熱砂の策謀家
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夜までみっちり防衛魔法の特訓を受けた
グリムにスカラビアの寮生さんたち
私とユウくんは変わらずランニングと
カリムさんの指示で寮の中を走り回っていた
ガチャガチャ
グリム「…見張りは行ったかリリィ?」
『…うん、足音が遠ざかってく』
グリム「午後の訓練も、食べものが全部出そうなくらい
キツかったんだゾ
学園長はアテになんねーし…もうオレ様たちで
なんとかするっきゃねぇ!
そこで、頭脳明晰なオレ様が完璧な脱獄計画を考えたんだゾ」
「…ずのうめいせきなおれさま?」
『グリム、その計画って?』
グリム「聞いて驚け、オレ様は脱出に必要なアイテムを
昼間入手した…見ろこれを!」
グリムの手には銀のスプーンが握られていた
グリム「このスプーンで、少しずつ床を掘って
外に出るんだゾ!」
「頭脳を全く必要としない地道な作業だなぁ……」
『時間と根気との勝負ね!』
ザクザク、ゴリゴリ
『!…グリム、足音が…見張りの人かも!』
グリム「やべっ!寝たフリするんだゾ!」
チュンチュンチュン………
グリム「朝までかかって、やっとオレ様の両腕が
通るくらいの穴が掘れたんだゾ」
「脱獄は一晩にしてならず……」
『1日目にしてはいいペースだと思うよ!』
ガチャガチャ…バン!!
「出ろ、お前たち!朝の特訓の時間だ
今日も東のオアシスまで行進する!」
*~**~*
東のオアシスまで何とかたどり着いたけど
グリムもスカラビアの寮生さんたちも
昨日の疲れが取れていないのか足取りが重かった
もちろん私も……
グリム「ぜぇ、はぁ、喉がカラカラなんだゾ
カリム、水を出してくれぇ~」
カリム「このオレに水を出せ、だと?
お前、誰に向かって口を利いている!」
グリム「ヒェ!?」
カリム「オレはお前らの水道じゃない
水が欲しいものは、オアシスから汲んでくるがいい」
「…この干上がったオアシスから水を汲めだって?」
「さすがに横暴が過ぎるだろ……」
「寮長は本当にどうしてしまったんだ?」
『(カリムさん……)』
「ジャミル先輩…俺、俺……
やっぱりもうこんな寮にいたくない」
「僕も、もう寮長には従えません!」
「ジャミル先輩はなぜあんなカリム寮長に従うんですか!?」
ジャミル「それは…アイツが
「カリム・アルアジーム」だからだ」
「小さい頃から主従関係だから?」
ジャミル「それもだが…今日の夜、少し話をしよう
カリムに気付かれないように俺が手を打っておく
ユウたちも少し時間をくれないか」
「は、はい……」
『…わかりました』
*~**~*
夕食後、談話室には集められた
スカラビアの寮生さんたちと私達の前で
バイパーさんは静かな声で話し出した
ジャミル「みんな、集まっているな?」
グリム「……で?なんなんだゾ?オレ様たちに話しって?
もうオレ様、ヘトヘト……一刻も早く寝かせて欲しいんだゾ」
ジャミル「お前たちがカリムのやり方に
不満があるのはわかってる
冬休みに寮生たちを寮に縛り付け朝から晩まで
過酷な訓練、不満を持たないヤツはいないだろう
俺もカリムのやり方が正しいとは思ってない」
「じゃあ何故止めないんです!?」
ジャミル「止めたさ、何度も
聞く耳を持ってもらえなかったけどな」
グリム「オマエら、そんなにブーブー言うなら
ジャミルじゃなくてカリムに直接
文句言ってやればいいんだゾ」
『…私もそう思います』
「それは……その……」
グリム「なんだ、オマエら
ジャミルには言えてカリムには言えねぇのか?
いくじがねぇヤツらなんだゾ」
「ち、違う…俺たちだって言おうとしたさ、何度も!」
「でも、様子がおかしくなかったときの寮長は
本当に大らかで、優しいいい人で……」
「こんなことになる前は、俺たち全員寮長のことを
尊敬してたんだ」
「どの寮よりも素晴らしい寮長だと思ってた」
寮生さんたちは話してくれた
入学したばかりで寮に馴染めない寮生さんの話を
親身になって聞いてくれていたこと
授業のレベルについていけなかったら
朝まで特訓に付き合ってくれていたこと
「ちょっと大雑把で頼りないところもあるけど
俺たちはみんな寮長が大好きだったんだ」
「スカラビア寮生でいられることが楽しかった
それなのに……」
ジャミル「そう、カリムは本当にいい寮長だ
誰とでも分け隔てなく接し、偉ぶることもない
ああ、何でこんなことになってしまったんだ…」
「いい人だからこそ責められないし
慕っているからこそ踏ん張りがつかない、と……」
『…………』
グリム「あのよー、カリムのヤツ、医者にでも
見てもらったほうがいいんじゃねーか?
言ってることがコロコロ変わるし、性格がまるで
別人みてーになっちまうなんて、ちょっと変だろ?
なんか悪いモンでも食っちまったんじゃねーのか?」
「それこそ、毒とか……」
ジャミル「毒ということはないだろう、もし毒の作用なら
毒味係の俺も同じ状態になってるはずだ
しかし、医者か…熱砂の国に戻れば
アジーム家お抱えの医者がいるが……
今の様子じゃ、実家に連れ戻すのも一苦労だろうな」
「そんなぁ……」
「このままじゃ、俺たちが先に参っちまいますよ…」
ジャミル「今のスカラビアが抱えている問題は
つい先日までハーツラビュルが抱えていたものと似ている
ハーツラビュルも、寮長の圧政に
寮生たちが苦しめられていたとか……
あっちは寮長であるリドルのユニーク魔法が怖くて
誰も逆らえなかったんだろうが」
『…ずいぶんお詳しいんですね?』
ジャミル「他寮の情報を把握するのは当然だ
そこで…ハーツラビュルの問題解決に活躍した
君たちにアドバイスをもらいたい!
俺たちはどうしたらいいと思う」
グリム「ジャミルがカリムに決闘を挑んで
寮長になっちまうのはどうだ?
リドルのときは、学園長の提案で
エースとデュースがリドルと決闘したんだゾ!
ま、アイツらぽんこつで全然歯が立たなかったんだけどな
カリムはリドルと違ってユニーク魔法も
大したことねーし、楽勝な気がするんだゾ!」
ジャミル「___それだけは、絶対に出来ない」
はっきり言いはなったバイパーさんに
グリムは驚きながらも呆れていた
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