貴方と共に愛でる白雪
貴方との記憶(カリグラ×皇嵐)
白雪がふわふわと桜の花びらのように落ちていく、皇嵐は自分の空間にある庭園で雪を振らし見ていた。
「我が背子と二人見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しからまし」なんて、とその赤い瞳を縁取るまつ毛を少し下げてつぶやく──。
かつて、自身の人生を投げ出してでも己を見てくれた男のことを…この雪は彼への想いだ。もう、二度と……会うことの無い男。私のことをおもい、一途に見てくれたあの人のこと。
溶けてもとけても……あなたにずっと恋する心は残っている。
「カリグラ……」この雪景色もあなたと見れたらどれだけ美しく見えたのでしょうね。紅梅よりも赤く、曼珠沙華のように艶やかで甘く苦い毒のような香りを持った男。それを思い出しつつ皇嵐はゆきをながめた。
───
あの男と会い、それなりに月日がすぎた。皇嵐は一息ついてカリグラの自室へとはいる。
ずらりと並ぶ宝物たち、なかには刀や槍だけではなく時計そして花瓶などの骨董品なども丁寧に並べられていた。
「おお、皇嵐やっと来たか?。まってたぞ」その奥では豪華な椅子に座り、愛刀を丁寧に手入れをする彼がいた。普段の南蛮鎧ではなく赤いマントを羽織りその中には曼珠沙華が施された着物を着ている。
「あなたがしつこく呼びかけるからでしょ?」皇嵐はためいきをつき、カリグラの言葉に答える。そうこの男、『冬の時期でいい紅梅を手に入れた。共にめでないか?』とテレパシーでしつこく話しかけてきたのだ。
行かない、と答えれば己の契約した魔神と花をあしらえた文を寄越してきて…流石に皇嵐は降参してきたのだ。
下手すればこの男、今はしないだけで己の部屋に乗り込んでくる気がしてならないから…。
「ははは、それに答えてくれるとは。さすが我が女王はお心が広い」パチンっと軽快な音を鳴らし、さやに剣をなおす。
「…相変わらず口が回る男ね」
「愛しい女には、自ずと言葉が出てくるものさ」すわれ、と案内されて向かいの椅子へと座る。彼の机の上には季節それぞれの花が花瓶に入れられており彼の星のものであろうか…ドライフラワーのようなものまでもある。茶色の地味な色ではあるが、どこか品があり美しい。
「茶でも飲むか?、ちょうどカリギュラの世界に行ってなーあの世界線の日ノ本にもよって玉露を買ってきたのだ」
「…いただくわ」
「そう警戒するな、別に媚薬なんぞいれんからな」カリグラの思わぬ発言に皇嵐はふきだしかけ、何言ってるのあなたは!と叫ぶ。クスクスと笑うカリグラに皇嵐はドキリとしつつ、ほんとにぶつぶつとつぶやく。
「…年上をからかわないでちょうだい」
「悪い、お前が緊張しているように思えてなぁ」急須に茶葉とお湯を入れて、カリグラは近くに持ってきて待つ。
「どうせならいいものを飲んでもらいたい、少し話すか?」
「そうね、…あなたいつまで私に口説きに来るの。いい事?、いくらあなたが強くても元は人間っ違うのよ」突き放したい訳では無い、当時からカリグラがいい男の部類に入るものだとはわかっていた。故に同族の女が、彼のことをほっとくわけがないと。
実際ほかの国のものやはては他惑星の王族の女まで彼と結婚したい、と持ちかけられたと話も聞いたことがある。神から見ても美しい、と思うものたちに。
なのにカリグラはそれらにキッパリと『結婚しない』と断ったのだ。好きな女がいると。
「私は神、あなたは人間……歳も何もかもがかけ離れてるわ。だから、同世代の子達をみなさいなそれこそ「お前以外はお断りだ」カリグラッ!」
「俺は本気だぞ?、ここ20年以上生きてきてな。色々な世界線や時空もみた、惑星も……その中でも皇嵐おまえ以上のやつを見つけたことがない」
「神も人も、妖も精霊も……何もかもでお前以上の女を見た事がない。愛してもない女たちと結婚するのはごめんだ、俺が愛しているのは皇嵐お前だけだ」椅子から立ち上がりカリグラは皇嵐の髪をひと房すくい、くしんで口づける。
