比翼連理~第16章~

あれからしばらくして、Raたちも星から離れ視察に行っていた。
翼も手伝いとして向かい、家にいる人数も以前より少なかった。

「さて……主、夕食も食べられましたしゆっくり過ごされますか?。お望みならお茶も注ぎますが」
「……すきにしろ」

娘たちに夕ご飯をたべさせ終えて、さらに寝かしつけも終えてラディッツはくったりしがらもこたえた。戦闘に使う筋肉と家事や子供のことに使うもの違う。
それなりにベジータやカリーたちから連れ回されてきたとはいえ子育てとなると全く違うせいで疲れが来ていすにすわればもうなにもしたくなくなるのだ。
ラディッツはしっぽも垂らしながらぐったりとしている、心做しか顔色も白く見える。

「(これはこれは、かなり無茶をされていそうな)」

刀の付喪神である国重からしてでも、疲労しているように目に見えてしまう。ラディッツが妻たちのためにと無理をしがちなのはよく知っていたが、今回はよりだ。
滋養強壮に効くお茶を蒸らしていれながら国重は彼へと目線を向ける。

「二の姫さまの寝かしつけが大変でしたか?」
「……ああ、ラディのことしかあいつ聞かんからな」
「それは、そうでしょうな……。お嬢様は心お優しくあられる、二の姫様の怒りにも落ち着いて言われるでしょうし睡眠の時はあやして寝かしつけされるでしょうからな」
「だからか俺や皇嵐の言うことをあまり聞かんのだ、あいつは。ったく、だれににたんだ」
「鏡いりますか??、主」
「遠回りに俺だと言うな」

ラディッツからの回答に一つため息をつきながらも国重は思ってしまう、あれはリンの我が強くそして一心に一人の人を愛するところはラディッツ譲りに決まっていると。 もちろんその中には忌々しく一切思い出したくもない男もいるが、それはあとにしてもだ。
幼くも2歳なのにすっかり2歳違いの姉にベッタリ、ラディに誰か近づくものなら『殺すぞ』と言いたげに睨みつける。2歳なのに後ろからなにかスタンドが出てるのかと言いたいほどに殺気に力がこもっており、ターレスたちですら苦笑する程に近づけないのだ。
あの冷たい瞳もあの男──カリグラの若い頃と似ている、成長すればもっと相手が大変になることはよくわかる。

「おや!、分かられましたか!!。あんなにも主にそっくりなんですよ、ええ。愛らしい見た目も」
「それは俺が幼い頃は可愛かったと言いたいか?」
「ええ、見た目は」
「どストレートに言うな」

お茶をラディッツの目の前におきながら己の嫌味に対して返せれる体力があることを確認する。
ふぅと一息をついて安心しながらも、国重はラディッツがまた無茶しないかと心配にもなった。彼は弱い所を無理するところを、隠して行動しているからだ。

「(ほんと、俺様がいないとまともに生きてゆけない人だ)」
「なんだ、ジロジロ見てきて……鬱陶しいぞ」
「いえいえ……ほんに大きくなられたなとおもっているだけですよ?」

相変わらずの生意気な言葉、それを聞きながら国重は食器を片付けていく。
ラディッツのこの生意気なノリもいつもの事だ、時々よぎる生意気な男の件もあるがそんなものは軽い。そう、いつものことのはずだと国重は皿を洗い洗剤を落としながらおもっていた。
日常というものは当たり前という奇跡の積み重ねでできていると付喪神であり第六天魔王の国重は考えていた。出汁の効いた味噌汁に、パリッと焼かれてふんわりとした焼き魚……それらのひとつひとつは個人による積み重ねの行動によりできている。己ら付喪神もそうだ、刀工による願いの刀。そして主により振るわれていく戦の歴史、一つ一つが紙の1ページとなり重なりできていくものなのだ。
国重はそれを人間より、そこらのもの達より長く見てきた。もうひとりの己であるへし切長谷部は、長く博物館で国宝として崇められていたが月鬼という1人の男の登場により付喪神としてまた力を振るうようになった。
光忠もそうだ、焼失しかけていたがカリグラのもうひとつの器であり生まれ変わりたる月鬼が助けてよみがえった。
対する己は二度、死にかけた。織田信長とともに安土城で伊達真田連合軍と戦い信長と共に奮闘したが、刀身が折れて信長と共にパキりっと折れて消えかけた。
だが信長の執念とあの生意気な男──カリグラすら認める『全てを圧し切る力』、『人外すら飲み込む狂気』により第六天魔王そのものとなり信長とともに復活して戦った。だが負けた、その果てにカリグラの悪戯であろうか時の狭間に落ちて様々な人を喰らい暗躍し来たくもないカリグラの時空に来た。
そしてその果てに──ラディッツと出会った、カリグラの生まれ変わりの男。生意気だと思った、だがその目は誰よりも孤独で猜疑心にも満ちていた。同時に皇嵐への狂った愛がこもっていた、ああこの男はひとりでは生きていけぬ。信長と同じく、己が支えなくてはならない存在だとおもった。
日常というものは突然の一粒によって変わる、国重は今感じていた。

