十傑パロ(連載ヒロイン)
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逃げて、逃げるの
もうあんな思いをしないためにも
遠くに
彼が見つけられない場所へ_______
*~**~*
釜戸から出来立てのパンを出すと
美味しそうにふんわり焼けたパンを見て笑顔がこぼれる
それを袋に詰め終えたら、扉が開いて振り返ると
いつもの二人に安心して微笑んだ
彩香「おはようコムギ」
美奈子「おはようコムギちゃん!
…ふぁ~、今日もいい匂いだねー♪」
『(おはようございます!アヤカさんにミナコさん!)』
二人に深くお辞儀をすると
袋に詰めたパンを二人に渡したら微笑んでくれた
彩香「今日も、ありがとね」
美奈子「コムギちゃんのパンは市場で評判いいんだよ!
折角なら一緒に市場に行けばいいのに~」
『(…ありがとうございますミナコさん、でも私は
パンを作れるだけで十分幸せです!)』
首を大きく横に振ると二人は少し寂しそうな顔をした
アヤカさんが私の右手を掴んで
手袋の上から手の甲を撫でたから
思わず身体がビクって震えてしまった
彩香「気にしてるの?…この手の印のこと」
『(…………)』
美奈子「心配しなくても大丈夫だよ!
ここには私達だけしか近付いてこないから!
コムギちゃんはのんびり過ごしててね♪」
『(…ありがとうございます)』
二人は大量の荷物を持って家を出発した
二人に向かって大きく手を振ると笑顔で振り返してくれる
魔王様のお城から逃げた後のことはあまり覚えていない
ただ、逃げて逃げて逃げて
あの人に見つからないことだけを祈って
夢中で森の中を走ってたような気がした
しばらくて右手の甲が痛くなって見たら
奴隷マークが浮き出てきて、声も出せなくなった
怖くて、悲しくて…死にたくなくて
でも何日もご飯を食べてなかったから体力は限界で
目が覚めたら二人の家の前に倒れてた
市場から帰ってきた二人は倒れてる私を保護してくれて
傷の手当てもしてくれた
右手を見て私が奴隷だって知ってるのに
二人はいつも優しくしてくれて
言葉だって話せなくて不便なはずなのに笑顔で待っててくれる
そんな二人の優しさに恩返ししたくて
パンを作ったらとても喜んでくれた
だから二人にパンを売ってそのお金を生活費にしてって
提案したら「そんな心配しなくていい」って断られたけど
何とか押しきって了承してくれた
二人が帰ってくる前に家の掃除をして夕飯を作って
もし時間が余ったら
また新しいパンでも作ってみようかなって思ってる
『(…私…生きるよ)』
彼を思い出すと少し胸が苦しくなって痛いけど
魔王様との約束を忘れずに前に進むって決めたから
気合いを入れると部屋の掃除をしに急いで家に戻った
*~**~*
掃除が終わってパンを焼いている間
外で草むしりをしていると手袋に何かが刺さって外したら
トゲが刺さっていてトゲを抜いていたときだった
ガサガサ
『!!』
隣の草むらから音がして見ると
小さい女の子と男の子が泣きながら手を繋いでいて
近くに置いてたノートとペンを持って泣いてる二人に近寄ると
ノートに字を書いて二人に見せた
『(大丈夫?ケガでもしたの?)』
「…ケガなんて…っ……してない!」
『(どうして泣いてるの?)』
「道に…迷って……お腹…すいて」
『(そっか……)』
大きなケガとかじゃなくて安心した
「ちょっと待っててね」ってメモを残して家に入ると
ちょうどパンが焼き上がったから
少し冷ましてからパンを持っていくと
二人は目を見開いて私の顔を不思議そうに見るから微笑んだ
「…食べていいの?」
『(もちろん!)』
「「…いただきまーす!!」」
二人に大きく頷くと夢中でパンを食べ始めた
「美味しい!!」っていいながら
嬉しそうにパンを食べてくれる二人に自然と微笑んでしまう
二人から色々話を聞いて、隣町に住んでるのが分かったから
ノートに町までの道のりを書いて渡すと嬉しそうに
手を振りながら帰っていった
その時、自分が手袋をしていなかった事に気付いて
急いで手袋を装着すると草むしりを再開した
*~**~*
夜の19時
いつもならもう帰ってきているはずの二人が
帰ってこないのに心配してたら
いきなり扉が乱暴に開く音がして振り返ると
ミナコさんが息を荒げながら私に近寄って来た
肩を掴まれるとミナコさんは苦しそうな表情を浮かべていた
美奈子「早くここから逃げて!!」
『(え?)』
美奈子「コムギちゃん…今日二人の姉弟にパンあげた?」
昼間の二人を思い出して頷くと
ミナコさんは悲しそうに顔を歪めていた
美奈子「…その子達が両親に
コムギちゃんの手のことを話しちゃったの」
『______!!』
美奈子「…っ……子ども達に
コムギちゃんの作ったパンを食べさせるなんて許さないって
…アヤカが説得してくれてるけど、時間がない
お願いコムギちゃん、ここから今すぐ逃げて!?
捕まったら、奴隷商人に売られちゃう!!」
『(そんな……)』
あまりのショックに動けないでいると
ミナコさんは小袋を私のカバンに入れて肩にかけてくれたら
手を引いて外に連れ出してくれた
美奈子「コムギちゃんが
今までパンで稼いでくれたお金が入ってるから
何とかこれで遠くの町に逃げるんだよ?」
『(!?そ、そんなの貰えない!!)』
カバンから小袋を出してミナコさんの胸に押し付けた
いらないって意味も込めて首を大きく横に振るけど
ミナコさんはまた小袋をカバンの中に入れてしまった
美奈子「短い間だったけど
コムギちゃんと過ごせて本当に楽しかったよ?
何よりコムギちゃんがパンを作ってるときの
楽しそうな顔が見れて本当に嬉しかったんだから!」
『(…っ……ミナコ…さん)』
「いたぞ!!あいつが奴隷の女だ!!」
美奈子「『!?』」
彩香「コムギ!!早く逃げて!!」
美奈子「コムギちゃん!!」
『(…で、でも……)』
彩香「あんたは絶対パン職人になれる!!
こんな所で捕まっちゃいけない!!」
美奈子「行って!!…っ……早く!!」
『(…っつ!!)』
ミナコさんに背中を押されて、泣きながら暗い森の中を走った
②へ続く