君がため8

※平安時代?パロ


大伯父との出会い

「ラディッツ、伯父に会いに行くぞ」幼い頃、唐突に父バーダックがそういってきた。幼い自分はなんだ、となりつつ読んでいた巻物から目を離し父を見る。
「おじ…?、俺の??」
「ちげぇよ、オレのだ。あー、てめぇにとっては大伯父か?」なんでも父の父…祖父の兄らしい、そういえば母から話を聞いたことがある。
なんでも、自分にそっくりでとても大きいお方だと。そしてあの人にぶっきらぼうな父が、唯一尊敬し『伯父上』と慕っているとも。自分が生まれた時も早くに来て、祝ってくれたりしてくれていた人だとも。
だが、ラディッツ本人は記憶にない。ゆえに御伽噺の役者のような存在だと思っていたのだ。あの父が、人を本気で敬うなんてとも。
「そんな急にいわれても…、親父が尊敬する人なんているのか?」
「テメェ…!、一丁前に…!!。伯父上が時間がやっとできたと言ってきたんだ、早く着替えていくぞ!」
「……わかった」あの親父がソワソワしている、祖父には度々会ったが親父と違いどこか穏やかな人で口の悪い父をたしなめるような人だった。
あれの兄…、しかもじぶんともにている。どんな人か想像もつかず落ち着かず、とりあえず着替えてラディッツは父と共に牛車へとのった。
カタカタと車輪の音を聞きながら向かう、父は窓から外を見ながら自分以上に落ち着かないようだった。
「…親父、その……大伯父はどんな人なんだ」
「あ?、伯父上か??」
「俺は会ったことないし…、おふくろから話ししか聞いたことない。だから、その、分からなくて…」
「…天上人だ、一言で言えばよ」
「天上人…?」
「この世界を、空間を全て支配したようなお人だ。武力もあり、政治力もある。なにより人望も…オレが唯一負けちまった人だしよ」
「オヤジが?」負け知らずのようでよく六波羅の人達ですら負かす親父が。
その大伯父…カリグラには負けるというのか。
「和歌も上手く、文のセンスもある…なによりその空間すら掌握するほどの圧。あの方がいる空間は引き締まりやがる…、オレもしっかりしねえとって思うぜ」語る父の顔はどこか誇らしげで、でもどこか恐れていそうだった。
そして…とらえられてそうな、あの父がここまで人に心酔するなんてと。
「あの人に勝ちてぇ、オレの…誇りとしてよ。男としての在り方、そして見せ方を全てわかってるようなお人だ。てめぇも会えばわかるさ、オレたち一族のご当主さまによ」そう父が語る言葉に会わせるように、外の雰囲気が変わった。でかい障壁に桃源郷のような絵が書かれ、まるで極楽のようだ。
桃の木に松や様々な植物たち、そして鶴が飛び交う…もしかしてと思うと父はついに入ってきたなとつぶやいた。
「ここが、伯父上の領地のとこだ…人によっちゃあ極楽の地なんて言われてるぜ」門の前に来てはいると、豪華な衣装を来た人々が待っていたかのように左右にわかれならび自分たちを迎え入れる。
「(俺たちより良さそうなの着てる…)」ごくり、と固唾を飲み込み光景を見ているとおらおりるぞと父から話される。
「…ナエさん」降りると父が黒髪のクセのある髪をした男に話しかけた。そのものは黒の束帯を着てきっちりとした雰囲気をしている。
「これはこれは…バーダックさん、お久しぶりです。随分と大きくなられて」
「へへっ、それは…伯父上は?」
「お待ちになられてますよ、久しぶりに会われるからとあなたは…」
「っっ…!」鋭く目を向けられて、びくりとして父の背中に隠れるとおいっといわれだされる。
「こいつは、オレの息子ラディッツです。久しぶりに伯父上に会わせたいとおもって」
「ああ、カリグラ様のお気に入りの……それはさぞかし喜ばれるでしょ」カリグラ様のお気に入り…?、突然の言葉にぱちくりしていると着いてきてくださいと言われ父に手を引っ張られながら屋敷の中へと入っていく。
大伯父の屋敷はとにかく広く、豪華だった細かい装飾に部屋部屋の数。おまけに庭の種類…、父についてきてみた帝の内裏と比べ物にならないほどだった。
なんなら祖父の大きい屋敷が小さく見えるほどに、こんな広いところに住む大伯父とは何者なのだろうとラディッツはよりおもった。
「伯父上は相変わらず各国とやり取りを?」
「そうですね…、相も変わらず奔放に。昨今は瑠璃の陶器にハマられたりされて…」父の似合わない敬語に寒気を覚えながら話を聞きつつ、歩く。あの親父がこんなに人に話すとは…、よほどその伯父が好きなのだと改めて感じた。
風神雷神が描かれた間へと入り、上座へと目線を向ける。そこにも雲龍の絵が描かれ、子供でもわかるほどの金や銀の美しい彩りがあった。
「キレイだ…」
「伯父上の目利きは職人顔負けだからな」自分のことでもないのに父はどこか嬉しそうに言う。
そういえば、自分の仲間が褒められた時もぶっきらぼうながらもどこか嬉しそうにしていたことがある。そのような感じなのだろうか。