「(この日常が、変わるような……)」

信長が消された時と同じような感覚がするのだ、強く胸が高鳴る。これは警鐘だ、何かが変わると言う。
月鬼が行動を起こすのか?、いやそしたらあの男は己に言うはずだ。ではカリーたちの誰かがやられるのか??、そんなわけない。今はこの星にいるはず、そして少ししたら来ると言っていたはず。ではなんだ、ラディがまた熱を出すのだろうか?。大慌てしすぎて先日ラディッツからうるさいと怒られたばかりではないか。
それは、群雄割拠がはじまる南北朝時代にうまれ2人の帝をみて後に第六天魔王と呼ばれた男と『絶対なる皇帝』をみてきた国重だからこそもてた感性であろう。時代の変わり目、それを悟る嗅覚だ。

「……なにを冷や汗を垂らしてる、バカ」
「っ!?、主……っいえ胸騒ぎがありましてね……」
「胸騒ぎ?、今日は何もないぞ。ベジータたちは好き勝手訓練でもしてるかもしれんがな」
「……そうだといいですがね」

ラディッツの反応もいつも通りだ。本当に何もないだろうか?、と国重は内心思う。
何も無ければ自分もここまで胸騒ぎはしないはずだ。

「あら、もうたべてたのね」

するりと子供たちの寝室のエリアから皇嵐が現れる。その時だ国重の直感の答えがわかったのは。
Raたちの不在、今この場にいるのは己にそして皇嵐で主であるラディッツと子供たち……離れたところにカリーとターレス。
背筋に寒気と言わず雹が這うような感覚がしてくる。

「アカンッ……!、主ッッ!!!。去られてくださいッ!!!!」
「は!?」

国重が声をかけると同時に時空の時が止まった、それはこの空間否万物の支配者が現れ軍隊が整列するような瞬間を覚えさせた。
皇嵐の瞳がゆっくりと大きく開く、そしてガタガタと震わせた。国重は瞬時に刀を抜き相手へと対応しようとするが、目に見えない衝撃波が来て吹き飛ばされてしまう。
ズズッ──、と影が這う。それは黒く人の形の姿となり現れた、黒としか言えないその姿。だがその瞳は、皇嵐以上に紅く燃えている。美しい黒髪の長髪に人を恐れさせるような美丈夫、その声は冷たく深海の底を思わせた。

「……ようやっと見つけたわぁ、皇嵐」
「っ……!?、こっ黒王、さまっ……!」
「っ!?(だれだ、こいつはッ。どこか、皇嵐と似ているが……ッ!!)」

誰だとかは分からない、なぜなら見たこともないから。ひとつわかるのは、皇嵐がかなり恐れているということ。
あの女が、己が記憶をなくした時すら泣いても気丈に振舞っていた皇嵐が。身体を小さく縮こまらせて子猫のように丸まり、震えている。
そして分からない、なぜかは分からない。心から心の底から反吐が出るほどに、この男を嫌いだと即刻消し去りたいと思う怒りが湧いてくる。名前も知らない、存在も分からない。だが、深淵から溢れてきた言の葉をぶつける。

