君がため 15
歌合当日───
やれ、次なる帝へと近いものへと媚びを売ろうと貴族そしてはたまた武士までが彼の殿へと集まりあそばせた。
なかには地方から来たものまでもいて、この歌合がただのものではないことが語られる。
「あの姫様も来られたらしいな」ワラワラと貴族たちが派閥ごとに集まり裾でうちあわせ、ヒソヒソと話し始める。
帝に気に入られし女、そして親戚…あわよくばその中へと入りたいとみなみな思っているのだ。
そのなかラディッツはすみでターレスと二人…あきれたとためいきをつく。
「どれもこれも権力に執着した奴らばかりか」
「それがむしろ当たり前さ…、カリーとあの姫様。どちらかに気にいられてしまえばたちまち政治に参加できる大物になれる。あわよくば、と思うだろ?」
「お前もその口か」
「違うね、そもそもオレは……カリーに暇つぶしにと呼ばれただけだからな」
「はっ!、それは表向きでカリーに近づく畜生を潰したいだけだろ??」な!!??、とターレスはラディッツのはいた言葉にびくりと肩を震わせてしまう。そのあからさまな反応にラディッツは動揺してるな、とニヤリと口角をあげた。
「おいおい…、俺に見抜かれないと思ったか?。おまえが幼い頃からカリーに惚れてるとはとっくの昔から知ってたぞ」
「…お前、言わなかっただろう」
「言えばめんどくさいことに巻き込まれると思っていたからな、それにカリーがあまりにも気づかなさすぎて気づかなさすぎて…」ターレスはカリーに身分差の恋心を抱いていた、いくら上に行こうがカリーは王家の一族そして母方の祖父はあの満月の君の側近。
まさに選ばれしサラブレッド、と言われてもいいほどの立場であり気軽に手なんぞ触れられないほどのものなのだ。
だが、カリーの大柄さで友としてあることを許されている。そのおかげでこのように話せたり、隣で酒を飲みかわしたりとやれている。だからターレスにとってはこれ以上を望むことなど、烏滸がましい。
「……そう、だな」
「俺はなんとも言えないが…、お前が望むならばやれることを全てやりきればいいのではないか」
「はっ、さすがは本家は関白の出自…言うことの規模が違うぜ」
「だがそれは俺のではない、俺は」シャランっ、と軽やかな音が聞こえてくる。それと同時に皇子のつかいのものたちが現れ道をつくる。
みなみな膝をつき、高貴なる方々を迎え始めた。
「…皆々、よくぞ来てくれた」御簾ごしにカリーの幼なじみの声が聞こえてくる、その横ではうっすらとうつる華やかな扇子を持つ女がいた。
皇嵐だ、あの綺麗な手とその扇子は間違いなく皇嵐だと目がとらえる。仕事口調のカリーのことなんかどうでもいい、彼女の皇嵐の動きが気になって仕方がない。
「──そこで我が叔母も来てくれた、一言…」
「…今宵の歌合、非常に楽しみにしているわ。そろって表現してちょうだい」ああ、あなたは変わらず美しい。その言葉に仕草に心が高鳴ってたまらない。
ターレスからの視線を感じながらも彼女に見惚れ、そして先程の言葉の続きをラディッツは小さく申した。
「…俺は、俺として彼女の心に記憶に残りたくてたまらないのだ」あなたの記憶に残り、そしてあなたの心に刻み…自分という存在を残していきたい。
「…大伯父を超えていく、ってか?」
「…超えれるかわからん、だが──何かしらは残していくつもりだ」バッ、と立ち上がり歌合の席へと向かっていく。
赤い大伯父がのこしていった束帯を身にまといその青い夜空の衣をまとう髪を揺らして。
「そうかよ、見届けてやるぜ今回は」
「ああ、お前も…とっととカリーに伝えろよ」
「はいはい、お前の大健闘の結果によってはしてやるよ」その瞬間2人はかつての幼い頃に戻ったかのように笑い合い、拳を合わせあう。
カリーもそれを御簾越しにぼんやりと見て楽しげに口角を幼子のように笑いをこぼした。
「みてくれよ、あの肌が褐色に近いやつが俺の幼なじみのターレス!。んで、あの髪の長い男が─」
「ラディッツ、よね?。カリー」
「そうそう……、遠目でもわかるだろ。一目を惹く綺麗な髪に姿、お前のお目にかかればいいけどさ」
「…叔母をからかうんじゃないわよ、カリー……(すぐわかったわ)」
「名無しの君……」あなたが、あのお人ではないこと願ってしまっている自分がいる。
そして…あのお方のように美しくも苛烈な歌をききたくてたまらないのです。
