葛藤

ズルズル、ズルズルとリンは不貞腐れながらもカリグラに軽々と抱えられている。何だこの男、あっさりと自分を抱えて抵抗しようにもできない。
先ほどの殺気の件、あの重苦しく深海の底のような重力のプレッシャーでリンは彼と自分の実力差を思い知らされたからだ。赤子と大人どころではない、ミジンコと神それほどの力の差が彼との間にあると。
そして、実の父のラディッツがこんな化け物を抱えていたのかということにもだ。
「ねえジジイ」
「…なんだ」
「親父が弱かったのって、あんたも関わりあんの?」戦士としての直感から男に投げかけるとピタリ、と足を止めた。
「…なぜだ」
「直感、私は…あんたのこと警戒している。あんた、その気になればこの世界も何もかもを変えれんでしょカリーさんも話してた、それに…なんでそんな優しいふうにいんの?あんた親父以上に他人なんか基本どうでもいいでしょ」
「親父は、腹立つけど目が良い奴だった。だからあの中生きてこられたし危険なやつの前ではすっとぼけてたりもしてた、本来実力があってもおかしくないほどのだけど……あんたが居るせいでかなと」リンはちらりと相手の方を見ると、先程まで姉がいた時には一切見せたことの無いほどの悪い顔を浮かべていた。
ヒヤリと自分が冷や汗を垂らしてまうほどのだ、楽しげなだがそこに踏み込むなと言いたげな顔。
「勘のいい娘だなお前は……、そうだ。俺がいたせいでな、さすがは俺のラディッツの娘…洞察力に非常に優れている褒めて遣わす」
「…っ!、だったらあんたがいなければ親父はっ」
「生死の問題ではない、そもそも…俺という存在がいなければきさまの親父は存在すらしてなかっただろうな」あれば稀に見る時代の徒花、故にみなみなの目線をかっさらっていくのだ。悟空がかつてない恐怖、という程の冷酷な力を持ち冷徹な判断能力。
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