君がため 17

歌合がおわり、華やかな交流を祝うための宴が行われる。今回、身分問わず呼ばれたものもいるため奴隷の立ち位置に近くとも歌がよめたものはと抜擢されて位持ちに今回挙がったものもいる。
ラディッツも、今回あの武骨者バーダックの子でありながら言葉の選びが緻密であり繊細で風流者だと名前があがった。このような者がいるとは、とそしてあの──カリグラと似た眉目秀麗さまるで木蓮の花のような整い白雪のような肌をもち夜空の闇を宿す髪が似合うと。
「なんとまぁ…白磁のような肌ですこと」
「あの武辺者の長子ですと!、たしかに身体も大きい…ですがなんと綺麗な指ですか」女房達が照れた感じにラディッツについて話をしている。黒の束帯がなんと似合うことか、と。皇嵐も御簾ごしにながめながら、ラディッツの盃をあおぐすがたをみつめた。
なんと…美しい事か、そして彼にそっくりなのかと。親子ではないのに、親戚なのに。近づこうとする女房や男もいる、ラディッツはそれに優しく微笑み対応しては距離を取りターレスの元へと向かっていた。
遠くでちゃんと見えないが、姿はぼんやりと見える…皇嵐はごくりと固唾を飲みこみカリーへと声をかけた。
「カリー……」
「なんだ?皇嵐」
「……今宵、ラディッツを……私の元に呼んでちょうだい」帝には内緒よ?、と皇嵐は付け加えて。話しを、話をしたい……きっと話せれるには今回しかないのだから。
この男を、捕まえておきたいと心が高鳴る。あの綺麗な男ともっと、話をしたいと。でもこの場ではきっとたくさんの人たちが彼に話しかけて己がしたい話をできない。
あの名無しの君は、あなただったのかと言うことと先程の和歌についても。私への気持ちなのだろうか、と。あんなに熱烈で死んでも死にきれない、あなたに会いたいとこいねがうラディッツの歌を聴くと心が高鳴り世界が彩られるから。
もっと、もっと話しをしたい……限られた時間だとしてもあなたと話し心を分かち合いたい。
「せっかくの叔母さんの頼みだ、いいぜ!。俺からラディッツに伝えておいてやるよ」
「…ありがとう、助かるわ」太陽のような煌めきをもち笑うカリーに、皇嵐は頼りになるわと微笑んだ。この子も大きくなったものだ、元々わんぱくで人懐っこい性格をしてみなみなから好かれていたがここ最近磨きがかかったように思う。
そういえば…カリーもカリーで、カリグラに憧れ本当に幼い頃追いかけていたようなとふと思い出した。あの男は本当に至る所でみなに刺激を与えてる気もする。
「…あのラディッツ、と呼ばれる男は満月の君に似てるのかしら」
「そうだなぁ~…性格、というのではあまり。だけど…人を見る目やいざと言う時の覚悟と決意はそっくりだと思うよ」
「あとは、皇嵐が話してみてくれよ。実際に話した方がもっとわかることもあるって」カリーからの言葉に皇嵐はそうね、と静かに答えた。他人から聞いたものだけではダメだ、自分でちゃんと……勇気を振り絞って話しかけて見定めなくてはと。
ラディッツがどのような男か、そしてあのカリグラのように自分のことを見てくれるのかどうかを。でもきっと…、彼は彼なりの形で自分のことを見てくれるのかもしれない。命を全てささげようとするほどに、追いかけてくれた名無しの君ならばと。
──
「……なに?、皇嵐が俺を??」宴も終盤となってきたころに、ターレスに引っ付いてたラディッツにカリーはこっそりと声をかけにと向かった。
みなみな酔っ払っているせいか貴い者の自分が歩こう時にせず、寝っ転がっていたり笛を鳴らし踊っていたりと好きかってだらけだ。さすが酒、人の本性を露わにして気分を盛り上げてくれている。
「でかしたじゃねえか、ラディッツ」
「ターレスの言う通り!、やっっとおめ通がかなったぜぇ~?。もう少ししたら皇嵐が離の所へと行く、そこから時間をずらしてお前も彼女に会いに行ってこいよ」カリーからの天啓のような言葉にラディッツはことばをうしない、うっかり盃を落としてしまいそうになり本当にか!?と聞き返してしまう。
今回の歌合であわよくば、と思いはしていた…だがまさか本当に皇嵐に直に会えるとは思わなかったのだ。先程の和歌で自分だと気づいてくれたのだろうか。チラリ、と訴えを込めてカリーを見れば親指を立てて正っ解!といってくる。
「もしや、というので目をつけたのさ!。だからラディッツ、お前の訴えがまぁぁーじで皇嵐に伝えれてたのよ!!!、な!?」良かったじゃねえかー!と両サイド2人から肩をバシバシと叩かれて、ラディッツは軽く咳き込むが顔が酒ではない恋の酔いで赤くなることを察知する。
もう、訳が分からない……1目会えたらと思っていた本当にそれがこんなにはやくとは。ああならば、また…この苛烈な恋心を伝える覚悟をしなくては。
月が雲へと覆われていく、今宵もしかしたら一雨来るかもしれない。どうか…この胸の高鳴りを隠して欲しいとラディッツは心の底から願った。
だが同時に、想いが通じてあなたのことをさらわせて欲しいとも矛盾した心を抱いた。

月はただ むかふばかりの ながめかな 心のうちの あらぬ思ひに

月をただながめています ただ、それは心の中にいる恋するあなたをただただずっと眺めているだけですよ
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