やれ、次なる帝へと近いものへと媚びを売ろうと貴族そしてはたまた武士までが彼の殿へと集まりあそばせた。
なかには地方から来たものまでもいて、この歌合がただのものではないことが語られる。
「あの姫様も来られたらしいな」ワラワラと貴族たちが派閥ごとに集まり裾でうちあわせ、ヒソヒソと話し始める。
帝に気に入られし女、そして親戚…あわよくばその中へと入りたいとみなみな思っているのだ。
そのなかラディッツはすみでターレスと二人…あきれたとためいきをつく。
「どれもこれも権力に執着した奴らばかりか」
「それがむしろ当たり前さ…、カリーとあの姫様。どちらかに気にいられてしまえばたちまち政治に参加できる大物になれる。あわよくば、と思うだろ?」
「お前もその口か」
「違うね、そもそもオレは……カリーに暇つぶしにと呼ばれただけだからな」
「はっ!、それは表向きでカリーに近づく畜生を潰したいだけだろ??」な!!??、とターレスはラディッツのはいた言葉にびくりと肩を震わせてしまう。そのあからさまな反応にラディッツは動揺してるな、とニヤリと口角をあげた。
「おいおい…、俺に見抜かれないと思ったか?。おまえが幼い頃からカリーに惚れてるとはとっくの昔から知ってたぞ」
「…お前、言わなかっただろう」
「言えばめんどくさいことに巻き込まれると思っていたからな、それにカリーがあまりにも気づかなさすぎて気づかなさすぎて…」ターレスはカリーに身分差の恋心を抱いていた、いくら上に行こうがカリーは王家の一族そして母方の祖父はあの満月の君の側近。
まさに選ばれしサラブレッド、と言われてもいいほどの立場であり気軽に手なんぞ触れられないほどのものなのだ。
だが、カリーの大柄さで友としてあることを許されている。そのおかげでこのように話せたり、隣で酒を飲みかわしたりとやれている。だからターレスにとってはこれ以上を望むことなど、烏滸がましい。
「……そう、だな」
「俺はなんとも言えないが…、お前が望むならばやれることを全てやりきればいいのではないか」
「はっ、さすがは本家は関白の出自…言うことの規模が違うぜ」
「だがそれは俺のではない、俺は」シャランっ、と軽やかな音が聞こえてくる。それと同時に皇子のつかいのものたちが現れ道をつくる。
みなみな膝をつき、高貴なる方々を迎え始めた。
「…皆々、よくぞ来てくれた」御簾ごしにカリーの幼なじみの声が聞こえてくる、その横ではうっすらとうつる華やかな扇子を持つ女がいた。
皇嵐だ、あの綺麗な手とその扇子は間違いなく皇嵐だと目がとらえる。仕事口調のカリーのことなんかどうでもいい、彼女の皇嵐の動きが気になって仕方がない。
「──そこで我が叔母も来てくれた、一言…」
「…今宵の歌合、非常に楽しみにしているわ。そろって表現してちょうだい」ああ、あなたは変わらず美しい。その言葉に仕草に心が高鳴ってたまらない。
ターレスからの視線を感じながらも彼女に見惚れ、そして先程の言葉の続きをラディッツは小さく申した。
「…俺は、俺として彼女の心に記憶に残りたくてたまらないのだ」あなたの記憶に残り、そしてあなたの心に刻み…自分という存在を残していきたい。
「…大伯父を超えていく、ってか?」
「…超えれるかわからん、だが──何かしらは残していくつもりだ」バッ、と立ち上がり歌合の席へと向かっていく。
赤い大伯父がのこしていった束帯を身にまといその青い夜空の衣をまとう髪を揺らして。
「そうかよ、見届けてやるぜ今回は」
「ああ、お前も…とっととカリーに伝えろよ」
「はいはい、お前の大健闘の結果によってはしてやるよ」その瞬間2人はかつての幼い頃に戻ったかのように笑い合い、拳を合わせあう。
カリーもそれを御簾越しにぼんやりと見て楽しげに口角を幼子のように笑いをこぼした。
「みてくれよ、あの肌が褐色に近いやつが俺の幼なじみのターレス!。んで、あの髪の長い男が─」
「ラディッツ、よね?。カリー」
「そうそう……、遠目でもわかるだろ。一目を惹く綺麗な髪に姿、お前のお目にかかればいいけどさ」
「…叔母をからかうんじゃないわよ、カリー……(すぐわかったわ)」
「名無しの君……」あなたが、あのお人ではないこと願ってしまっている自分がいる。
そして…あのお方のように美しくも苛烈な歌をききたくてたまらないのです。
