抱け我が胸
悟空、と呼ばれる部類のものたちは揃って明るく戦うことを好んでいた。だがこの悟空はラディッツの名を聞いた途端表情を暗くさせて、静かに聞いてきた。
ビルスはその反応に何故、と思いつつも彼の質問に答える。
「戦ったさ、シャンパと一緒にね?。…だが色々とあってこのとおり跳ね除けられたのさ」あの赤黒いカリグラの手さえなければ…、とも思うがラディッツのあの力単体でも手こずりはしただろう。少なくともあの力はたち悪かったし己たちとも相性が悪かった。
だから次は運命の因果に頼るしかない、あえて……気に食わないが黒王たち原初がさだめしものを使うしかないのだ。それほどにいまのラディッツは手強いのだから。
「僕たちがいくらやっても焼け石に水、…戦闘の好きなきみにおねがいするよ」現段階派遣されたTPも戦士たちも悉くラディッツに負けた。やはりあの赤黒い手達やラディッツ本人の力に精神を侵され壊されたものたちまでもいる。
中にはラディッツの姿に見惚れて狂わされたものも…、ここは計算外ではあったが今後何が起きるかたまったものでは無い。ろくなことが起こらないことは確定なのだ。
それを最小限にでも抑えたい……、ビルスはそう思い悟空へと話す。同じ時空間に生きてきたものこそストレートに因果関係が働きやすいからだ。
「……っ分かった」
「おい孫悟空!あれお前の兄弟ってほんとか??」シャンパは悟空にラディッツについて聞こうと質問をなげかける。悟空はそれに一応、と答える。
「オラのアニキってやつらしい、どうかしたんか」
「あいつお前たちがよく変身するスーパーサイヤ人ってのになってたが、他のと訳が違うやつだ!。…あいつの恋人の力をつかってだろうけどよ、いっ一応きをつけとけよ!」
「…わけが…ちがう、か。わかった!じゃっオラ行ってくるよ」瞬間移動でラディッツの気を探ろうと悟空は行う、その時だやっとラディッツの気を捉えたがドロドロな……かつて戦ったジャネンバや地獄のものたちを思い出す。それと似たような、いやそれより深いような。
「っ!?」ドクンッ!と心臓が一気に響く、これは初めてあった時よりいやそれ以上の恐怖だ。
冷や汗が溢れ悟空は息を何とか整えようと行う、なんだなんなんだこれは。
『…カカロット、か。久方ぶりだな』ラディッツより低く威圧感ある声、それが脳に響く。ビルスたちのよりも冷たくこれが人のものなのかと思うほどの。なんだ、なんだこれは。
ラディッツの…?、いやそれとも違う。黒くそして刃の切っ先のような冷たさがあるのだ。本能が告げるこの戦いは危険だと、恐ろしくて震えてくる。もしかしたらこの戦いは……あの時より恐ろしいのかもしれない。
「油断、できねえや……」どれもこれも真剣に挑んでいるつもりだがそれ以上に今回の戦いは恐ろしいものになるかもしれない。
次から次へと送られてくる戦士たちを滅ぼし、ラディッツはまた虚ろにそこに立ち黒い手と戯れていた。赤黒い手はそんなラディッツのそばにより姿勢を支えている。
周りには死体、死体、死体……中には顔がぐちゃぐちゃなものまでいる。
フラフラと着替えさせられ、彼…カリグラも着ていたような赤の彼岸花があしらわれた黒の着物を着て歩く。
「…カリグラ、ふふっ…お前ってほんと綺麗なもの好きだよなぁっ…」赤い赤い火、燃え上がり大地を次々と焼いていく。意思を持つかのように炎は揺らめき、建物や人々の死体を焼き尽くして行った。まさに『覚めない悪夢』、そのすがたともいえるほどに。
「ああ、赤い花が沢山咲いてるなぁ~……」その時だ大地を踏みしめるような音と忌々しい声が聞こえてきたのは。
「ラディッツっ……おめぇ…!罪のない命までまた奪うんかっ!!!」忘れるわけが無い、その場にいるのは悪夢のような父と同じ髪型を持ち自分と違い光のもとを歩いた弟。
母との約束を守る為にと迎えに行ったのに記憶を忘れ、悠々自適に暮らしていた実弟を。
「カカ、ロット……!」地面から一気に手たちは生えてラディッツを守るようにと囲み込む。悟空はその光景を見ながらラディッツを真っ直ぐととらえた。
「…なんでこんなことをしてんだ」
「お前なんぞに関係はないッ!!!」一気に手たちは悟空へと襲いかかる、何とか大きいものは避けるが小さい黒い手が悟空の足を捉えて遠くへと投げ飛ばし地面へと殴りつけた。
「ぐぅ!?…ビルス様たちがっいってたのはこれかっっ(なんだこれラディッツの言葉にこたえるようだっ)」あの恐ろしくも巨大だったラディッツはどこだ、今その場に目の前にいる兄は弱々しくもカゲロウのように揺らめく明鏡止水のよう。
掴みどころがなくあやふやな…そんな存在感を持っている。
身勝手の極意のとも違う、ああそうかあの世とこの世の境目にいるような存在感を持っているのだ。
ふわふわ、ふわふわと浮いてでも彼の色はそこにあるような。
なんとか立ち上がり、相手を見据えると鋭い目でかつて会った時よりも本気の殺意を目線に込めていた。
「カカロット……お前も邪魔をするのか?」
「おめえが悪いことしてたらするさ!」悪いこと…?、とラディッツはぼそりとつぶやく。
「オレは、カリグラに言われた通りにしているだけだ…それの何が悪い」カリグラ…その名前に何故か懐かしさを感じつつも同時に悪寒を感じる。
ラディッツの言葉がどこか狂気的に思えたからだ、執着などでも語りきれないほどのものに。地を這ってするりと自分に寄る大蛇のように。
「カリグラッ……カリグラっ…」何だ、なんなんだと悟空はラディッツの嘆く姿を見る。ブツブツと何かを呟いているが何が何だかわからない。
「…だっ………ないなんて……そだ…」
「ラディッツ、おめえなにを「うそだうそだうそっうそだっっ!!!」!!??」途端ラディッツの言葉と同時に大地が震え上がり悟空は姿勢を崩してしまう。あたりを見渡せば、大地がひび割れマグマとともに水蒸気爆発も起きまさに阿鼻叫喚のような光景になった。
なにを、なにをラディッツはいってるのだと悟空はみやるが相手は幼子のように泣きわめき終始分からないことだらけだ。
「カリグラがっ…!カリグラがいないなんて嘘だっっ!!!」なにを、となると時の界王神からテレパシーの通信が来て話を聞く。簡単にまとめるとカリグラ、という男はあのビルスの時空のものでありかつて全ての世界をそして時空を支配した男だと。サイヤ人でありながらも人をやめ、皇帝としてそして神としてもあった男だということ。
そして己の兄ラディッツの恋人であったと……そんな彼はある因果からラディッツの目の前で封印されたらしい。
やがてその果てにラディッツの精神は崩壊し、全てを壊そうとしているのだと。彼を復活させるために。
「そういうことかっ…ラディッツ……」最愛を失い、何もかもを否定したくなったのか。そんなの自分も経験をしたことはある、だがその度にクリリンや周りのものたちが支えてくれた。ラディッツには…その男以外いないのだろうか。
「ベジータも話聞いてなかったらしいし……いねえのかおめえには」あの時も孤独だったのだろうか、堂々とした態度に絶対な自信。不敵な笑みを浮かべてラディッツはかつて己の前に立っていた。圧倒的な強さを見せつけて彼は自分を恐怖に陥れた。
なのに、そんな彼が今では………こんなにか弱いような姿をしているのかと悟空は哀れんでしまう。
「うるさいっカカロット……お前は、いいよなッ全てを持ってて…!」どろりとラディッツは血の涙を流し、あのビルスたちを圧倒したスーパーサイヤ人へと変身し攻撃を仕掛ける。
悟空はそれにまずい、と一旦ブルーになり避けるがあの赤黒い手が襲いかかってきて足を掴まれまた地面へとたたきつけられる。
「…もう、お前に対して油断はせん。死ねっっ!!!、カカロット!!」赤黒い瘴気とともにラディッツの攻撃が襲いかかってくる。
身体をねじりなんとか避けるが、ラディッツの攻撃は止まることを知らないと強く言いたげな程にくる。あの自分が脳震盪を起こすほどの衝撃を受けた蹴りの鋭さも拳の強さもかつての比にならないほどだ。
「っ!、ゆだんしねえのはっ…オラもだ!!!」このままでは死んでしまう、どころか下手すればドラゴンボールやエンマの慈悲でも生き返れないほどに消されるかもしれない。これは本能からの恐怖だ、ラディッツにやられてしまうという。
悟空は身体に来るダメージも何もかもを覚悟の上で身勝手の極みを発動する。赤い光弾を避けつつ何とか生き残り、ラディッツへと肘打ちを返し相手がよろめいたところ一気に蹴り上げ気弾技をぶつける。
この攻撃の流れならフルパワーのジレンでも怯んでしまうほどのはず、だがラディッツは怯んですらいなかった。むしろ爆風を利用して自分に突進してきて仕返しだと言わんばかりに肘打ちをしてくる。
姿勢を低く腹に当てられて悟空はよろめいてしまう、おかしい身体が反応しない。攻撃というものに自動で反応して普段なら避けられるのに。
「……」ラディッツの攻撃は容赦ない、接近戦で近づき自分が技を放てられないようにと追い詰めてくる。あの最初戦った時のとも違う、完全に殺すという動きなのだ。
フリーザたちや強者がやってきたものとも違う、何かと近い気が……ああそうか暗殺者のヒットだ。あのものと戦った時も何かと似ているとなったものだ。ラディッツのことだったのだ、あの時よぎったのは。
「カカロット……お前は、家族も持って…仲間もいるよな…?」突然のラディッツのことばに悟空はピタリ、と攻撃の手を止めた。
「…あぁ」
「……お前には、いるではないか。たくさんのものが、だがなオレには……っオレには…っカリグラだけだ!!この悪夢から覚めるためにも!オレのっオレの幸せのためにもオレはやらなきゃいけないんだ!!!!」ラディッツのことばに呼応して瘴気と星の命が彼に一気に集まる、そしてそれは槍の形へとなりあの破壊神達にはなったものへとなっていった。
