時のほころび/挑発

言葉を言いながらトランクスは気づいた、おそらくラディは気づいたのだ。セルを倒したのは、己の父親の死に一手を与えた存在なのだと。
ガチっ!、とスカウターを握りつぶしそうな音が通信から聞こえてくる。
「やはりなっ…!、カカロットの息子…!!」父の仇、父を殺したヤツら。許すか、許してなるものか。だが理性が母の血が止めろと一手を入れてくる。
今はそれより任務をこなせと、あなたにはこの世界を知る必要があると。ねえお母さん、…あなたは全ての命を愛してたよね。罪あるものも綺麗なものも同じだと。
私も母みたいに色々と大事にしたいと思った、だが耳に残る劈くような音が離れないのだ。父が殺された音が。
そんな奴が倒したセル……、いっそ取り残してと思うがいやまずは片付けることが先だ。やらなくては。
『まずはここにいる民間人の人たちを救出してください…、位置がわからない場合は』
「もうやるからいいよ」カカロットを育てた星なんか滅びてしまえ、と思うがここの人達に私の事なんて関係ない。それに……
「(違うとはいえ国重の故郷の星だもん)」昔、よく話してくれた国重の故郷。地球にある日本だという国の話。
『お嬢様にも見せたいですね……視界を全て支配するほどの青い海の光景を─』語っていた時の國重は懐かしい、と瞳を揺らして語っていた。彼にとっていちばん楽しい時期だったのだろうというくらいに。
『國重は、星に帰りたいと思わないの?』
『……俺様は今、貴方様方を守る事で大変ですから。それにお嬢様たちといることも楽しいものですよ』そう語っていた国重、優しく微笑みカガチのような瞳をもつ刀の神様。 今自分は任務をこなすためとこの星に来てるが余裕があればその海を見れるだろうか。
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