運命のオメガバース(完結) 連載ヒロイン、裏あり
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オメガバースという存在はまだ未知数だけど
私は今日、奇跡を目の当たりにする
友人でΩの聖ちゃんが
運命の番じゃない、βの幼馴染みと結婚した
*~**~*
挙式が終わって、今はビアガーデンでのパーティー
元1-A組の皆に囲まれて
幸せそうに微笑む聖ちゃんと新郎の緑谷君
そこには焦凍君もいて嬉しそうなのが伝わる
後ろを振り返ったら、友人の結婚式にも関わらず
いつものコック帽とコック服を着て楽しそうにしている
小麦ちゃんに微笑むと声をかけた
『お疲れ様、小麦ちゃん』
「…うわぁ~……想さん……何かエッチですね!!
そう……大人の色気ってヤツです!!」
『…それ、褒めてくれてるのよね?』
「もちろん♪」
『…ありがとう』
友人の結婚式に招待されるのは初めてだから
エンデヴァー事務所で仲のいいバーニンに
ドレスを選んでもらったけど、正解だったみたいで安心した
『それにしても…こんな時まで
仕事しなくてよかったんじゃない?』
「私、友達の結婚式にコックとして参加するのが夢だったので
叶って本当に嬉しいです!」
『…本当、小麦ちゃんらしいわ』
「エヘヘ♪」
『そういえば、お店の方は大丈夫なの?』
「はい!お店のスタッフさん、協力的な人達ばっかりで
いつも助けられちゃって…店長として情けないです」
『そんな事ないわ、小麦ちゃんだから皆頑張るのよ
自信をもっていいんじゃない?』
「…そう言って貰えると嬉しいです!」
彼女は半年前に
「BlueRose(ブルーローズ)」というパン屋を開いた
お店は大人気で、この前ニュースで特集されているのを見た
ちなみに私も常連客
最近、研究の方が忙しくて中々行けてなかったら
小麦ちゃんが出張でパンを持ってきてくれて感謝している
「小麦ちゃーん!想さーん!」
『…主役の登場ね』
「…キレ~イ…!!」
白いウェディングドレスの裾を持ちながら
笑顔で駆け寄ってくる聖ちゃんは
本当に綺麗で輝いていた
『結婚おめでとう聖ちゃん…本当に綺麗よ』
「あ、ありがとうございます!」
「お姫様みたいでドキドキしちゃった!!」
「そ、そうかな?…ちょっと恥ずかしいね!」
恥ずかしそうに微笑む聖ちゃんを見つめたら
前の方が騒がしくなって見ると
緑谷君に爆豪君、そして焦凍君が女の子達に囲まれていた
「す、すごい囲まれちゃったね……」
『新人ヒーローの中でも人気の三人が揃ってれば
誰だって近寄りたくはなるわよ』
「ふ、二人ともいいの?女の子にモテモテだけど…」
「出久がヒーローとして頑張ってきた証だから
素直に嬉しいよ!」
『モテる顔に生まれてきた定めね』
「二人とも大人だな……」
「あ、所で想さん!轟君とは番になれたんですか?」
聖ちゃんの言葉に
昨日もその事で揉めたことを思い出して眉間にシワが寄った
『…させてくれないのよ』
「え!?」
『…私に子供を産んで欲しいから番にはならないんですって』
「…………」
「それは大変ですね?でも…確率的には
轟君に産んで頂いた方が安全だと思いますけど」
『そうなのよ…なのにあの頑固坊やは……』
「轟君はオーラがありますからね…番になったとしても
人気者であり続けると思います!」
『…確かにそうかも』
焦凍君はイケメンだし
例え私と番になってフェロモンが消えても人気は続くだろう
そんな事が容易に想像出来て聖ちゃんと微笑んでたら
小麦ちゃんが楽しそうに話してたのは男のスタッフで
確か…米澤君だったかしら
優しい雰囲気とオドオドしている姿は頼りなさそうだけど