赤黒い手も彼に答えて攻撃の構えをつくり、悟空へと威嚇する。
「ラディッツ…っ!?やめろっ!それだとおめえまで…!!」元気玉とも違う負のエネルギー、それは使用者へとダメージもやるはずだ。こんなに幼子のように嘆く彼を見て、悟空は戦いではなく話せばもしやとおもった。だが、無理だったのだ。
ラディッツが止まる気は無い、この悪夢から覚めるためにもと必死なのだそれが例え自分のことを全て捧げることになったとしても。
『悟空くん!私が一瞬ラディッツの時間を止めるわ!!その隙に!』
「わかったっ!、サンキュー!!。時の界王神サマ!」ばっ、と悟空はかめはめ波を構える。
「かぁーめぇーー… 」一か八かだ、ラディッツの目元がバキッとガラスのように割れてる。この男は本気だ、もしあの時……初めて会った時の彼がこの力を持って言ったらどうなったであろうか。
「(オラは負けたかもしれねぇ)」どころか地球の命すらなかったのかもしれない。
「はぁぁーーめぇー……っ!」そのときだ、カチッ!となった音とともにラディッツの動きがとまったのは。
今だ!!、と悟空はめいっぱいの力を込めてラディッツに放つ。外さないためにも彼に纏う瘴気すらうちほろぼすためにも。
「波ぁぁぁーーーッッ!!!!!」
「ッッ!!??」ラディッツもはっ、とするがとたんニヤリと見たことない程の悪い顔をうかべてその槍を放つ。
そのときだ、悟空の脳内に声が響いたのは──
『可哀想だなぁ……カカロット、お遊戯会は終わりだぞ』
『可愛い可愛い俺の愛猫、殺せ……俺たちの邪魔する奴らをな』
「ああ……オレは全部殺すぞ♡カリグラ♡♡」その黒い槍を彗星の如く空を切り裂く速さでなげて悟空へとぶつけたのだ。
かめはめ波を切り裂き、それは一閃悟空へと突き刺さる。赤く帯びだだしいほどの血を口から吐き悟空は倒れる。身勝手の極みも解かれ、激痛が巡るからだを何とか動かし悟空はラディッツをみる。
未だとかれることの無い不気味なスーパーサイヤ人の形態…、ラディッツは虚ろな目で悟空を見下ろした。
「…興味無い」そういって、ラディッツはフラフラと去ろうとすると待てと背筋に悪寒が走る程の声が聞こえてくる。
それは、ラディッツにとって幼い頃から縛りそして悪夢のような存在の声だ。
「随分と強くなったじゃねえか……、ラディッツ!!」
「っっ…!、バー…ダック…!!」なぜ、なぜだ。なぜお前がここにいるとラディッツは冷や汗を垂らす。
おさないころから脅威の存在、自分の自信をなくすひとつともなった要因の一つ。悟空の元へは母ギネが駆け寄って仙豆と呼ばれるものを与えているではないか。
「ラディッツ……」バーダックはぎりっと拳を爪が食い込むほどに握りしめた。何か嫌な予感がして駆けつけてみれば、次男が長男に殺されかけてたではないか。
事情も聞いてみれば、カリグラという古のサイヤ人であった男を生き返らせようと。息子が強くなっていることは誇らしかった。ラディッツは自分によって自信をなくしていることもわかっていた、だがバーダックとしては己と違う強さを持つラディッツはラディッツなりの鍛え方で強くなって欲しいと願っていた。
慎重で頭でよく考える長男、時折みせる暗い表情が気にかかっていたが。
「随分と暗い表情してんな!、ラディッツ」
「オヤジ……っ」
「てめえの恋人がいなくなったからかぁ?、情けねえ顔しやがって!!」この言葉は自分にも指している、後悔ばかりだ。息子の心を支えてやれなくて、そして不器用なりの仕方しかせずギネに任せっきりで。
ラディッツがこんなにもすがるほど相手の男に惚れている、と嬉しいようだが腹立たしいような。他者から見れば自分は至って平然としているかもしれない、なわけあるか。これでもかと心乱されて息子の心が崩壊した現状にショックを受けている。そして、ラディッツの心をここまで壊し追いかけられてる男にも怒りが湧き上がっている……動揺しているラディッツの傍にぼんやりとその姿が見える。赤と黒の瞳に、龍の角…顔にある痣が印象的だがそのギラギラと輝く瞳とニヤリと笑う顔……ヴィランや魔王という言葉が合うような悪魔的美しさを持つ男だ。これがラディッツの恋人か、と父親のかんからわかった。
「てめえがラディッツの恋人か…」小さく、バーダックは低く唸る。なるほど苛烈なまでに眉目秀麗で、ラディッツと似た顔立ちでありながらもこちらの方が遥かに大人なようだ。
『はじめましてか…?お義父さん』一切思ってなさそうな口ぶり、ラディッツのことをもっとおとそうとする魔王。バーダックはそのものの姿に遺伝子レベルの恐怖も感じたが、それより父としてこの男をうたなくてはとおもった。フリーザよりも恐ろしく、破滅を呼ぶこの魔王を。
『俺から生まれた塵芥風情が……、分を弁えろ痴れ者が』動揺するラディッツをよそに赤黒い手はバーダックへと襲い掛かる、経験から本能から避けるが瞬時にわかるこの手に触れたら危険だと。
「サイヤ人のくせにそーいうもんつかうのか?」
『バカを申すな、俺は生まれがサイヤ人なだけで……元から化け物だ』なんだ、この男。どこから話している、いやそこを考えるのはよそう。カカロットのようにスーパーサイヤ人へとなれない自分はすぐやられてしまう。
気弾を放ち赤黒い手の攻撃を受け止めつつ、バーダックは悟空の様子を見る。何とか意識を取り戻したが、体は上手く動けてなさそうだ。もしやと相手を見ると半透明の化け物はオーバーなリアクションでやれやれとしている。
「お前がやったのかっっ!!」
『さあな?、勝手に寝たのは向こうだぞ』その不気味な顔にバーダックはぞわりと寒気を覚える、フリーザよりもこの男は恐ろしい。ゆらゆらと揺れる蝙蝠のような男、だがその雰囲気は歴戦の戦士よりも重くベジータ王よりも圧倒的なものを感じた。本当の強者だと本能が訴える、今まで戦ってきたものたちよりも遥かに強くそして完全なる支配者であると。思わず身体が震えてしまう。
「……ラディッツ…あんた…っ!もうやめなッッ!!、あんたが苦しむ姿を見たくないよ!」ギネのことばにラディッツはびくりっ、と反応するがでもっと動揺する。
カリグラに会えない…?、だけどこうやって声が聞こえる……
『…あいつらの元に行けば、俺と離れ離れになるぞ猫』
『過去の悪夢だったのだろ?、親父は……殺してしまえばいい全てこの場で』
『出来るだろ?俺の可愛い可愛い猫ちゃん。お前を見てくれなかったヤツらなんか要らないよなぁ』嫌だ嫌だ嫌だ!、唯一見てくれた男をずっと一緒にいようと誓い合った男を失うのだけは。アイツらが邪魔をする…?、親父も母親も。
「そんなの絶対に嫌だッッ!!!」途端バーダックはギネや悟空諸共ラディッツの爆風に吹き飛ばされる。近くにあった木々にあたり悉く叩き壊してしまった。
ラディッツの瘴気がより増えて、赤黒い手も出てくる。そして近くにあった遺体からは黒い手が出て彼に寄り添う。
「オヤジ……オレはっ、あんたに認められたかった…だがもういいっ」
「あんたを殺してっオレは過去の幼いオレとも決別する……。カリグラ以外もういらないっっ!!こんな悪夢消してやる!」途端ラディッツの攻撃は激化してバーダックに襲いかかる、殴られた箇所が電撃を受けたかのようにしびれるが何とかこらえて回し蹴りをするがラディッツからあっさりつかまれ勢いよく殴り飛ばされる。
「バーダックッ!!!」ギネが自分を呼ぶ声が聞こえるが、頭がグワングワンと揺れて上手く立ち上がれない。
ぼんやりと見えるラディッツは血涙を流しているが、その目は絶望に憎しみと様々なものを抱えていた。なぜだ、なぜこうなる。自分が上手く向き合えなかったからか?、それとも……サイヤ人の因果なのか。
黒い着物に赤い彼岸花……、ラディッツが着ている服は己たちの星にはなかったものだ。そうか、この男…カリグラのマーキングか。
「気色悪いことをッ…オレのガキにしやがって…!」頭からたれる血をバンダナで何とか取り押さえて、バーダックは足に力を込めて一気に飛びかかる。直接触れるのが無理ならば、この赤黒い手をまずは破壊してみるまでだ。右手に力を込めて気弾を放ち手の根っこに当てる。辺りを更地にしてしまうほどの爆撃音と衝撃が鳴り響いたがラディッツはそこにたち赤黒い手を放つ。
「ちっ!」空中に飛び何とか距離を取り、相手を見すえる。ラディッツの目は黒い…ひたすらに黒くもう自分のことを敵として見なしている。
後悔ばかりだ、本当に。オレが……ギネみたいに甘ったれてたら良かったか?、いやそれは自分ではない。もっと自分なりに素直に息子と向き合っていたら良かったのだろうか。
後悔しても遅い、今は彼を落ち着かせその末でやっていくしかないのだ。
「くそっ~…!オラのからだっうごいてくれっっ」
「無茶するんじゃないよ!カカロット!!、とうちゃんがなんとかしてくれるんだから!」
「…っちげぇんだ、ラディッツのヤツ……とはオラも決着つけなきゃなんねえ…!」
「それはっそうだけど…!あんたもラディッツも私の大事な息子なんだよ!!。ラディッツの心をッ私たちはちゃんと見てあげられなかった…!??」
「あぶねえっ!!」とたん、赤黒い手がギネと悟空に襲いかかり悟空はなんとかギネを抱えて避ける。襲われた場所は地面がえぐれ、クレーターのようなものが出来上がっていた。
「うん♡かりぐら……わかってる…オレ、全部殺すから…♡」
「ラディッツっ…!あんたっなんて顔を…!!」恍惚的な顔、それこそ洗脳されたのかと言っていいほどに蕩けており己の知らない男に骨抜きなようなラディッツ。
