あなたにかける呪(まじな)い

パチリ、と目を開けて皇嵐は乱れたベットから意識を覚ます。
隣には幼い頃の面影をかもしだしながらふやすやと寝ているラディッツがいた。相変わらず自分を抱きしめる手はしっかりとしている。
あんな幼くて小さくとてちて、と追いかけてきた少年は今じゃ自分よりもとても大きくなりがっしりとした青年だ。…カリグラの面影も出してきて。
「…ほんと、彼の影響か…かっこいいのよね」すっ、と通った鼻筋をなぞると擽ったそうに眉を顰める。白い肌に鍛えられたとわかる筋肉、普段あげている髪の毛は垂れ下がり年相応の若さを出している。
動く喉へと触れると喉仏の硬さに自分との性別の違いをより知る、皇嵐は時々こうやって睦あい先に起きたあとラディッツに触れる。
彼がここに居ると、突然失わないようにと。
さらりと髪に触れれば、硬そうな姿に似合わず絹のようにするりと通り青みがかった黒がキラキラと輝く。
「……」胸元にくっつき心臓の音を聞く、トク…トク…トク…とリラックスするような動きをして命の音を鳴らしていた。
暖かく、落ち着く命の音…彼が生きているという証。
ふと、あのカリグラとの一夜がよぎる。今まで見せてきた優しさから一転して無理やり男としての本能と私にすがり覚えていてくれと言いたげな夜。あの時、やっと皮肉にも自分は彼への想いを自覚したことを。
「ほんと、乱暴だったわ……」でも、彼は一度そうしたあと優しく抱きしめ愛してきた。
『お前を愛している』、そういって。自分の運命がわかっていて、己があまりにも彼への想いから目を逸らしてたからだろう。そうして彼は、自分に想いを吐露して桜の花が散るように艶やかに散った。
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