もう1人の器

そのときであった、役人の首元に二つの刀が突きつけられた。
「貴様、我らが主に何を言った…?。圧しきるぞ」
「さすがの僕も黙ってられないね…、燭台のように斬ってあげようか?。」カソックを着た男と、隻眼の男がいきなり現れ突きつけたからだ。
「へし切長谷部…!、燭台切光忠…!。」刀の付喪神たちだ。へし切長谷部、と言われたカソックを着た男は、鋭い目付きでにらむ。
「黙れ、政府の犬が。」
「…長谷部、光忠。落ち着け…何お役人もただ気が立っただけだ。…゛まだ殺さなくていい″」
「まっ、まだ…!?、どっどういう…!!」
「…そのままさ。お前が俺の指示に従わなければ、殺す。安心しろ、一族朗頭全てだ。あの世で会わせてやるさ…」ニタリと月鬼は悪魔のように笑い、震える役人を見る。
「確かに俺は陰陽師だ、国を守らなくてはならない。だがな…それはあくまで俺が゛守りたい″と思ったときだけだ。」
「陰陽師は…!、国を守るものだろ!!。なぜ気まぐれだ!?、それは義務だろ!」
「知るか、俺は俺の気分で決める。ちなみに俺には貴様ら国家の権力なんぞ効かん。その気になればこの国を乗っ取れるからな。」絵空事だと普通思う言葉が、役人には本気に聞こえた。
理由はひとつ、彼が世界一の陰陽師で同時に″呪術師″だからだ。
呪いを扱い、魔を扱う唯一のものだから。そうかれは一人で光闇の者なのである。世界でただ一人もっとも神に近いものなのだ。
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