抱け我が胸
「は……?」カリグラがまた封印された、いや正確に言えば戻されたと言った方が正しい。また、また??。隙をついて、オレを庇ってやられた。いつもの彼なら普段の彼ならば咄嗟だろうと強大な力で弾き返せれてたのに。
オレが近くにいたから、オレが…オレが彼の力に耐えきれず壊れると分かってたから。
『ラディッツ!!!』そういいやられた、水色の鎖が巻きついてカリグラは何とかしようともしてくれたがオレも人質に取られて。
クソが、と初めて顔を歪めてだ。周りにいたウイスたちは何も出来ないと言いたげに顔を歪めてた。なんで、なんで……
『ラディッツさん!落ち着きなさい!!あなたが慌てても状況は変わりませんよ!』なんで、なんで………オレはバカだ。カリグラとこれから先もずっといられると思った、あいつもそう言ってくれたし。オレだって……カリグラとずっと。
もっと素直に好きだといえばよかった、もっともっと愛してると。唯一自分を見てくれた相手に、『お前は弱くない』と唯一言ってくれた男に。愛してる、ずっと愛していると。もっと抱き合えばよかった、キスもハグも何もかも……彼からオレはもらってばかりだったではないか。
『愛してるぞ猫ちゃん──』あの甘い夜のような香りを持つ声は聞こえない、返してくれない。
「かりぐら……」名前を呼んでも彼の声は聞こえない、シャラシャラと彼がくれたチョーカーが揺れるだけ。
そこから先はおぼろげだ、時の界王神たちと何かを話してもう今日は家にもどれといわれてウイスに支えられて帰ったくらいしかない。
「ラディッツさん……、カリグラさんならどうにかして帰られると思います。だから、あなたはよく食べて寝てくださいね?」
「…………」やだ、何もしたくない。カリグラと一緒にいないとただでさえ寝れないし、食事も喉を通らない。
「オレが、弱かったから…」カリグラは本気を出せずやられた、ウイスからもひとつ言われた。
『あの人はご自身よりあなたを選んだ、そういうことですよ…』オレが弱かったから、オレが……あのカリグラの器のオレみたいに悪魔と契約していたりそれともなにかしてたらかわっただろうか。
頭が割れるように痛い、赤黒い天蓋ベットに転がっても彼の残り香が薄らとあるだけ。
「かりぐら…?かりぐらぁぁーーー!!!」なんで、なんでいない。いつもならおかえりと抱きしめてくれるのに、あの赤いマントで包み込んでくれるのに。
嫌だ、鬱陶しいと言っても口付けてきてとろけさせてくれるのに。あの赤い瞳で優しく見てくれるのに。
何回泣いたかも分からない、どうしたかも。何もかも喉に通らない。頭が破裂しそうな程に痛い。何時間すぎただろうか、下手すれば何日もかもしれない。唇も枯れて割れてきた時にずっと赤黒い手が床から伸びてきた。
「……おまえ、は…?」カリグラがよく戦いでも私生活でも扱っていた魔の手だ。カリグラの力で確か作られたと言う。
そういえば抱かれてる時もこいつらから色々と……顔があつい。
赤黒い手はオレの頭へと伸びてきて、優しく撫でてきたカリグラがずっとしてくれたように。
『俺を追いかけてくるか何かしてこい』、と言われてるようだ。ああそうか………
「全部やればいいんだ」強くなるために、そうだ。あいつはオレを迎えてくれた、ならばオレが今度はあいつを迎えに行く番だ。
随分前にカリグラのとこのオレがしていたことがある、あいつが地球に来た理由はオレみたいに弟を迎えにじゃない。贄として命を捧げ、暗黒闇魔界へのゲートを開くためだった。
高位の魔族と契約し、一定の条件を満たしていたカリグラの器のオレはあとは贄として捧げる命だけだとなってそして調べに調べて気づいた。地球がそこに繋がるところだと。
オレは悪魔と契約はしていない、だがカリグラとは懇意の仲だ。何度も交じりあい、何度も彼からナカに出された…だからほかと比べると体質が違うとも聞いた…条件は満たすはず。
「カリグラ……」オレにはあのカリグラの来世であるオレのような冷酷さや計算高さはない、あいつはカカロットに対して一切の感情も示さず"兄"という存在であったと示しつけてから殺そうとした。
カリグラも他者から聞く限り兄弟にはそのような対応をしていたと、オレは…?。いや気にしても仕方ない、それにもしこれから先……
「カリグラに会えなくなる方が辛い…」想像しただけでも血の気が引いていく、あの甘く優しい顔も薔薇の茨のような鋭くも的確に来る快楽も与えられなくなるのだ。
あいつのあの大きくもやさしい手で頭を撫でられることも触れられることもなくなるなんて、嫌だ嫌だ……またあの孤独な日々が続くのか?。カリグラなしの明日なんて考えられない、そんな世界なくなればいい。オレを1人っぼちから救ってくれていつも見てくれた赤い瞳、抱き締めてくれてお互いに体温を分け合った腕もなくなるなんて。
ああまただ後悔ばかりだもっと好きだといえばよかった。愛してるとも。ずっと、ずっとそばに居てくれて感謝していたとも。
『泣くな猫ちゃん』赤黒い手が頬に伝う涙を拭いてくれる、そして彼の声が聞こえてくる。幻聴かもしれない、でもいい……あいつの声も匂いも忘れたくない。
「かりぐらっ…すき、すきすき……愛してるっ…」あいつの全てが欲しかった、心も過去も未来も何もかも。オレみたいなちっぽけなやつが何を、と思われるかもしれんがほんとうに。皇帝カリグラでもない大魔王のでも…ただカリグラ=ガイウスその人全てが欲しかった。
赤黒い手に軽く口付ける、ほんのりと彼の甘い香りがしてきた。彼の力で出来ているからだろうか。
「…お前たちも、手伝ってくれるよな?」赤黒い手たちは頷くようにこくりとしてオレを包み込んできた。
暖かい、密かに彼の温もりと近い……。オレがもっと強かったら彼のことを救えたのだろうか。ずっと微睡みながら彼の名前を呼び続ける。
「カリグラ…かりぐら……カリグラ…好き、愛してる…」オレを唯一見てくれた優しい黒い光、何にも負けない沈まない黒い太陽。 お前のためなら、オレはなんだってするから。だから戻ってきたら──
「オレのこと、また抱きしめて…褒めてくれよカリグラ…」夢の中にいればカリグラに会えるかもしれない、そんな思いを抱きながらまぶたを閉じた。
そこからのオレの行動ははやかった、こっそりと時の巣へときて巻物を取り赤黒い手たちと共に命を次から次へと奪っていった。何日も何日もかけて。
そこでカカロットのおさないころをみた、腕白にやんちゃに動くあいつを……ああだがどこかで聞いた世界の主人公の魂は格別で質がいいと。ならば奪えばいい、オレに躊躇いはなかった。両親に託された弟、形見……そんなの関係ない。カリグラのために、あいつのためならオレは鬼にでも大蛇にでもなんにだってなってやる。
赤黒い手と黒い手たちが寄り添い歩こうとする自分を支えてくれる、これならば何時でもずっとカリグラのために動けれる…。
「ああ、カカロットだけじゃないな」上等な魂たちは……ベジータたちもある。そうか、そこのとこも奪わなきゃやらなきゃ…カリグラなら褒めてくれるはずだから。
『よくやった猫、褒めて遣わす』またあの大きな手で撫でて欲しい、優しくも甘く麻薬のような赤い瞳でオレを見つめて欲しい。
「…カリグラ、オレのこともっと見て♡」もっともっと殺して、命を捧げてお前に逢いに行くから。迎えに行こうカリグラを──
フラフラと歩いては一つ一つと命を刈り取った、ああそういえば花の手入れとかでも必要のない花を刈り取り栄養をほかに回していくとか話があったなと思い出す。
そう、オレはそれをしてるんだ。カリグラという赤く鮮烈な花に捧げるために、命を捧げてるんだ。オレの、オレだけの花。
