俺は君が心配なんです!!
「ちょっとこっち来てくださいよー。」
強い力で腕をつかまれて、俺はその腕を振りほどくことが出来ず、近くの空いた楽屋に無理矢理連れていかれた。
「何の用ですか?」
勇気を振り絞って出した声は、正直震えていて、こんな時にメンバーのありがたみを知ることになるなんて思ってもみなかった…。
「そんなこと言わないでくださいよー。1回寝た仲でしょう?」
「それはお前が無理矢理っ……。」
気持ち悪い笑みで、近寄ってくる。
「あ、有岡さん気づいてないみたいなので、言っておきますけど、あの夜の出来事は全部写真におさめてありますから!」
え?
今なんて言った?
なんだって…。
写真おさめてたのか?
そこまでされてたなんて…。
「今すぐその写真消せっ!!」
俺は写真を消すべくスタッフさんに近づいて携帯を奪おうとしたのだが、そう簡単にはいかないようで…。
「写真消しても良いんですけどぉー、条件があるんですよねぇ?」
条件?
こいつと関わったら、ロクなことない気がするけど、写真消してもらう為だと思って…。
でも…。
「条件って?」
次の瞬間、俺は信じられない事を聞くことになる。
「そうだなぁ、有岡さんが僕のものになるなら、写真消しても良いかなぁ?」
僕のもの?
それって、こいつと付き合うって事か?
そんなのごめんだ。
ふざけんな!!
でもそうしないと写真が…。
コンコン
突然この楽屋をノックする音が聞こえ、
「誰かいますかー?」
「あ、鍵空いてるよ、いのちゃん!」
という声が聞こえて、いのちゃんと光はこの楽屋に入って来た。
「あ、スタッフさんじゃん。」
「うちの有岡が何かしましたか?」
「い、いや…。」
いのちゃんと光が来てから、スタッフさんが明らかに慌ててるのが見てとれた。
そっと光が近寄って来てくれて、
「飲み物買いに行くのに、何分かかってんだよ。だから心配したろ?無事か?」
「う、うん、ごめん…。」
そう声をかけてくれた。
正直助かったけど、これからどうしたら…。
「あのスタッフさん、有岡をこんな所に呼んで、何するつもりだったんですか?」
「それは…。」
いのちゃんと光が来てから、光は冷静に見えるかも知れないけど、目の奥が笑ってないし、いのちゃんに至っては、訳が分からないと言うような顔をしていた。
「俺ちょっと聞いたんですけど、あなた、自分の気に入った子に手を出してるって本当なんですか?俺が調べた情報だと、何人もに手を出してるとか?」
いきなり確信に迫るもんだから、スタッフさんはビックリしていた。
「バレたら仕方ないですね。そうです、ちょっとからかってやろうとしただけですよ。」
ちなみに言っちゃうと、いのちゃんもビックリした様子で、光の動向を伺っている。
「色々写真も撮ってるとか?それにしたってからかってるレベルじゃねぇだろ!!!」
「あー、怒んないでくださいよ。めんどくさいなぁ。」
その一言に光はスタッフさんに掴みかかろうとしたのだが、それはいのちゃんに止められた。
「光、それはヤバいって。」
「うるせぇ、離せ!!お前、こんなことしてタダで済むと思うなよ!!警察に通報してやるからな。それと今ある写真全部消せ!もう有岡には関わるな!」
「分かりましたよ。」
スタッフさんは俺だけじゃない写真を全部消して、俺達にスマホを見せてくれた。
「これで良いんでしょ。では。」
そそくさとスタッフさんは空いた楽屋を後にした。