それはさながら騎士が女王をまもる誓いをするようで、神聖な誓いのように思い皇嵐はその光景に見ほれる。彼の赤い瞳と目が合う、自分のとは違いもっと鮮烈な赤…炎や曼珠沙華の花のような命の苛烈な輝きを持つ轟々とした赤だ。
「…カリグラ……、あなたっおかしいわよこんな神の私に」
「おいおい…、仮にも全てを支配している皇帝様が愛している女にこんなとかいうか?。だがそうだな、こんなにも可愛く美しい女神であるならば…そうだな可憐で美しく天に咲く一輪の花のようなお前が愛おしくてたまらない。さて、茶も出来たな注ぐぞ」皇嵐は改めて彼のことを見る、膝下くらいまである長い純黒の鋭い髪に左は赤の瞳そしてもう片方は黒く金剛石のように輝く瞳……凛々しくも整った形をしたまゆにすっと鼻筋の通った顔立ち…。鋭い瞳は全てを見抜き、見てくるようで皇帝という貫禄を若くして表している。
彼の体格も良さもだ、自分との身長差なんかかなりある体格も今まで戦闘を主として生きてきたせいでかなりの大柄故に自分に威圧感を与えないようにと目線を合わせ話してくれる。
その時の顔立ちの良さにも感嘆してしまうが、エスコートというかその行動の流れにも驚いてしまう。あの会った時の荒々しさが一切なく、一つ一つが貴公子のようで自然と来るのだから。
「(私から見てもいい男なのはわかるわ)」本人曰く生まれはそこまでいい所ではない、と話していた。そして両親のことも自分を恐れ、避けて来る連中に飽きて自分が彼らを殺したらどのような反応するかと手にかけてみたが何も感じずああ己に愛は必要ないのだと幼い頃達観したと。……そのような殺伐とした過去を持つ男であるカリグラは自分に会い、かわりいまでは全てをまとめる皇帝。
様々な世界線、時空を支配して見せたまさに生命のバグのような存在なのだ。顔にも身体にも恵まれ、彼を作った神は満足して死んだのではないかというほどの。
「どうぞ、我が女王様。熱いから気をつけろよ」向かいに座り直し、カリグラは自身にも注いだものと同じものを1口飲み自分を見てくる。
おずおずと受け取り、少し冷まして一口飲むとほんのりと茶葉のあまみが広がり皇嵐はおいしい…と呟いた。
「相変わらず目利きなんだから」
「お褒めの言葉、光栄だ。お前に一目惚れして、手に入れたいとなるほどには目がいいのでね」その言葉にまた1口飲もうとしたところ、むせてしまい何を言ってるの!と皇嵐はまたさけぶ。
カリグラはそれにくすくすとまた笑い、その反応がいとおしくてたまらないのだと言葉にする。
「言っておくが、俺は本気だぞ?。そうだな、お前となら……長く気も遠くなりそうな悠久のときを生きるのも悪くない」
「だから、不老不死のまで手に入れたのでしょ」魔神との契約で、カリグラはある武器がないと死なないほどの力も手に入れて。だがその武器も神々の神器で、混沌であり原初たる黒王が決定しない限りは使われない。
彼ならばその運命すらねじ曲げて普通に生きるだろうが……。
「(気にするのもバカバカしいわね)」この男は簡単に自分の予想を超えて生きていくのだから。
「そうだな、元々俺たちの人種がそう簡単に老けないのもあるが」念には念を、だろ?とカリグラは薄く微笑む。相変わらず顔がいい、そして声も…低くはっきりと聞こえる声。甘く苦い花のような香りを宿し、夜の帳をおろすような妖しい色。
「それで、この後紅梅を見に行くのかしら」皇嵐は両手で花があしらわれたティーカップを持ちながらカリグラに聞く。
「ああ、外も少し冷えている…。上着をお前に渡そう」
「…ありがとう、カリグラ」
「構わん、…お前が喜んでくれるならな」そういい愛おしげに微笑む彼に何故そんなに、と思った。私はあなたの気持ちを突き離してるのにどうしてそんなに嬉しそうなの、と。
お茶を飲み終え、庭園へと行こうと準備をする。