ギネは血が出るほどに歯を食いしばる、ラディッツは…幼い頃からどこか大人びていた。王子などの前では年相応な子としてもいたらしいが、やはり不意に暗い顔を見せたり自分にも一人でやるからと言って何でもかんでもやろうとする子ではあったのだ。
誇り高い戦闘民族サイヤ人、そしてバーダックの息子として……自分はそんな息子を誇りに思いつつも頼りきりだったのかもしれない。なぜなら今ではその赤い男に囚われ恋人としてあるのだから。ラディッツはその年上の男に満たされつつも1人にされたくない、と悲しんでるように見えるのだ。
「ラディッツ、ごめんね……私たちがッあんたを頼りきりすぎていたよ…!。話をしよっっ!、もし私たちに「黙れ」!?」
「今更親ぶるのか…?、あんたらにはカカロットがいるだろ。親父にそっくりな…オレは、カリグラがいるからいいッ……邪魔だ!?」
「ギネにふざけた口を叩くんじゃねえッッ!!!」
「ろくにオレのことを見てこなかった野郎がオレに意見するなッ!!!!」瘴気とともにバーダックと殴り合い、ラディッツは打ち勝ちはじき飛ばす。
そうだ、そうだ…王子の護衛に幼くして抜擢されてこき使われて我慢というものを強いられてきた自分。
強戦士バーダックの息子としてみられ、見比べられてきた自分。その苦労をお前たちがわかるのか?、ベジータたちからは馬鹿にされ何でもかんでも押し付けられてきて…孤独だった自分にお前たちが何がわかると。
また憎悪と怒りが膨れ上がってくる、ああそうだ──
「お前たちのせいでオレは孤独になったんだ」みてこなかったきさまたちのせいだ、殺せ…殺せと心が呼びかけてくる。そしてカリグラの声も聞こえてくる──
『そうだ、殺れ。全てを滅ぼせ』
『俺とお前の楽園を作ろう』ラディッツはその言葉にこくり、とうなずく。そうだ、そうだ彼と自分の楽園のためにもこの悲しくも身体を引き裂くほどに辛い悪夢から目を覚ますためにも。
『ほら猫ちゃん……まずは1人、やらないとな?』
「ああ…オレは殺るぞカリグラ」そういいラディッツはまたバーダックへと襲い掛かる、とたん悟空がなんとか身体を動かし二人の間に入り攻撃を受け止めるが血を吐き膝を崩す。
「カカロットッ!」
「でぇじょうぶだ……っ、はははっやっぱつえぇやラディッツ」
「…邪魔だカカロット、まずはお前からか?」
「させるかッッ!!」バーダックは瞬時にラディッツの攻撃に反応して気弾でどうにか受け止め、遠くへととばす。このまま戦ってもジリ貧だ、おまけにラディッツはギネの言葉にすらはむかい聞こうとすらしない。
「ちっ!(どうしたもんか、カカロットもこの状態だとジリ貧だ)」おそらくあの赤黒い手と黒い手は役割も何かあるはず…、赤黒い手は恐らくあのカリグラと呼ばれる男の力が強くあるやつなのだろう。
ほぼ完全に独立してラディッツを守らんと動き、攻撃を仕掛けてきている。そして黒い手…ラディッツの足元に基本あり、何か栄養か…力を送っていそうだ。大地に根を張り運んでいるような気配がする。
「……」どうしたものか、壊そうと思えばやれるかもしれないが何かいけない導火線に火をつけてしまうのかもしれない。
バーダックはゆっくりと下がり、相手の動きを見る。そして呼吸を深く吸い、きっと睨みつけて覚悟を決める。あの赤黒い手からラディッツを引き離そうと。触れたら危険なのはわかる、恐ろしいことが起こるかもしれないとも。だがそれより我が子のことだ、ラディッツは命を張り好きな人を復活させようとしてるのだ。己もその命くらいはかけないといけないだろうと。
「目ぇさましやがれ!!!ラディッツッ!」赤黒い手はやはり自分が疾風のごとくかけていけば襲いかかってくるものによっては、剣のように自身を振るい攻撃してきて首が斬られそうになる。
今だ、とラディッツに手を伸ばす。ラディッツは動揺しつつも己に手を伸ばそうとしたところニヤリと笑った。
「かかったな……赤い赤い花」どぷり、と深く刺さる音が聞こえる。
「ぐは…!?」戦闘服を貫き脇腹を赤黒い手が突き刺したのだ。何が、一体何が起きた。ラディッツの手を握ろうとしたとこ小さい幼子のようなサイズの赤黒い手がのびて刺してきた。
そして指示を出したであろうラディッツ本人はケラケラと子供の時のように笑っている。
『よくやったなぁ、猫ちゃん』
「ああ…♡オレ、やったぞ!。カリグラ!!」ギネの断末魔のような叫び声が聞こえてくる、悟空の声も。
幸い致命傷でとどまっているが、ラディッツはやってやったぞ!カリグラ!!とケラケラと笑ってばかりだ。
なんで、何故とバーダックは考えるがひとつだけ言える。息子は父を超えたということを。油断させたとこ攻撃してきたがそれも戦闘のひとつだ。やはりラディッツは自分とは違う強かさと確かな目を持っている。
「たくさんたくさん咲いたな…赤い花が。カリグラの方が……綺麗だなぁ」
「バーダックッ!バーダックッッ!!いやっ!嫌っっ!!!」
「っ父ちゃん!?」仙豆を、とやろうとした所ラディッツはまたフラフラと歩き始めた。
「カリグラ~…次のお花を見に行こう♡」悟空は止めようにも今のラディッツの状態じゃどうしよう、と悩み始めたとこギネが立ち上がりラディッツの方へと走る。
虚ろな目で歩き始める息子の前に立ち、平手打ちでギネはラディッツの頬を叩く。
「バカっっ!バーダックにあんたっ父ちゃんに「貴様らの責任だろ?、それは」!?」何を、となった瞬間大地が揺れ仙豆をたべどうにか意識を回復させたバーダックも何だと驚きあたりをみわたす。
砂漠の大地のような空は途端赤黒く染まり大地が割れ、石の花が……ああそれこそ大地の彼岸花のようなものが出てきたのだ。
「あれはっ…!?」悟空も恐ろしく1歩下がる、するとうしろに時の界王神と共に居たトランクスが現れた。
「トランクス!それに時の界王神さま!!」
「っ間に合わなかったのね…!」
「悟空さんっ!、すみません間に合わなくて…。時の界王神さまあれはっっ」あんなもの見た事がない、地獄に咲くような……いやそれよりもおぞましい気配がある。
「……カリグラの、復活の土台よ…。昔から変わらないわね!、そのパフォーマンスぶりも!!」友人たちのにもあやかってなのか、果は己のあだ名地獄の君にあやかってか。
瘴気が花々へと集まる、そして周りの死体から生えた手たちは皆まるで彼を王としてむかえる兵たちのように頭を垂れた。そして少女たちが歌うような、地獄の無邪気で純粋な闇のような言葉の小唄が響き渡る。
「死にゆく呻き」『花のよう』
「『開け根の国 根のやしろ』」暴風とともに手たちは飛び散り、ギネも遠くへと飛びそうになるが時の界王神が力で皆を支えてどうにか耐える。
「…っっ!、カリグラっ…君封印ついでにと全てを取り戻したのね!!」中心にある大きな赤黒い手が花開くように開きそこに現れるは赤いひたすらに赤くそして黒い彼……カリグラだった。
「我 目覚め戻れりぃ…!、か?」散弾銃をどこからか出してまるで復活の火花のように天に打ち放ち弾丸の雨を降らす。爆撃の激音を響き渡らせ、大地にあるものをことごとく破壊しそれらは時の界王神やトランクス達にも当たりそうに振り注ぐ。
「っ随分と派手なご登場だな…!、息子の恋人さんよ」こいつに一撃やらないと気が済まない、バーダックはどうにか空を飛び彼の前へと歩む。これが、あの息子の恋人…実物を見れば見るほど恐ろしい。
震える手を武者震いへとかえ、右手に全ての力を込める。白く淡い気が拳にこもりバーダックは復活した大魔王へと放つ。それはまさに勇者の光のようで空を照らし一線の光がバーダックを照らす。
「地獄へっ…!、帰りやがれっっ!!!!」この男は息子の恋人である男は復活させてはならない、己の命を全ての運命を変えるにしても本能でわかりまっさきに何よりも誰よりはやく突撃した。
「…愚かな猿が」対するカリグラはバーダックに目線のひとつもやらず興味が無いとおぞましい触手を出しうちかまえる。
「実力差を分からぬ悪しき猿が 、ぞろぞろと来るでないわ」
「カリグラッ!!!!」バーダックが殴り飛ばそうとしたとこ二人の間にラディッツが入ってくる、バーダックはしまったと力を抜くがその瞬間触手に飛ばされ石の花びらのとこにぶつかり瓦礫とともに崩れガクッと倒れた。
「…猫……大義よ…こちらに来い」フッとラディッツには花でも咲くような優しげな笑みを浮かべカリグラは赤いマントでラディッツを包み込んだ。そして、時の界王神たちに目線をやる。
「俺がいなくて寂しかったか…?ばばあ」
「君がいなくてむしろ平和だったよ…、ラディッツの心の以外はねっ」
「で、あるか。…ああお前たちだろ?ラディッツの親御さんは」にこり、と見たものによっては見蕩れるような笑みをカリグラはうかべる。だがバーダックたちにとってそれは死神の笑みだ、息子をさらっていく最悪な死の死神の。
そしてバーダックとギネは驚く、カリグラのマントに包み込まれたラディッツの笑みがなんとも明るくそしていちばん嬉しげなことか。
「ここにラディッツを留めてくれたこと感謝する、地球でなくば…俺のとこにも繋がらなかったがまあ何とかなった」
「カリグラ遅いぞ…!、オレ待ったからなっずっと花届けて」
「そうだなぁ、お前を待たせすぎたようだ。猫から花を貰うのが嬉しくて嬉しくて、な?」死屍累々のなか2人の柔らかな雰囲気がなんと歪なことか、ラディッツの方はこちらに視線をやることも無くカリグラのことしか見えてないように振る舞う。
