久しぶり、愛しき君~第5章~

遠征当日。

早朝、ラディッツは気だるげに起き上がる。今回は珍しく皇嵐が抵抗もなしに抱き締めて寝ることを許してくれたのだ。いつもなら殴ってくるのに。
不思議ではあった、こんな抵抗もなく受け入れてくれたことに。おかげで普段眠れない割にはかなり熟睡できた。
時計を見ると遠征まであと一時間になろうとしている。
朝飯を食べるか…と、ベットから下りようとしたがギュッと後ろ髪をにぎられる。寝ぼけている彼女に。
白魚のように綺麗な手、桜色の唇…どれもこれも美しい。どんなものよりも。
「…いいよな。」固唾を飲み込み自分に言い聞かせ、吸われるように皇嵐の唇にキスをした。何度も。理性が切れそうになったときに離れ、また寝転がる。
「……行きながら食おう。」あと少しだけ…彼女とともにいたいから。死ぬつもりはない、けど…万が一がある。
不死のような父が死んだときのように。
だから、今だけ今だけは彼女といたい。
後悔がないように。ギュッと抱き締めると、彼女の香りが鼻をくすぐった。昔はこの香りをかぐだけでも満足であったが、今はもっとと願ってしまう。貪欲に求めてしまう。

皇嵐を欲しいと、自分だけのものにしたいと。
人間が神を我が物にしたいと願うことは愚かで浅はかで罪であろう。だがそんなこと知るか、惚れたものは仕方ないし己はとうの昔に゛人間″を捨てたのだから。
彼女を見た、そのときから。

「…必ず帰ってくる。」お前の元に。
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