「これを」と白いふわふわの毛皮のコートを皇嵐に着せた。暖かく触り心地も良くて癒される。
皇嵐がすこし目を伏せて微笑んでるとカリグラもつられて微笑み、頭を撫でてきた。
「カリグラ!?」
「悪い、可愛くてな」行くか、と部屋から出て広い廊下を歩く。 赤く高級感のあるものたちが飾られ、まさに王の道と言いたげな廊下。家来達が彼が近くを通ろうとする度すみへといき礼をする。
礼儀正しく、綺麗な姿勢でこれがかつて荒くれ者と呼ばれた民族とは思えないほどだ。
「(上を見習って、かしら)」 細かい装飾があしらわれた扉に手をかけ、カリグラは外へと出る。
ふわりと白雪がまい冷たい風があいだを通る。
「…綺麗」
「そうだろ?、紅梅がこの時期特に綺麗でな…行こう」手を差し伸べられて、皇嵐は仕方ないとのばし彼の大きな手を握る。あっさりと包み込まれてしまう自分の手。優しく彼は加減して握り返してくれてることがよくわかる、自分はそんな容易く潰されたりもしないのに…。
「そんなに加減しなくてもいいわよ…」
「悪い、嫌だったか?。加減しなくて、と言われてもなぁー皇嵐が俺の気持ちを受け取ってくれるまでな。加減しないようになると、俺はお前のことを俺だけ見てほしいと色々としてしまう」程よく積もった道を歩く、まわりには椿の花や様々な冬の花があり地球のものではなくどこかの星のものであろうか星型のまでもある。
だがどれもこれも彼の庭に会い、共生し合っており皇嵐はその光景の美しさに圧巻されてしまう。
相変わらずなんと手入れもされてることか、葉まで生き生きしており美しい緑色は白雪に彩られ輝いている。
そして彼のことも…白い光景にハッキリとある、純黒の髪に曼珠沙華に彩られた黒の和服そして赤いマント。角はギラギラと輝きなんと美しいことか。本当に見た目はいい、男らしくもあるが彼の白い肌とその髪は女子でも羨むほどだ。
「ほんと、見た目だけいいんだから」
「オイオイ…それはないだろ?、皇嵐。俺がいい男なのは認めるぞ」思わず口に出してしまっていた言葉に皇嵐は驚き、えっとカリグラの方をむくと本人はくすくすと笑い口に出てたぞと返してくる。
「声に出てたぞ、心の声と同じでな」しまった、この男自分の心の声すら聞こえるほど読心術を極めていたのだと思い出し恥ずかしさに顔を赤くしてしまう。カリグラはそんな自分のことを愛おしげに見つめまた髪へと口づけてきた。
「…ほんとお前は可愛いな」コラっ、とカリグラのことを軽く叩くとついなと彼はくすくすと愛おしげに笑う。
「お前が俺の気持ちを受け取ってくれるまで待つ、とは言ったが口説くのはするさ」ほら着いた、と案内された庭園へと来ると和風で季節外れなのに白藤や様々な植物がある。
松の木には雪が積もり、雪が光に当てられてキラキラと輝いていた。その中一等めだつ紅梅がありカリグラが話していた通りに美しい。
「美しいだろ?、こいつの手入れには少し時間もかかった……だがあまりにも綺麗でな」
「そうね……」でもこの色、よく見た事あるような。
「…お前の瞳の色みたいだろ?」そう言われるとそうだ、少し赤とはいえ白があり薄めな感じもする。
カリグラのようなハッキリとした赤ではなくキラキラとだがそこにある、と主張するような色合いだ。
皇嵐はカリグラのことばに少しづつ赤くなる頬を両手でおさえ、馬鹿なこと言わないでちょうだいっと言い返す。
「綺麗なのは事実さ、俺の中で……お前が一番美しく愛おしいからな」
「君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる」そうしてるとひと枝を優しくたおり、カリグラは皇嵐にその枝を渡した。
「…あなた、どこでそんな言葉覚えたのよ」
「教えて貰ったのだ、…あちらのとこではこうやって和歌を交わし逢瀬を楽しむらしいからな」