2人は否が応でも突きつけられる、この男…カリグラは腹立つことに自分たち以上にラディッツのことを見ていたのだと。だから慎重なラディッツは彼との恋に落ち、そして恋焦がれ狂うほどに求めたのだ。
「……この人はっ、私たち以上にラディッツをっ見てたというのかい…!」息子のラディッツはこちらに目をやることなくカリグラ、カリグラ!と彼の名前を呼びくっつく。その姿は少女が愛しい人を見て抱きつき愛し合うようであのラディッツがと周りは騒然してしまう。
「ラディッツ…!、お前っ……こっちに戻ってこい!!。そいつは危険だ!」バーダックは痛む傷を抑えながらラディッツへと叫ぶ。
本能が警告音を出している、あの男は危険だと。ラディッツを離した方がいいと。件の男はニヤリと笑い、ラディッツに声をかけた。
「お前の父親がそう言ってきてるが……、どうする?」スリスリとカリグラに擦り寄りマントに包まれていたラディッツはその言葉にどうでもいいと言いたげな顔をうかべる。
「父親…?、知らない。どうでもいい」
「っっ!!??」まさかの息子からの言葉にバーダックはショックを受けて、目を見開き冷や汗を垂らしてラディッツのほうをみる。ラディッツはそんなバーダックの視線から顔を逸らし、カリグラにすり寄る。
「…なぁ、カリグラ。ここのやつらなんかどうでもいいから早く帰らないか?、…オレもう待てない」
「…何だ急に、甘えんぼさんか?」時の界王神は2人の光景に驚きながらもラディッツのことを思うならば、カリグラがこのままいた方がいいのだろうかと思い悩む。
カリグラが完全復活した今、こちらに打つすべはない。かつての封印も彼が自らその運命を選んでくれたからこそなったようなもの、こうやってラディッツという想い人との逢瀬を楽しむカリグラを止めるすべなんかないようなものだ。
「せっかくだ、ケーキ入刀のように…世界ごと滅ぼしても良かったのになぁ」
「ん……、それもいいけどオレカリグラと2人っきりで楽しいことしたい」ギュッ、とカリグラの腕に抱きつき胸を当てる。娼婦のようなラディッツの姿にギネたちは騒然として立ち尽くす。悟空もだ、あんなに強敵でそして大柄だった男がカリグラが現れてからずっと女子のようなのだから。
なんなんだ、このカリグラという男は…ラディッツのことをほぼ女子にしてしまって自分たちにはこれでもかというほどのプレッシャーを与えみてくる。
"ラディッツに話しかければ次は殺す"、そうプレッシャーと殺気を送ってきて。
「カリグラっ…!、どういうつもり!?。皇嵐様とのッ「もちろん皇嵐の娘たちがいる世界は残すつもりさ」!??」
「…俺もやぁっと、全ての魂を集めれて完全になれたのだ。身体もどうにか取り戻せてな?、ラディッツにちょっかいをかけてきた連中のことを滅ぼしたくなっただけ……皇嵐との時空は確保するさ」
「あれは俺の世界でもある、そして俺のラディッツたちの大事な世界だ。それ以外が要らない、と話してるだけだ」要らない、いらない、イラナイ……余分な虫共はつまなくては。ラディッツに手を出して傷つけようとしてきた連中を、自身を求め頑張ったラディッツにちょっかいをかけてきた連中を。
余分な枝を取らなくては美しい花は咲かない、だから粗末なものを刈り取るだけなのだ。
「仮に世界のバランスだのなんだのとあるなら……、俺が作ればいいだけだからなぁ?」
「カリグラっもしかして……!?」影を宿し薄気味悪く笑うカリグラに時の界王神はまさかの考えをよぎらせる、そうだ。何故こうも早く復活できたのかそして…なぜ彼はここに来れたのか。
これをよぎらせなかった自分はなんだったのか、こわかった。恐ろしかったのだ。この男が本当の意味で
天を喰らったということが、カリグラの底知れぬ気配とオーラに時の界王神はゆっくりと唇をふるわせ口開く。
「もしかしてっ……黒王、様をやったの…?」
「まだ殺りはしていない、封印はしたがな」黒王…、己たち全ての生命の絶対的な父のような存在。世界のシステムを本当の意味で作りだした男でカリグラが契約している魔神の創造主でもある。
「やつの動きを封じるために今まで黙っていたがなぁ…、殺すならいつでも出来るぞ?。俺のラディッツが集めてくれていた瘴気…そして若造が研ぎ澄ませた力……それらを合わせればな」なんという事だ、つまりいまは彼こそ絶対的な主となったのだ。2000年の時を超えて、ただでさえ完璧な存在だったものがよりだ。
「時の界王神様、どういうことですか…!?。その、黒王というのは以前話された皆様より上の…!」
「そうよっ…、あまり知られてはいないけど私たち界王神の中では絶対的なお方なのよ。魔界にも…っ!、カリグラはそれを実質として消したようなものなの」
「言い方が悪いなぁ、まっそのとおりではあるがな。いつか大地と口付けさせてやる、と思っていたからその通りにしただけだ」ふっ、と笑う彼の顔はまさに魔王と言いたげな冷たく純粋な水で作られた氷のようだ。
「そしてこれからは俺が支配者だ、とな…」ここまで口角上がるのかと言うほどに、上げてカリグラは告げる。
彼の吐かれる言葉の重み、そして重圧……本人の言う通り"支配者"と言う姿にふさわしい。
「…ラディッツを、連れていく気か…っ?」
「…ああ、俺の可愛い恋人だからなぁ」ラディッツの方はバーダックの言葉を聞かず、カリグラの言葉に恋人という単語に反応して顔を赤くしている。
カリグラの方も目をくれず、ラディッツの頭を撫でて猫を可愛がるようだ。
「ふふっ…かりぐりゃあ~♡」
「…それでもっ、せめてっ息子と話をさせてください!。あの子のことをっ理解してこなかった私たちに!!」
「やらん」必死にどうかと希うギネの言葉にカリグラは冷たくただ一言を放ち、その紅玉の輝きと刃の鋭さをひめる赤い瞳でギネのその涙で潤んだ瞳をとらえる。
「…今までお前たちはラディッツに甘えていた、そして……最期はカカロットの方を心配してたではないか。ラディッツはできる子だから、と心配はすれど次男よりはあまりなぁ」
「さすがはサイヤ人、格差がある。お前たちがサイヤ人の中でも親をしているというのでは反吐が出るわ」
「…っ!、そこはっ……言い返す言葉もありません……だからこそ私たちはっこの子に…!」
「なあカリグラ、もうそんなヤツらどうでもいいだろ。なに?オレ以外の女を見るの」
「まさか、俺たちの逢瀬を邪魔するやつに威嚇してるだけだぞ猫ちゃん」
「らしいことを言いやがって…!、お前だってラディッツを捉えてっ自分のものにしようとしてるだけだろうがッッ!!!」あまりにも溢れる感情の激流のせいか、バーダックの髪はふつふつと一部髪の毛が金髪へとかわりバチバチっとスパークを放つオーラをまとい始める。
「おお悪しき猿が金の猿にでもなるか?、…"平伏せ"」王の言葉の重みは、重圧となり身体にのしかかる。ミシミシと骨がひび割れるようだ、バーダックは骨を全て折る覚悟で無理やり身体を動かしカリグラへと力を込めた気弾を放つ。
「くたばりやがれっっ!!!」
「…効かんわ」一線赤黒い剣から斬撃を放ち、バーダックへとうちかえした。
「「バーダックっっ!」」
「っ父ちゃん!」
「ぐっ…~…!!」身体が痺れているのか、上手く立ち上がれずバーダックは倒れてしまう。
がはっ、と吐血し時の界王神は駆けつけてどうにか時を操りダメージがこれ以上蓄積されないようにと術をかけた。
「カリグラッ!、あんたっ一応弟の子孫よ!?。それに何するの!!」
「時空違いだ、たわけ。…確かにユリウスのではあるが、それがなんだ?」
「愚弟のなんぞ興味無いわ、どうした?。冷静さなくしたか」そうだ、カリグラは実弟であるユリウスのことに興味はない。本当に血縁たちが持つ感情、というものがないのだ。それらは全て"ラディッツ"という存在に注がれている。
それは分かっている、だが言いたかった……どうする今の彼は容赦がない。完全に魔王としての顔が出ている。
「…カリグラ、もう行こ。もうオレいやだぞ待たされるのは」
「…なんだ猫ちゃん、もう我慢の限界か?」
「当たり前だッ、カリグラがほかに目線行くのも嫌だぞ!!」ラディッツの言葉にカリグラは優しく笑い、その怒りに震える唇に軽く口付ける。
「らしい…、俺の愛しい姫が痺れを切らしてるからなぁ。今回は去るか」ずずっ、と重低音の音がひびき2人は赤黒い瘴気に包まれる。
「待てっっ!」
「待ちやがれッッ!!」なんとか重圧からバーダックと悟空は起き上がり気功波を放つ。
真っ直ぐに瘴気に包まれたカリグラへとむかう。
「…性懲りも無く来るな、猿共がッッ!」赤い瞳で睨みつき、赤黒い手を瞬時に召喚して2人をたたきつぶす。ニンゲンが蚊を叩き潰すようにだ。
地面に恐ろしいほどの大きさの手が跡として残る。
「っカリグラァ!!」時の界王神はふたりの倒れる姿を見て、密かに込めていた力を放つ。
移動しようとする一瞬のすき、そこが狙いどころだ。
押さえつけて、今のうちに何とか……バーダックたちが戦ってるすきにとったあの銃で。カリグラを"唯一"倒せれる銃で。
引き金を引き時の界王神は放った。弾丸が放たれる音と空間を切り裂くような音が響く、ゆっくりと放たれた相手は目を開き口を開いた。
「効かんわ…今の俺にはな」剣で弾き返し、時の界王神の頬へとかすらせラディッツの肩をだきなおす。
それは二度と離さない、という程に力を込められていて執着や依存などとは言い難いほどの感情が込められていた。
「…去るぞ、猫ちゃん」
「あぁ……もっとオレを可愛がってくれカリグラ」
「じゃあな…、愚かな奴らよ」2人は包み込まれ赤黒い霧となり姿を消した。
「ラディッツーーーっっ!!!」ギネとバーダックは喉が潰れるほどの声を上げてさけぶ、息子は赤く黒い大きな魔王へと攫われてしまったのだ。
