花籠9

確かな1点の光はあるが、それを隠すほどの黒さがある。
サイヤ人たちの目はみなギラギラと光っていたものが多かった、やる気というか好戦的なように。ナエの場合もだ、基本は落ち着き清廉な湖のような感じだがこと好きなことになるとギラりとした明かりをともしていた。
対する自分の黒さよ、黒く輝いてるといえば言葉はいいが……まさにタナトス死の光そのもののようだ。
「(覚めない悪夢、タナトス、宇宙の大魔王…)」様々なあだ名が自分にはつけられてきていたが、なるほどタナトスや覚めない悪夢などは自身にあっているなと改めて思う。
死を宿し命を絶えさせていく、ただ淡々とそれが己の役目だと言いたげに。若い頃の自分はそう思って破滅を届けていたのだから。
ラディッツが殺されずに済んだのがむしろ不幸中の幸いだ、カリーたちがかなり機転を効かせてだったらしいし今度酒を持っていくかと考える。
そうやって互いが別のことを考えれば空気はマシになるものだ、若い自分の方は恐らくナエに連れて行かされた書店で買ったものをだろう本を読み始めて集中している。
「(ほっておくか)」このモードの時は話しかけようと何しようと基本反応しない、今のうちにとラディッツのもとへと行き後ろから抱きつく。
「っ、カリグラ!?」
「大きい声を出すな…、少しくらい補充してもいいだろ?お前を」耳元に響く低く甘い声に、ラディッツはぞくりと反応してしまい腰を抜かしそうになったところ洗い場の縁をつかみ何とか耐える。
「っそんな声を出すな」明らかに欲情しています、と言いたげなほどのオスの声。周りに人がいるのに。
「…猫ちゃんが居る、という現実に浸っているだけだがなぁ」ちゅっとラディッツの耳に口付けながらラディッツの頭を撫でる。
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