忘却

ー次に幻聴の時は、逆にしろ。耳に意識をほぼ傾けるな、やつらは戦闘力は操れない。スカウターを使え。数が多くなったときはすべて殺せーそうすれば、お前は勝てる。いいなー
昔はうっとうしい話だと思っていたが、今では役に立つ戦闘の講座だ。さすがは上級としか思えない。現にこのように自分は助かっているのだから。
「…少し休めるとこを探すか…」さすがに動き回るのは疲れた。他のとこは王子やナッパが制圧しているだろう。
なるべく一人になるところがいい、皇嵐とゆっくり話をしたいのだから。
あまり悟られないように、と歩いていく。飛べばばれることはターレスたちで試して知っている。
それにしても自分が幻覚で見せられたのがあの幼い頃皇嵐との別れとは。なるほど、あれはトラウマで辛いものであった。自分は両親と弟のを見せられると思っていたが………無意識のうちに彼女との別れが一番恐ろしくなっていると言うことか。
「……惚れたら負けか。」戦闘の時でも彼女のことを考えてしまうとは末期だな。
がさ、と近くから物音が聞こえてくる。先程破壊した建物の瓦礫が崩れ落ちたのであろうか。いや、崩れ落ちるならもう少し重音でいいはず。
横を見ると砂煙のなか男がこちらを見ていた。
「……お、れ…?」いや違う、でも不思議だ。砂煙のなかなのに彼の姿ははっきりと見えるのだから。自分と似ている、けど全く違う姿の男。
自分と同じ黒くて長い髪、彼の方が女人のように艶やかに輝いている。国重がいってた、濡烏色だろうか。
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