記憶の中でも見た事のないほどの嬉しそうな笑顔を浮かべて。
ビルスはその反応に何故、と思いつつも彼の質問に答える。
「戦ったさ、シャンパと一緒にね?。…だが色々とあってこのとおり跳ね除けられたのさ」あの赤黒いカリグラの手さえなければ…、とも思うがラディッツのあの力単体でも手こずりはしただろう。少なくともあの力はたち悪かったし己たちとも相性が悪かった。
だから次は運命の因果に頼るしかない、あえて……気に食わないが黒王たち原初がさだめしものを使うしかないのだ。それほどにいまのラディッツは手強いのだから。
「僕たちがいくらやっても焼け石に水、…戦闘の好きなきみにおねがいするよ」現段階派遣されたTPも戦士たちも悉くラディッツに負けた。やはりあの赤黒い手達やラディッツ本人の力に精神を侵され壊されたものたちまでもいる。
中にはラディッツの姿に見惚れて狂わされたものも…、ここは計算外ではあったが今後何が起きるかたまったものでは無い。ろくなことが起こらないことは確定なのだ。
それを最小限にでも抑えたい……、ビルスはそう思い悟空へと話す。同じ時空間に生きてきたものこそストレートに因果関係が働きやすいからだ。
「……っ分かった」
「おい孫悟空!あれお前の兄弟ってほんとか??」シャンパは悟空にラディッツについて聞こうと質問をなげかける。悟空はそれに一応、と答える。
「オラのアニキってやつらしい、どうかしたんか」
「あいつお前たちがよく変身するスーパーサイヤ人ってのになってたが、他のと訳が違うやつだ!。…あいつの恋人の力をつかってだろうけどよ、いっ一応きをつけとけよ!」
「…わけが…ちがう、か。わかった!じゃっオラ行ってくるよ」瞬間移動でラディッツの気を探ろうと悟空は行う、その時だやっとラディッツの気を捉えたがドロドロな……かつて戦ったジャネンバや地獄のものたちを思い出す。それと似たような、いやそれより深いような。
「っ!?」ドクンッ!と心臓が一気に響く、これは初めてあった時よりいやそれ以上の恐怖だ。
冷や汗が溢れ悟空は息を何とか整えようと行う、なんだなんなんだこれは。
『…カカロット、か。久方ぶりだな』ラディッツより低く威圧感ある声、それが脳に響く。ビルスたちのよりも冷たくこれが人のものなのかと思うほどの。なんだ、なんだこれは。
ラディッツの…?、いやそれとも違う。黒くそして刃の切っ先のような冷たさがあるのだ。本能が告げるこの戦いは危険だと、恐ろしくて震えてくる。もしかしたらこの戦いは……あの時より恐ろしいのかもしれない。
「油断、できねえや……」どれもこれも真剣に挑んでいるつもりだがそれ以上に今回の戦いは恐ろしいものになるかもしれない。
次から次へと送られてくる戦士たちを滅ぼし、ラディッツはまた虚ろにそこに立ち黒い手と戯れていた。赤黒い手はそんなラディッツのそばにより姿勢を支えている。
周りには死体、死体、死体……中には顔がぐちゃぐちゃなものまでいる。
フラフラと着替えさせられ、彼…カリグラも着ていたような赤の彼岸花があしらわれた黒の着物を着て歩く。
「…カリグラ、ふふっ…お前ってほんと綺麗なもの好きだよなぁっ…」赤い赤い火、燃え上がり大地を次々と焼いていく。意思を持つかのように炎は揺らめき、建物や人々の死体を焼き尽くして行った。まさに『覚めない悪夢』、そのすがたともいえるほどに。
「ああ、赤い花が沢山咲いてるなぁ~……」その時だ大地を踏みしめるような音と忌々しい声が聞こえてきたのは。
「ラディッツっ……おめぇ…!罪のない命までまた奪うんかっ!!!」忘れるわけが無い、その場にいるのは悪夢のような父と同じ髪型を持ち自分と違い光のもとを歩いた弟。
母との約束を守る為にと迎えに行ったのに記憶を忘れ、悠々自適に暮らしていた実弟を。
「カカ、ロット……!」地面から一気に手たちは生えてラディッツを守るようにと囲み込む。悟空はその光景を見ながらラディッツを真っ直ぐととらえた。
「…なんでこんなことをしてんだ」
「お前なんぞに関係はないッ!!!」一気に手たちは悟空へと襲いかかる、何とか大きいものは避けるが小さい黒い手が悟空の足を捉えて遠くへと投げ飛ばし地面へと殴りつけた。
「ぐぅ!?…ビルス様たちがっいってたのはこれかっっ(なんだこれラディッツの言葉にこたえるようだっ)」あの恐ろしくも巨大だったラディッツはどこだ、今その場に目の前にいる兄は弱々しくもカゲロウのように揺らめく明鏡止水のよう。
掴みどころがなくあやふやな…そんな存在感を持っている。
身勝手の極意のとも違う、ああそうかあの世とこの世の境目にいるような存在感を持っているのだ。
ふわふわ、ふわふわと浮いてでも彼の色はそこにあるような。
なんとか立ち上がり、相手を見据えると鋭い目でかつて会った時よりも本気の殺意を目線に込めていた。
「カカロット……お前も邪魔をするのか?」
「おめえが悪いことしてたらするさ!」悪いこと…?、とラディッツはぼそりとつぶやく。
「オレは、カリグラに言われた通りにしているだけだ…それの何が悪い」カリグラ…その名前に何故か懐かしさを感じつつも同時に悪寒を感じる。
ラディッツの言葉がどこか狂気的に思えたからだ、執着などでも語りきれないほどのものに。地を這ってするりと自分に寄る大蛇のように。
「カリグラッ……カリグラっ…」何だ、なんなんだと悟空はラディッツの嘆く姿を見る。ブツブツと何かを呟いているが何が何だかわからない。
「…だっ………ないなんて……そだ…」
「ラディッツ、おめえなにを「うそだうそだうそっうそだっっ!!!」!!??」途端ラディッツの言葉と同時に大地が震え上がり悟空は姿勢を崩してしまう。あたりを見渡せば、大地がひび割れマグマとともに水蒸気爆発も起きまさに阿鼻叫喚のような光景になった。
なにを、なにをラディッツはいってるのだと悟空はみやるが相手は幼子のように泣きわめき終始分からないことだらけだ。
「カリグラがっ…!カリグラがいないなんて嘘だっっ!!!」なにを、となると時の界王神からテレパシーの通信が来て話を聞く。簡単にまとめるとカリグラ、という男はあのビルスの時空のものでありかつて全ての世界をそして時空を支配した男だと。サイヤ人でありながらも人をやめ、皇帝としてそして神としてもあった男だということ。
そして己の兄ラディッツの恋人であったと……そんな彼はある因果からラディッツの目の前で封印されたらしい。
やがてその果てにラディッツの精神は崩壊し、全てを壊そうとしているのだと。彼を復活させるために。
「そういうことかっ…ラディッツ……」最愛を失い、何もかもを否定したくなったのか。そんなの自分も経験をしたことはある、だがその度にクリリンや周りのものたちが支えてくれた。ラディッツには…その男以外いないのだろうか。
「ベジータも話聞いてなかったらしいし……いねえのかおめえには」あの時も孤独だったのだろうか、堂々とした態度に絶対な自信。不敵な笑みを浮かべてラディッツはかつて己の前に立っていた。圧倒的な強さを見せつけて彼は自分を恐怖に陥れた。
なのに、そんな彼が今では………こんなにか弱いような姿をしているのかと悟空は哀れんでしまう。
「うるさいっカカロット……お前は、いいよなッ全てを持ってて…!」どろりとラディッツは血の涙を流し、あのビルスたちを圧倒したスーパーサイヤ人へと変身し攻撃を仕掛ける。
悟空はそれにまずい、と一旦ブルーになり避けるがあの赤黒い手が襲いかかってきて足を掴まれまた地面へとたたきつけられる。
「…もう、お前に対して油断はせん。死ねっっ!!!、カカロット!!」赤黒い瘴気とともにラディッツの攻撃が襲いかかってくる。
身体をねじりなんとか避けるが、ラディッツの攻撃は止まることを知らないと強く言いたげな程にくる。あの自分が脳震盪を起こすほどの衝撃を受けた蹴りの鋭さも拳の強さもかつての比にならないほどだ。
「っ!、ゆだんしねえのはっ…オラもだ!!!」このままでは死んでしまう、どころか下手すればドラゴンボールやエンマの慈悲でも生き返れないほどに消されるかもしれない。これは本能からの恐怖だ、ラディッツにやられてしまうという。
悟空は身体に来るダメージも何もかもを覚悟の上で身勝手の極みを発動する。赤い光弾を避けつつ何とか生き残り、ラディッツへと肘打ちを返し相手がよろめいたところ一気に蹴り上げ気弾技をぶつける。
この攻撃の流れならフルパワーのジレンでも怯んでしまうほどのはず、だがラディッツは怯んですらいなかった。むしろ爆風を利用して自分に突進してきて仕返しだと言わんばかりに肘打ちをしてくる。
姿勢を低く腹に当てられて悟空はよろめいてしまう、おかしい身体が反応しない。攻撃というものに自動で反応して普段なら避けられるのに。
「……」ラディッツの攻撃は容赦ない、接近戦で近づき自分が技を放てられないようにと追い詰めてくる。あの最初戦った時のとも違う、完全に殺すという動きなのだ。
フリーザたちや強者がやってきたものとも違う、何かと近い気が……ああそうか暗殺者のヒットだ。あのものと戦った時も何かと似ているとなったものだ。ラディッツのことだったのだ、あの時よぎったのは。
「カカロット……お前は、家族も持って…仲間もいるよな…?」突然のラディッツのことばに悟空はピタリ、と攻撃の手を止めた。
「…あぁ」
「……お前には、いるではないか。たくさんのものが、だがなオレには……っオレには…っカリグラだけだ!!この悪夢から覚めるためにも!オレのっオレの幸せのためにもオレはやらなきゃいけないんだ!!!!」ラディッツのことばに呼応して瘴気と星の命が彼に一気に集まる、そしてそれは槍の形へとなりあの破壊神達にはなったものへとなっていった。