意識を失うまで、それでも尚…花を刈り取っていく。ひとつ、またひとつと彼のとこに向かうために行くためにただひたすらにその作業を繰り返す。
そんなことを繰り返していくうちに、頭の中に歌が聞こえてくる……
『一つ二つ三つの石』『賽の河原に拾いませ』『黒鬼いまして四つを壊す』
「あな口惜しや愛おしや……」思わず口から出た言葉、何故か出てきてしまった。ああ歌と同時に悲しみが溢れてくる。
「あなた尋ねて 閻魔様」カリグラがいないという現実、そして彼にすぐに抱きしめて貰えないという真実に。カリグラ、カリグラの体温が欲しいカリグラの匂いもその姿も沢山欲しい。
「…かり、ぐら……」ぱきり、と目の前にきた人間たちの首を手折る。 いや、オレが折ったのは花か。
「カリグラ……もっともっと…花をあげるな?」お前がオレにたくさんくれたように、オレもお前にあげるな。赤い赤い……鮮烈な苛烈なお花を。
「…カリグラの恋人が、暴れているって…?」破壊神の星にて時の界王神はビルスに話を切り出した。
ラディッツがいくつかの時の巻物を奪い取り、黒い手たちと共に暴れて数ヶ月近く。自分たちでは難しいかもしれないと考えた時の界王神は協力を求めたのだ。
「……っはい」
「…カリグラさんが封印された現場は私も見ましたよ……黒王様の手が入ってですねそれこそ」
「私たちが、油断していたのもあります…」それは確かに、とウイスは頷きビルスの方へと目線を動かす。
「……あなたがそこまで落ち込まれてるのも面白いものです、ビルス様。様子を見てみましょう」
「そうだね、カリグラのとこのラディッツってやつじゃなく……他の時空のだったよね恋人は」
「そうですね、カリグラさんいわく魔術の才能もありそうだと言われてたような」
「へぇ~…、それはそれで面白そうだね」ウイスはそういい水晶玉からラディッツの映像をだす。
どこかの星でだろうか、ラディッツは幼子のようにケラケラと笑いながらカリグラの力を持つ赤黒い手で次から次へと星の命を吸い取っていく。
母娘が逃げ惑うとすれば母の背中を手で貫き、命を刈り取る。そして娘の顔を赤黒い手で潰して言った。
家々が崩壊していく、ガスが溢れたせいだろうか次から次へと爆発してまさに地獄とはこの事だと言いたげな光景だ。ビルスはその光景に金色の瞳を細めて、ぼそりとつぶやく。
「……魔王の嫁は蛇か鬼、そのような言葉どこかであったよねぇ…。このラディッツはまさにそれだね、いや…魔王の伝い手かな?」カリグラの意思を伝達するような地獄の花…『全てを滅ぼせ』『悉く滅せよ』『理不尽な世界を壊せ』と。
ラディッツのぼぅっとした虚ろう瞳は黒く沼のようで死者を誘う地獄花のよう。ラディッツが腕をふるえばその意思に答えるように赤黒い手もうごき生者の命をうばう。
奪われた人々からまた黒い手が生えてフラフラと幽霊のように歩くラディッツに続きついていった。
死の参列、という言葉が似合うような光景なのだ。
「…そうですね、私は普段の彼と接したことありますが……その時の彼はカリグラさんの恋人にふさわしいかといえば違い修行中のような感じでしたが……今の彼はあの方の人形のようで…確かにあってそうだなと今思いましたよ」
「…ラディッツ…かなり殺してるわね…!、そんなにっカリグラのことが」
「…だろうね、カリグラに狂わされた哀れな1人とおもってもいいね」
「…私達もカリグラさんにまた会いたい、と思ってはいましたがそれ以上なのかもしれませんね」皆のラディッツへの憐憫な思いはとても深いものだ、ビルスの方の顔は険しくこの哀れな命をどうしてやろうかと考えているようだ。
ウイスもつぎからつぎへと命を奪い、じわじわと心削るラディッツになんと罪深い命だろうかと心思う。
「…早く彼は終わらせてあげた方がいいね」哀れな迷える人形に神の手を差し伸べてあげよう。
カリグラ、これは君がしたかったことなのか?。愛しい人を壊し手元に捉えて…、考えても無駄かもしれない。あの男は己たちが思うよりずっとずっと悪であり何よりも誰よりも化け物なのだから。
「いいよ、時の界王神…。今回は君の言葉にのってあげるよ」
「ありがとうございます…」
「今後気をつけることだね…、カリグラに狂わされたものは沢山いることを。
僕も君も…いや神々や魔族も何もかも彼という花神に狂わされたんだよ…それを自覚した方がいいよ」時の界王神はその言葉に反論を述べようとするが、言葉を飲み込む。確かにそうだ、自分も結局神々に彼のことを殺すことは出来ないから封印した方がいいと述べた。
彼本人には君なんか、とよく話したがあの時初めて見た時からあの鮮烈な赤と黒の魂に魅了されていたのだ。神は美しいものを好む、一等美しく眩い光であればなおのこと。そして何より力強くもあれば頼ってしまう……頼まざるを得ないとはいえ近くで見たくもありで彼を手元に置こうとしてしまっていたのはあるかもしれない。
ビルスの言葉全てが間違いだとは言えなかった、少なくともその気配があるからこそ言えない言い返せない。
「ラディッツのこと…お願いします…!、私は時の巣で待っていますっ」
「いいけど、僕はカリグラへの借りがあるからするだけだよ?。そこは勘違いしないでね」ビルスの言葉に時の界王神は苦笑いをうかべてしまう。このお方が彼に囚われていることなんてとっくの昔にわかっていたことだ。
「そんなの……わかってますよ、ビルス様」そうしているとおいっっ!!と咆哮のようにとどろくこえが聞こえてくる。声がする方へと視線をやれば、ふっくらとした体型に頭上に生えた耳…ビルスの双子の兄弟シャンパと天使のヴァドスがそこにいたのだ。
「シャンパ様!?」
「騒がしいやつが来たものだね……」
「あの腹立つカリグラの恋人がこっちでも暴れてるから来てやったんだよ!」
「…シャンパ様、すみませんっ。こちらのことで巻き込んで…!」
「いいけどよぉ…、おいビルス本当なのか?。カリグラが恋人を庇って封印されたって」
「ホントだよ、封印されてなければお前とこんなやりとりはしないね」普段ならば食ってかかってくるシャンパは黙ったまま…、どうしたのだと目線をやれば真剣な顔でそうだよなと同意してきた。
「あいつの恋人、ってやつの顔を見に行ってやるよこのオレも」
「…は??」
「おや、ビルス様とともにシャンパ様もですか?」
「当然だろっ!、カリグラの恋人ってやつがどんなやつなのかって気になってんだからな!!」
「ふふっ、ウイス…。シャンパ様はカリグラ様からあまりにも遊んで貰えなくて拗ねてるのもあるんですよ」
「おや…かわいらしいところがおありで」
「な!に!を言ってんだああ!?、ヴァドス!!。あいつの弱みがなにかきになっただけだっ!」
「カリグラに弱みという弱みは無いとわかってるだろ、シャンパ」相手の顔を見れば拗ねているような顔だがその目は真っ直ぐで分かっているさ、と告げてくる。
「お前一人でも足りないかもしれんだろ、ビルス!。…カリグラのやつが本気でもし、なにかしてるならけっこーきついとおもうぜ」
「……いいだろう、ウイス。留守は頼んだよ」
「畏まりました、ビルス様」
「シャンパ様、運動頑張られてきてください」
「うるさい!うるさーい!!、ったく!いくぞ!!」
「きみたちは軽口叩き会わないといけないのでもあるの?」ビルスはシャンパとヴァドス2人のやり取りに呆れながらもこれが彼らのあり方かもしれないな、と考えつつ赤黒い気を持つ哀れな人形の元へと向かった。
悲鳴が次から次へと鳴り止まない…、最後の一人と手にかけたところでラディッツは少女のようにケラケラと笑い顔を恍惚の色に染めてうっとりとしていた。
