深海の商人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジェイドさんの案内でモストロ・ラウンジに着くと
制服を着た支配人さんとフロイドさんが
嬉しそうに近付いてくる
アズール「おはようございます、リリィさん
昨日はサバナクロー寮にお世話になったとか?」
『おはようございます、支配人さん
確かに昨日はサバナクロー寮にお世話になりましたが
いけませんでしたか?』
アズール「…いいえ、とんでもない
無事に宿が見つかって安心しました!」
『…あの、 今日は何をすればよろしいですか?』
アズール「そうでした、こちらがあなたがこなす
タイムスケジュールです」
『タイムスケジュール…?』
支配人さんからもらったタイムスケジュールには
朝の7時~22時までの私の仕事内容が事細かく記されていた
アズール「今さら"出来ません"と
泣き言を言っても遅いですよ?」
『支配人さんって……とってもお優しいんですね!』
ジェイド・フロイド「「?」」
アズール「お優しい……とは?」
『お昼休憩を一時間も下さるだけじゃなくて
間間に小休憩もいれて下さってるから…嬉しいです!』
アズール「…嬉しい?」
『それじゃあ、ラウンジのお掃除から始めていきますね!
皆さんはこれから学校ですよね?頑張ってきて下さい!』
3人に深く頭を下げたら
掃除道具を取りに厨房裏に向かった
フロイド「やっぱイルカちゃん面白ろ~!」
ジェイド「確かに、このスケジュールを見て
アズールを優しいと仰るなど…とても興味深い人です」
アズール「……ふん」
*~**~*
お掃除は想像した以上に広くて大変だったけど
何より大変なのは料理の仕込みだった
見たことがない食材の名前を覚えなくちゃいけなかったし
冷蔵なのか冷凍なのか把握するのも大変だった
食材によっては調理一時間前には常温にしとかないと
いけないのもあって
メモを便りに確認するのに手間取ってしまった
モストロ・ラウンジが始まるととにかくお客さんが多くて
耳と頭をフル回転させていた時だった
『きゃ!?』
食器を両手で運んでいたら
いきなり足をかけられて何とか転ばすにすんだけど…
「"きゃ!?"だってよ~?何か雌くせーと思ったんだよなー」
「ここは女が来るとこじゃねーんだよ!」
『…………』
この世界に来てこんなトラブルにあった事がなかったから
正直困ったけど、何とか穏便に終われるように声をかけた
『…申し訳ございません、今は私しか従業員がいませんので
ご協力して頂けたら…』
「知るかそんな事!!」
「ってかさ、あんた魔法が使えないとか本当?
よくこの世界で生きていけるよな!」
「そうそう、オレなら生きていけねーわ!」
『…生きていけない?』
「当たり前だろ?魔法の世界で魔法が使えないなんて
ただの役立つじゃねーか!!」
この人達の言葉に傷ついたけど
両手を握りしめながら笑顔で返事をした
『…ここは紳士の社交場、モストロ・ラウンジ
他寮との揉め事はご法度、ここではどの生徒も
ルールを守って楽しくご利用して頂けると嬉しいです』
「んだと、テメェ…!!」
「だったらオマエが俺たちを楽しませてみろやぁ!!」
『…………』
スゴい無茶振りだなって困ってると
ふと目の前のピアノに目が止まったら
怒ってる二人に声をかけた
『もし私がお二人を楽しませることが出来ましたら
こんな事は二度としないとお約束して頂けますか?』
「ああ!!」
「出来るもんならやって見やがれ!!」
『…分かりました!』
「「?」」
二人に頭を下げてピアノに向かって置いてある椅子に座ると
鍵盤を鳴らしてみる
調律もちゃんとしてある、素敵な音のピアノだった
『…今日はモストロ・ラウンジへお越し頂き
誠にありがとうございます!
ここは海をイメージした素敵なお店です
いかに海が素晴らしく美しいのか…どうぞお聞きください』
「「!?」」
私が弾き始めたのは「アンダー・ザ・シー」
海の世界の素晴らしさをセバスチャンが
海の生物達と一緒にアリエルに訴えかける素敵な曲だ
久しぶりに歌いながらピアノを弾くのは楽しくて嬉しかった
「お、おい!!あれ見ろよ!?」
「すっげーー!!」
『!?』
水槽にいた魚達が集まってくると
私の歌とピアノに合わせてまるで踊っているかのように
動いてくれていた
最後のピアノの音がビシッと決まると
大きな拍手と歓声に思わず頭を深く下げて微笑んだら
後ろを振り返ってお魚さん達にも頭を下げた
ゆっくりあの二人に近付くと、気まずそうな二人に
微笑んだ
『…楽しんで頂けましたか?』
「お、おう……」
「悪くは…なかったんじゃねーの?」
『ありがとうございます!
この後も、モストロ・ラウンジをゆっくりお楽しみ下さい!』
何とか穏便にすんで安心したら
食器を片付けに厨房へ向かった
アズール「…見つけたぞ」
*~**~*
モストロ・ラウンジが閉店して床の掃除をしていたら
支配人さんが嬉しそうに私に話しかけてきた
アズール「お疲れ様でした、リリィさん
やはりあなたの働きぶりは素晴らしいものです!」
『ありがとうございます!』
支配人さんが近付いてくると私の顎を掴んで上に向けたら
反対の手で私の喉元を指差していた
アズール「あなたのその歌声…とても美しかった」
『…あ、あの』
アズール「私と契約しませんか?」
『契約…?』
アズール「あなたの願いを何でも一つ叶えましょう
その対価として…あなたの歌声を貸して頂きたいのです」
『私の歌声を……』
アズール「はい、その歌声を是非!」
『…………』
支配人さんの言葉に、はっきり自分の気持ちを伝えた
『…無理です』
アズール「え?」
『支配人さんに私の願いを叶えることは出来ません』
アズール「…は?」
支配人さんがゆっくり私の側から離れると
目を見開きながら私を見つめていた
アズール「勝手に決めつけないで下さい
言ってみなさい、あなたの願いを!」
『私の願いは支配人さんに叶えて貰いたくないんです
自分で叶えないと…意味がないものだから』
アズール「…バカな、叶えて欲しいものがない人間なんて
いないハズがない」
『…今日はここで失礼します、明日もよろしくお願いします』
アズール「…っ……!!」
支配人さんに頭を下げたら
モストロ・ラウンジを後にした
____ぴちゃんぴちゃん
『…っ、また…聞こえた』
嫌な胸騒ぎに怖くなって
急いでサバナクロー寮に向かって走っていた