赤黒い手も彼に答えて攻撃の構えをつくり、悟空へと威嚇する。
「ラディッツ…っ!?やめろっ!それだとおめえまで…!!」元気玉とも違う負のエネルギー、それは使用者へとダメージもやるはずだ。こんなに幼子のように嘆く彼を見て、悟空は戦いではなく話せばもしやとおもった。だが、無理だったのだ。
ラディッツが止まる気は無い、この悪夢から覚めるためにもと必死なのだそれが例え自分のことを全て捧げることになったとしても。
『悟空くん!私が一瞬ラディッツの時間を止めるわ!!その隙に!』
「わかったっ!、サンキュー!!。時の界王神サマ!」ばっ、と悟空はかめはめ波を構える。
「かぁーめぇーー… 」一か八かだ、ラディッツの目元がバキッとガラスのように割れてる。この男は本気だ、もしあの時……初めて会った時の彼がこの力を持って言ったらどうなったであろうか。
「(オラは負けたかもしれねぇ)」どころか地球の命すらなかったのかもしれない。
「はぁぁーーめぇー……っ!」そのときだ、カチッ!となった音とともにラディッツの動きがとまったのは。
今だ!!、と悟空はめいっぱいの力を込めてラディッツに放つ。外さないためにも彼に纏う瘴気すらうちほろぼすためにも。
「波ぁぁぁーーーッッ!!!!!」
「ッッ!!??」ラディッツもはっ、とするがとたんニヤリと見たことない程の悪い顔をうかべてその槍を放つ。
そのときだ、悟空の脳内に声が響いたのは──
『可哀想だなぁ……カカロット、お遊戯会は終わりだぞ』
『可愛い可愛い俺の愛猫、殺せ……俺たちの邪魔する奴らをな』
「ああ……オレは全部殺すぞ♡カリグラ♡♡」その黒い槍を彗星の如く空を切り裂く速さでなげて悟空へとぶつけたのだ。
かめはめ波を切り裂き、それは一閃悟空へと突き刺さる。赤く帯びだだしいほどの血を口から吐き悟空は倒れる。身勝手の極みも解かれ、激痛が巡るからだを何とか動かし悟空はラディッツをみる。
未だとかれることの無い不気味なスーパーサイヤ人の形態…、ラディッツは虚ろな目で悟空を見下ろした。
「…興味無い」そういって、ラディッツはフラフラと去ろうとすると待てと背筋に悪寒が走る程の声が聞こえてくる。
それは、ラディッツにとって幼い頃から縛りそして悪夢のような存在の声だ。
「随分と強くなったじゃねえか……、ラディッツ!!」
「っっ…!、バー…ダック…!!」なぜ、なぜだ。なぜお前がここにいるとラディッツは冷や汗を垂らす。
おさないころから脅威の存在、自分の自信をなくすひとつともなった要因の一つ。悟空の元へは母ギネが駆け寄って仙豆と呼ばれるものを与えているではないか。
「ラディッツ……」バーダックはぎりっと拳を爪が食い込むほどに握りしめた。何か嫌な予感がして駆けつけてみれば、次男が長男に殺されかけてたではないか。
事情も聞いてみれば、カリグラという古のサイヤ人であった男を生き返らせようと。息子が強くなっていることは誇らしかった。ラディッツは自分によって自信をなくしていることもわかっていた、だがバーダックとしては己と違う強さを持つラディッツはラディッツなりの鍛え方で強くなって欲しいと願っていた。
慎重で頭でよく考える長男、時折みせる暗い表情が気にかかっていたが。
「随分と暗い表情してんな!、ラディッツ」
「オヤジ……っ」
「てめえの恋人がいなくなったからかぁ?、情けねえ顔しやがって!!」この言葉は自分にも指している、後悔ばかりだ。息子の心を支えてやれなくて、そして不器用なりの仕方しかせずギネに任せっきりで。
ラディッツがこんなにもすがるほど相手の男に惚れている、と嬉しいようだが腹立たしいような。他者から見れば自分は至って平然としているかもしれない、なわけあるか。これでもかと心乱されて息子の心が崩壊した現状にショックを受けている。そして、ラディッツの心をここまで壊し追いかけられてる男にも怒りが湧き上がっている……動揺しているラディッツの傍にぼんやりとその姿が見える。赤と黒の瞳に、龍の角…顔にある痣が印象的だがそのギラギラと輝く瞳とニヤリと笑う顔……ヴィランや魔王という言葉が合うような悪魔的美しさを持つ男だ。これがラディッツの恋人か、と父親のかんからわかった。
「てめえがラディッツの恋人か…」小さく、バーダックは低く唸る。なるほど苛烈なまでに眉目秀麗で、ラディッツと似た顔立ちでありながらもこちらの方が遥かに大人なようだ。
『はじめましてか…?お義父さん』一切思ってなさそうな口ぶり、ラディッツのことをもっとおとそうとする魔王。バーダックはそのものの姿に遺伝子レベルの恐怖も感じたが、それより父としてこの男をうたなくてはとおもった。フリーザよりも恐ろしく、破滅を呼ぶこの魔王を。
『俺から生まれた塵芥風情が……、分を弁えろ痴れ者が』動揺するラディッツをよそに赤黒い手はバーダックへと襲い掛かる、経験から本能から避けるが瞬時にわかるこの手に触れたら危険だと。
「サイヤ人のくせにそーいうもんつかうのか?」
『バカを申すな、俺は生まれがサイヤ人なだけで……元から化け物だ』なんだ、この男。どこから話している、いやそこを考えるのはよそう。カカロットのようにスーパーサイヤ人へとなれない自分はすぐやられてしまう。
気弾を放ち赤黒い手の攻撃を受け止めつつ、バーダックは悟空の様子を見る。何とか意識を取り戻したが、体は上手く動けてなさそうだ。もしやと相手を見ると半透明の化け物はオーバーなリアクションでやれやれとしている。
「お前がやったのかっっ!!」
『さあな?、勝手に寝たのは向こうだぞ』その不気味な顔にバーダックはぞわりと寒気を覚える、フリーザよりもこの男は恐ろしい。ゆらゆらと揺れる蝙蝠のような男、だがその雰囲気は歴戦の戦士よりも重くベジータ王よりも圧倒的なものを感じた。本当の強者だと本能が訴える、今まで戦ってきたものたちよりも遥かに強くそして完全なる支配者であると。思わず身体が震えてしまう。
「……ラディッツ…あんた…っ!もうやめなッッ!!、あんたが苦しむ姿を見たくないよ!」ギネのことばにラディッツはびくりっ、と反応するがでもっと動揺する。
カリグラに会えない…?、だけどこうやって声が聞こえる……
『…あいつらの元に行けば、俺と離れ離れになるぞ猫』
『過去の悪夢だったのだろ?、親父は……殺してしまえばいい全てこの場で』
『出来るだろ?俺の可愛い可愛い猫ちゃん。お前を見てくれなかったヤツらなんか要らないよなぁ』嫌だ嫌だ嫌だ!、唯一見てくれた男をずっと一緒にいようと誓い合った男を失うのだけは。アイツらが邪魔をする…?、親父も母親も。
「そんなの絶対に嫌だッッ!!!」途端バーダックはギネや悟空諸共ラディッツの爆風に吹き飛ばされる。近くにあった木々にあたり悉く叩き壊してしまった。
ラディッツの瘴気がより増えて、赤黒い手も出てくる。そして近くにあった遺体からは黒い手が出て彼に寄り添う。
「オヤジ……オレはっ、あんたに認められたかった…だがもういいっ」
「あんたを殺してっオレは過去の幼いオレとも決別する……。カリグラ以外もういらないっっ!!こんな悪夢消してやる!」途端ラディッツの攻撃は激化してバーダックに襲いかかる、殴られた箇所が電撃を受けたかのようにしびれるが何とかこらえて回し蹴りをするがラディッツからあっさりつかまれ勢いよく殴り飛ばされる。
「バーダックッ!!!」ギネが自分を呼ぶ声が聞こえるが、頭がグワングワンと揺れて上手く立ち上がれない。
ぼんやりと見えるラディッツは血涙を流しているが、その目は絶望に憎しみと様々なものを抱えていた。なぜだ、なぜこうなる。自分が上手く向き合えなかったからか?、それとも……サイヤ人の因果なのか。
黒い着物に赤い彼岸花……、ラディッツが着ている服は己たちの星にはなかったものだ。そうか、この男…カリグラのマーキングか。
「気色悪いことをッ…オレのガキにしやがって…!」頭からたれる血をバンダナで何とか取り押さえて、バーダックは足に力を込めて一気に飛びかかる。直接触れるのが無理ならば、この赤黒い手をまずは破壊してみるまでだ。右手に力を込めて気弾を放ち手の根っこに当てる。辺りを更地にしてしまうほどの爆撃音と衝撃が鳴り響いたがラディッツはそこにたち赤黒い手を放つ。
「ちっ!」空中に飛び何とか距離を取り、相手を見すえる。ラディッツの目は黒い…ひたすらに黒くもう自分のことを敵として見なしている。
後悔ばかりだ、本当に。オレが……ギネみたいに甘ったれてたら良かったか?、いやそれは自分ではない。もっと自分なりに素直に息子と向き合っていたら良かったのだろうか。
後悔しても遅い、今は彼を落ち着かせその末でやっていくしかないのだ。
「くそっ~…!オラのからだっうごいてくれっっ」
「無茶するんじゃないよ!カカロット!!、とうちゃんがなんとかしてくれるんだから!」
「…っちげぇんだ、ラディッツのヤツ……とはオラも決着つけなきゃなんねえ…!」
「それはっそうだけど…!あんたもラディッツも私の大事な息子なんだよ!!。ラディッツの心をッ私たちはちゃんと見てあげられなかった…!??」
「あぶねえっ!!」とたん、赤黒い手がギネと悟空に襲いかかり悟空はなんとかギネを抱えて避ける。襲われた場所は地面がえぐれ、クレーターのようなものが出来上がっていた。
「うん♡かりぐら……わかってる…オレ、全部殺すから…♡」
「ラディッツっ…!あんたっなんて顔を…!!」恍惚的な顔、それこそ洗脳されたのかと言っていいほどに蕩けており己の知らない男に骨抜きなようなラディッツ。
