これだから気の狂ったヤツらは!!
夏頃、朝の心地いい風が流れてくる頃ラディッツはカリグラと住まう屋敷の中顔を洗っていた。
未だ寝ぼけた心地を目を覚ますにはこれがいいとパシャリと軽い音をたてながら洗う。カリグラはもうとっくに活動して読書をしていた、時折地面から生える黒い魔の手たちを使いコーヒーをいれたカップを運ばせる姿は最初の頃は驚いたものの今は日課となって慣れてきた。
「……珍妙な光景だよな」
カタカタと朝食の食器を洗う魔の手たち、一時期流行ったホラー映画やゲームにも出てきそうなものたちが屋敷のメイドたちのように働く。
慣れてなければビビるし悲鳴すらあげる、当の持ち主たるカリグラは普通にゆったりとくつろいでいる。
ラディッツは今己がいる環境に少し面白くて密かに笑いながらも顔をふこうとタオルを手に取る。
「……んっ?」
ひたっ、とどこか水濡れた足音が聞こえる。風呂場からだろうか、だが後ろを見てもなにもない。
その黒い瞳をぱちくりとさせるが何もない、この屋敷に今いるのは自分とカリグラそしてお供の魔の手たちのみ。魔の手か?とおもうが、あれらはカリグラのそばにひかえている。
「(き、きのせいだよな??)」
さすがに不気味故に軽くブルりと震えてしまう。
ラディッツの頭の中によぎるのは以前カリーやカリグラの時空にいたターレスと共にしたホラーゲームと言うやつだ。あれは確かひたすら真っ直ぐ進んで行くものであったがゆっくりと気付かぬうちに部屋の模様が変わったり、視界外から幽霊が現れるというものだった。
そう、ラディッツはまさに気持ちとしては視界外に『幽霊』がいるのではないか?とおもってしまったのだ。
急いで強めに顔を拭いてしまう、いやいやいるわけが無い。己も死んだことあるから言えるが、死人はすぐ閻魔の元に行くし裁かれる。そうだいるわけない、そういるわけない。
「アッァ"ッア"ァ………ッ!」
「ヒィ!!??」
そういえばとたん獣のようなでも人の声のようなうめきが聞こえる、なんだカリグラのやつ。本に飽きてホラー映画でも見始めたのだろうか。
だが違う、そう己の真後ろから聞こえたではないか。やめろ、やめてくれ……ラディッツはゆっくりとタオルを剥がしゆっくりと横を見る。
「ギィァァァァアアアーッッ!!!!!!!!」
隣にいたのは歪に首の長い女、虚ろな瞳でこちらを見ている。口の中からは小さい女に似たようなものが出て彼女たちがコーラスのように声をあげていた。
悪趣味だ、悪趣味がすぎるラディッツは思わず飛び退いた。キャットタワーに乗る猫のように。なぜこんなものが!?、幻覚かそれとも本当に幽霊なのか。ガタガタと震えて足が抜けてしまう、ゆっくりとそれはこちらに迫ってくる。
「くっっ、来るな!来るなッッ!!!」
「オッァァッア……!」
意味不明な声を上げながらゆっくりと迫る、よく見れば女の髪からは水滴が垂れている。なるほど、先程のはこれが落ちてきた音なのかと理解した。
「カリグラぁぁぁッッッ!!!!」
思わず彼の名前を叫んだ、いやこんなもの倒すなんか無理だろう。明らかにいるのは怪異、トワやミラのようなもの達ではない。魔族ならまだ触れられるのに!とおもってしまう。
強く瞼を閉じて震える、お願い!去ってくれ!!と強く願いながら。
「……何蹲ってるんだ?猫ちゃん」
「えっ」
カリグラの声が聞こえてきて目を開ければそこにいるのはカリグラとカリグラの来世たるもうひとりの自分だ。
カリグラの方は少しキョトンとしてるがもうひとりの自分の方はさながら汚物を見るような目で見ている。
「かっ、カリグラぁ……ッ!そのっさっきあのッッ女の変なやつがいて」
「女の……?、あーーあれか。たまに来るやつ」
「……そんなものどこにでも居るだろう」
「は??」
カリグラのほうはラディッツの言葉を聞いて少し考えた仕草をしてなにか分かったようだが、まさかのもうひとりの自分はあきれたようにためいきをついていた。
─そんなものどこにでも居るだろう─
まるで何度も見たことあるかのように、もうひとりの自分は話していた。どこにでも??、そんなものラディッツはこの数十年生きてきてみたことない。カリグラの方はもちろん知っているように苦笑しながら、己のことを支えて立たせてくれた。