小麦ちゃんを見つめる瞳は恋をしている目だった
『あの男の子、小麦ちゃんのお店が開店したときから
働いてるスタッフの子らしいわよ?』
「…小麦ちゃん、全然気付いてなさそうですね」
『あの子、他人の気持ちには敏感なのに
自分に向けられる気持ちにはとことん鈍感だから』
「確かに!」
『聖ちゃんは両方に関して鈍感だけどね?』
「…何も言えません」
申し訳なさそうに俯いた聖ちゃんが可愛くて微笑んだら
聖ちゃんの肩に優しく手を置いたのは緑谷君だった
緑谷「聖…そろそろ時間だよ?」
「あ、そうだね!それじゃあ二人ともまた後で!」
『ええ』
「またね聖ちゃん!」
私達に軽く頭を下げてくれた緑谷君は
聖ちゃんの手を引くと優しくエスコートしている
二人は本当にお似合いで
嬉しそうな聖ちゃんを見て自然と微笑んでいた
式場の階段を登った聖ちゃんと緑谷君の手には
綺麗なブーケが握られていた
女の子達がゾロゾロと中央に集まる中
小麦ちゃんの隣で静かにその光景を見つめていたら
小麦ちゃんが行かないのが気になって声をかけた
『小麦ちゃんは行かないの?』
「はい!今はお仕事中ですし、手を汚しちゃったら
衛生的によろしくないので!」
『…さすが職人ってヤツね』
「想さんは行かないんですか?」
『…あんなギラギラの目をした若者達の中に入れると思う?』
「ギラギラの目……」
そりゃ気合いも入るかと中央に集まる女の子達を見つめてたら
緑谷君が後ろ向きで勢いよくブーケを投げた
周りの人達の勢いに呆れたけど
ブーケが何故か高く跳ねて飛んだら
焦凍君の手の中に落ちてしまった
「「「「「「あ……」」」」」」
轟「…………」
『女の敵ね、焦凍君』
「…しょーちゃん」
何で受け取るかなって呆れてたら
焦凍君が私達の方に向かって歩いてくると
私の前で足を止めてブーケを渡してきた
『え?』
轟「…あんたは俺が幸せにするから、もう少し待っててくれ」
『_____』
一瞬で会場から歓声があがった
中には顔を赤くして泣きながら座り込む女の子達もいたけど
さすがの私もカッコいいと思った
恥ずかしいけど、でも嬉しくて赤い顔を誤魔化すように俯くと
私の隣で小麦ちゃんが
感動のあまり頷きながら拍手を送っていた
「しょーちゃん!!男らしくて素敵だよ!!」
轟「…さんきゅ」
『(この天然!!)』
まだ顔が赤いからあげれないでいたとき
小麦ちゃんが「少し離れます!」って声をかけくれた
聖ちゃんのブーケを投げる掛け声にやっと顔を上げると
「小麦ちゃん!!」
「え____!?」
いきなりブーケが左に急カーブしたら
小麦ちゃんの目の前に花束が飛んできて
顔面にヒットするとそのまま後ろに倒れそうになったのを
米澤君が後ろから支えてくれていた
聖ちゃんの背中には小さな白い羽が生えていて
何となく意図が分かって微笑んだ
轟「…あのブーケの曲がり方…もしかして」
『風のいたずら………それで、いいんじゃないかしら?』
轟「…そうだな」
俯きながら優しく微笑した焦凍君に私も微笑んだとき
米澤「小麦さん…っ………好きです!!!!」
「え____」
『!』
はっきり聞こえた告白に、会場全体が一気に静かになって
皆が小麦ちゃんと米澤君を見つめていた
米澤「お店を開く前からあなたの事を知っていました!
バイトで笑顔でパンを配るあなたに惹かれたのが最初です!
…異性と喋るのは苦手だったけど…あなたの側にいたくて
あなたのお店で働きたいと志願しました!
スタッフ一人一人に優しいあなたが好きです!
仕事に妥協しないで紳士に向き合ってる姿が好きです!
時々変なミスするけど、そんな所も可愛くて好きです!」
「…あ…………」
米澤「これからもあなたの隣にいたいです!