ギネは血が出るほどに歯を食いしばる、ラディッツは…幼い頃からどこか大人びていた。王子などの前では年相応な子としてもいたらしいが、やはり不意に暗い顔を見せたり自分にも一人でやるからと言って何でもかんでもやろうとする子ではあったのだ。
誇り高い戦闘民族サイヤ人、そしてバーダックの息子として……自分はそんな息子を誇りに思いつつも頼りきりだったのかもしれない。なぜなら今ではその赤い男に囚われ恋人としてあるのだから。ラディッツはその年上の男に満たされつつも1人にされたくない、と悲しんでるように見えるのだ。
「ラディッツ、ごめんね……私たちがッあんたを頼りきりすぎていたよ…!。話をしよっっ!、もし私たちに「黙れ」!?」
「今更親ぶるのか…?、あんたらにはカカロットがいるだろ。親父にそっくりな…オレは、カリグラがいるからいいッ……邪魔だ!?」
「ギネにふざけた口を叩くんじゃねえッッ!!!」
「ろくにオレのことを見てこなかった野郎がオレに意見するなッ!!!!」瘴気とともにバーダックと殴り合い、ラディッツは打ち勝ちはじき飛ばす。
そうだ、そうだ…王子の護衛に幼くして抜擢されてこき使われて我慢というものを強いられてきた自分。
強戦士バーダックの息子としてみられ、見比べられてきた自分。その苦労をお前たちがわかるのか?、ベジータたちからは馬鹿にされ何でもかんでも押し付けられてきて…孤独だった自分にお前たちが何がわかると。
また憎悪と怒りが膨れ上がってくる、ああそうだ──
「お前たちのせいでオレは孤独になったんだ」みてこなかったきさまたちのせいだ、殺せ…殺せと心が呼びかけてくる。そしてカリグラの声も聞こえてくる──
『そうだ、殺れ。全てを滅ぼせ』
『俺とお前の楽園を作ろう』ラディッツはその言葉にこくり、とうなずく。そうだ、そうだ彼と自分の楽園のためにもこの悲しくも身体を引き裂くほどに辛い悪夢から目を覚ますためにも。
『ほら猫ちゃん……まずは1人、やらないとな?』
「ああ…オレは殺るぞカリグラ」そういいラディッツはまたバーダックへと襲い掛かる、とたん悟空がなんとか身体を動かし二人の間に入り攻撃を受け止めるが血を吐き膝を崩す。
「カカロットッ!」
「でぇじょうぶだ……っ、はははっやっぱつえぇやラディッツ」
「…邪魔だカカロット、まずはお前からか?」
「させるかッッ!!」バーダックは瞬時にラディッツの攻撃に反応して気弾でどうにか受け止め、遠くへととばす。このまま戦ってもジリ貧だ、おまけにラディッツはギネの言葉にすらはむかい聞こうとすらしない。
「ちっ!(どうしたもんか、カカロットもこの状態だとジリ貧だ)」おそらくあの赤黒い手と黒い手は役割も何かあるはず…、赤黒い手は恐らくあのカリグラと呼ばれる男の力が強くあるやつなのだろう。
ほぼ完全に独立してラディッツを守らんと動き、攻撃を仕掛けてきている。そして黒い手…ラディッツの足元に基本あり、何か栄養か…力を送っていそうだ。大地に根を張り運んでいるような気配がする。
「……」どうしたものか、壊そうと思えばやれるかもしれないが何かいけない導火線に火をつけてしまうのかもしれない。
バーダックはゆっくりと下がり、相手の動きを見る。そして呼吸を深く吸い、きっと睨みつけて覚悟を決める。あの赤黒い手からラディッツを引き離そうと。触れたら危険なのはわかる、恐ろしいことが起こるかもしれないとも。だがそれより我が子のことだ、ラディッツは命を張り好きな人を復活させようとしてるのだ。己もその命くらいはかけないといけないだろうと。
「目ぇさましやがれ!!!ラディッツッ!」赤黒い手はやはり自分が疾風のごとくかけていけば襲いかかってくるものによっては、剣のように自身を振るい攻撃してきて首が斬られそうになる。
今だ、とラディッツに手を伸ばす。ラディッツは動揺しつつも己に手を伸ばそうとしたところニヤリと笑った。
「かかったな……赤い赤い花」どぷり、と深く刺さる音が聞こえる。
「ぐは…!?」戦闘服を貫き脇腹を赤黒い手が突き刺したのだ。何が、一体何が起きた。ラディッツの手を握ろうとしたとこ小さい幼子のようなサイズの赤黒い手がのびて刺してきた。
そして指示を出したであろうラディッツ本人はケラケラと子供の時のように笑っている。
『よくやったなぁ、猫ちゃん』
「ああ…♡オレ、やったぞ!。カリグラ!!」ギネの断末魔のような叫び声が聞こえてくる、悟空の声も。
幸い致命傷でとどまっているが、ラディッツはやってやったぞ!カリグラ!!とケラケラと笑ってばかりだ。
なんで、何故とバーダックは考えるがひとつだけ言える。息子は父を超えたということを。油断させたとこ攻撃してきたがそれも戦闘のひとつだ。やはりラディッツは自分とは違う強かさと確かな目を持っている。
「たくさんたくさん咲いたな…赤い花が。カリグラの方が……綺麗だなぁ」
「バーダックッ!バーダックッッ!!いやっ!嫌っっ!!!」
「っ父ちゃん!?」仙豆を、とやろうとした所ラディッツはまたフラフラと歩き始めた。
「カリグラ~…次のお花を見に行こう♡」悟空は止めようにも今のラディッツの状態じゃどうしよう、と悩み始めたとこギネが立ち上がりラディッツの方へと走る。
虚ろな目で歩き始める息子の前に立ち、平手打ちでギネはラディッツの頬を叩く。
「バカっっ!バーダックにあんたっ父ちゃんに「貴様らの責任だろ?、それは」!?」何を、となった瞬間大地が揺れ仙豆をたべどうにか意識を回復させたバーダックも何だと驚きあたりをみわたす。
砂漠の大地のような空は途端赤黒く染まり大地が割れ、石の花が……ああそれこそ大地の彼岸花のようなものが出てきたのだ。
「あれはっ…!?」悟空も恐ろしく1歩下がる、するとうしろに時の界王神と共に居たトランクスが現れた。
「トランクス!それに時の界王神さま!!」
「っ間に合わなかったのね…!」
「悟空さんっ!、すみません間に合わなくて…。時の界王神さまあれはっっ」あんなもの見た事がない、地獄に咲くような……いやそれよりもおぞましい気配がある。
「……カリグラの、復活の土台よ…。昔から変わらないわね!、そのパフォーマンスぶりも!!」友人たちのにもあやかってなのか、果は己のあだ名地獄の君にあやかってか。
瘴気が花々へと集まる、そして周りの死体から生えた手たちは皆まるで彼を王としてむかえる兵たちのように頭を垂れた。そして少女たちが歌うような、地獄の無邪気で純粋な闇のような言葉の小唄が響き渡る。
「死にゆく呻き」『花のよう』
「『開け根の国 根のやしろ』」暴風とともに手たちは飛び散り、ギネも遠くへと飛びそうになるが時の界王神が力で皆を支えてどうにか耐える。
「…っっ!、カリグラっ…君封印ついでにと全てを取り戻したのね!!」中心にある大きな赤黒い手が花開くように開きそこに現れるは赤いひたすらに赤くそして黒い彼……カリグラだった。
「我 目覚め戻れりぃ…!、か?」散弾銃をどこからか出してまるで復活の火花のように天に打ち放ち弾丸の雨を降らす。爆撃の激音を響き渡らせ、大地にあるものをことごとく破壊しそれらは時の界王神やトランクス達にも当たりそうに振り注ぐ。
「っ随分と派手なご登場だな…!、息子の恋人さんよ」こいつに一撃やらないと気が済まない、バーダックはどうにか空を飛び彼の前へと歩む。これが、あの息子の恋人…実物を見れば見るほど恐ろしい。
震える手を武者震いへとかえ、右手に全ての力を込める。白く淡い気が拳にこもりバーダックは復活した大魔王へと放つ。それはまさに勇者の光のようで空を照らし一線の光がバーダックを照らす。
「地獄へっ…!、帰りやがれっっ!!!!」この男は息子の恋人である男は復活させてはならない、己の命を全ての運命を変えるにしても本能でわかりまっさきに何よりも誰よりはやく突撃した。
「…愚かな猿が」対するカリグラはバーダックに目線のひとつもやらず興味が無いとおぞましい触手を出しうちかまえる。
「実力差を分からぬ悪しき猿が 、ぞろぞろと来るでないわ」
「カリグラッ!!!!」バーダックが殴り飛ばそうとしたとこ二人の間にラディッツが入ってくる、バーダックはしまったと力を抜くがその瞬間触手に飛ばされ石の花びらのとこにぶつかり瓦礫とともに崩れガクッと倒れた。
「…猫……大義よ…こちらに来い」フッとラディッツには花でも咲くような優しげな笑みを浮かべカリグラは赤いマントでラディッツを包み込んだ。そして、時の界王神たちに目線をやる。
「俺がいなくて寂しかったか…?ばばあ」
「君がいなくてむしろ平和だったよ…、ラディッツの心の以外はねっ」
「で、あるか。…ああお前たちだろ?ラディッツの親御さんは」にこり、と見たものによっては見蕩れるような笑みをカリグラはうかべる。だがバーダックたちにとってそれは死神の笑みだ、息子をさらっていく最悪な死の死神の。
そしてバーダックとギネは驚く、カリグラのマントに包み込まれたラディッツの笑みがなんとも明るくそしていちばん嬉しげなことか。
「ここにラディッツを留めてくれたこと感謝する、地球でなくば…俺のとこにも繋がらなかったがまあ何とかなった」
「カリグラ遅いぞ…!、オレ待ったからなっずっと花届けて」
「そうだなぁ、お前を待たせすぎたようだ。猫から花を貰うのが嬉しくて嬉しくて、な?」死屍累々のなか2人の柔らかな雰囲気がなんと歪なことか、ラディッツの方はこちらに視線をやることも無くカリグラのことしか見えてないように振る舞う。
2人は否が応でも突きつけられる、この男…カリグラは腹立つことに自分たち以上にラディッツのことを見ていたのだと。だから慎重なラディッツは彼との恋に落ち、そして恋焦がれ狂うほどに求めたのだ。
