あなたが初恋でした

冷たく、冷酷に見下ろし兄貴が一言呟いた言葉をおれは覚えている…。
「神なんぞしるか、俺こそが神だ」横暴で傍若無人なことば。兄貴を知らない人からすれば、また始まったカリグラの横暴がといわれるがちがう。
あの兄貴の一言は…、神とは力無いもの。他人を利用し力を得て気ままに振るうものというのだ。だから兄貴は自分しか信じない、自分だけを頼ると宣言したのだ。
だから皇嵐様のことも兄貴は女神、ではなく女としてみて愛した。
「……」おれは未だに覚えてるよ、あの宴会の会場でたまたま来た皇嵐さまをみたときの兄貴の目。普段不機嫌な顔しかしてこなかった兄貴が、完璧な兄貴が皇嵐さまを見た途端酒のグラスを落としそうになって。あわててとって、一言話してたことを。
「美しい…っ」美醜にうるさい兄貴がその一言を言ったんだ、人に対して。しかも初めて、兄貴が生きてきた人生で初の驚いた顔で。
おれはその顔を見た時、一気に嫉妬の炎が出たことと兄貴がこんな表情をするんだという驚嘆の混ざった感情に驚いた。
鈴の音のように笑う皇嵐さま、細く長い白い指に兄貴は首ったけだし片手で口元を隠してるけど笑っていることが分かる。ああ、兄貴は本気で見惚れてるし惚れたんだ……おれはこの時初恋が終えたこともわかった。いや、もとからおわってはいたな。
「良かったな…兄貴…アタックしてきなよ…(好きな人を、見つけれて)」でも、離れようとは思わなかったし応援しようとは思ったよ。禁断の恋だろうけど、いや兄貴に劣情抱いていたおれもおれか。
おれの発言が聞こえていたかどうか分からないが、あのあと兄貴と皇嵐さまは外で話をしてたらしい。
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