君がため 22

──数年後

武家上がりのものが貴族へとなった、その噂はたちまち宮中へとひろがる。しかもその者の見た目はかつて、この国をいや世界を支配して見せた…満月の君と似ているではないかと噂が広がった。
「…なんということじゃ……」口々に開くあのものの姿の美しきこと、紺青色の髪の毛がなんと鮮やかで1枚の筆によって滑らされた絵のような。
そして見たものたちは彼に異名を付けた、次から次へと貴族の作法を取りそして我がものとしていく。見るものをその瞳で惑わせ、時には甘い和歌でとろけさせ宵闇の夢を見せるものだと。

『新月の君』

「あのお方は新月の君じゃ」月夜のひとつ、でも我々人間からは見えないが確かにそこにあり人々を翻弄する存在。宵闇の姿を持ち、人を魅了するもの。
全ての光を持ち、全てを心酔させた満月の君の対と。…まさかあの検非違使のラディッツがなるとは思われなかった、しかも大伯父カリグラに次ぐ位に着いたのだ。

『内大臣』

摂政や関白になるために事前に継ぐ位。ラディッツはその位を受けて密かに笑った、これでやっと……皇嵐が手に入る。
さて位を受けたはいい、帝から呼び出しがかかる。
「…俺に?、あの場で言うこと言えば」
「……あのお方はカリグラ様の時からそうです、何かしらあるのでしょう」補助としてきてくれていたカリーの祖父…ナエがそう声をかける。
あの歌合の後、カリーは祖父を説得しに行っていた。これから貴族たちにもまれに行くラディッツを支えてやって欲しいと。 ナエは断ったが、一度!会うだけでいいから!!!と強く言われ孫の頼みならと引き受けてくれたのだ。
そして一度会い、何度か話せれる許可を貰い今に至る。
「……大伯父のか」
「ええ、ただあの方の場合堂々と喧嘩売られてましたがねカリグラさま」
「は??」
「帝が何か言われた時に、『ここは俺の世界だ』と」唖然、びっくりしすぎて何も言えない。大伯父はそんなことをしていたのか、なのに干されなかったのが不思議なくらいだが。そうならないように根回しでもしてたのだろうか。
いやもう仕方ない……、少しだけでも話せれるようにするかとため息を着く。
「今騒ぎを起こせば、武士の成り上がりがとコケにされるだけだ……上手く言葉をかわすぞ」
「それがよろしいですよ」ナエはラディッツの背中を見る、なるほど似ているのは見た目だけで中身はあまり…とおもった。
ラディッツは慎重に計画的に動く、己がどう思われてるかを正確に把握しつつだ。カリーいわくその頭が働かなかったのは皇嵐の時のみらしい。基本は頭脳派で動く、最近は歌合にも参加をして貴族の内内をしろうと奮闘されていた。カリグラを知るものたちからは驚かれていた、こんなに姿勢が低いものがいるのかと。
だが強く出る時は出る、何かしら決める時やそれこそ皇嵐のためならと言う時だ。貴族たちはこのものも、皇嵐様が好きなのかといえばラディッツは言い返した
『ええ……天上の姫のことを御慕いしております』早速と噂は広がる、新月の君はあの人を愛されていると。それは同時に皇嵐に恋するものをあぶりだしもしたが、牽制にもなったのだ。
あのカリグラの跡継ぎとならんとするものが狙っている、そばにいるのだぞと。敵はとにかく可能性あるものたちを消していく、正直言って不思議だ……あの検非違使をしていた頃よりイキイキしているのだから。
「帝には、俺が敵では無いと……言わなくてはなぁ」
「それの方がよろしいかと、敵対はもう少し力を掴んでからになさいませ」
「ああわかった、助かるぞナエ殿」
「……いいえ」ぱちんっとラディッツは黒い真っ黒な扇を閉じる、それはまるで彼が月のない夜の支配者のようだと知らせているようだった。
「これからは俺の……新月の君の統治をしなくてはなぁ?」ニヤリと笑うラディッツの笑みにナエは主カリグラを重ねた。
「(ああこの方は、カリグラ様と全く似てないと思ったが全てが欲しいと思うところは似てるのだ)」

見えずとも 誰恋ひざらめ 山の端に いさよふ月を 外にみてしか
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