「……この人はっ、私たち以上にラディッツをっ見てたというのかい…!」息子のラディッツはこちらに目をやることなくカリグラ、カリグラ!と彼の名前を呼びくっつく。その姿は少女が愛しい人を見て抱きつき愛し合うようであのラディッツがと周りは騒然してしまう。
「ラディッツ…!、お前っ……こっちに戻ってこい!!。そいつは危険だ!」バーダックは痛む傷を抑えながらラディッツへと叫ぶ。
本能が警告音を出している、あの男は危険だと。ラディッツを離した方がいいと。件の男はニヤリと笑い、ラディッツに声をかけた。
「お前の父親がそう言ってきてるが……、どうする?」スリスリとカリグラに擦り寄りマントに包まれていたラディッツはその言葉にどうでもいいと言いたげな顔をうかべる。
「父親…?、知らない。どうでもいい」
「っっ!!??」まさかの息子からの言葉にバーダックはショックを受けて、目を見開き冷や汗を垂らしてラディッツのほうをみる。ラディッツはそんなバーダックの視線から顔を逸らし、カリグラにすり寄る。
「…なぁ、カリグラ。ここのやつらなんかどうでもいいから早く帰らないか?、…オレもう待てない」
「…何だ急に、甘えんぼさんか?」時の界王神は2人の光景に驚きながらもラディッツのことを思うならば、カリグラがこのままいた方がいいのだろうかと思い悩む。
カリグラが完全復活した今、こちらに打つすべはない。かつての封印も彼が自らその運命を選んでくれたからこそなったようなもの、こうやってラディッツという想い人との逢瀬を楽しむカリグラを止めるすべなんかないようなものだ。
「せっかくだ、ケーキ入刀のように…世界ごと滅ぼしても良かったのになぁ」
「ん……、それもいいけどオレカリグラと2人っきりで楽しいことしたい」ギュッ、とカリグラの腕に抱きつき胸を当てる。娼婦のようなラディッツの姿にギネたちは騒然として立ち尽くす。悟空もだ、あんなに強敵でそして大柄だった男がカリグラが現れてからずっと女子のようなのだから。
なんなんだ、このカリグラという男は…ラディッツのことをほぼ女子にしてしまって自分たちにはこれでもかというほどのプレッシャーを与えみてくる。
"ラディッツに話しかければ次は殺す"、そうプレッシャーと殺気を送ってきて。
「カリグラっ…!、どういうつもり!?。皇嵐様とのッ「もちろん皇嵐の娘たちがいる世界は残すつもりさ」!??」
「…俺もやぁっと、全ての魂を集めれて完全になれたのだ。身体もどうにか取り戻せてな?、ラディッツにちょっかいをかけてきた連中のことを滅ぼしたくなっただけ……皇嵐との時空は確保するさ」
「あれは俺の世界でもある、そして俺のラディッツたちの大事な世界だ。それ以外が要らない、と話してるだけだ」要らない、いらない、イラナイ……余分な虫共はつまなくては。ラディッツに手を出して傷つけようとしてきた連中を、自身を求め頑張ったラディッツにちょっかいをかけてきた連中を。
余分な枝を取らなくては美しい花は咲かない、だから粗末なものを刈り取るだけなのだ。
「仮に世界のバランスだのなんだのとあるなら……、俺が作ればいいだけだからなぁ?」
「カリグラっもしかして……!?」影を宿し薄気味悪く笑うカリグラに時の界王神はまさかの考えをよぎらせる、そうだ。何故こうも早く復活できたのかそして…なぜ彼はここに来れたのか。
これをよぎらせなかった自分はなんだったのか、こわかった。恐ろしかったのだ。この男が本当の意味で
天を喰らったということが、カリグラの底知れぬ気配とオーラに時の界王神はゆっくりと唇をふるわせ口開く。
「もしかしてっ……黒王、様をやったの…?」
「まだ殺りはしていない、封印はしたがな」黒王…、己たち全ての生命の絶対的な父のような存在。世界のシステムを本当の意味で作りだした男でカリグラが契約している魔神の創造主でもある。
「やつの動きを封じるために今まで黙っていたがなぁ…、殺すならいつでも出来るぞ?。俺のラディッツが集めてくれていた瘴気…そして若造が研ぎ澄ませた力……それらを合わせればな」なんという事だ、つまりいまは彼こそ絶対的な主となったのだ。2000年の時を超えて、ただでさえ完璧な存在だったものがよりだ。
「時の界王神様、どういうことですか…!?。その、黒王というのは以前話された皆様より上の…!」
「そうよっ…、あまり知られてはいないけど私たち界王神の中では絶対的なお方なのよ。魔界にも…っ!、カリグラはそれを実質として消したようなものなの」
「言い方が悪いなぁ、まっそのとおりではあるがな。いつか大地と口付けさせてやる、と思っていたからその通りにしただけだ」ふっ、と笑う彼の顔はまさに魔王と言いたげな冷たく純粋な水で作られた氷のようだ。
「そしてこれからは俺が支配者だ、とな…」ここまで口角上がるのかと言うほどに、上げてカリグラは告げる。
彼の吐かれる言葉の重み、そして重圧……本人の言う通り"支配者"と言う姿にふさわしい。
「…ラディッツを、連れていく気か…っ?」
「…ああ、俺の可愛い恋人だからなぁ」ラディッツの方はバーダックの言葉を聞かず、カリグラの言葉に恋人という単語に反応して顔を赤くしている。
カリグラの方も目をくれず、ラディッツの頭を撫でて猫を可愛がるようだ。
「ふふっ…かりぐりゃあ~♡」
「…それでもっ、せめてっ息子と話をさせてください!。あの子のことをっ理解してこなかった私たちに!!」
「やらん」必死にどうかと希うギネの言葉にカリグラは冷たくただ一言を放ち、その紅玉の輝きと刃の鋭さをひめる赤い瞳でギネのその涙で潤んだ瞳をとらえる。
「…今までお前たちはラディッツに甘えていた、そして……最期はカカロットの方を心配してたではないか。ラディッツはできる子だから、と心配はすれど次男よりはあまりなぁ」
「さすがはサイヤ人、格差がある。お前たちがサイヤ人の中でも親をしているというのでは反吐が出るわ」
「…っ!、そこはっ……言い返す言葉もありません……だからこそ私たちはっこの子に…!」
「なあカリグラ、もうそんなヤツらどうでもいいだろ。なに?オレ以外の女を見るの」
「まさか、俺たちの逢瀬を邪魔するやつに威嚇してるだけだぞ猫ちゃん」
「らしいことを言いやがって…!、お前だってラディッツを捉えてっ自分のものにしようとしてるだけだろうがッッ!!!」あまりにも溢れる感情の激流のせいか、バーダックの髪はふつふつと一部髪の毛が金髪へとかわりバチバチっとスパークを放つオーラをまとい始める。
「おお悪しき猿が金の猿にでもなるか?、…"平伏せ"」王の言葉の重みは、重圧となり身体にのしかかる。ミシミシと骨がひび割れるようだ、バーダックは骨を全て折る覚悟で無理やり身体を動かしカリグラへと力を込めた気弾を放つ。
「くたばりやがれっっ!!!」
「…効かんわ」一線赤黒い剣から斬撃を放ち、バーダックへとうちかえした。
「「バーダックっっ!」」
「っ父ちゃん!」
「ぐっ…~…!!」身体が痺れているのか、上手く立ち上がれずバーダックは倒れてしまう。
がはっ、と吐血し時の界王神は駆けつけてどうにか時を操りダメージがこれ以上蓄積されないようにと術をかけた。
「カリグラッ!、あんたっ一応弟の子孫よ!?。それに何するの!!」
「時空違いだ、たわけ。…確かにユリウスのではあるが、それがなんだ?」
「愚弟のなんぞ興味無いわ、どうした?。冷静さなくしたか」そうだ、カリグラは実弟であるユリウスのことに興味はない。本当に血縁たちが持つ感情、というものがないのだ。それらは全て"ラディッツ"という存在に注がれている。
それは分かっている、だが言いたかった……どうする今の彼は容赦がない。完全に魔王としての顔が出ている。
「…カリグラ、もう行こ。もうオレいやだぞ待たされるのは」
「…なんだ猫ちゃん、もう我慢の限界か?」
「当たり前だッ、カリグラがほかに目線行くのも嫌だぞ!!」ラディッツの言葉にカリグラは優しく笑い、その怒りに震える唇に軽く口付ける。
「らしい…、俺の愛しい姫が痺れを切らしてるからなぁ。今回は去るか」ずずっ、と重低音の音がひびき2人は赤黒い瘴気に包まれる。
「待てっっ!」
「待ちやがれッッ!!」なんとか重圧からバーダックと悟空は起き上がり気功波を放つ。
真っ直ぐに瘴気に包まれたカリグラへとむかう。
「…性懲りも無く来るな、猿共がッッ!」赤い瞳で睨みつき、赤黒い手を瞬時に召喚して2人をたたきつぶす。ニンゲンが蚊を叩き潰すようにだ。
地面に恐ろしいほどの大きさの手が跡として残る。
「っカリグラァ!!」時の界王神はふたりの倒れる姿を見て、密かに込めていた力を放つ。
移動しようとする一瞬のすき、そこが狙いどころだ。
押さえつけて、今のうちに何とか……バーダックたちが戦ってるすきにとったあの銃で。カリグラを"唯一"倒せれる銃で。
引き金を引き時の界王神は放った。弾丸が放たれる音と空間を切り裂くような音が響く、ゆっくりと放たれた相手は目を開き口を開いた。
「効かんわ…今の俺にはな」剣で弾き返し、時の界王神の頬へとかすらせラディッツの肩をだきなおす。
それは二度と離さない、という程に力を込められていて執着や依存などとは言い難いほどの感情が込められていた。
「…去るぞ、猫ちゃん」
「あぁ……もっとオレを可愛がってくれカリグラ」
「じゃあな…、愚かな奴らよ」2人は包み込まれ赤黒い霧となり姿を消した。
「ラディッツーーーっっ!!!」ギネとバーダックは喉が潰れるほどの声を上げてさけぶ、息子は赤く黒い大きな魔王へと攫われてしまったのだ。
記憶の中でも見た事のないほどの嬉しそうな笑顔を浮かべて。