「あぁ……カリグラ、ほら綺麗な花だろ…?。たくさんつんだぞオレ♡」心臓の鼓動のような音を鳴らしながらラディッツは、地脈へと命を送る。もっと、もっとだ。彼に会うためには彼にもっと褒めてもらうためには足りない。
沢山捧げよう、それこそ花束の山になるほどの。彼に向ける愛には全くもって足りないのだから。
体にまとわりつく返り血がベタベタして気持ち悪いが、そんなの気にしない。今はただカリグラに捧げるための花を集めることに忙しいのだから。
「…君が、あのカリグラの恋人かい」
「……破壊神、ビルス…」
「おいおい!オレのこと忘れてもらっちゃ困るぜ!!。このシャンパ様も居るのだからな!」双子の破壊神をラディッツは目を細めて見る、細めた目は不思議で彼岸花のような赤色を滲ませていた。
「……随分とカリグラの匂いをつけているね」
「あの男…独占欲滲ませすぎだろビルス」
「カリグラはそういう男だよ…、何かを考えてここまであからさまにしてるのだろうね」
「カリグラの話をするな…」
「…おやおや、随分と苛立ってるようだね?。きみ、カリグラを復活させようと動いてるんだろう」
「……」
「あの男のこと復活、なんて人間には難しいだろ!。…オレたちですら行けないとこにいるからな!!」
「それでたくさんの命を奪われちゃ僕らのメンツが危ないからねえ…、カリグラの恋人だ。すぐ終わらせてあげるよ」
「うるさい…」その時だ、周りの空気が途端重苦しくなったのは。それこそ酸素などが薄くなり、体がしんどくなるような岩がのったようなそのような感覚をビルスは感じた。
カリグラの時とは違うプレッシャー…あのシャンパですら警戒の姿勢へと変える。ずぅっとむけられた黒い瞳は自分たちを捉え、そして離さない。
「カリグラのことを勝手に話すな……カリグラはオレのだ…カリグラはっ、カリグラは!!オレの!オレのだっっ!!!」その途端暴風が吹き荒れ巨大な黒い手達が地面から出てくる。それはラディッツに呼応するように動き、ビルスたちへと攻撃を仕掛けてきた。
「おぉい!?、黒王様っめんどくさい男を出してしまったんじゃねえの!!」
「あの方のなんか僕が分かるわけないだろ!シャンパ!!」途端赤黒い手がレイピアとなってきてビルスの頬をかすめる。予想はしていたことだ、カリグラから彼がトワの魔術に適応し魔力を取り込める体質だと聞いていて悟空より下手すれば手強いのではないかとおもっていた。
ラディッツ自身も動き、邪魔をするなと地底から響くような声をあげて赤い気弾を放つ。それは破裂して辺りに麻痺属性の力を散らしシャンパたちは思わず食らってしまい痺れてしまうその途端空中から叩き落とされめりっと骨に響く攻撃を食らってしまった。
「っが!?」
「ぐぅっ!!」
「……破壊神さまたちよ、先ほど……黒王って名前出したか…?」
「……だしたけどなに」かくっ、とラディッツは首をこちらに向けてその虚ろながらも赤黒い瞳でみてくる。
「教えろよ…、あいつがっあいつがオレからカリグラを奪ったのか?とったのか??カリグラを。オレの命を、オレのッ…オレの愛する男をッッ!!!!!」そうか、ラディッツはショックのあまりあの後意識がうつろいていたとウイスが話していたことを思い出す。カリグラが誰によって封印されたのかも、わかっていても認識したくないとラディッツはなっていたのだろう。オマケにその主から利用されてしまったということも。
黒王は相手の弱点を見破るのが得意だ、そもそも全ての父のような存在であり生命というものをわかっているところがある。
だからこそ、カリグラの強みであり弱点となるものが分かったのだ……恋人であるラディッツを利用すればやつは本当の力を発揮することなくかつてのように庇うことを選ぶと。選ばざるを得ないと。
ずっと……カリグラに執着し囚われていたのだからあのお人は。
「……そうだよ、あのお方がカリグラを封印した」ビルスは軽く目を伏せて開いた後、ラディッツに事実を語る。
「おっおい!ビルス!! 」
「カリグラは君のことを愛している、何よりも。だから利用されたんだよ……君という愛おしい存在を引き換えにどうするかとね」シャンパの顔は慌てていて、いいのか?そんなことを話してと言いたげだ。だがいいだろう、自分にとってもカリグラは奪われたようなものだ。目の前の男ラディッツと、我らが破壊の親たる黒王に。
ああカリグラ、僕の紅い花神……恋と言うにはあまりにも醜くそしてあまいこの執着の心。君にまだまだ笑わせてもらおうと、楽しませてもらおうと思っていたのに。
「カリグラ、が……っオレの、せいで…?」途端怒号はなりやみ代わりにラディッツの絶望に染った声が小さく響いた。ビルスはその言葉に残酷に突き放すように告げる。
「そうだよ、…君という恋人ができたおかげであの男は煉獄へとかえったのさ」シャンパはビルスの厳しい言い方にどうしたものかと頭を抱える。この兄弟としては事実を言った迄だ、と答えてくるだろう。だがこれはいいのか?、いまこの核爆弾のような力を持つラディッツが爆発してしまわないかと危惧してしまう。
「(おいおい〜!これいいのかァ??ビルスのやつも本気で切れてるし、相手のサイヤ人もやばい空気出してるぞ!)」いくら破壊神二人いようとあのカリグラの力を纏うサイヤ人だ、オマケにあの孫悟空の兄……自分たちが下手すれば苦戦するような存在なのに。
「安心しなシャンパ、カリグラの器のろくでなしに比べたら……まだ大丈夫さ」ビルスの纏う気が膨れ上がっていく、久しぶりに見る兄弟の本気にシャンパはその身を震わせてラディッツを見据えた。
「オレの、せい…?オレが……弱いから…オレが…オレがっ……!!」グツグツとマグマが煮えたぎるような音が響いてくる、赤黒い手たちは彼を包み込まんと近づきゆっくりとラディッツを包み込んで行った。
「なぁ…っカリグラ、オレが強ければよかったか?。お前の言う通りちょうしにのったりしてたからかっ、でもっ…オレは…!オレは!!」ラディッツのまわりに赤黒い瘴気が立ち込めていく、ビルスはそれにはっとしてラディッツをみた。これはトワたちの魔術の力にカリグラの力があわさったものだ。
「(早く仕留めた方がいいね)シャンパッ!!」
「わぁかってるよ!」2人して力を合わせラディッツへと破壊玉をぶつける、先程までは己の身の丈の思いをひたすらぶつけていただけだ。
この男があまりにも幼く見え、カリグラによって壊されたようにも見えたから。そして彼に依存しその果てに彼に閉じ込められてるように感じたから。
「オレがっオレが…!!」破壊玉は沈む太陽のように深く強い重力を持ってラディッツを襲う、だが赤黒い手たちが瘴気をまとい巨大な手となりあっさりと破壊玉を壊し太陽系爆発かと言うほどの衝撃で爆発した。
「っゥ!?」
「おぉい!あのカリグラの手があるとオレたちやれねえじゃん!!」
「…あいかわらず厄介なのを授けるね、カリグラ。ほんと、愛ほど歪んだ呪いはないと言うものだよ」ああ彼からほくそ笑まれてそうだ、それこそくつくつと笑い自分に言うのだろう。
『俺の猫に手を出せれると思うたか…?、破壊神2人よ』と。あの瘴気はカリグラの彼に着けた鎖のようだ。自分から離れないように、と手の隙間から見えるのでは両手でラディッツは自分の顔をおおい深く俯いている。
「オレのっオレの……
だから花をつまなきゃ」どろっ、と黒くよどんだ帳のようなものがおりる。ラディッツの声に呼応するように赤黒い瘴気は彼へと集まり包み込んだ。
「なっなんだ…!!?」瞬間叩きつけるような風の衝撃波が襲いかかってくる、ビルスはなんとか空中でこらえシャンパも踏ん張るが熱砂の砂漠のような熱が皮膚を襲いかかられる。
