花籠3

『全員土下座だ、カス共』あの時は何よりも全てが弱く醜く見えてたのだ。人の技術に対する探究心や好奇心は多くあったが、他はどうでもよかった。己に対してもどこか危うかったのかもしれない。だが、自分を使い金を稼いだり相手を洗脳するようなことも平然としていた。
それこそ悪人、と言われるものたちからも引かれるようなこともしていただろう。過去に対して後悔はない、だが…ラディッツ相手には少し話したくない気持ちがでかい。
「…ふられたらなにするかわからんしな」もちろん、ここまでドツボにハマらせてくれたのだからただでは離さない。キセルの灰をおとし、ラディッツの居るベッドへと向かった。
──
少し痛む腰をおさえながら、ゆっくりとリビングへと向かうと朝食が机の上へと置かれてあり花があしらわれた便箋が添えられていた。
片手で取り内容を見ると、カリグラからだ。
「…あいつ、オレに対して甘いとこあるよな」なんてアンバランスな彼なのか。
『飯食っておけよ、お前一人になると雑だからな 。少し出かけてくる、なるべく早く帰る。
カリグラ』黒いインクでサラサラと綺麗に書かれた文字。彼のきめ細やかな性格が出ている。
用意されたご飯の空腹へと誘う匂いがしてきて、ごくりと飲み込み食べる。
どうせなら起こして欲しかったものだが……いや、いつの間にか寝ていたのだから仕方ないのだろうか?。
絶妙な火加減で焼かれたパンをつまみ食べながらも考える。昨夜は結局彼のことをあまりしれずだった…、はぐらかされ彼の心と離された感覚が未だにある。
「こうやって用意もしてくれるのにな…」野菜の味が甘く広がったスープが体を温めてくれるが、心はまだ冷たいまま。
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