スタッフとしてだけじゃなくて…っ……彼氏として!!」
「…っ…………」
『(へぇ…結構根性あるじゃない)』
米澤君のいきなりの告白に驚いたけど
度胸ある男って見直してたら
小麦ちゃんが米澤君を見つめていた
「…ありがとう」
米澤「え?」
「そんなに私の事思ってくれて…その……正直
スゴく…嬉しかったです」
米澤「!」
「「「「「おぉ~~!!」」」」」
『(小麦ちゃんには、ああいう人がお似合いね)』
ふと、爆豪君を見たら
眉間にシワを寄せて両手を力強く握りしめてるのを見て
鼻で笑ってやった
今更後悔したって、遅いのよ
小麦ちゃんがあんたに傷付けられた痛みは
こんなもんじゃないんだから
せいぜい後悔してろって睨み付けてたとき
「…ふ、ふぁ~~~~」
米澤「小麦さん!?」
「「「「「えぇーー!?」」」」」
『小麦ちゃん!!』
轟「小麦!!」
爆豪「_____!!」
いきなり崩れ落ちた小麦ちゃんに駆け寄ると
羽を広げた聖ちゃんが駆けつけてくれた
「小麦ちゃん!?」
米澤「い、いきなり倒れてしまって……」
「ちょっとごめんなさい!」
聖ちゃんの手から
エメラルドグリーンのオーラが放たれてしばらくしたら
驚いた表情をしていた
「急性のアルコール中毒…」
米澤「え?」
轟「もしかして…さっき飲んだのがそうなのか?」
焦凍君が持ってるグラスと同じ飲み物を手にとって飲んだ瞬間
はっきり分かった
『…これ、カシスオレンジね』
そういえば、前に小麦ちゃんと家で飲んだとき
個性の関係で一気にお酒は飲めないって
話してたのを思い出した
「…先ずお部屋で休ませてあげてください」
米澤「な、なら…スタッフ専用の宿泊部屋があるので
そちらで休んで下さい!」
『そうね…焦凍君、小麦ちゃん運んでくれる?』
轟「分かった」
さすがに脱力しきってる小麦ちゃんを
鍛えてなさそうな米澤君に運ばせるのは無理だと思って
焦凍君にお願いしたら
小麦ちゃんに触ろうとした焦凍君の腕を掴んだのは
爆豪君だった
爆豪「俺が運ぶ、こいつに触んな」
轟「爆豪…」
『(…ムカつく)』
小麦ちゃんを軽々と持ち上げた爆豪君にイラつくと
二人を追いかけた
*~**~*
ベットで寝ている小麦ちゃんを心配して見つめてたら
聖ちゃんが私達に声をかけた
「あの…私と爆君の二人だけにしてもらえませんか?」
緑谷「聖…?」
「…お願い」
緑谷「…分かった」
聖ちゃんならともかく
爆豪君も一緒ってのに納得したくなかったけど
聖ちゃんの真っ直ぐな瞳を見たら
反対なんて出来なかった
『…何かあったら連絡して?』
「ありがとうございます想さん」
米澤「あの…小麦さんを……よろしくお、お願いします!」
「はい、お任せ下さい♪」
静かに部屋から出た私達
緑谷君は外にいる皆に声をかけてくると走って会場に向かった
多分あの様子だと小麦ちゃんはもう働けないから
帰り支度をしようと思って米澤君に声をかけた
『小麦ちゃんの荷物が置いてある所に案内してくれる?』
米澤「は、はい!」
轟「…俺も行く」
『ありがとう…』
廊下を歩いてて思い出すのは
小麦ちゃんを運ぶ爆豪君の姿
両手を握りしめて前を向くと米澤君に呼び掛けた
『…いいの?』
米澤「え?」
『あいつに…小麦ちゃん取られてもいいのね?』
轟「想さん…」
米澤「…………」
米澤君は私に向き合うと寂しそうに微笑んでいた
米澤「…小麦さんが幸せなら」
『!!』
米澤君はまた前を向くと歩き出していて
悔しい気持ちを誤魔化すように俯きながら後を連いていった
スタッフルームに着いて係の人に事情を説明したら
小麦ちゃんの鞄と着替え等を袋に入れて渡してくれて
米澤君は聖ちゃんの代わりに働くからと
私達に頭を下げたら会場に戻った
動かない私を心配してくれたのか、焦凍君が声をかけてくれた
轟「大丈夫か想さん?」
『…何で今更、好きになってんのよ』
