君がため14

─歌合前日(ラディッツと会う前)─
「ねえカリー…、今回の本当に私が出ていいの?」御簾越しに皇嵐はカリーと対面して明日の歌合についての不安を吐露した。
「皇嵐よぉ、もう前日ってのになぁーにいってんのよ?。皇嵐が探してる、って言ってる名無しの君のやつにも貢献できるかなと思って誘ったんだからさー」
「そっそれは……」皇嵐はカリーのことばにうっ、とおされてしまう。そう皇嵐は宮中の内側も外側も知るカリーについぽろりと彼のことについてこぼしてしまっていたのだ。
何かしら彼なら情報を持っているのではないか、とおもってそしたら今回の歌合の件について彼から提案が来たのだ。せっかくだから参加して皇嵐当人が探してみないかと。
顔も見合せてないのにここまで彼女が夢中になっているのだ、これは身内として手伝ってあげたいと思うもの。
「あんたがここまでさ夢中になってんじゃん?、まっ軽い気持ちで参加しなよ」
「カリー……」甥っ子の言葉に皇嵐は言葉を飲み込み、覚悟しようと目を閉じて開きわかったわと答える。
彼がせっかくなら、と用意してくれたものなのだ。もしかしたらいないかもしれない、だがもしかしたら……そのような甘い夢のようなことを考えてしまう。歳も歳なのに。
「…そうね、やってみないと分からないわね。ありがとう、カリー」あなたがいうなら、それに可愛い甥っ子からの提案だ。さすがに断りすぎるのも無粋というものだろう。
皇嵐は鮮やかな扇を開けては閉じる、何回か重ねてその柄を見た……鮮やかな青空の元清廉な睡蓮が咲いている風景画あの人が…満月の君と言われたカリグラがくれたもの。
『あなたにお似合いだと思って──』そう言い、あの優しく揺れる赤い焔の瞳で自分を見てくれた。
「カリグラ…」あなたは今どこで何をしているの、いなくなってはや幾年…死んだようには思えない。私の初恋の人、歳が離れていても惚れてしまった相手。
「皇嵐?」在りし日の記憶に浸っているとカリーが不審に思ったのか声をかけてきた。
「どうしたんだよ、ぼーっとして」
「な、なんでもないわ!…少し昔を思い出していただけよ」
「そっか、あっあの歌合客としてターレス出てくるからー。皇嵐久しぶりじゃねえかな会うの」
「あらそうなの!、…随分大きくなったでしょうねあまり会う機会なかったから」ターレス…、下級貴族でありながらもカリーの元すくすくと育ち成り上がってきた男。
実力は申し分なく特に外交においては群を抜いていいものを持っている、独自の組織を持っておりそこで行われる商売はいいもので民や貴族たちからも人気だ。
女房を通してではあるが、皇嵐もターレスのところでクシを購入したりとしていたことがある。そのターレスとは会えるとは、御簾ごしになるかもしれないとはいえ楽しみだ。
「そーだな、俺はこれからあとあいつともう1人のやつと会って酒飲むからさ」
「もう1人?」
「ラディッツだよ、…皇嵐のとこの護衛として今いるんじゃないっけ。ほらバーダックの息子の」ラディッツ…、それはココ最近聞いた名だ。そうだ自分の女房としているチチの義理の兄だと。
「あの人、バーダックさんの息子なの…?」待て、今バーダックと言ったか。あの男は確か…そうカリグラの弟の息子だ。弟ユリウスが連れてきてあったことがある。
どこかカリグラの面影があるような顔つきだったと。ラディッツはそのバーダックの息子…、なのに大伯父の立場となるカリグラにそっくり。これはもしかして、もしやと皇嵐の胸が高鳴る。いやまさか…でも、もしそうならと。
「ラディッツ……(彼が名無しの君だとしたら…?)」なんと数奇な話なのだろうかと、遠いとはいえ初恋の男と似た彼から手紙を貰っていたとしたら。
その男とやり取りをしていたとなれば…、歳も重ねたのになんと恥ずかしいことか。今初めて恋をした時のような胸の高鳴りを感じてしまっている。
「ああ、見た目もいい文字も綺麗。所作も綺麗なヤツだぜ、オマケにあの満月の君の若い頃にそっくりな顔立ち!。…俺の中ではあんたが言う名無しの君の第1候補だけど、どうよ?皇嵐」
「…そう、なのね。あなたが推すならば楽しみだわ」歳もかなり彼とは離れてたはず、一回りを少し超えるほどには。
光源氏も驚きの恋になりそうね…、皇嵐はこれから迫る未来にこころをたかならせていた。

古りにし嫗にしてやかくばかり恋に沈まぬ手童のごと

年老いた私はこんなに深く貴方に恋して、まるで幼児のように恋にうつつをぬかしていますのよ
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