十傑パロ(連載ヒロイン)
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早く夜がくればいいのにって願った
天窓から注ぐ温かい月の光だけが私の希望だった
「貴女は大丈夫よ」って励ましてくれてるみたいで
村の人達の心配する視線も
エイジロウ君の謝罪も
カツキ様の真っ直ぐな言葉もいらない
(「クラヤミニムカイシショウジョヨ」)
『(…誰…?)』
(「コノムラノモノタチハオマエノダイジナモノヲウバッタ」)
『(そうだ…家族も…夢も…全部奪われた)』
(「ニクイトオモワナイカ…コンナトコロニイテ
ナンノミレンガアル」)
『(未練なんて…ない)』
(「ワタシノテヲトレ…コムギ」)
『…………』
黒い不気味な手が私に向かって伸びてくる
こんな所にいるくらいならって
伸ばした手を掴んだ瞬間
私の心も意識も闇の中に引きずり込まれた
*~**~*
一ヶ月ぶりに帰ってくる住処
強ェヤツは倒せねーし変な噂が流れてた
魔王は呪いで勇者を魔族にしてるらしいが
何でも勇者だけじゃない人間も魔族にしてしまうみてーだ
クソ野郎だな
すると、エイジロウが俺に声をかけてきやがった
切島「何か…臭わねーか?」
爆豪「あ?……!?急げエイジロウ!!」
切島「お、おう!!」
この臭い…嫌な感じがしやがる
急いで村に向かって飛ぶと
村を上から見下ろした時、身体が動けなくなった
切島「…おい……これって……」
爆豪「______」
俺の村が荒地になってて
急いで降りると村のモブ共が石にされてやがった
全員苦しそうに喉を押さえていて
生気でも吸われたような感じだ
後ろから物音がして勢いよく振り返ると
ガキが泣きながら俺達に近付いてきやがった
切島「大丈夫か!?」
「…っ……!!」
爆豪「…何があった」
ガキは身体を震わせると、はっきり俺達に言いやがった
「…コムギが……皆を殺したんだ」
切島「…は?」
爆豪「…ンだと」
あいつが村のモブ共を殺した?
あの虫も怖がるようなビビり女が?
「コムギが…皆に笑顔でパンを配ってて
元の明るいコムギに戻ったって
皆で楽しくコムギのパンを食べてたら
…いきなり皆が苦しみはじめて
僕…怖くなって家の中に逃げたんだ
そしたら……っ………コムギ笑ってたんだ
皆が苦しそうに倒れてるのを見て…笑ってたんだ!!」
切島「そんな……」
爆豪「…っつ!!」
切島「カツキ!?」
あいつの牢屋に向かうともぬけの殻で
いつも香るパンの匂いが全くしなかった
天窓の前に行くと散らばった勾玉を見て両手を握りしめた
これは…俺があいつに持たせた首飾りだ
爆豪「…っ………」
切島「カツキ!!」
爆豪「エイジロウ…出発すんぞ」
切島「え?何処に」
爆豪「そのガキを避難させる」
俺が向かったのは前に住んでた住処の隣
キノコみてーな形をした家の扉をノックしたら
扉を開けて出てきたデクが俺を見て驚いてやがった
緑谷「カッチャン!?」
爆豪「…このガキ、少し預かってろ」
緑谷「ってうわぁ!?」
切島「カツキ!!どこ行くんだよ!!」
爆豪「あ"あ"!?あいつを探すに決まってンだろーが!!」
切島「でもコムギが何処にいるかなんて」
緑谷「…その子ってパン売ってたりする?」
爆豪「!!」
デクの胸ぐらを勢いよく掴んで睨み付けた
爆豪「知ってンのかそいつの事!!」
切島「止めろカツキ!!イズク苦しがってんだろ!?」
爆豪「…っ……!!」
デクの胸ぐらを離すとあいつは服を整えながら話し出した
緑谷「母さんが昨日話してたんだ
買い物の途中で不思議な瞳の色をした女の子に会ったって!
その子パンを売ってるみたいで、明日パンを売るから
食べに来て欲しいって言われて
だから母さん、そのパン求めてさっき出掛けたんだけど…」
爆豪・切島「「!!」」
緑谷「な、なに…?」
切島「そいつの目って何色とか聞いたか!?」
緑谷「うん、珍しい黄緑の瞳で
名前も確か…コムギって言ってた」
爆豪「行くぞエイジロウ!!!!」
切島「おう!!」
緑谷「ど、どうしたの!?」
切島「イズクの母ちゃんが危険なんだ!!」
緑谷「え…」
デクを引っ張りあげてエイジロウに乗せると
今までの経緯を簡潔に話した
話終えたデクの顔は青ざめてやがった
爆豪「そいつ何処でパンを売るって言ってた!?」
緑谷「確か……そう、カナタ地方って答えた!」
切島「こっから近えな…飛ばすぜ!!」
*~**~*
カナタ地方の町に着いて
ある中心に人だかりができてると
その中からデクの母親が嬉しそうに出てきて
デクは慌てて駆け寄ってた
緑谷「母さん!!!!」
「え…イズク!どうしてここに?」
緑谷「母さんパン食べた!?」
「ま、まだだけど……」
緑谷「…よ、よかったぁ~」
「「「ぐぅあぁぁぁ!!!!」」」
「「「きゃぁああ!!」」」
爆豪・緑谷・切島「「「!?」」」
人だかりからどんどんモブ共が苦しそうに倒れ石になると
そこから現れた女から目が離せなかった
『あらら~まだパンを食べてない人間がいたのかー
殺しそこねちゃった、エヘヘ♪』
切島「コムギ…?」
『でもこーんだけ人間の生気を吸い取ったからいっか!
魔王様も喜んでくれるよね!』
緑谷「今…魔王って」
『あら、貴方ってもしかして"勇者"?』
緑谷「!?…っ………だったら?」
『魔王様の命令で、勇者は全員皆殺しって命令なの!
だから貴方…死んでくれる?』
緑谷・切島「「!!」」
爆豪「…てめェ!!そいつの身体に何しやがった!!
元に戻しやがれ!!!!」
『も~、うるさい人ってタイプじゃなーい!』
爆豪「あ"あ!?」
あいつが指を鳴らした瞬間
空が薄暗く曇ると、いきなりでけぇ獣が数十匹
俺達を取り囲んでいた
あいつは俺達に細く笑ってたが、瞳は笑ってねぇ
『私の名前はコムギ!
魔王様に力を与えられて魔族として生まれ変わったんだよ?
邪魔する人は…子供でも老人でも容赦なく殺しちゃうから♪』
目の前にいるあいつは見た目も声も同じなのに
全く違う人格の…魔王のモノになったあいつを目の前にして
絶望感と後悔だけが、俺の心を占めていた
⑤へ続く