君がため 19
月明かりが自分たちを照らす、薄暗く影が広がりまず最初にと手を互いに握り擦り寄りあった。
ああ……こんなに近くに愛おしい俺の女神がいる、歳が離れているものでごめんなさいねと言われるがそんなの構わない。自分はこんなにもあなたにほれた、中身にも歌にのる純粋な心も。
「……あなた、だったのね名無しの君は」
「…はい……」
「ふふふっ、まさか周りの警備もしてた貴方なんて。それは和歌も置いていけるわ」
「申し訳ございません、女人の部屋に侵入をしてはならないと思っていましたが…」
「いいのよ、こんなおばさんに興味を持つものはそうそういないわ」
「そんなことはありません、俺も……あなたの中身と芯の強さに惚れましたから」菖蒲や百合のような凛とした姿勢に、鈴の音のように美しい声。赤い瞳は艶やかで異国の宝石を思わせるほどで、ずっとみていたいと見惚れてしまう。
貴族たちとはなす時の姿もさすがは皇族と思わせるほどだ。彼女なら女帝になれるのではないか?、と錯覚する。何もかも包み込まれるような抱擁力、相手に寄り添える懐の広さ…傅いてしまうほどだ。
「ならば、あなたとわたし同じね」
「…ええ」
「公的にあなたが私に会えるようになるには、もっと…時間がかかるわ。そして結婚するにも」
「っ…!、それ、はそうですね」まさかの話にラディッツは頬を染めつつ口元を隠すが、ふと父バーダックのことばがよぎる。
己が養子として行く予定であったところ、大伯父の存在を。関白であった大伯父、彼は幼い頃の自分に跡を継がないか?と話してきた。その時は相手もする気ないし、まさか伝説上の存在であった大伯父が自分に話しかけてくるなんてと考えていたものだ。
皇嵐と結婚するためには、さらに上の立場になる必要がある。それこそ参議の位に。
「(今の俺では、そんな位に行くには夢のまた夢だ)」武官ではなく文官に、役目も変わる。それこそ大伯父のように貴族たちに物申せるほどにならなければ。
今の立場をかなぐり捨ててやるしかない。
「…ごめんなさいね、急かすようなことをいって」
「いいえ……俺も、それは考えてたことですから」さらさらと夜風が流れる、流星がつっぅーー…と流れてこれから先の道標を示しているようだった。
一息、ラディッツは息を吸って皇嵐の目に目線を合わせて言う。
「…あなたの隣に立てるように、粉骨砕身…尽くしてきます」
「その時には姫、どうか……俺と夫婦に」
「…ほんっと、あなたのその真剣な瞳。箒星のように輝いて見えるわ(そしてあの方とも似てる)」皇嵐はラディッツの手を握り、その桃色の唇を動かして誓いをたてた。力強く、赤い糸を絡め合うように。
「…あなたが、私の隣へと来た時には妻になるわ。…よろしくね、ラディッツ」
「その言葉、お忘れなく」そこからは互いにまた和歌を言い合ったり、話したりした。
瀬をはやみの和歌の話も、たとえ離されようとなんだろうと自分はあなたの元へと来るとラディッツは皇嵐に話した。月と太陽のように互いを支え合い、つむぎあおうとも。
白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ
わが恋ひわたるこの月のころを
「俺はあなたに次会うことを心待ちしながら生きていきますよ」
秋の田の穂の上霧(き)らふ朝がすみ
何方(いづへ)の方にわが恋ひやまむ
「私も…貴方を想って漂いながら待つわ」
ああ……こんなに近くに愛おしい俺の女神がいる、歳が離れているものでごめんなさいねと言われるがそんなの構わない。自分はこんなにもあなたにほれた、中身にも歌にのる純粋な心も。
「……あなた、だったのね名無しの君は」
「…はい……」
「ふふふっ、まさか周りの警備もしてた貴方なんて。それは和歌も置いていけるわ」
「申し訳ございません、女人の部屋に侵入をしてはならないと思っていましたが…」
「いいのよ、こんなおばさんに興味を持つものはそうそういないわ」
「そんなことはありません、俺も……あなたの中身と芯の強さに惚れましたから」菖蒲や百合のような凛とした姿勢に、鈴の音のように美しい声。赤い瞳は艶やかで異国の宝石を思わせるほどで、ずっとみていたいと見惚れてしまう。
貴族たちとはなす時の姿もさすがは皇族と思わせるほどだ。彼女なら女帝になれるのではないか?、と錯覚する。何もかも包み込まれるような抱擁力、相手に寄り添える懐の広さ…傅いてしまうほどだ。
「ならば、あなたとわたし同じね」
「…ええ」
「公的にあなたが私に会えるようになるには、もっと…時間がかかるわ。そして結婚するにも」
「っ…!、それ、はそうですね」まさかの話にラディッツは頬を染めつつ口元を隠すが、ふと父バーダックのことばがよぎる。
己が養子として行く予定であったところ、大伯父の存在を。関白であった大伯父、彼は幼い頃の自分に跡を継がないか?と話してきた。その時は相手もする気ないし、まさか伝説上の存在であった大伯父が自分に話しかけてくるなんてと考えていたものだ。
皇嵐と結婚するためには、さらに上の立場になる必要がある。それこそ参議の位に。
「(今の俺では、そんな位に行くには夢のまた夢だ)」武官ではなく文官に、役目も変わる。それこそ大伯父のように貴族たちに物申せるほどにならなければ。
今の立場をかなぐり捨ててやるしかない。
「…ごめんなさいね、急かすようなことをいって」
「いいえ……俺も、それは考えてたことですから」さらさらと夜風が流れる、流星がつっぅーー…と流れてこれから先の道標を示しているようだった。
一息、ラディッツは息を吸って皇嵐の目に目線を合わせて言う。
「…あなたの隣に立てるように、粉骨砕身…尽くしてきます」
「その時には姫、どうか……俺と夫婦に」
「…ほんっと、あなたのその真剣な瞳。箒星のように輝いて見えるわ(そしてあの方とも似てる)」皇嵐はラディッツの手を握り、その桃色の唇を動かして誓いをたてた。力強く、赤い糸を絡め合うように。
「…あなたが、私の隣へと来た時には妻になるわ。…よろしくね、ラディッツ」
「その言葉、お忘れなく」そこからは互いにまた和歌を言い合ったり、話したりした。
瀬をはやみの和歌の話も、たとえ離されようとなんだろうと自分はあなたの元へと来るとラディッツは皇嵐に話した。月と太陽のように互いを支え合い、つむぎあおうとも。
白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ
わが恋ひわたるこの月のころを
「俺はあなたに次会うことを心待ちしながら生きていきますよ」
秋の田の穂の上霧(き)らふ朝がすみ
何方(いづへ)の方にわが恋ひやまむ
「私も…貴方を想って漂いながら待つわ」
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