「『黒王、キサマあああッッッ!!!!』」
「……山猿の器、であるか。やはり猿にはわからぬかぁ?、我を敬えとな。そこの鈍もだ、……時空を超えここまで来て愚か者が」

殴りかかっても黒王はラディッツにも目をやらず、蚊でも来たかのように振り払い叩きつける。 その目は国重を捉えてみていた。

「っははは……!、貴方様に俺様のことを認識していただけてたとは。恐悦至極、…あなたの不始末から生まれたクソな山猿(カリグラ)のせいですかねぇ……こんなとこにきたのは」

崩れた自宅の壁の瓦礫から姿を表して、国重は黒王を睨みつける。己の主を愚弄し、叩きつけたやつだ。
それが例え万物の父親だろうと斬り殺してやるという怒りを持って。

「貴方様も随分と無礼ですわぁ、人様がお夕餉を食べている時に来ますからねぇ…」
「……戯れにうぬらの時空を作った主に言うか?、鈍」
「無礼ですわ、と言ってるんですよ万物の父」
「国重っ……!、やめてっっあなたまで!!」
「主君をバカにされて黙っている鈍じゃねえんですよ、皇嵐さま」

そういい国重は睨みつけながら異空から己の本体たる大太刀を出す。
それには赤黒い瘴気がうずまき、全てを消し去らんとしていた。
黒王はそれをみてくつり、と低く笑う。

「ああ、見たことあるぞその力……。いやはや良かったわ、"カリグラの知己たるやつを復活させてもう一度殺してな"」
「は??」
「……もういちどいうてやろうか?、"もう一度殺してな"」

斬りかかろうとしたところ、国重は動きを止める。今、この男はなんと言った??。否、万物の父はなんと。
─カリグラの知己たるやつ(信長)─復活させて─もう一度殺して─
ああ、嗚呼、アア!!!。おのがかつての主は!、信長は!!。この男によってか!!、そして何より己のこの呪われたような力も!第六天たる魔王のも!!!!。
やつは遊んでいたのだ!、カリグラという万物の父すら食らう化け物の周りを消し去る八つ当たりのために!。信長のあの戦いは!、安土桃山の頂上決戦はなんだったのか!!?。
関ヶ原のも!、英雄たちの小競り合いはただの遊戯だと言うのか!!!。
途端国重は今の姿を解き、久方ぶりの第六天魔王──六魔の姿となりその巨大な大太刀を振るい斬り掛かる。

「死ねッッッ!!!!」

純粋な殺意、怒りそれを持って。だが黒王は片手でそれを受け止め、弾き返す。

「……鈍が、我に刃向かうな」

メキメキッッ!!!と折れるような音が響き渡る、国重は叩きつけられながらも黒王の手を掴み投げ飛ばした。

「鈍でもあんたを飛ばすくらいはありますよ!、人型に慣れてねえでしょう!!?。万物の父ッッ!!!」

今のうちだと気絶しているラディッツを皇嵐の元にやり、アイコンタクトで意識を目覚めさせてくださいとやる。
皇嵐も頷き、ラディッツにヒーリングを使った。暖かい桃色の光がラディッツの身体に満ちていく。

「っおい!、なんの騒ぎだ!!?。空の色もなんかやべえし!」
「っカリー!?」

時空が止まり、この場にいるものたち以外動けてないはずなのに……そこにいたのはカリーとターレスだ。
カリーは、本人は知らないが皇嵐の兄のような存在邪皇とナエの子孫ネーマの息子だ。所謂ハーフであり無意識に黒王の力から結界を貼っていたのだ、それは知己であり大事な存在たるターレスにもある。2人は皇嵐の様子とラディッツの倒れた姿、そして国重と黒王の戦いに察して駆けつけた。

「なんだよ……ッ!、あいつは!!」
「……っ黒王、万物の父よ」
「黒王っ!!?(ナエさんの手記にあった、カリグラ様が死ぬきっかけとなった存在か!。皇嵐に執心してるやべえやつって!!)」
「……とにかくヤバいやつってことかい、大方見てる限りオレたち以外時間が動いちゃいないな。……カリー、オレはラディたちの様子を見てくるぜ」
「任せたッッ!、ターレス!!(とは言っても国重とあいつらの戦闘に入っていいか!?)」