「俺はお前とだけ、このような美しい景色も香りも楽しみたい。俺はお前が愛するものたちのことは大事にするさ、…だがこのようにきれいな景色や俺自身が思う大事なものはお前とだけ共有したい」そう語るカリグラの背中はどこか孤独で孤高だ、人間でありながら人間ではなかった男。生まれながら強い力と才能をもち、はずれていた存在。そのために誰かと分かち合うというものも欠落し、愛を知り拒絶してきた。
そんな彼が自分となら、と言うなんて……と。
「俺はずっと言ってきたはずだぞ、皇嵐。おまえとなら全て悪くない、と」
「分かってるわよ…、そうね景色を愛でるくらいならつきあってあげるわ」くれた紅梅の枝を撫でて皇嵐はつげる、そのなかの一輪の花はああカリグラの目の色とおなじ壮烈な赤色がある。
「(連理の枝、ね)」彼はわかって出したのかしら、夫婦を表す言葉として。まだ付き合ってすらない、結婚も。ホント予約された気持ちだ。
「景色も、か。それは嬉しい、では次は桜でもどうだ?。冬桜もいいな、そのあとは山桜もある」
「あなた、地球の日本からどれだけとってくるきなの」
「ははは!、まあそれなりにだ。俺はあの国好きだぞ?、四季折々とあり自然を愛でる……とてもいいではないか」
「ああそうだ、カリギュラにいってつるバラやゼラニウムもあるからなぁ~…それもどうだ?」
「分かった!、わかったわよ!!。ほんと!、あなたは強引な男なのだから」
「愛しいやつと花を愛でる、最高に楽しいではないか。…なあ皇嵐」そう言い、彼は自分を抱きしめてきて口づけてきた。薄く甘いカリグラの唇、皇嵐は少しぽかんとしたあと状況を理解し頬をたたく。
「このっ!女の敵っっ!!」
「っ!、くははは!!。俺にそれを言うのはお前くらいかもしれんぞ?、あー可愛くてたまらん。愛してるぞ、皇嵐」そう言い笑う彼は…誰よりも子供で無邪気だった。
───
君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる 紀友則
あなた以外に誰にみせましょうか この梅の花
共に香りをめで、色も見るのはあなただけですよ
白雪がふわふわと桜の花びらのように落ちていく、皇嵐は自分の空間にある庭園で雪を振らし見ていた。
「我が背子と二人見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しからまし」なんて、とその赤い瞳を縁取るまつ毛を少し下げてつぶやく──。
かつて、自身の人生を投げ出してでも己を見てくれた男のことを…この雪は彼への想いだ。もう、二度と……会うことの無い男。私のことをおもい、一途に見てくれたあの人のこと。
溶けてもとけても……あなたにずっと恋する心は残っている。
「カリグラ……」この雪景色もあなたと見れたらどれだけ美しく見えたのでしょうね。紅梅よりも赤く、曼珠沙華のように艶やかで甘く苦い毒のような香りを持った男。それを思い出しつつ皇嵐はゆきをながめた。
───
あの男と会い、それなりに月日がすぎた。皇嵐は一息ついてカリグラの自室へとはいる。
ずらりと並ぶ宝物たち、なかには刀や槍だけではなく時計そして花瓶などの骨董品なども丁寧に並べられていた。
「おお、皇嵐やっと来たか?。まってたぞ」その奥では豪華な椅子に座り、愛刀を丁寧に手入れをする彼がいた。普段の南蛮鎧ではなく赤いマントを羽織りその中には曼珠沙華が施された着物を着ている。
「あなたがしつこく呼びかけるからでしょ?」皇嵐はためいきをつき、カリグラの言葉に答える。そうこの男、『冬の時期でいい紅梅を手に入れた。共にめでないか?』とテレパシーでしつこく話しかけてきたのだ。
行かない、と答えれば己の契約した魔神と花をあしらえた文を寄越してきて…流石に皇嵐は降参してきたのだ。
下手すればこの男、今はしないだけで己の部屋に乗り込んでくる気がしてならないから…。
「ははは、それに答えてくれるとは。さすが我が女王はお心が広い」パチンっと軽快な音を鳴らし、さやに剣をなおす。
「…相変わらず口が回る男ね」
