運命のオメガバース(完結) 連載ヒロイン、裏あり
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無言のまま廊下を静かに歩いてく私達
ここのホテルの見取り図は事前に把握してるから
焦凍君に指示を出しつつ安全でかつ近道を通るようにしていた
ふと、甘い匂いに足を止めたら焦凍君が振り返ってくれた
轟「どうした想さん?」
『匂うの…』
轟「匂う?」
『甘い匂い……この匂い何処かで嗅いだような』
「誰か…誰か来て……誰か____爆君!!」
轟「『!』」
思わず焦凍君と顔を見合わせると
急いで声のした方に向かって走った
いきなり扉を蹴るような音が聞こえて
その音と匂いを頼りに探してると
「小麦ちゃん!!!!」って声に慌てて向かったら
部屋の前で足を止めた瞬間、その光景に言葉が出なかった
轟「…お前ら…これ…どー言う事だ」
緑谷「…っ………」
爆豪「…………」
『…………』
ドレスが中途半端に脱げてる聖ちゃんの腕には
左頬を赤く腫らした気絶寸前の小麦ちゃんが倒れていて
その近くにいる男二人に見覚えがあった
一人はヒーローデク…緑谷出久
聖ちゃんが想い続けたβの幼馴染み
もう一人はヒーロー爆心地…爆豪勝己
小麦ちゃんが想い続けたα…聖ちゃんの運命の番
「…あ、あの!!」
『…焦凍君、小麦ちゃんの頬を冷やすから氷結を出して
聖ちゃんも…手当ては私がやるから早く服をただして』
何となく現状を理解して怒りが込み上げてくると
無意識に眉間にシワを寄せて
ゆっくり小麦ちゃんを起こした
焦凍君が氷を包んだハンカチ渡してくれて
お礼を言って頬に当てたら
冷たいのか痛いのか分からないけど
眉間にシワを寄せた小麦ちゃんの目がゆっくり開いた
「…想……さん?』
『…病院に連れてくわよ、いいわね?』
「…はぃ」
無理やり返事をさせた小麦ちゃんに申し訳なく思うけど
早く処置してもらおうと
ここの近くの救急病院を思い出していたとき
「私も一緒に行きます!!」
『いいえ、貴方達三人は来なくて結構よ』
「!?で、でも…私のせいで小麦ちゃんがケガを」
『そう、聖ちゃんが原因でそこの二人が喧嘩をしたなら
解決策を考えるのが妥当だと思うわ
それに…ヒーローの貴方達が一般人にケガさせるなんて
あってはならないんじゃない?』
「!!」
『どんな理由だろうと…貴方達がしたことを私は許さない』
「想…さん…」
轟「…………」
三人を睨みつけたら本気で怒ってるのが伝わったのか
三人は何も言い返して来なかった
ゆっくり小麦ちゃんを立ち上がせると
少しふらついた彼女の腰をしっかり支えて焦凍君に声をかけた
『焦凍君には申し訳ないけど此処にいてくれる?
そこの二人がまたバカな事しないように見張っててほしいの』
轟「分かった……小麦を頼む」
『ええ…行きましょう小麦ちゃん』
「…は…ぃ」
「……小麦ちゃん」
聖ちゃんの辛そうな表情が泣いてるように見えて
小麦ちゃんを見たら
痛いはずの頬を動かして聖ちゃんに微笑んでいた
「…だぃ…じょーぶ!……なか…なぃで?」
「!!……本当に…ごめんなさい」
緑谷「…………」
爆豪「…っ……!!」
『…………』
爆豪君は力強く両手を握りしめていて
眉間にシワを寄せながら小麦ちゃんを睨んでると
小麦ちゃんは俯いたまま爆豪君の横を通りすぎた
彼に視線を向けたらさっきまでの怒りが消えて
戦意喪失したみたいな抜け殻状態だった
バカな男…今更後悔したって仕方ないのに
俯いてる聖ちゃんと緑谷君を見たあとに
焦凍君を見たら目が合って
ゆっくり目を逸らしたら静かに部屋を出ていった
*~**~*
ホテルから近い救急病院でレントゲンを撮ってもらったら
顎も頬の骨も異常がなかった
左頬の火傷と切り傷を治療してもらって
私の車で小麦ちゃんの住んでるアパートに向かってる
窓ガラスを見つめる小麦ちゃんに優しく声をかけた
『…大丈夫?』
「はぃ…へーき…です!」
『痛いでしょ?』
「ぃたく…なぃです」
『…痛くないわけないじゃない』
「?」
『好きな人に殴られて…痛くないわけないでしょ』
「…………」
左頬にケガをしたなら相手は右利き
緑谷君も爆豪君も右利きだけど
緑谷君が女の子を殴るような人には見えないし
火傷って聞いて爆豪君の爆破の個性なら納得出来る
小麦ちゃんをチラッと見たらずっと窓の外を見つめていた
「ほんとに…ぃたく…なぃんです……ただ」
『ただ?』
「…こころが……っ……ぃたぃ……です」
『!!』
思わず車を止めて小麦ちゃんを力強く抱き締めたら
痛くて声が出せないぶん、大粒の涙を流す小麦ちゃんを
更に強く抱き締める
「…こんどこそ……ば、ばくごぅくんと……さよなら…します」
『まだあんな男のこと思ってたの?………馬鹿ね』
「…はぃ……ばかです……っ……おお……ばかです」
小麦ちゃんの覚悟が悲しく切なく聞こえた
彼女はバカじゃないから
今度こそ本当に諦める覚悟を決めたんだと思う
いつも研究所に来ては
彼との出来事を楽しそうに話していた小麦ちゃん
私からしたらお世辞にも楽しそうな内容じゃなかったけど
いつも幸せそうに話す彼女を私は知っているから
胸が締め付けられる
(「…分かった」)
何故か焦凍君の言葉を思い出した瞬間
私達の「運命の番」という繋がりがなくなったような気がした
自分から望んで選んだ結果なのに
どうして胸が張り裂けそうなくらい、痛いんだろう
④へ