連載ヒロインのバレンタイン
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「先輩!こ、これ…貰って下さい!!」
『…いいの?』
「はい!先輩には、い、いつもお世話になっているので
感謝のき、気持ちです!!」
『ありがとう、大切に頂くわ』
「!?あ、ありがとうございます!!」
嬉しそうな笑顔を浮かべて走り去っていく後輩の女の子
デスクの下の袋には溢れんばかりの包装紙の山
今日はバレンタインデー
そもそもバレンタインデーって
若者たちの愛を取り込もうとした
キリスト教司の「ウァレンティヌス」が処刑された日で
その教司に敬意を込めて
国民がお祈りをするようになったのが由来って
皆知ってるのかしら?
それにバレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は
日本独自らしい
確か都内デパートで開かれたバレンタインセールで
チョコレート業者が「バレンタインにはチョコを贈ろう」
って広告を出したのが発端みたいだけど
…日本人はまんまとその策略にのせられたわけね
『好きな人に思いを伝える日…か』
雄英の制服を来た彼を思い出したけど
仕事に集中するためパソコンに意識を向けた
*~**~*
仕事も終わって家に帰ると
頭の中で流れるレシピと同じように作ったのに
目の前の光景に動きが止まってしまった
テーブルの上に置かれたカチコチに固まったチョコ
ボールやゴムベラは散乱し
テーブルには薄力粉がこぼれ落ちている
『可笑しいわ…頭の中にちゃんとレシピは入ってるのに
何でこんな固くなるのよ』
床に勢いよく叩きつけても割れないチョコ…いやトリュフ
『…やっぱり、無理して慣れないことするんじゃなかった』
だって買ったチョコの方が
見た目だって綺麗だし味だって美味しい
いつもだったらそう思うのに___
ピンポーン
『?』
インターホンを覗くと大家さんで
扉を開けたら大家さんが安心したように笑っていて
疑問が浮かんだ
「いや~元気そうで良かった良かった!」
『…何かあったんですか?』
「何度も連絡しても返事がないから
君が無事か確認して欲しいって彼に相談されてね!」
轟「…………」
『しょ、焦凍君?』
轟「…こんばんは、想さん」
大家さんは笑顔で手を振って帰っていくと
無言な空気の中、焦凍君が声をかけてくれた
轟「悪ぃ…いつもならすぐ返事してくれんのに、心配で来た」
『ご、ごめんなさい!ちょっと集中して……て』
あの散乱した部屋を思い出して
いつもなら焦凍君を部屋にあげるけど
全力で阻止しなくちゃいけないと思って声をかけた
『私…これから出掛けないと行けないの』
轟「何処に?」
『それは…言えない』
轟「…………」
『…………』
轟「俺には…言えねー事なのか?」
『焦凍く!?』
いきなり玄関に入ってきた焦凍君は
靴を脱ぐとリビングの方に進んでいく
ま、まずい!!
腕を掴んでも全然歩みを止めてくれなくて
…っていうか、細い身体の割に力が強い
さすがエンデヴァーさんの息子って思ってたら
リビングの扉を開けられて
急いでテーブルを隠すように両手を広げるけど
無意味なことは分かってるから
恥ずかしくて俯くことしか出来なかった
轟「…チョコ作ってたのか」
『…………』
轟「誰にあげるつもりだったんだ?」
『…………』
轟「…答えてくれ」
『…………』
もう隠しきれないと諦めて身体の力を抜くと
フローリングの上に勢いよく座った
『…焦凍君に…あげるつもりだったの』
轟「…え?」
『私バレンタインとかあげたことないの…ましてや
コストも時間もかかる効率が悪い手作りなんて
考えたこともなかった』
轟「…………」
『でも…今年は作ってみたくなった
何故って言われたら困るけど……作りたかったの』
轟「…………」
『見て分かるけど大失敗…こういうお菓子作りとか
私向いてないみたい』
轟「…………」
それに焦凍君なら、イケメンだしモテそうだから
私のチョコがなくたって沢山貰ってるだろうし
本当…今さら何考えてんだって思ってたら
焦凍君が私の目線に合わせて
膝をついてしゃがんでくれると
左手に固まってるチョコトリュフを持っていて
炎がチョコを優しく包むように燃えると
少し溶けたチョコトリュフをそのまま食べてしまった
轟「…うめェよ、このチョコトリュフ」
『…………』
轟「想さんの気持ち、嬉しかった」
『…………』
轟「…さんきゅ」
『…焦凍君』
轟「もう一個、食っていいか?」
『…もちろん』
やっぱり彼は優しくて温かい人だなって、胸が高鳴ると
初めてのバレンタインの相手が彼で良かったって思えた
End