「愛しい女には、自ずと言葉が出てくるものさ」すわれ、と案内されて向かいの椅子へと座る。彼の机の上には季節それぞれの花が花瓶に入れられており彼の星のものであろうか…ドライフラワーのようなものまでもある。茶色の地味な色ではあるが、どこか品があり美しい。
「茶でも飲むか?、ちょうどカリギュラの世界に行ってなーあの世界線の日ノ本にもよって玉露を買ってきたのだ」
「…いただくわ」
「そう警戒するな、別に媚薬なんぞいれんからな」カリグラの思わぬ発言に皇嵐はふきだしかけ、何言ってるのあなたは!と叫ぶ。クスクスと笑うカリグラに皇嵐はドキリとしつつ、ほんとにぶつぶつとつぶやく。
「…年上をからかわないでちょうだい」
「悪い、お前が緊張しているように思えてなぁ」急須に茶葉とお湯を入れて、カリグラは近くに持ってきて待つ。
「どうせならいいものを飲んでもらいたい、少し話すか?」
「そうね、…あなたいつまで私に口説きに来るの。いい事?、いくらあなたが強くても元は人間っ違うのよ」突き放したい訳では無い、当時からカリグラがいい男の部類に入るものだとはわかっていた。故に同族の女が、彼のことをほっとくわけがないと。
実際ほかの国のものやはては他惑星の王族の女まで彼と結婚したい、と持ちかけられたと話も聞いたことがある。神から見ても美しい、と思うものたちに。
なのにカリグラはそれらにキッパリと『結婚しない』と断ったのだ。好きな女がいると。
「私は神、あなたは人間……歳も何もかもがかけ離れてるわ。だから、同世代の子達をみなさいなそれこそ「お前以外はお断りだ」カリグラッ!」
「俺は本気だぞ?、ここ20年以上生きてきてな。色々な世界線や時空もみた、惑星も……その中でも皇嵐おまえ以上のやつを見つけたことがない」
「神も人も、妖も精霊も……何もかもでお前以上の女を見た事がない。愛してもない女たちと結婚するのはごめんだ、俺が愛しているのは皇嵐お前だけだ」椅子から立ち上がりカリグラは皇嵐の髪をひと房すくい、くしんで口づける。
それはさながら騎士が女王をまもる誓いをするようで、神聖な誓いのように思い皇嵐はその光景に見ほれる。彼の赤い瞳と目が合う、自分のとは違いもっと鮮烈な赤…炎や曼珠沙華の花のような命の苛烈な輝きを持つ轟々とした赤だ。
「…カリグラ……、あなたっおかしいわよこんな神の私に」
「おいおい…、仮にも全てを支配している皇帝様が愛している女にこんなとかいうか?。だがそうだな、こんなにも可愛く美しい女神であるならば…そうだな可憐で美しく天に咲く一輪の花のようなお前が愛おしくてたまらない。さて、茶も出来たな注ぐぞ」皇嵐は改めて彼のことを見る、膝下くらいまである長い純黒の鋭い髪に左は赤の瞳そしてもう片方は黒く金剛石のように輝く瞳……凛々しくも整った形をしたまゆにすっと鼻筋の通った顔立ち…。鋭い瞳は全てを見抜き、見てくるようで皇帝という貫禄を若くして表している。
彼の体格も良さもだ、自分との身長差なんかかなりある体格も今まで戦闘を主として生きてきたせいでかなりの大柄故に自分に威圧感を与えないようにと目線を合わせ話してくれる。
その時の顔立ちの良さにも感嘆してしまうが、エスコートというかその行動の流れにも驚いてしまう。あの会った時の荒々しさが一切なく、一つ一つが貴公子のようで自然と来るのだから。
「(私から見てもいい男なのはわかるわ)」本人曰く生まれはそこまでいい所ではない、と話していた。そして両親のことも自分を恐れ、避けて来る連中に飽きて自分が彼らを殺したらどのような反応するかと手にかけてみたが何も感じずああ己に愛は必要ないのだと幼い頃達観したと。……そのような殺伐とした過去を持つ男であるカリグラは自分に会い、かわりいまでは全てをまとめる皇帝。
様々な世界線、時空を支配して見せたまさに生命のバグのような存在なのだ。顔にも身体にも恵まれ、彼を作った神は満足して死んだのではないかというほどの。
