少しの間

ただのラディッツの1人、それだけなのだ。己を理解してくれたものなんぞ…ガイウス(カリギュラ)ひとりと皇嵐だけ。彼女はこんな自分に生きる意味を与えてくれて、そして人を愛しまもることを教えてくれたただ1人の女神なのだ。
ああ、彼女が恋しくてたまらない……馬鹿なことだ自分から彼女の幸せを祈るようにどしたのに。動ける身体を得た途端忽ちこれだ、恋しい愛おしい皇嵐を抱きしめてその花の香りを感じたくてたまらない。
「カリギュラに会いに行ってもいいか……」ああ彼女のことを知るものと話すか、ナエが話すと少し焼いてしまう。それであれば知己の仲であるガイウスのほうがまだいい。
『カリグラ──』彼女の春風のような声を思い出す、未だに鮮明に思い出せる彼女の優しい笑顔と可憐な見た目。
手を伸ばしたい、今すぐ抱きたい。皇嵐のために今まで生きてきた、そして皇嵐のために命を捧げた。今では彼女の為にと動いている。己の来世のラディッツに託したのに、未練がましい想いがでてしまいそうだ。皇嵐、皇嵐……と小さくつぶやく。愛おしい俺の女、最愛の人、ファタール……。
「情けねぇ、……俺は本当にお前にだけ乱されるようだぞ?」化け物が愛を得て、人となった。だが…化け物は化け物でしかなく、今は狂おしいほどに欲しい。
軽く彼女との記憶に浸ろう…、この場だけでいい。カリグラは瞼を閉じて優しい悪夢を自ら見に行った。ずっと、ずっと抱えてきた優しい思い出そしてもう得ることのないであろう優しい微睡みを。
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