あなたにかける呪(まじな)い

そして、今目の前の男ともう一人の男のもとへと生まれ変わった…封印されたが正解かもしれないが。
だから思うのだ、ある日ふとラディッツが目の前から消えないかと。自分の想いから目を逸らし、神としての矜恃を優先した結果一人の男を…愛した男の命を奪ってしまったのだから。
「……(カリグラ…)」彼なら、今の自分を見て幸せそうでよかったと言ってきそうだ。
「んっ………」するり、とラディッツは皇嵐へと擦り寄る。気だるげに声を出して、たれた前髪を皇嵐の顔へと触れさせる。
「大型犬みたいね…」すやすやと眠る姿は幼子のよう、とくとくとなる心臓も。
命を刻む心臓へ思いを馳せながら、皇嵐は言霊を紡ぐ。
─どうか、どうか彼が幸せに暮らせますように─もし私が、ラディッツと彼と離されても彼が生きていますように─平穏に、どうか…私はあなたとの思い出を幸せに抱くから─
「生きててね…、ラディッツ」少しの照れに、とラディッツの胸元に赤くりんごのような痕を残す。
改めて見ても恥ずかしい、自分が彼につけられることはあれど彼に自分からつけることなんぞあまりないのだから。
「皇嵐…っ、ねむれないか?」そうしてると、寝ぼけたラディッツがうっすらと目を開けて掠れた声で声をかけてくる。
「ちょっと起きただけよ…っ、ひゃ!?」ぎゅっと強く腰を抱き寄せられてより密着する形になり桃色の肌がより赤くなってしまう。
「…もう少し寝るぞ、休みだからな」ウトウトと男らしい声を出しながらも言うことは、あの幼い頃の生意気とたいして変わらない。
クスリ、と可愛いと笑い皇嵐はくっついた。
「わかってるわ、…おやすみなさいラディッツ」良い夢を、愛しいお人──
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