星の爆発の時にもなかったほどの熱に一瞬たじろぐが目の前にある光景にビルスたちは目を見開いた。赤黒い瘴気をまとい彼岸花のような髪色、…別の形のスーパーサイヤ人であろうか。見たこともない光景だ、ああそれこそこれこそ…カリグラの加護を貰った人形のような。破壊の象徴のようだ。
「…綺麗な花だなぁ、カリグラにあげたら喜んでくれそうだ♡」恍惚な顔を浮かべて少女のように笑いトワの魔術もカリグラからのも解放したラディッツはふたりへと襲いかかった。
「グゥっ!?」重い打撃を受けてビルスは姿勢を崩しかける、あの悟空と戦った時より重く重機にでもぶつかられたような重さがあった。
あのカリグラが少なくとも修行をつけたのだ強いことは想定していたが、ここまでとはと冷や汗を垂らす。
「オイビルスッ!」シャンパの方も次から次へと襲い掛かる赤黒い手に苦戦してるようだ、あの手たちやはりカリグラから出来たものたちで彼のように容赦なく自分たちへとくる。
時にはレイピアのような鋭さを持ち突き、攻撃を仕掛けるラディッツのサポートへと回ることもあった。まるで、まるでカリグラと戦ってるようだとビルスはあの彼の若い頃と戦った時のことを思い出す。計算高く空高く飛ぶオオワシのような鋭い瞳と弱点をつく攻撃、狩人や戦士という言葉が合うような打撃。そして斬撃を。
鋭く風の刃が飛んでくる、死神の刃のように鋭くそれはシャンパの首を掠めて血がもみじの葉のように飛び散る。
「っ!?、こいつっ…強すぎないか!??」
「悟空たちがなるスーパーサイヤ人とは何か違うようだねぇ…」ちらりと見れば豊富にあった自然が枯れ果て、命が尽きていく。
手達が星の命を吸い取りラディッツへと送っているようだ。
「あれが根っこのようだね…」
「げぇぇ!?カリグラの力がってことか!」鳥のように飛び避けながら2人は会話をする、つまりラディッツを気絶させたければカリグラの力を押さえつけないといけないのだ。
それは二人がかりでは難しいかもしれない…、どうにかしなくてはカリグラの力となれば星だけではなく世界ごと滅ぼすかもしれない。
ラディッツは左手に力を込めて赤黒い気弾を放ってくる、ビルスは何とか避けるが爆風で体勢を崩しシャンパにぶつかる。
「ビルス!気をつけろよ!!」
「っわかってるよ…!!??」その時だ黒い暗雲が頭上に立ちこめるような暗さが包み込む。
「ふふふ……くくっ…ほら花待てよ……!」赤黒い手に乗ったラディッツが頭上から手とともに2人にのしかかるように落ちてくる。
ずしっっ!!!とのしかかり、ビルスとシャンパは隕石の重みのように感じて地面へとめり込まされた。
土の味が口内に広がり不愉快だ、ビルスとシャンパは怒りからの破壊神の光弾を放つがそれすらも赤黒い手たちが庇いラディッツはくすくすと笑いながらも気弾を無数に放つ。まるで無数の刃を突き刺すように。
「うんっ…♡うんっ♡カリグラ♡これ好きなんだなオレ、とってくるからさ…もっと褒めて♡待っててくれよカリグラ」
「(こいつっ、もしかして心が壊れたんじゃ…!?)」シャンパはラディッツの言葉にはっとする、ラディッツの言葉が何かと話しているような言葉の列なのだ。
もしやこの男はカリグラがその場にいるように感じて…?ああほらビルスめこれでかなりあやうくなっているではないか!。
「なぁーー!カリグラ!!♡このきれいな花をとったらオレを抱きしめてくれる?。オレそのために頑張るぞ♡」木々を押し倒し、瓦礫を投げビルスたちがどうにか抜け出しても間髪ない攻撃が襲いかかってくる。
時の界王神や自分たちの予想以上にラディッツはカリグラの色に染まり、そして危険だったのだ。悟空たちとは違う異端な存在、慎重であり心を隠し生きてきたためか解放されたとたんこの暴れ具合だ。あのブロリーという伝説のスーパーサイヤ人よりも暴れて、物物を壊していく。赤黒い手の攻撃力は当然強い、だが何よりもラディッツの攻撃力だ。破壊神の自分たちの身体にですら響くほどの打撃と蹴りの強さ、気弾の麻痺の恐ろしいことか。
悟空とは違う容赦のなさとおそらく彼の天性の才能からであろうくる、的確な攻撃と欺きは神にすら通じる。
「カリグラ…!、なんて男をそだてたんだかっ」破壊神の攻撃を赤黒い手でふさぎくすくすと笑いラディッツは無数の気弾や攻撃を仕掛けた。
「なぁなぁカリグラ~♡、オレなこの攻撃も今できるようになったんだ」ラディッツが嬉しそうに語った時だ、ズズズッ…と瘴気が構えた左手のところに集まる。
そしてそれらはある形を成していき、ビルスはその光景に冷や汗を垂らした。
シャンパもだ、あれは見た事ある……そう二千年前に。
「あれっは…!」
「カリグラの技じゃないか…ッ!」ビルスもうけた死神の槍、─タナトスの呻き─と周りから呼ばれてる技だ。
それをこの男が?、ラディッツが扱えるというのか。鋭く黒いギラギラと輝く槍はひとつの流星のようだ。
『さあやるんだ俺の猫ちゃん』
「うん♡オレが刈り取るぞカリグラ」その瞬間、空間を切り裂くような音ともに黒槍は投げられふたつに分裂してビルスとシャンパに刺さりそうになる。
「シャンパっっ!」
「わかってる!!」2人は何とか避けてわかれてよけようするが槍は追尾して追ってくる、さながら獲物を狙う蛇のようだ。
これがもしカリグラと同じものなら一瞬でニヴルヘイムだ、これは仕方ないとビルスはさけぶ。
「ウイスッッ!!!!」
『分かりましたよ!』空間に穴を開けてビルスはシャンパの腕を掴み入った。
ラディッツはそれをぼっと眺めて、お花が去った……と小さくつぶやく。
「カリグラにあげるつもりの花が……またとりにいくねカリグラ」ふふっ、とラディッツは妖艶に微笑み虚空を見つめる。
「…明日の行方をたずねやこられ…」モードが解除されラディッツはフラフラと歩き崩れ落ちる、赤黒い手はラディッツを支え優しく包み込んでいく。
ラディッツはこくりと微睡んで行った。甘く蠱惑的な香り…ああカリグラの匂いだ。大好きな、とてもだいすきな。
『褒美をやろうか、猫ちゃん』彼との交合う夢を見る、2人で住むあの黒い屋敷の寝室でカリグラに包み込まれ甘く優しいキスをされながら体内を満たされる夢を。
「カリグラ……ッ」ギラギラと輝く赤い瞳に見つめられながら果ててしまう自分、カリグラに跨り自分自身で自ら彼の滾る肉棒をいれて激しくつかれる。
あまりにも気持ちよくて、そしてもっととせがんでしまうゆめを。
「ラディッツが…ッ?」その頃ラディッツのとこの時空である悟空はビルスたちからはなしを聞いていた。
瞬間移動でこちらに来た時にコントン都の様子がおかしいことに悟空は気がついた。肌がピリピリとしてくる、それこそ…かつてない恐怖が蘇るほどの。時の界王神たちの様子からかなり大変なことが起きている、と聞いた時から察していたがもしやと思い急いでここに来たのだ。
「そうだよ、君の時空のとこのラディッツが大暴れしてるのさ」
「…ラディッツ…」ラディッツ…、あの兄と名乗り悟飯をさらって行った人物。いつだったかは忘れたが復活したフリーザと戦ったあとくらいにだろうか、今ではこの不思議な都で生きていると言われたのを思い出す。
ズキっと頭が痛む、
『…お見事だ』
『カカロット。ガキ、今のうちに助けておけ。殴れば扉は開く』いつの記憶だ…?、光景としてはあのラディッツと戦った時か。ラディッツより黒い、ひたすらに黒い髪に黒い瞳…いつの日か見た宝石のような輝きがあった。
そして、声色はラディッツよりも低くでもするりと耳に入るような落ち着いた声色…。
「(オラはなにか知ってる気がする…)」そう、そのものに自分はうっかり"兄ちゃん"と呼びそうになったのだ。魂の少ししたカケラからの声のように、その男のことを。
