あなたが初恋でした

おれも遠目に見てたけど、兄貴は自分の見た目と声そして才能で相手を喜ばせてた。
おれは兄貴がなんでこんなことを、と思ってたけど兄貴は自分の売り方をわかってたからだと思う。自分の存在が人を狂わせてしまうほどあることに。
でも、でも、気持ち悪かった…兄貴がおれの兄貴が他人に汚されていくことに。それでも綺麗でかっこいい兄貴が不思議だったけど。
「…なんだ、まだ起きてたのかよ」深夜三日月も沈む頃に兄貴は玄関の扉を開けてうずくまるおれに声をかけてきた。
「兄貴……」アンダースーツについてる黒い血の塊…、もしかして殺してきたのか?。よく見ると首周りにキスマークもあるし。
「…発情期のメスに掴まっただけだ、今まで通りしてねえし」おれの表情に察したのか兄貴はためいきをついて、上半身のをぬいで風呂に入ってくると言ってくる。肩にも爪痕が少しあるし(傷口はもうふさがってきてた)、ただ数的にこれ複数相手してきたのだろう。
「なあ兄貴っ、もうそういうこと…しなくて良くねえか?」
「あ??」1部上げていた前髪を下げさせて、普段家でよく見る髪型になる。兄貴は前髪を上げてると年相応の若さに見えるけど、こうやっておろしてると大人っぽく見える。
おれは兄貴がなにか自らを追い込んでるように見えたから言った。おそらく兄貴本人はひまつぶしでだろうけど。
「いくら強い、とはいえ兄貴も15とかなんだよ…っ。それに金だっていまあるんだからさっ父さんや母さんも心配、してる、と思うし」ちがう、おれは兄貴がほかの人に触れられてるのが嫌だったから……独占欲だ。おれの、醜い欲望。
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