とある2人の話

まだあの目の力は使わなくていい…、いや使ってしまえばこの男だ何か容赦のないことをするだろう。通信機も連絡がつながらなければせめて録音だけでも、この男は気をつけなくてはならない。長年生きてきた勘がおのれにかたってくる。宇宙、いや世界の驚異へとなりかねないぞと。
「おぉっと、やるじゃねえか!ヴァド!!」ヴァドの暴風のような連撃を受け止めながらもさばききり、月鬼は反撃する。付近にある死体を蹴りあげ、視界を奪い黒い気弾をはなつ。
「ぐぁ!?」ヴァドはよろめきながらも、打ち返し月鬼へと1発いれるがうしろにまわられあたまをつかまれる。そしてそのまま地面へとたたきつけられた。
思わず吐血してしまう、内臓が破裂したような音が聞こえてきてフラフラとどうにか立ち上がる。相手は低く笑い、どうした?と嘲笑う。
「俺を止めるのではなかったのか?」相手は嘲笑うような顔をして自分に言ってくる、この男やはり強い。
ゴロッと不快な音がヴァドは己の耳に聞こえてきて顔を顰めた、やはり内臓がやられて肺に血がたまっているようだ。今すぐこの場から逃げた方がいいだろう、だが月鬼の後ろにいるものたちが許しそうにない。1人露草のような不思議な髪色をした男は抜刀の構えをしている。逃がす気は無い、そう言いたげな顔をして。
国重、と呼ばれていた男もだ。構えはしていないがいつでも抜けれるような姿勢を見せている。
「……(最悪、自分は死ぬだろうな)」全く…カリグラ、という存在はどこまでも王なのであろうか。そしてどこまでも…残酷で冷徹な生物だ。
かわいた風がふいてくる、ヒリヒリと傷口に染み不快な思いを感じるがヴァドは笑みを浮かべた。
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