「ビルス様はその……あいつと、たたかったんか?」
オレが近くにいたから、オレが…オレが彼の力に耐えきれず壊れると分かってたから。
『ラディッツ!!!』そういいやられた、水色の鎖が巻きついてカリグラは何とかしようともしてくれたがオレも人質に取られて。
クソが、と初めて顔を歪めてだ。周りにいたウイスたちは何も出来ないと言いたげに顔を歪めてた。なんで、なんで……
『ラディッツさん!落ち着きなさい!!あなたが慌てても状況は変わりませんよ!』なんで、なんで………オレはバカだ。カリグラとこれから先もずっといられると思った、あいつもそう言ってくれたし。オレだって……カリグラとずっと。
もっと素直に好きだといえばよかった、もっともっと愛してると。唯一自分を見てくれた相手に、『お前は弱くない』と唯一言ってくれた男に。愛してる、ずっと愛していると。もっと抱き合えばよかった、キスもハグも何もかも……彼からオレはもらってばかりだったではないか。
『愛してるぞ猫ちゃん──』あの甘い夜のような香りを持つ声は聞こえない、返してくれない。
「かりぐら……」名前を呼んでも彼の声は聞こえない、シャラシャラと彼がくれたチョーカーが揺れるだけ。
そこから先はおぼろげだ、時の界王神たちと何かを話してもう今日は家にもどれといわれてウイスに支えられて帰ったくらいしかない。
「ラディッツさん……、カリグラさんならどうにかして帰られると思います。だから、あなたはよく食べて寝てくださいね?」
「…………」やだ、何もしたくない。カリグラと一緒にいないとただでさえ寝れないし、食事も喉を通らない。
「オレが、弱かったから…」カリグラは本気を出せずやられた、ウイスからもひとつ言われた。
『あの人はご自身よりあなたを選んだ、そういうことですよ…』オレが弱かったから、オレが……あのカリグラの器のオレみたいに悪魔と契約していたりそれともなにかしてたらかわっただろうか。
頭が割れるように痛い、赤黒い天蓋ベットに転がっても彼の残り香が薄らとあるだけ。
「かりぐら…?かりぐらぁぁーーー!!!」なんで、なんでいない。いつもならおかえりと抱きしめてくれるのに、あの赤いマントで包み込んでくれるのに。
嫌だ、鬱陶しいと言っても口付けてきてとろけさせてくれるのに。あの赤い瞳で優しく見てくれるのに。
何回泣いたかも分からない、どうしたかも。何もかも喉に通らない。頭が破裂しそうな程に痛い。何時間すぎただろうか、下手すれば何日もかもしれない。唇も枯れて割れてきた時にずっと赤黒い手が床から伸びてきた。
「……おまえ、は…?」カリグラがよく戦いでも私生活でも扱っていた魔の手だ。カリグラの力で確か作られたと言う。
そういえば抱かれてる時もこいつらから色々と……顔があつい。
赤黒い手はオレの頭へと伸びてきて、優しく撫でてきたカリグラがずっとしてくれたように。
『俺を追いかけてくるか何かしてこい』、と言われてるようだ。ああそうか………
「全部やればいいんだ」強くなるために、そうだ。あいつはオレを迎えてくれた、ならばオレが今度はあいつを迎えに行く番だ。
随分前にカリグラのとこのオレがしていたことがある、あいつが地球に来た理由はオレみたいに弟を迎えにじゃない。贄として命を捧げ、暗黒闇魔界へのゲートを開くためだった。
高位の魔族と契約し、一定の条件を満たしていたカリグラの器のオレはあとは贄として捧げる命だけだとなってそして調べに調べて気づいた。地球がそこに繋がるところだと。
オレは悪魔と契約はしていない、だがカリグラとは懇意の仲だ。何度も交じりあい、何度も彼からナカに出された…だからほかと比べると体質が違うとも聞いた…条件は満たすはず。
「カリグラ……」オレにはあのカリグラの来世であるオレのような冷酷さや計算高さはない、あいつはカカロットに対して一切の感情も示さず"兄"という存在であったと示しつけてから殺そうとした。
カリグラも他者から聞く限り兄弟にはそのような対応をしていたと、オレは…?。いや気にしても仕方ない、それにもしこれから先……
「カリグラに会えなくなる方が辛い…」想像しただけでも血の気が引いていく、あの甘く優しい顔も薔薇の茨のような鋭くも的確に来る快楽も与えられなくなるのだ。
あいつのあの大きくもやさしい手で頭を撫でられることも触れられることもなくなるなんて、嫌だ嫌だ……またあの孤独な日々が続くのか?。カリグラなしの明日なんて考えられない、そんな世界なくなればいい。オレを1人っぼちから救ってくれていつも見てくれた赤い瞳、抱き締めてくれてお互いに体温を分け合った腕もなくなるなんて。
ああまただ後悔ばかりだもっと好きだといえばよかった。愛してるとも。ずっと、ずっとそばに居てくれて感謝していたとも。
『泣くな猫ちゃん』赤黒い手が頬に伝う涙を拭いてくれる、そして彼の声が聞こえてくる。幻聴かもしれない、でもいい……あいつの声も匂いも忘れたくない。
「かりぐらっ…すき、すきすき……愛してるっ…」あいつの全てが欲しかった、心も過去も未来も何もかも。オレみたいなちっぽけなやつが何を、と思われるかもしれんがほんとうに。皇帝カリグラでもない大魔王のでも…ただカリグラ=ガイウスその人全てが欲しかった。
赤黒い手に軽く口付ける、ほんのりと彼の甘い香りがしてきた。彼の力で出来ているからだろうか。
「…お前たちも、手伝ってくれるよな?」赤黒い手たちは頷くようにこくりとしてオレを包み込んできた。
暖かい、密かに彼の温もりと近い……。オレがもっと強かったら彼のことを救えたのだろうか。ずっと微睡みながら彼の名前を呼び続ける。
「カリグラ…かりぐら……カリグラ…好き、愛してる…」オレを唯一見てくれた優しい黒い光、何にも負けない沈まない黒い太陽。 お前のためなら、オレはなんだってするから。だから戻ってきたら──
「オレのこと、また抱きしめて…褒めてくれよカリグラ…」夢の中にいればカリグラに会えるかもしれない、そんな思いを抱きながらまぶたを閉じた。
そこからのオレの行動ははやかった、こっそりと時の巣へときて巻物を取り赤黒い手たちと共に命を次から次へと奪っていった。何日も何日もかけて。
そこでカカロットのおさないころをみた、腕白にやんちゃに動くあいつを……ああだがどこかで聞いた世界の主人公の魂は格別で質がいいと。ならば奪えばいい、オレに躊躇いはなかった。両親に託された弟、形見……そんなの関係ない。カリグラのために、あいつのためならオレは鬼にでも大蛇にでもなんにだってなってやる。
赤黒い手と黒い手たちが寄り添い歩こうとする自分を支えてくれる、これならば何時でもずっとカリグラのために動けれる…。
「ああ、カカロットだけじゃないな」上等な魂たちは……ベジータたちもある。そうか、そこのとこも奪わなきゃやらなきゃ…カリグラなら褒めてくれるはずだから。
『よくやった猫、褒めて遣わす』またあの大きな手で撫でて欲しい、優しくも甘く麻薬のような赤い瞳でオレを見つめて欲しい。
「…カリグラ、オレのこともっと見て♡」もっともっと殺して、命を捧げてお前に逢いに行くから。迎えに行こうカリグラを──
フラフラと歩いては一つ一つと命を刈り取った、ああそういえば花の手入れとかでも必要のない花を刈り取り栄養をほかに回していくとか話があったなと思い出す。
そう、オレはそれをしてるんだ。カリグラという赤く鮮烈な花に捧げるために、命を捧げてるんだ。オレの、オレだけの花。
意識を失うまで、それでも尚…花を刈り取っていく。ひとつ、またひとつと彼のとこに向かうために行くためにただひたすらにその作業を繰り返す。