轟「…………」
『あいつが小麦ちゃんに今まで
どんな仕打ちをして泣かせてきたか分かってるくせに
…どの面下げて、王子様気取りしてるか意味が分からない』
轟「…想さん」
学生の頃は楽しそうに恋の話をしてくれたのに
大人になって恋の話題をしなくなった小麦ちゃん
たまたまテレビに映った爆豪君を見て
私に気を使わせないように
無理して笑ってる彼女はとても痛々しく見えた
そんな笑顔が見たいんじゃない
焦凍君と私の背中を押してくれた小麦ちゃんには
誰よりも幸せになって欲しいのに
轟「…失ってから気付くモンもあんだろ」
『!』
焦凍君に手を繋がれて握り返したら、優しく微笑んでくれた
轟「あいつも言ってたけど…小麦が幸せなら俺も嬉しい」
『…っ………分かってるけど……嫌なの』
轟「…頑固だな」
『…焦凍君に言われたくない』
知ってるわよ
爆豪君の話をしているときの小麦ちゃんは
楽しそうで幸せそうで、何より最高の笑顔を向けてくれるから
あの笑顔を作り出せるのは
爆豪君だけな事ぐらい分かってるから
余計に悔しいんじゃない______
*~**~*
小麦ちゃんの様子を見にいこうとしたら
途中で聖ちゃんと緑谷君と会って
一緒に部屋に向かっていたとき
「いやーー!!爆豪君のエッチーーーー!!」
爆豪「ってめェ!!まだ犯してねーだろがァ!!」
緑谷「「え……」」
轟「…おい」
『まさかあの男……』
急いで部屋に向かって走ったら
聖ちゃんが扉を開けてくれて部屋に入ると
爆豪君が小麦ちゃんに馬乗りになっていて
起き上がろうとする小麦ちゃんをベットに押し倒していた
「こんな場所で初めてのエッチが終わるなんて嫌ー!!」
爆豪「はぁ!?」
緑谷「かっちゃん最低ー」
爆豪「!?」
轟「そういう強引なところがあいつを傷付けるって
いい加減気付けよな」
爆豪「ンだと!!」
「小麦ちゃん怖かったね?身体は平気?」
「聖ちゃん……」
『本当…やっぱりこいつ嫌いだわ』
爆豪「ああ!?」
世の中にいるのね、生理的に受け付けられない奴
でもさっきの流れで二人がどうなったかなんて
容易に想像できてため息をついたら
聖ちゃんが小麦ちゃんにはっきりと伝えていた
「小麦ちゃん…まずはセックスについて
しっかり知識をつけとく必要があると思うの!」
「…え?」
『…そうね、何にも知らないよりはいいかも
性教育について、聖ちゃんから
しっかり教えてもらいなさい』
「えぇ!?」
爆豪「余計なことすんな聖!!
こいつにそー言うこと教えンのは俺だけの特権だァ!!」
「きゃあ!?」
「あ、爆君!!避妊はちゃんとするんだよー!!」
緑谷「聖!?こ、声が大きい!!」
『…妊娠なんてさせたら私が殺しに行く』
轟「物騒だな想さん」
小麦ちゃんをいきなりお姫様抱っこして
部屋から走り去っていく爆豪君を睨んでたら
泣いてる聖ちゃんを緑谷君が抱きしめていた
二人がやっと幸せになってくれて嬉しい
そんな思いが伝わって私も安心して焦凍君に微笑んだら
優しく微笑み返してくれた
*~**~*
焦凍君の運転で小麦ちゃんの家に着いたら
宅配ボックスに着替えなどを入れといたって連絡した
…まぁ、見るのは明日の朝かお昼頃だと思うけど
徐席の窓から見える都会の景色を眺めながら
焦凍君に話しかけた
『…焦凍君』
轟「どおした?」
『私ね……………焦凍君の赤ちゃん、産んでもいいわ』
轟「_____!!」
いきなり急ブレーキをかけた焦凍君に驚いたけど
それ以上に驚いて私を見つめる焦凍君が可笑しくて微笑んだ
『私の事、幸せにしてくれるんでしょ?』
轟「……ああ」
私を温かく包み込んでくれた焦凍君に、私も抱きしめ返した
生まれもった才能と美貌に恵まれαの私は
熱い情熱を秘めているΩの彼と
これからの運命に負けず立ち向かっていく
運命のオメガバース(轟ヒロイン) End