「親父、トーマさんが褒められた時より素直だな」
「何が言いてぇ!、ラディッツ!!」
「相変わらず…ツンデレしているのか?。バーダック」目線をそらし、知らぬ顔をしていると自分たちが入った所とは反対の方から声がしてきてラディッツはそのものの姿に目を奪われた。
「息災だとは聞いていたが、くくっ……思ったよりだな」ナエとおなじ黒い束帯、だが金糸で龍が彩られている。下の方には紅い曼珠沙華の花…、婆娑羅者のような鮮やかさがありながらも纏まりがあり父の言う通り天上人を思わせるようだ。
何より彼の見た目、黒く艶やかな髪に龍のツノ。そして、左右違う目の色…左の赤は焔のような炎神を彷彿とさせるものだ。これが神、全知全能そう思わせるほどの威厳がある。
自分と似ている…?、とんでもないと思わせた。こんな、神の造形物直接のものと思わせるほどの男がと。
「(親父が、引き寄せられるわけだ)」束帯からでもわかるほどの筋肉に、武芸の極みと思わせる歩き方。
見るものによっては彼が芸達者であり、極みの域にいると分かる。
「表をあげろ…、ほぉバーダック。もしやその後ろにいる小童……ラディッツか?。久しいなー!、いやだが俺が直接会ったのはお前が生まれてのくらいか!!分かるわけないか!俺のこと」
「……赤子の頃なんか、記憶にないので」
「ラディッツっ!」自分の言葉に父は失礼だろ!、と注意をするがぷいっとラディッツは顔を逸らす。
こんな、こんな完璧な大伯父のどこが自分と似てると言うのか。幼いながらも圧倒的な男におされてラディッツはへそをまげる。
すると、大伯父はくくっと笑ったかとおもうと突然己と同い年くらいの子のような笑い方をする。
「あーははははっ!、面白い!面白いなぁ!!ラディッツ!!!。いやそうだ!、なんてやつだこの俺に対しての口は!。くくっははっ!」
「??」
「お前は、バーダックにそっくりだなっ……いや俺にも似てるか…あはははっ…!ここまで笑ったのは久しいぞ!!。いい、良いぞラディッツ…やはり気に入った」
「気に入った…?」
「…褒美をやろう、ナエ」はっ、とそばに控えたナエが間から出てどこかに向かう。
ラディッツは何が起きたか分からず、目をぱちくりとさせていた。そうこうしていると、ナエは多くの刀剣たちを家来たちとともにもってきて自分たちの前へと並ぶ。
「伯父上…、これっ業物じゃないですか?。すべて」
「ああそうだな」ぱちんっと、黒く満月の書かれた扇を開いたり閉じたりして語る。
「どれもこれも俺が若い頃から集めていた収集物だ…好きなものを持っていけ」豪華な拵えのさやに業物……、到底自分たちでは手に入れられないものたちまである。
「っ…なら全部、全部貰います」やはり、父は驚いたように見てくる。だが好きなものを持っていけ、と言ったのだ。ならば全てでよかろう。
「好きなものを、と言われたので」
「くくっははは!、良かろう!!。だがすべてもちかえるのはちと苦労するだろう。荷車にて、俺が届けさせよう……そうだバーダック今日は泊まって行くか?。俺も時間が取れたゆえ、お前と久しぶりに酒を飲みたい」
「え、…よければっだがこんな良いものまで貰って」
「構わぬ、ラディッツはお前の子だろ。俺にとっては孫のようなものだ、…将来が楽しみだ。離れの間をあけさせよう今日はそこに泊まってゆけ」
「ラディッツも、この爺と話してくれぬか?。付き合ってくれれば、お前にこの先から少し離れた土地俺のを分けてやる。6000石ほどな」
「はぁ!?、俺に!!??」まだ幼子である自分になんてものを受け取らせるのだ、こいつは!と驚く。たかだかはなしにのるくらいで。
「なにを驚く、おまえはバーダックの子だろ…先程の話しぶりや俺に対する度胸。感嘆した、だからこそのだ」
「お前の将来にも役立つと思うぞ?、管理のことはバーダックやここにいるナエに聞け。…お前が裕福に暮らしていくためにもな」
「伯父上っ!、オレならまだしもラディッツにまでっここまでするのは」
「言っただろ、なんだバーダック。お前も驚くか?、…俺には妻子が居ないことお前は知っているだろ。勝手ではすまんが、もし将来…という話でだ…分かったか?」
「…分かり、ました……」
「良かろう、では部屋に案内されて行ってこい。その後、語り合おうでは無いか…ラディッツもな」
「……」部屋から出る大伯父の後ろ姿に驚きながらもラディッツは見る、大きくそして孤独な背中。
ー俺には妻子が居ないー、それはどうしてだろうと幼くも思った。そして将来、という話。

「今思うと…あいつ、俺に継がせる気だったのか…?」とんだ大伯父だな、とラディッツは夕焼けの空を見ながら思い出していた。
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