運命のオメガバース(完結) 連載ヒロイン、裏あり
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今日明日とエンデヴァー事務所の方はお休みだから
オメガバースについて専念出来る
そう思って書類の整理をしてたら、ふと手を止めて
思い出すのは彼女…聖ちゃんだった
『どうして彼女…あんな悲しそうだったのかしら』
運命の番に出会うのは本当に稀で
会った瞬間、本能で惹かれあう
だから大概のΩとαはお互いを求めるハズなのに
『まぁ…私も似たようなものだけど』
自分の言葉に焦凍君を思い出して苦しくなると
扉のノックをする音に返事をしたら
まさかの人物に思わず驚いてしまった
『聖ちゃん?この時間はまだ学校じゃ』
「聖さんにお願いがあって来ました」
『…話を聞きましょうか、座って?』
「ありがとうございます…」
頭を下げてソファーに座った聖ちゃん
背筋がピンと伸びて礼儀正しい子だなって思いながら
冷蔵庫にあるオレンジジュースをコップに入れて渡した
太ももに置いてる両手が震えてるのを見て
声をかけようとしたら
「想さん…媚薬って持ってたりしますか?」
『…え?』
今、何て言った?
こんな真面目な子が媚薬って言ったの?
彼女の瞳は真剣そのもので冗談じゃないのは伝わった
『理由は?』
「…答えなくちゃダメですか?」
『当たり前よ』
「…っ…………」
俯いた彼女を見つめてたら、ゆっくりと顔をあげた
「彼に……私を抱いてもらいたいから」
『…その意味、分かって言ってるの?』
「はい…」
『その抱いてもらいたい相手は…運命の番じゃない人ね?』
「…想さん、私の話を聞いてもらえますか?」
『…勿論よ』
聖ちゃんはゆっくり話してくれた
小さい頃から好きだった男の子は幼馴染みのβで
私達が初めて会った日に初めてヒートを迎えた瞬間
運命の番に出会ってしまったらしい
運命の番は幼馴染みのβじゃなくて
もう一人の幼馴染みだったこと
そのαの幼馴染みに襲われそうになって嫌なハズだったのに
身体はその幼馴染みを求めてしまったこと
「私…運命の番なんていりません
私には彼だけ…出久だけいれば他には何もいらないんです」
『…………』
「でもヒートになったとき…Ωの宿命を思い知らされて
自分が怖くなったんです」
『…ちょっと試して見てもいいかしら?』
「え?あ、はい…」
聖ちゃんの話しに疑問が浮かんで
棚からある液体をコップに入った水に一滴入れて
聖ちゃんに渡した
『そのまま一気に全部飲んでみて?』
「はい…頂きます」
躊躇せずに一気に水を飲んだ聖ちゃん
少ししても全く反応がなくて驚いた
聖ちゃんは訳がわからない感じでソワソワしていたら
私を不安そうに見つめた
「あ、あの……一体何を」
『聖ちゃんにある液体を飲んでもらったの』
「液体…?」
『…ヒート促進剤』
「!?」
驚いて固まってしまった聖ちゃんに
確信を得たくて更にお願いをした
『少し気になることがあるの…少し血を貰っていいかしら?』
「え?あ、あの…どうぞ!」
聖ちゃんの腕から少し血を採らせて貰って色々調べたら
とんでもない結果が出てしまった
『待たせてもらってごめんなさい…簡潔に言うわ
聖ちゃんに媚薬は渡せない』
「!?ど、どうしてですか?」
『聖ちゃんの血を調べて分かったの
聖ちゃんのフェロモンが今…血液中に大量に巡ってる』
「…え?」
『普通のΩのヒートは「匂い」でαやβを引き寄せる
発情期は長くて一週間、短くても4-5日は必ず続くはずなのに
聖ちゃんは1日……いえ、それよりもっと短い時間でしか
ヒートが現れていないのよ』
「た、確かに…」
『おかしいと思って調べたら…フェロモンの分子が
血液中に巡っているの』
「…私のフェロモンは今、外に放出されているんじゃなくて
私の身体の中で放出されてるってことですか?」
『そうよ…それがどういう意味か分かる?』
「い、いえ………」
『フェロモンの影響で身体の中の至る機能が繁殖のために働く
要は今の状態で中出しされなくても
…セックスをしただけで妊娠する可能性が高いってことよ』
「…………」
『そんな状態の聖ちゃんに媚薬なんて渡せない』
「…いいんです」
『え?』
「例え妊娠したっていい…彼に抱かれたい
この気持ちがまだあるうちに…Ωの宿命に…運命に負ける前に
彼だけを想ったまま抱かれたいんです」
『聖ちゃん…』
「もし子どもが出来ても…両親を説得して必ず育てます
働き先も目星がついてます」
この子…最初っから妊娠する覚悟をしてたんだわ
何て強い覚悟なの
そんなに運命の番であるαの幼馴染みより
βの幼馴染みを思ってるなんて…
『…分かったわ』
「!」
引き出しの奥にある媚薬をほとんど捨てて
ほんの一滴程度の媚薬を聖ちゃんに渡した
『一滴でも速攻で効果の出る媚薬よ
飲み物と混ぜて飲ませみて?』
「ありがとうございます……あの、想さん」
『…何かしら』
「私…幸せです」
『…上手くいくといいわね』
「…っ……はい」
深く頭を下げて出ていった聖ちゃんを見て
唇を噛み締めると机を叩きつけた
『ごめんなさい……聖ちゃん』
あの媚薬の量じゃ長く持続は出来ない
聖ちゃんの気持ちは痛いほど分かる
でも相手の気持ちが分からないのに
聖ちゃんを妊娠させる手助けなんて出来なかった
運命で苦しんでる彼女を救いたかったのに
それが出来ない自分が情けなくて
両手を強く握りしめながら俯くことしか出来なかった
⑤へ続く