そんなことを繰り返していくうちに、頭の中に歌が聞こえてくる……
『一つ二つ三つの石』『賽の河原に拾いませ』『黒鬼いまして四つを壊す』
「あな口惜しや愛おしや……」思わず口から出た言葉、何故か出てきてしまった。ああ歌と同時に悲しみが溢れてくる。
「あなた尋ねて 閻魔様」カリグラがいないという現実、そして彼にすぐに抱きしめて貰えないという真実に。カリグラ、カリグラの体温が欲しいカリグラの匂いもその姿も沢山欲しい。
「…かり、ぐら……」ぱきり、と目の前にきた人間たちの首を手折る。 いや、オレが折ったのは花か。
「カリグラ……もっともっと…花をあげるな?」お前がオレにたくさんくれたように、オレもお前にあげるな。赤い赤い……鮮烈な苛烈なお花を。
「…カリグラの恋人が、暴れているって…?」破壊神の星にて時の界王神はビルスに話を切り出した。
ラディッツがいくつかの時の巻物を奪い取り、黒い手たちと共に暴れて数ヶ月近く。自分たちでは難しいかもしれないと考えた時の界王神は協力を求めたのだ。
「……っはい」
「…カリグラさんが封印された現場は私も見ましたよ……黒王様の手が入ってですねそれこそ」
「私たちが、油断していたのもあります…」それは確かに、とウイスは頷きビルスの方へと目線を動かす。
「……あなたがそこまで落ち込まれてるのも面白いものです、ビルス様。様子を見てみましょう」
「そうだね、カリグラのとこのラディッツってやつじゃなく……他の時空のだったよね恋人は」
「そうですね、カリグラさんいわく魔術の才能もありそうだと言われてたような」
「へぇ~…、それはそれで面白そうだね」ウイスはそういい水晶玉からラディッツの映像をだす。
どこかの星でだろうか、ラディッツは幼子のようにケラケラと笑いながらカリグラの力を持つ赤黒い手で次から次へと星の命を吸い取っていく。
母娘が逃げ惑うとすれば母の背中を手で貫き、命を刈り取る。そして娘の顔を赤黒い手で潰して言った。
家々が崩壊していく、ガスが溢れたせいだろうか次から次へと爆発してまさに地獄とはこの事だと言いたげな光景だ。ビルスはその光景に金色の瞳を細めて、ぼそりとつぶやく。
「……魔王の嫁は蛇か鬼、そのような言葉どこかであったよねぇ…。このラディッツはまさにそれだね、いや…魔王の伝い手かな?」カリグラの意思を伝達するような地獄の花…『全てを滅ぼせ』『悉く滅せよ』『理不尽な世界を壊せ』と。
ラディッツのぼぅっとした虚ろう瞳は黒く沼のようで死者を誘う地獄花のよう。ラディッツが腕をふるえばその意思に答えるように赤黒い手もうごき生者の命をうばう。
奪われた人々からまた黒い手が生えてフラフラと幽霊のように歩くラディッツに続きついていった。
死の参列、という言葉が似合うような光景なのだ。
「…そうですね、私は普段の彼と接したことありますが……その時の彼はカリグラさんの恋人にふさわしいかといえば違い修行中のような感じでしたが……今の彼はあの方の人形のようで…確かにあってそうだなと今思いましたよ」
「…ラディッツ…かなり殺してるわね…!、そんなにっカリグラのことが」
「…だろうね、カリグラに狂わされた哀れな1人とおもってもいいね」
「…私達もカリグラさんにまた会いたい、と思ってはいましたがそれ以上なのかもしれませんね」皆のラディッツへの憐憫な思いはとても深いものだ、ビルスの方の顔は険しくこの哀れな命をどうしてやろうかと考えているようだ。
ウイスもつぎからつぎへと命を奪い、じわじわと心削るラディッツになんと罪深い命だろうかと心思う。
「…早く彼は終わらせてあげた方がいいね」哀れな迷える人形に神の手を差し伸べてあげよう。
カリグラ、これは君がしたかったことなのか?。愛しい人を壊し手元に捉えて…、考えても無駄かもしれない。あの男は己たちが思うよりずっとずっと悪であり何よりも誰よりも化け物なのだから。
「いいよ、時の界王神…。今回は君の言葉にのってあげるよ」
「ありがとうございます…」
「今後気をつけることだね…、カリグラに狂わされたものは沢山いることを。
僕も君も…いや神々や魔族も何もかも彼という花神に狂わされたんだよ…それを自覚した方がいいよ」時の界王神はその言葉に反論を述べようとするが、言葉を飲み込む。確かにそうだ、自分も結局神々に彼のことを殺すことは出来ないから封印した方がいいと述べた。
彼本人には君なんか、とよく話したがあの時初めて見た時からあの鮮烈な赤と黒の魂に魅了されていたのだ。神は美しいものを好む、一等美しく眩い光であればなおのこと。そして何より力強くもあれば頼ってしまう……頼まざるを得ないとはいえ近くで見たくもありで彼を手元に置こうとしてしまっていたのはあるかもしれない。
ビルスの言葉全てが間違いだとは言えなかった、少なくともその気配があるからこそ言えない言い返せない。
「ラディッツのこと…お願いします…!、私は時の巣で待っていますっ」
「いいけど、僕はカリグラへの借りがあるからするだけだよ?。そこは勘違いしないでね」ビルスの言葉に時の界王神は苦笑いをうかべてしまう。このお方が彼に囚われていることなんてとっくの昔にわかっていたことだ。
「そんなの……わかってますよ、ビルス様」そうしているとおいっっ!!と咆哮のようにとどろくこえが聞こえてくる。声がする方へと視線をやれば、ふっくらとした体型に頭上に生えた耳…ビルスの双子の兄弟シャンパと天使のヴァドスがそこにいたのだ。
「シャンパ様!?」
「騒がしいやつが来たものだね……」
「あの腹立つカリグラの恋人がこっちでも暴れてるから来てやったんだよ!」
「…シャンパ様、すみませんっ。こちらのことで巻き込んで…!」
「いいけどよぉ…、おいビルス本当なのか?。カリグラが恋人を庇って封印されたって」
「ホントだよ、封印されてなければお前とこんなやりとりはしないね」普段ならば食ってかかってくるシャンパは黙ったまま…、どうしたのだと目線をやれば真剣な顔でそうだよなと同意してきた。
「あいつの恋人、ってやつの顔を見に行ってやるよこのオレも」
「…は??」
「おや、ビルス様とともにシャンパ様もですか?」
「当然だろっ!、カリグラの恋人ってやつがどんなやつなのかって気になってんだからな!!」
「ふふっ、ウイス…。シャンパ様はカリグラ様からあまりにも遊んで貰えなくて拗ねてるのもあるんですよ」
「おや…かわいらしいところがおありで」
「な!に!を言ってんだああ!?、ヴァドス!!。あいつの弱みがなにかきになっただけだっ!」
「カリグラに弱みという弱みは無いとわかってるだろ、シャンパ」相手の顔を見れば拗ねているような顔だがその目は真っ直ぐで分かっているさ、と告げてくる。
「お前一人でも足りないかもしれんだろ、ビルス!。…カリグラのやつが本気でもし、なにかしてるならけっこーきついとおもうぜ」
「……いいだろう、ウイス。留守は頼んだよ」
「畏まりました、ビルス様」
「シャンパ様、運動頑張られてきてください」
「うるさい!うるさーい!!、ったく!いくぞ!!」
「きみたちは軽口叩き会わないといけないのでもあるの?」ビルスはシャンパとヴァドス2人のやり取りに呆れながらもこれが彼らのあり方かもしれないな、と考えつつ赤黒い気を持つ哀れな人形の元へと向かった。
悲鳴が次から次へと鳴り止まない…、最後の一人と手にかけたところでラディッツは少女のようにケラケラと笑い顔を恍惚の色に染めてうっとりとしていた。
「あぁ……カリグラ、ほら綺麗な花だろ…?。たくさんつんだぞオレ♡」心臓の鼓動のような音を鳴らしながらラディッツは、地脈へと命を送る。もっと、もっとだ。彼に会うためには彼にもっと褒めてもらうためには足りない。