国重は赤黒い弾丸──蠢く死者たちの魂のを放ち、黒王の動きを少しでも止めんとした。
ここは時間の接戦だ、上手くいけば願わくば月鬼ことRaが戻ってくることを願うしかない。
月鬼ならばカリグラの力が一部使える、黒王をどこかの時空に飛ばしてそのうちに自分たちが逃げることも可能だ。

「(ほんに賭けですがね!、月鬼さんも言ってしまえばカリグラの半身!!。場合によっては囚われてる可能性もありますが!)」

とにかく稼ぐしかない、やれることはやって抗うしかないのだ。
黒王は普段黒い瘴気の塊のようなものでいる、人と話す時または気まぐれな時に人型となるとかつてカリグラが独り言のようにボヤいていた。信長はそれを聞いて、何かのためにと記憶していた。
己にもその記憶があったからこそ対応できた、万物の父なんぞおとぎ話と思っていたが──あのカリグラが死んだのだ。皇嵐をまもるためにと、そしてラディッツの存在から実在してると分かり今まで生きてきた。
今の主を、国重にとっては我が子のような存在たるラディッツを馬鹿にされた。そしてその人生を今まで見てきた信長のことも侮辱された。
黙って見ていられるほど己の性格も良くない、邪皇の息子たるカリーが来た今皇嵐の安全は保障される。
国重は信長がかつて使っていた技を放つ、この世界の一部すら破壊せんものを。

「天魔ァァッッ!!!、即ち50年っっ!!」

刀を地面に突き刺し無数の瘴気を血濡れた刀の狂気を召喚し万物を消し去る力。
国重の能力、全てを圧し切る力を込めて。

「(腹立ちますがねえ!、カリグラさんッッ!!。あんたの世界を守ることになるのはね!)」
「ぬっ……!?」
「おいおい国重……!、それやべえじゃん!!」

大地が揺れる世界が軋む力も響き渡る。目線をやればターレスがラディたちを抱えてこちらに来ていた、カリーの元にいた方が安全だと判断したのだろう。

「(正解ッスよ!、お嬢様たちにこのやばい男の瘴気を浴びせねえためにも!!)」

黒王は体勢を崩し倒れかける、やはり攻撃を受けて右手は吹きとばせれたが瞬時に再生させる。
すると何を思ったのか黒王は魔の手を召喚し、ターレスに向けて攻撃をしかけた。

「っ!!?」
「ターレスッ!?」

ターレスは己に来たとわかり、ラディたちを投げてカリーに渡そうとする。カリーも受け取ろうとしたところ、国重はハッとして刃を抜き庇おうと動いた。

「ぐっ!?」
「っ!?、国重ッ!!。お前っオレを!」
「うるせえんすよ……!、このぐらい良いですわ!」
「はっ、あの山猿(ラディッツ)と皇嵐のなんぞ……消しても良いかと思ったが」
「っやめてください!、黒王様ッッ!!。お願いです!子供たちだけは!!」
「そなたの発言は聞いてはおらん……ひとり忌々しい血を抱えておるようだからな」

そういい黒王は今ゆっくりと目を覚まし皇嵐と同じ赤い瞳を持ち、ラディッツと同じ青混じりの黒髪を持つラディをみる。
神聖な力に万物を支配し、破壊する力……間違えるわけがない。あれは──カリグラの血だ、ラディはただ皇嵐とラディッツの娘ではない。
万物の父たる己の手元から離れ、歴史という因果を塗り替えかねない男カリグラの子でもあるのだ。

「時空を超えて我へと歯向かうかぁ……ッ!、カリグラ…ッ!!」

反乱分子は積まなくては、黒王は巨大な大剣を出してラディへときりかからんと動く。
同時にカリグラのことをかつて擁護し己の元を離れた邪皇の子たるカリーも消さんとだ。

「反乱分子がふたつもあるかぁ……、徒花を積まなくてはな」
「えっ!?、おっ俺!!?」
「カリー!、逃げなさいッッ!!!」
「カリーっっ!!!!」
「ひっ!?、なっなに!? 」

ラディとカリーがとたん怯え始める、ターレスは脱兎のごとく駆けて守らんと間に入った。国重も、もう一度と空をかける。
一瞬、音がそこで止まった。ここで終わったと皆はおもった、ラディも泣いた。