「おっ、おい待て……っ!カリグラのは何となくわかるが。おまえっ、みっっ見えているのか?」
「?、むしろお前は見えないのか。あんな連中、親父の肩に張り付きまくり……ああ親父の仲間にもよくいたな、トーマさんなんぞたまに肩痛いと言っていたがそれはそうだろうな。殺したやつが肩に爪を食い込ませていたし」
「サラッと怖いこと言うんじゃねえッッ!!!」
今何気に怖い情報を聞いてしまったとラディッツは頭を抱える。
カリグラは「お前はよく見えるだろうな」ともうひとりの自分に楽しげに語っているがこいつの頭がおかしいのは今に始まったことではない。
だが何気に明日の天気のように語るこのもうひとりの自分のはどういうことであろうか、記憶を辿れば確かにトーマやバーダックが疲れたからか肩が痛いだの背中が重いと語っていたことを思い出す。このもうひとりの自分の言葉にあてがうなら、彼らは死人を背負っていたからそれは痛いわけだということ。
何気ない日常光景が恐怖の映像になってしまっていたのだ。
「こわいこと?、どこぞの戦地に行けばもっと見られるぞ」
「なにさもあたりまえのように語りやがる!」
「俺にとって見えることなんぞ日常茶飯事だからだ、ああ時々目ん玉飛び出たやつがベジータについてたりしたな」
「よしわかった、オレ二度とベジータの元に行かんぞ」
淡々と語るもうひとりの自分、いわゆる霊感持ちなのだろう。
完璧に恐れる自分にカリグラはキョトンとしながら今回最大の爆弾を投げてきた。
「猫ちゃん、何を怯えているんだ?。俺もアンデッドみたいなもんだぞ、心臓は必要な時しか動かして居ないからな(生者に見せかけるための)」
「サラリと言うなッッ!!!!」
「仕方ないだろう?、俺の身体は俺のラディッツに使われたしこの身体も俺の魔力で作ったものだからなー」
「こいつが一番危険な霊みたいなものだろう」
言われてみれば確かにそうだ、カリグラは死人。抱かれる時に熱く感じるから忘れていたがそうだ、死人なのだ。
気を抜いた時に触れると冷たい時もあるしカリグラの身体は、もうひとりの自分が使っている(殺生石のようなもので)。
先程見かけた女の霊も怖かったが今はこの恋人のカリグラのこともこわくなってしまうではないか。
「もうオレひとりで動けんからな!?、あんなっっあんなこわいやついるなら!」
「安心しろあんなものどこにでもいる、風呂場の隙間とかな。ああ時々物置にもいるな、さながらツムツムのようにある生首とか」
「もう喋るなぁッッ!なぁ!?カリグラの生まれ変わりッッ!!!」
面白げに語るもうひとりの自分の頭はおかしいかもしれない、幽霊のは怖い。生身の人間の首は見慣れてるしそれこそたまにスイッチが入ればたのしむ。
だがあれだ、見てはならない幽霊は無理だ。あんな不気味なものは見たくない。
「……猫ちゃん、そういうこと言うがあれくらいの霊はまだ無害だぞ?。見た目怖いだけで関心向けなければ何もしないからな」
「……えっ」
「本当にこわいやつは自然にそこにいて優しく微笑んで、己の空間に取り込むからな。あと呪いという感情で世界を壊す」
「どうした、自己紹介をしているか?。ジジイ」
「俺のラディッツ、そこに並べ。1発殴ってやるから」
さらりとカリグラが教えてくれた話にラディッツは少しかたまってしまう、そして誓った。
コントン都でもし変に優しく微笑んでたっている奴がいても声をかけずに走りさろうと。
「ゆっくりゆっくりと迫ってきたりもするからな、ああいう奴らは。……殴って消せれる敵とは違うぞ?」
「お前が少しでも関心を向ければ奴らはじわじわと迫る、そして最後にはパクリっと食われるわけさ」
「………カリグラ」
「なんだ?」
「いっ、いっしょにいてくれ……っ!」
「ん?、もちろんそれくらい良いぞ。一緒にホラー映画でも見るか?、実は本物が写ってるやつがあってな!」
「絶ッ対見ないからなッッ!!???」
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