とある2人の話

「お前のような老年の戦士は、一度力の差というものが分かれば…油断もせず手段も選ばずどうにかやろうとするからなぁ。あえて泳がせた」うねうねと手は動き、月鬼にすりよる。
その光景がどこか麗美で死の光景として良いかもしれないと見つめてしまう。どろっ、と己の目からも血が垂れてきてるのがわかった。かなり深く刺さったことも、だが…不思議と痛みが出ず奇怪な状況に頭が混乱する。
「…っわざと、か……まるでっカリグラのような事をっ…!」
「俺も所詮カリグラ、だからなぁ……成れの果てだあいつが人間を捨てた先のな」風に揺れる彼の黒髪にかつて2度見たカリグラとの光景を思い出す。
あの時はかなりの怒りと恨みを持ったが、今は不思議と落ち着きこれが死神かと死を受け入れている自分がいる。神に、かなうわけがないのだと。そして世界が選んだ支配者に。
成れの果て、か……だからこうも黒く輝き自分は目を奪われてるのだろうか。
「なぜっこのようなことをしている……暴れに暴れて、おまえならばっ…っぐふ!…逃げていくことも可能だろ」
「俺が元来負けず嫌いだからなぁ、それ故にだな。今更俺は世界のためだの、どうだの動く気もない……"俺"のためにしているだけだ」俺のため?、もしかしてあのカリグラのもうひとつの器のラディッツの事だろうか。ああ、思考が薄れていく……せめてっせめてと小さく淡い光をこっそりと作りヴァドは飛ばした。
「…横暴者めっ…!、だからこそカリグラというものはきらいなんだ」
「はっ!、すきにいえ。…俺は少し楽しかったぜ、ヴァド


レクイエムはお前の命が落ちる音だもう一度眠れ…戦士よ」
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