熱砂の策謀家
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スカラビア寮の空き部屋に集まった私たちは
今日のカリムさんの様子を話していた
グリム「今日はご機嫌カリムだったんだゾ」
アズール「ええ、僕が知る"いつもの"カリムさんでしたね」
グリム「機嫌が悪い時のカリムは、もっと目も釣り上がってて
怖い感じで喋るんだゾ」
ジェイド「…それは機嫌の良し悪し、なのでしょうか?」
フロイド「どーゆーこと?」
ジェイド「カリムさんはフロイドのように
気分の浮き沈みが激しい印象があまりないものですから
…もっと別の要因があるような気がして」
グリム「マジフト大会と期末テストの寮順位が
悪かったせいだってジャミルは言ってたんだゾ」
フロイド「え~?ラッコちゃんってそんなの気にするの?」
グリム「ラッコ?」
ジェイド「カリムさんのことですよ」
フロイドさんは海の生き物になぞらえた
あだ名をつけるのが好きみたいで
グリムのことも、丸々として愛らしいシルエットに
親しみを込めて「アザラシちゃん」と呼んでいるらしい
グリム「"丸々として"が余計なんだゾ!」
『ふふふ♪』
グリム「笑うんじゃねーんだゾ!!」
フロイド「ラッコちゃんは、いつも太鼓叩きながら
ニコニコしてるからラッコに似てるでしょ?」
アズール「そうですね、彼はいつも朗らかで
成績が悪かったくらいで情緒不安定になるタイプには
思えません…やはり、原因は別にある可能性が高そうですね
問題解決のためにも、カリムさんのことを
もっと知る必要がありそうだ…ジェイド
少し、彼と"お話し"してきてもらえませんか?」
『(お話し…?)』
ジェイド「かしこまりました
ジャミルさんは難しいかもしれませんが
カリムさんなら素直に僕と"お話し"して
くれるかもしれません」
フロイド「じゃあ、そのあいだオレはウミヘビくんに
遊んでもらおっかなぁ」
アズール「それはいい、僕も一緒に
お相手していただくとしましょうか」
「「「フフフ…………」」」
グリム「コイツら、ずっと目が笑ってねぇんだゾ……」
ジェイド「リリィさん」
『はい』
ジェイド「あなたのお力を少しお借りしても
よろしいでしょうか?その方が、カリムさんもより僕と
"お話し"してくれそうですから」
『もちろんです!私は何をすればいいですか?』
ジェイド「…では」
*~**~*
一際立派な扉の前に立ったら
ゆっくり深呼吸をして扉をノックすると
寝起きの声に返事をした
『夜分遅くにごめんなさい…リリィです!』
カリム「…リリィ?」
しばらくしてゆっくり扉を開けてくれたカリムさんは
不思議そうに私を見つめていた
カリム「どうした、こんな夜に…1人か?」
『あ、あの…っ………』
これもカリムさんのためだと覚悟を決めると
勇気を出してカリムさんに声をかけた
『わ、私と……夜のお散歩に行きませんか?』
カリム「…え?」
(「カリムさんを夜のデートに誘ってきて下さい」)
ジェイドさんの言葉の意図がいまいち分からないまま
カリムさんを助けられるなら…って思ってたけど
『(デートに誘ったことなんてないのに……)』
少し後ろめたさもあって俯いてると
名前を呼ばれて顔を上げたら
カリムさんが嬉しそうに微笑んでくれていた
カリム「リリィに誘ってもらえるなんてすっげー嬉しいぜ!
それじゃあ、俺のお気に入りの場所に連れてってやるよ!」
『カ、カリムさん!?』
カリムさんに手を掴まれると
長い廊下を歩いて階段を登った先に見えたのは
きらびやかなアラビアンナイトの世界だった
お昼とは違ったロマンチックな世界に
胸がときめいてしまう
『…キレイ』
カリム「だろ?」
絨毯「♪~」
カリム「お前……また抜け出したのか?」
『こんばんは!』
絨毯「♪♪♪♪」
カリム「!…よーしこのまま空の散歩へ出発ー!!」
『きゃ!?』
カリムさんが私の手を引いて
そのまま魔法の絨毯に乗って寮を出てしまった
あの浮遊感を思い出して怖くなって
カリムさんの服を掴んだら
私の手を包むようにカリムさんの手が上から重なる
カリム「魔法の絨毯、ゆっくり飛んでくれるか?
それからいきなり急降下はしないでくれ、リリィが怖がる」
『あ……』
カリムさんの満面の笑みに安心して微笑んだら
気がついたらもう雲の上で、月が強く輝いていた
カリム「どうだ、雲の上は別世界だろ?」
『はい、見たことがない……新しい世界です』
カリム「空を自由に飛び回るのっていいよな
小さい悩みなんか全部どうでもよくなる
ジャミルにはいつも「お前は気にしなさすぎだ」って
言われるけど…アイツももう少し気楽に生きればいいのに
アイツはさ、凄いヤツなんだ
オレに勉強や魔法を教えてくれてたのもジャミルでさ
家庭教師なんかより、ずっと教え方が上手くて
あ、ダンスもすげー上手いんだぜ!」
『…カリムさん』
カリムさんは明るくていつも笑顔だけど
…そうだよね、笑顔でいるからって何も考えてないなんて
そんな事あるわけないのに
『…カリムさんは、本当にバイパーさんが大切なんですね』
カリム「ああ!ジャミルは絶対に俺を裏切ったりしない!
だって俺たち、親友だからさ!」
『…………』
カリム「…リリィ?」
『…いいえ、何でもありません!』
カリム「…………」
カリムさんがいきなり私の頭を優しく撫でてきて
思わず身体が飛び跳ねてしまった
カリム「なんでリリィが傷付いた顔してるんだ?」
『…………』
カリム「よくわかんないけどありがとな、心配してくれて!」
『カリムさん……』
カリム「あのさ…1つお願い聞いてくれるか?」
『は、はい!私に出来ることなら!』
カリム「この前聞かせてくれた…あの歌が聞きたいんだ」
『!』
カリム「…ダメか?」
『…もちろん、いいですよ!』
ねぇ、陽翔
デートに誘うのにこんなに勇気がいるなんて知らなくて
受け入れてもらえるのがこんなに嬉しかったなんて
今になって、陽翔の気持ちが分かって泣きたくなったの
それでね、陽翔が私にしてくれた全てに
『ありがとう』『大好き』って伝えたい
そんな気持ちで歌う私を
カリムさんが寂しそうに見つめていたのに気付かなかった
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