沢山捧げよう、それこそ花束の山になるほどの。彼に向ける愛には全くもって足りないのだから。
体にまとわりつく返り血がベタベタして気持ち悪いが、そんなの気にしない。今はただカリグラに捧げるための花を集めることに忙しいのだから。
「…君が、あのカリグラの恋人かい」
「……破壊神、ビルス…」
「おいおい!オレのこと忘れてもらっちゃ困るぜ!!。このシャンパ様も居るのだからな!」双子の破壊神をラディッツは目を細めて見る、細めた目は不思議で彼岸花のような赤色を滲ませていた。
「……随分とカリグラの匂いをつけているね」
「あの男…独占欲滲ませすぎだろビルス」
「カリグラはそういう男だよ…、何かを考えてここまであからさまにしてるのだろうね」
「カリグラの話をするな…」
「…おやおや、随分と苛立ってるようだね?。きみ、カリグラを復活させようと動いてるんだろう」
「……」
「あの男のこと復活、なんて人間には難しいだろ!。…オレたちですら行けないとこにいるからな!!」
「それでたくさんの命を奪われちゃ僕らのメンツが危ないからねえ…、カリグラの恋人だ。すぐ終わらせてあげるよ」
「うるさい…」その時だ、周りの空気が途端重苦しくなったのは。それこそ酸素などが薄くなり、体がしんどくなるような岩がのったようなそのような感覚をビルスは感じた。
カリグラの時とは違うプレッシャー…あのシャンパですら警戒の姿勢へと変える。ずぅっとむけられた黒い瞳は自分たちを捉え、そして離さない。
「カリグラのことを勝手に話すな……カリグラはオレのだ…カリグラはっ、カリグラは!!オレの!オレのだっっ!!!」その途端暴風が吹き荒れ巨大な黒い手達が地面から出てくる。それはラディッツに呼応するように動き、ビルスたちへと攻撃を仕掛けてきた。
「おぉい!?、黒王様っめんどくさい男を出してしまったんじゃねえの!!」
「あの方のなんか僕が分かるわけないだろ!シャンパ!!」途端赤黒い手がレイピアとなってきてビルスの頬をかすめる。予想はしていたことだ、カリグラから彼がトワの魔術に適応し魔力を取り込める体質だと聞いていて悟空より下手すれば手強いのではないかとおもっていた。
ラディッツ自身も動き、邪魔をするなと地底から響くような声をあげて赤い気弾を放つ。それは破裂して辺りに麻痺属性の力を散らしシャンパたちは思わず食らってしまい痺れてしまうその途端空中から叩き落とされめりっと骨に響く攻撃を食らってしまった。
「っが!?」
「ぐぅっ!!」
「……破壊神さまたちよ、先ほど……黒王って名前出したか…?」
「……だしたけどなに」かくっ、とラディッツは首をこちらに向けてその虚ろながらも赤黒い瞳でみてくる。
「教えろよ…、あいつがっあいつがオレからカリグラを奪ったのか?とったのか??カリグラを。オレの命を、オレのッ…オレの愛する男をッッ!!!!!」そうか、ラディッツはショックのあまりあの後意識がうつろいていたとウイスが話していたことを思い出す。カリグラが誰によって封印されたのかも、わかっていても認識したくないとラディッツはなっていたのだろう。オマケにその主から利用されてしまったということも。
黒王は相手の弱点を見破るのが得意だ、そもそも全ての父のような存在であり生命というものをわかっているところがある。
だからこそ、カリグラの強みであり弱点となるものが分かったのだ……恋人であるラディッツを利用すればやつは本当の力を発揮することなくかつてのように庇うことを選ぶと。選ばざるを得ないと。
ずっと……カリグラに執着し囚われていたのだからあのお人は。
「……そうだよ、あのお方がカリグラを封印した」ビルスは軽く目を伏せて開いた後、ラディッツに事実を語る。
「おっおい!ビルス!! 」
「カリグラは君のことを愛している、何よりも。だから利用されたんだよ……君という愛おしい存在を引き換えにどうするかとね」シャンパの顔は慌てていて、いいのか?そんなことを話してと言いたげだ。だがいいだろう、自分にとってもカリグラは奪われたようなものだ。目の前の男ラディッツと、我らが破壊の親たる黒王に。
ああカリグラ、僕の紅い花神……恋と言うにはあまりにも醜くそしてあまいこの執着の心。君にまだまだ笑わせてもらおうと、楽しませてもらおうと思っていたのに。
「カリグラ、が……っオレの、せいで…?」途端怒号はなりやみ代わりにラディッツの絶望に染った声が小さく響いた。ビルスはその言葉に残酷に突き放すように告げる。
「そうだよ、…君という恋人ができたおかげであの男は煉獄へとかえったのさ」シャンパはビルスの厳しい言い方にどうしたものかと頭を抱える。この兄弟としては事実を言った迄だ、と答えてくるだろう。だがこれはいいのか?、いまこの核爆弾のような力を持つラディッツが爆発してしまわないかと危惧してしまう。
「(おいおい〜!これいいのかァ??ビルスのやつも本気で切れてるし、相手のサイヤ人もやばい空気出してるぞ!)」いくら破壊神二人いようとあのカリグラの力を纏うサイヤ人だ、オマケにあの孫悟空の兄……自分たちが下手すれば苦戦するような存在なのに。
「安心しなシャンパ、カリグラの器のろくでなしに比べたら……まだ大丈夫さ」ビルスの纏う気が膨れ上がっていく、久しぶりに見る兄弟の本気にシャンパはその身を震わせてラディッツを見据えた。
「オレの、せい…?オレが……弱いから…オレが…オレがっ……!!」グツグツとマグマが煮えたぎるような音が響いてくる、赤黒い手たちは彼を包み込まんと近づきゆっくりとラディッツを包み込んで行った。
「なぁ…っカリグラ、オレが強ければよかったか?。お前の言う通りちょうしにのったりしてたからかっ、でもっ…オレは…!オレは!!」ラディッツのまわりに赤黒い瘴気が立ち込めていく、ビルスはそれにはっとしてラディッツをみた。これはトワたちの魔術の力にカリグラの力があわさったものだ。
「(早く仕留めた方がいいね)シャンパッ!!」
「わぁかってるよ!」2人して力を合わせラディッツへと破壊玉をぶつける、先程までは己の身の丈の思いをひたすらぶつけていただけだ。
この男があまりにも幼く見え、カリグラによって壊されたようにも見えたから。そして彼に依存しその果てに彼に閉じ込められてるように感じたから。
「オレがっオレが…!!」破壊玉は沈む太陽のように深く強い重力を持ってラディッツを襲う、だが赤黒い手たちが瘴気をまとい巨大な手となりあっさりと破壊玉を壊し太陽系爆発かと言うほどの衝撃で爆発した。
「っゥ!?」
「おぉい!あのカリグラの手があるとオレたちやれねえじゃん!!」
「…あいかわらず厄介なのを授けるね、カリグラ。ほんと、愛ほど歪んだ呪いはないと言うものだよ」ああ彼からほくそ笑まれてそうだ、それこそくつくつと笑い自分に言うのだろう。
『俺の猫に手を出せれると思うたか…?、破壊神2人よ』と。あの瘴気はカリグラの彼に着けた鎖のようだ。自分から離れないように、と手の隙間から見えるのでは両手でラディッツは自分の顔をおおい深く俯いている。
「オレのっオレの……
だから花をつまなきゃ」どろっ、と黒くよどんだ帳のようなものがおりる。ラディッツの声に呼応するように赤黒い瘴気は彼へと集まり包み込んだ。
「なっなんだ…!!?」瞬間叩きつけるような風の衝撃波が襲いかかってくる、ビルスはなんとか空中でこらえシャンパも踏ん張るが熱砂の砂漠のような熱が皮膚を襲いかかられる。
