あなたが初恋でした

人肌があれば寝れる人もいる、と噂を聞いて当時おれは兄と寝ようとしたけどその度に冷たい目で睨まれて避けてたんだっけ。
「俺は寝る、てめえはとっとと飯食いにでもいけ」
「兄ちゃん、せめてベットで…」
「寝るつってるだろうが、聞こえねえか??」うっ、となりわかったよとおれはこたえた。
少しすると兄の寝息が聞こえてきた、ああほんとに寝たんだ……このときのおれはいま思うととんでもないことをしたなとおもう。兄貴は気づいてたかもだけど…おれが嫁にいえなかったこと。
いつかある来世でもおれはこの思い出を抱えて生きようと思ったこと。幼いながらの兄の綺麗な寝顔を見て、すこしせのびをしていたおれは兄貴の唇にキスをしてしまったんだ。
何でしたか、なんてこまけぇことは分からない…ただしたくなった。
「~~!(しちまった)」幼いゆえに少しプクりと膨らんだ兄の唇、あまい果実みたいに思ってしてしまった。したあとの兄は、顔を顰めたがおれが離れるとまたすやすやと寝てた。
余程眠たかったのだと思う、…でもあの兄が誰にも刺々しい兄がこの瞬間少し緩んでた事実にも密かに可愛いと思っちまった。あの唇もみずみずしくて柔らかかったし…採れたての果物みたいに。
「兄ちゃん…」見た目も何も似てないおれのたった1人の兄、誰よりも孤独で誰よりも孤高の兄…そしておれが誰よりも離れたくないと思った兄。追いつくことなんか諦めた、兄は誰よりも風や彗星のような人で誰にも捕まることなく己の道を突き進む人だから。
ただ、最後までずっと…兄のそばにいたかった。今思いなおしても仕方ないけど。
「おれはずっと、兄ちゃんのこと好きだよ」
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