「どうぞ、我が女王様。熱いから気をつけろよ」向かいに座り直し、カリグラは自身にも注いだものと同じものを1口飲み自分を見てくる。
おずおずと受け取り、少し冷まして一口飲むとほんのりと茶葉のあまみが広がり皇嵐はおいしい…と呟いた。
「相変わらず目利きなんだから」
「お褒めの言葉、光栄だ。お前に一目惚れして、手に入れたいとなるほどには目がいいのでね」その言葉にまた1口飲もうとしたところ、むせてしまい何を言ってるの!と皇嵐はまたさけぶ。
カリグラはそれにくすくすとまた笑い、その反応がいとおしくてたまらないのだと言葉にする。
「言っておくが、俺は本気だぞ?。そうだな、お前となら……長く気も遠くなりそうな悠久のときを生きるのも悪くない」
「だから、不老不死のまで手に入れたのでしょ」魔神との契約で、カリグラはある武器がないと死なないほどの力も手に入れて。だがその武器も神々の神器で、混沌であり原初たる黒王が決定しない限りは使われない。
彼ならばその運命すらねじ曲げて普通に生きるだろうが……。
「(気にするのもバカバカしいわね)」この男は簡単に自分の予想を超えて生きていくのだから。
「そうだな、元々俺たちの人種がそう簡単に老けないのもあるが」念には念を、だろ?とカリグラは薄く微笑む。相変わらず顔がいい、そして声も…低くはっきりと聞こえる声。甘く苦い花のような香りを宿し、夜の帳をおろすような妖しい色。
「それで、この後紅梅を見に行くのかしら」皇嵐は両手で花があしらわれたティーカップを持ちながらカリグラに聞く。
「ああ、外も少し冷えている…。上着をお前に渡そう」
「…ありがとう、カリグラ」
「構わん、…お前が喜んでくれるならな」そういい愛おしげに微笑む彼に何故そんなに、と思った。私はあなたの気持ちを突き離してるのにどうしてそんなに嬉しそうなの、と。
お茶を飲み終え、庭園へと行こうと準備をする。
「これを」と白いふわふわの毛皮のコートを皇嵐に着せた。暖かく触り心地も良くて癒される。
皇嵐がすこし目を伏せて微笑んでるとカリグラもつられて微笑み、頭を撫でてきた。
「カリグラ!?」
「悪い、可愛くてな」行くか、と部屋から出て広い廊下を歩く。 赤く高級感のあるものたちが飾られ、まさに王の道と言いたげな廊下。家来達が彼が近くを通ろうとする度すみへといき礼をする。
礼儀正しく、綺麗な姿勢でこれがかつて荒くれ者と呼ばれた民族とは思えないほどだ。
「(上を見習って、かしら)」 細かい装飾があしらわれた扉に手をかけ、カリグラは外へと出る。
ふわりと白雪がまい冷たい風があいだを通る。
「…綺麗」
「そうだろ?、紅梅がこの時期特に綺麗でな…行こう」手を差し伸べられて、皇嵐は仕方ないとのばし彼の大きな手を握る。あっさりと包み込まれてしまう自分の手。優しく彼は加減して握り返してくれてることがよくわかる、自分はそんな容易く潰されたりもしないのに…。
「そんなに加減しなくてもいいわよ…」
「悪い、嫌だったか?。加減しなくて、と言われてもなぁー皇嵐が俺の気持ちを受け取ってくれるまでな。加減しないようになると、俺はお前のことを俺だけ見てほしいと色々としてしまう」程よく積もった道を歩く、まわりには椿の花や様々な冬の花があり地球のものではなくどこかの星のものであろうか星型のまでもある。
だがどれもこれも彼の庭に会い、共生し合っており皇嵐はその光景の美しさに圧巻されてしまう。
相変わらずなんと手入れもされてることか、葉まで生き生きしており美しい緑色は白雪に彩られ輝いている。
そして彼のことも…白い光景にハッキリとある、純黒の髪に曼珠沙華に彩られた黒の和服そして赤いマント。角はギラギラと輝きなんと美しいことか。本当に見た目はいい、男らしくもあるが彼の白い肌とその髪は女子でも羨むほどだ。
「ほんと、見た目だけいいんだから」