星の爆発の時にもなかったほどの熱に一瞬たじろぐが目の前にある光景にビルスたちは目を見開いた。赤黒い瘴気をまとい彼岸花のような髪色、…別の形のスーパーサイヤ人であろうか。見たこともない光景だ、ああそれこそこれこそ…カリグラの加護を貰った人形のような。破壊の象徴のようだ。
「…綺麗な花だなぁ、カリグラにあげたら喜んでくれそうだ♡」恍惚な顔を浮かべて少女のように笑いトワの魔術もカリグラからのも解放したラディッツはふたりへと襲いかかった。
「グゥっ!?」重い打撃を受けてビルスは姿勢を崩しかける、あの悟空と戦った時より重く重機にでもぶつかられたような重さがあった。
あのカリグラが少なくとも修行をつけたのだ強いことは想定していたが、ここまでとはと冷や汗を垂らす。
「オイビルスッ!」シャンパの方も次から次へと襲い掛かる赤黒い手に苦戦してるようだ、あの手たちやはりカリグラから出来たものたちで彼のように容赦なく自分たちへとくる。
時にはレイピアのような鋭さを持ち突き、攻撃を仕掛けるラディッツのサポートへと回ることもあった。まるで、まるでカリグラと戦ってるようだとビルスはあの彼の若い頃と戦った時のことを思い出す。計算高く空高く飛ぶオオワシのような鋭い瞳と弱点をつく攻撃、狩人や戦士という言葉が合うような打撃。そして斬撃を。
鋭く風の刃が飛んでくる、死神の刃のように鋭くそれはシャンパの首を掠めて血がもみじの葉のように飛び散る。
「っ!?、こいつっ…強すぎないか!??」
「悟空たちがなるスーパーサイヤ人とは何か違うようだねぇ…」ちらりと見れば豊富にあった自然が枯れ果て、命が尽きていく。
手達が星の命を吸い取りラディッツへと送っているようだ。
「あれが根っこのようだね…」
「げぇぇ!?カリグラの力がってことか!」鳥のように飛び避けながら2人は会話をする、つまりラディッツを気絶させたければカリグラの力を押さえつけないといけないのだ。
それは二人がかりでは難しいかもしれない…、どうにかしなくてはカリグラの力となれば星だけではなく世界ごと滅ぼすかもしれない。
ラディッツは左手に力を込めて赤黒い気弾を放ってくる、ビルスは何とか避けるが爆風で体勢を崩しシャンパにぶつかる。
「ビルス!気をつけろよ!!」
「っわかってるよ…!!??」その時だ黒い暗雲が頭上に立ちこめるような暗さが包み込む。
「ふふふ……くくっ…ほら花待てよ……!」赤黒い手に乗ったラディッツが頭上から手とともに2人にのしかかるように落ちてくる。
ずしっっ!!!とのしかかり、ビルスとシャンパは隕石の重みのように感じて地面へとめり込まされた。
土の味が口内に広がり不愉快だ、ビルスとシャンパは怒りからの破壊神の光弾を放つがそれすらも赤黒い手たちが庇いラディッツはくすくすと笑いながらも気弾を無数に放つ。まるで無数の刃を突き刺すように。
「うんっ…♡うんっ♡カリグラ♡これ好きなんだなオレ、とってくるからさ…もっと褒めて♡待っててくれよカリグラ」
「(こいつっ、もしかして心が壊れたんじゃ…!?)」シャンパはラディッツの言葉にはっとする、ラディッツの言葉が何かと話しているような言葉の列なのだ。
もしやこの男はカリグラがその場にいるように感じて…?ああほらビルスめこれでかなりあやうくなっているではないか!。
「なぁーー!カリグラ!!♡このきれいな花をとったらオレを抱きしめてくれる?。オレそのために頑張るぞ♡」木々を押し倒し、瓦礫を投げビルスたちがどうにか抜け出しても間髪ない攻撃が襲いかかってくる。
時の界王神や自分たちの予想以上にラディッツはカリグラの色に染まり、そして危険だったのだ。悟空たちとは違う異端な存在、慎重であり心を隠し生きてきたためか解放されたとたんこの暴れ具合だ。あのブロリーという伝説のスーパーサイヤ人よりも暴れて、物物を壊していく。赤黒い手の攻撃力は当然強い、だが何よりもラディッツの攻撃力だ。破壊神の自分たちの身体にですら響くほどの打撃と蹴りの強さ、気弾の麻痺の恐ろしいことか。
悟空とは違う容赦のなさとおそらく彼の天性の才能からであろうくる、的確な攻撃と欺きは神にすら通じる。
「カリグラ…!、なんて男をそだてたんだかっ」破壊神の攻撃を赤黒い手でふさぎくすくすと笑いラディッツは無数の気弾や攻撃を仕掛けた。
「なぁなぁカリグラ~♡、オレなこの攻撃も今できるようになったんだ」ラディッツが嬉しそうに語った時だ、ズズズッ…と瘴気が構えた左手のところに集まる。
そしてそれらはある形を成していき、ビルスはその光景に冷や汗を垂らした。
シャンパもだ、あれは見た事ある……そう二千年前に。
「あれっは…!」
「カリグラの技じゃないか…ッ!」ビルスもうけた死神の槍、─タナトスの呻き─と周りから呼ばれてる技だ。
それをこの男が?、ラディッツが扱えるというのか。鋭く黒いギラギラと輝く槍はひとつの流星のようだ。
『さあやるんだ俺の猫ちゃん』
「うん♡オレが刈り取るぞカリグラ」その瞬間、空間を切り裂くような音ともに黒槍は投げられふたつに分裂してビルスとシャンパに刺さりそうになる。
「シャンパっっ!」
「わかってる!!」2人は何とか避けてわかれてよけようするが槍は追尾して追ってくる、さながら獲物を狙う蛇のようだ。
これがもしカリグラと同じものなら一瞬でニヴルヘイムだ、これは仕方ないとビルスはさけぶ。
「ウイスッッ!!!!」
『分かりましたよ!』空間に穴を開けてビルスはシャンパの腕を掴み入った。
ラディッツはそれをぼっと眺めて、お花が去った……と小さくつぶやく。
「カリグラにあげるつもりの花が……またとりにいくねカリグラ」ふふっ、とラディッツは妖艶に微笑み虚空を見つめる。
「…明日の行方をたずねやこられ…」モードが解除されラディッツはフラフラと歩き崩れ落ちる、赤黒い手はラディッツを支え優しく包み込んでいく。
ラディッツはこくりと微睡んで行った。甘く蠱惑的な香り…ああカリグラの匂いだ。大好きな、とてもだいすきな。
『褒美をやろうか、猫ちゃん』彼との交合う夢を見る、2人で住むあの黒い屋敷の寝室でカリグラに包み込まれ甘く優しいキスをされながら体内を満たされる夢を。
「カリグラ……ッ」ギラギラと輝く赤い瞳に見つめられながら果ててしまう自分、カリグラに跨り自分自身で自ら彼の滾る肉棒をいれて激しくつかれる。
あまりにも気持ちよくて、そしてもっととせがんでしまうゆめを。
「ラディッツが…ッ?」その頃ラディッツのとこの時空である悟空はビルスたちからはなしを聞いていた。
瞬間移動でこちらに来た時にコントン都の様子がおかしいことに悟空は気がついた。肌がピリピリとしてくる、それこそ…かつてない恐怖が蘇るほどの。時の界王神たちの様子からかなり大変なことが起きている、と聞いた時から察していたがもしやと思い急いでここに来たのだ。
「そうだよ、君の時空のとこのラディッツが大暴れしてるのさ」
「…ラディッツ…」ラディッツ…、あの兄と名乗り悟飯をさらって行った人物。いつだったかは忘れたが復活したフリーザと戦ったあとくらいにだろうか、今ではこの不思議な都で生きていると言われたのを思い出す。
ズキっと頭が痛む、
『…お見事だ』
『カカロット。ガキ、今のうちに助けておけ。殴れば扉は開く』いつの記憶だ…?、光景としてはあのラディッツと戦った時か。ラディッツより黒い、ひたすらに黒い髪に黒い瞳…いつの日か見た宝石のような輝きがあった。
そして、声色はラディッツよりも低くでもするりと耳に入るような落ち着いた声色…。
「(オラはなにか知ってる気がする…)」そう、そのものに自分はうっかり"兄ちゃん"と呼びそうになったのだ。魂の少ししたカケラからの声のように、その男のことを。
「ビルス様はその……あいつと、たたかったんか?」
