見守り

やつはそう月鬼とやらに語る、遠くのはずなのにやつの声ははっきりと余にきこえる。
「…あいもかわらずっ、人間離れした男よ」やはりそなたは決まった運命すら捻じ曲げる力をもっているではないか。
しかも半身だけで、…さすがは我が友。
「ユピテルよっ…!」全知全能、万物を跪かせる皇帝という名の怪物。
赤黒い雷が二つ、轟き人を踏みつけ叩き付けるように落ちていく。あれはカリグラが者共を根絶やしにする時によく使っていたものだ、かするだけで致命傷となり見るも無惨な黒焦げの姿となり死んでいく。
「………あぁ、俺は俺から開放された気持ちだぜ。……穢れの御霊 目覚めたり」呪いの言葉が言紡がれる、音ともに悪鬼羅刹のものたちが異空間から現れ術者たちを次から次へと殺戮し始めた。
月鬼は高らかに笑い蹂躙をおこなっていく、赤く染まるその姿はまさに
「魔王………蹂躙深紅だな」なんて深き罪深い紅なのか。
まさにカリグラの深淵をつぎしもの、あの時代にもし誕生していれば次世代の皇帝としてカリグラに育てられたのだろう。
皇というまさに勇者のような闘気を纏う男にきりかかられるが、やつはそれをへし切長谷部にて切りかえしふきとばす。
あの切り替えの速さにくつくつと笑うその光景は、余とともにいたカリグラを思い出させ懐かしい気持ちを駆り立てられる。
そして昂り、これだこれこそが我々に許された特権…力の限りの蹂躙そして血の宴だ。
「素晴らしい……なんと、良いことか…!」
「いいぜ、来いよ!!。皇!」皇と呼ばれるものの戦いで構えをとる、彼奴の手に現れたものはカリグラがよく使っていた槍だ。
余が勝手に呼んでいた名だが、あれは…"タナトスの呻き"。死へと導く恐ろしい槍だ。
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