「オイオイ…それはないだろ?、皇嵐。俺がいい男なのは認めるぞ」思わず口に出してしまっていた言葉に皇嵐は驚き、えっとカリグラの方をむくと本人はくすくすと笑い口に出てたぞと返してくる。
「声に出てたぞ、心の声と同じでな」しまった、この男自分の心の声すら聞こえるほど読心術を極めていたのだと思い出し恥ずかしさに顔を赤くしてしまう。カリグラはそんな自分のことを愛おしげに見つめまた髪へと口づけてきた。
「…ほんとお前は可愛いな」コラっ、とカリグラのことを軽く叩くとついなと彼はくすくすと愛おしげに笑う。
「お前が俺の気持ちを受け取ってくれるまで待つ、とは言ったが口説くのはするさ」ほら着いた、と案内された庭園へと来ると和風で季節外れなのに白藤や様々な植物がある。
松の木には雪が積もり、雪が光に当てられてキラキラと輝いていた。その中一等めだつ紅梅がありカリグラが話していた通りに美しい。
「美しいだろ?、こいつの手入れには少し時間もかかった……だがあまりにも綺麗でな」
「そうね……」でもこの色、よく見た事あるような。
「…お前の瞳の色みたいだろ?」そう言われるとそうだ、少し赤とはいえ白があり薄めな感じもする。
カリグラのようなハッキリとした赤ではなくキラキラとだがそこにある、と主張するような色合いだ。
皇嵐はカリグラのことばに少しづつ赤くなる頬を両手でおさえ、馬鹿なこと言わないでちょうだいっと言い返す。
「綺麗なのは事実さ、俺の中で……お前が一番美しく愛おしいからな」
「君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる」そうしてるとひと枝を優しくたおり、カリグラは皇嵐にその枝を渡した。
「…あなた、どこでそんな言葉覚えたのよ」
「教えて貰ったのだ、…あちらのとこではこうやって和歌を交わし逢瀬を楽しむらしいからな」
「俺はお前とだけ、このような美しい景色も香りも楽しみたい。俺はお前が愛するものたちのことは大事にするさ、…だがこのようにきれいな景色や俺自身が思う大事なものはお前とだけ共有したい」そう語るカリグラの背中はどこか孤独で孤高だ、人間でありながら人間ではなかった男。生まれながら強い力と才能をもち、はずれていた存在。そのために誰かと分かち合うというものも欠落し、愛を知り拒絶してきた。
そんな彼が自分となら、と言うなんて……と。
「俺はずっと言ってきたはずだぞ、皇嵐。おまえとなら全て悪くない、と」
「分かってるわよ…、そうね景色を愛でるくらいならつきあってあげるわ」くれた紅梅の枝を撫でて皇嵐はつげる、そのなかの一輪の花はああカリグラの目の色とおなじ壮烈な赤色がある。
「(連理の枝、ね)」彼はわかって出したのかしら、夫婦を表す言葉として。まだ付き合ってすらない、結婚も。ホント予約された気持ちだ。
「景色も、か。それは嬉しい、では次は桜でもどうだ?。冬桜もいいな、そのあとは山桜もある」
「あなた、地球の日本からどれだけとってくるきなの」
「ははは!、まあそれなりにだ。俺はあの国好きだぞ?、四季折々とあり自然を愛でる……とてもいいではないか」
「ああそうだ、カリギュラにいってつるバラやゼラニウムもあるからなぁ~…それもどうだ?」
「分かった!、わかったわよ!!。ほんと!、あなたは強引な男なのだから」
「愛しいやつと花を愛でる、最高に楽しいではないか。…なあ皇嵐」そう言い、彼は自分を抱きしめてきて口づけてきた。薄く甘いカリグラの唇、皇嵐は少しぽかんとしたあと状況を理解し頬をたたく。
「このっ!女の敵っっ!!」
「っ!、くははは!!。俺にそれを言うのはお前くらいかもしれんぞ?、あー可愛くてたまらん。愛してるぞ、皇嵐」そう言い笑う彼は…誰よりも子供で無邪気だった。
───
君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる 紀友則
あなた以外に誰にみせましょうか この梅の花
共に香りをめで、色も見るのはあなただけですよ
