撃的な瞬間を目の当たりにすることになるとは思っていなかった。
それは仕事の忙しさが落ち着き、大ちゃんときちんと話そうと思ってた矢先の出来事だった。
仕事帰り、今日はマネージャーが出す車ではなく、交通機関を使って、帰宅していると前方に大ちゃんの姿を見かけた。
俺は話しかけようと思い、走って大ちゃんの元へ行くとそこには綺麗な女性を連れた大ちゃんがいた。
大ちゃんも俺に気づいたようで、
「い、いのちゃん…。」
と気まずそうな声で声を発した。
これはどういうこと?
何で大ちゃんが女性と一緒にいるの?
もしかして俺遊ばれてた?
そりゃ女性には敵わないけど、俺は俺なりに大ちゃんを幸せにしてたつもりだったのに…。
「大ちゃん、どういうこと?」
とにかく、この状況を説明してもらわないと。
「いのちゃん、ごめん。今は説明できない。」
説明できない?
どうして?
やっぱり大ちゃんは女性が良いのか?
「やっぱり大ちゃんは俺より女性が良かったんだね…。」
その後のことは全く記憶になくて、大ちゃんが何か言ってた気がするけど、怒る気にもなれなくて、どうやって帰ったかも分からず、気付いた時には、自分の家であまりのショックにただただ泣いていた。
何でだよ、大ちゃん…。
俺の事、嫌いになっちゃった?
俺が大ちゃんの事不安にさせたから?
はは…。
綺麗な女性と一緒にいる所を目の当たりにしちゃうのは、ダメージでかいなぁ……。
俺の何がダメだったんだろうな。
それから俺はあからさまに大ちゃんの事を避けるようになった。
「大ちゃんと喧嘩でもした?」
そう話しかけてきたのは、山田で、山田とはあの電話以来特に音沙汰もなく、俺らの異変に気がついて、話しかけてくれたんだろう。
「喧嘩ならまだ良かったかな…。」
「えっ?喧嘩じゃないの?」
山田に事の経緯をだいたい伝えると、
「それはちょっと俺にも分からないな…。大ちゃんの事だし、何か事情があってとかじゃないの?」
あの時は気が動転しててただショックなだけだったけど、大ちゃん側に何か事情があった?
確かにあれから大ちゃんは何か話したそうにしてたけど、俺があからさまに大ちゃんの事を避けてたから…。