花籠9

「……こんな変態に俺はなりたかねえな」
「失礼だな…、恋人が大好きなただのじじいだ」
「…ゾッコンすぎだろうが」そう嫌そうに若い自分はぼやく、やはりこの過去の自分は想像してた通りラディッツの事はいじめる対象としてはきにいっている。だが、恋愛という分野においては全くもって眼中に無いという反応だ。
だがそれはわかる、当時の自分であればそもそも弱みにもなるし調子に乗っているひよっことして認識して話しかけることは愚か仕事に関しては必要ないものとして扱っていたのかもしれないと。
育てれば開花するかもしれんが、その育てるという行為をしたくないとなっていたかもしれない。
「お前もいずれわかる、だから出会いを大切にしろよと話したからな」
「…てめえが完全にバケモンへとなった理由でもあるのか」
「……そうだな」
「そうかよ」やはりそこをついてきたか、とカリグラは思う。踏み込むように聞いてきたが若い自分はそこが人生の分岐点と無意識にわかっているせいか、ただその一言だけを発してきた。
好奇心からなのかもしれないが…、いやわかってなのだろう。
「(勘のいいガキだな)」なるほど、これは当時のベジータ王も自分のことを警戒するわけだ。頭もいい、そして勘も鋭い。たしかに生まれながら第六感と呼ばれるものは異様に発達していた、そのおかげで助かったこともある。無論わかってしまったことも。
己の死期も契約した魔神との力からもあるが、その一部として自身の直感もある。直感で感じ、その答え合わせを未来予知の力でしているようなものだ。
「……」沈黙の空気が流れる中、若い自分はまた次のタバコへと火をつけて吸う。
向かい合ってわかるが、やはりこの時の自分の瞳は黒く深く深淵のようだ。
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