「とーとっ!」
「……騒がしいぞっ、いちいちめそめそしおって」
「っ!?」

国重の本体が持たれる、主に持たれる歓喜が身体をめぐる。
綺麗な一文字、黒かった空が真っ白になった。黒王の放った大剣が崩れ落ちて砂になっていく。
ハァァァ……と乱れた息の音がきこえる。

「……皇嵐は渡さん、と言ってるだろうが。わからんか、老害」

ラディッツが目を覚ましてやったのだ、まさかの力にみんなは驚く。カリグラ時代の力は消えて、代わりにあるのは猜疑心と氷塊のような冷たい心。
だがその技を見て国重と黒王、そして皇嵐は思い出した。圧倒する力、神すら平伏するもの。間違いない、カリグラの力そのものだ。

「な、生意気……ッ?」
「お前をやらん、こんな黒ずくめの怪しいヤツなんぞにな。……フリーザ様やベジータより話聞かんなぁ?、老害」
「生意気を申すな……ッ!、山猿が!!」

いくら皇嵐が回復させたとはいえ、体はボロボロなラディッツだ。
国重は瞬時に半憑依のようになりラディッツの身体を支える、気力でこの男が立っていることはわかったからだ。なのにラディッツは黒王の動きにあっさり追いついて走る、おかしい戦闘力で言うなれば下級──黒王の足元にすら及ばないはずなのに。
カリグラが放った策略か?、違うこれはラディッツ自身が切り開いたものだ。あの絶対なる皇帝とは違う、血反吐を吐き愛しい女の為にと娘の為にと泣かせないためにと切り開いたのだ。

「どうしたっっ!?、神というものもつまらんなぁッッ!!! 」
「抜かせぇ!、山猿があああ!!!!」

黒王は無数の黒炎のレイピアを放つ、全てを消し去り歴史は愚か運命すら変えるものを。
だがラディッツはそれをまた国重を構えて全て切り落とす、その剣術は幼い頃国重がベジータたちに隠れてラディッツに教えた居合切りだ。
彼は、人の知恵で昇華したもので撃ち合い始めたのだ万物の父に。

「おいおい、ラディッツ強すぎねえか……?。カリー」
「……いやぁ、ありゃあやべえな。動きが、明らかに……普段の倍はやいぜ」

ターレスとカリーも呆然と見つめる、あのラディ相手への容赦のない戦いの時も凄かったがそれを遥かに超えていた。
カリーはそれをみて遺伝子が喜んでることがわかった、ああやっと帰ってきた。帰参したのだ。

「絶対なる皇帝の帰参ってやつかよ……!」

破壊神すら平伏させ、歴史を変えサイヤ人を宇宙一にしてみせた皇帝。宇宙の皇帝?、そんな小さい次元を超えたものだ。
絶対勝利を持ち、圧倒的な力を見せつけた我らが皇帝陛下。まさにその帰参だ、だがもちろんラディッツとしての力もある。弱点を捉え、どれを切り落とせばいいか瞬時に判断して斬り掛かる。黒王も押され、蹴り飛ばされていた。

「っははは!、ラディッツらしいぜ。相手が少しよろけたら的確にみぞおちに蹴りを入れてやがる」
「アレ痛いんだよなぁ、ターレス分かってるだろ?」
「分かってるぜ……、あいつ本人は敵への嫌がらせくらいにしか思ってないだろうが」
「まぁぁじでキラーアイなんだよな、あいつの目」
「……」

レイピアの中から威力の弱いものはそのまま、だが強いものは的確におとす。
ラディッツの意識は朦朧ともしていたが、はっきりしていた。こんなの分かっている、常に周りを信じれず仮面をかぶりつつも過ごしてきた。親父のような不屈のもない、母のようなあっけらかんとして優しくあるのもできない自分だ。
だが代わりに人が何を望み、どうすればことなかれにもできて己が生きていけるかも見てきたのだ。それがただ戦闘になっただけ、ラディッツにとってこれは日常のひとつ。
だがそこに──愛しい妻と娘を護るというのが来ただけだ。

「っぐぅ!?(この山猿、どこにそんな余裕がある!)」
「……お遊びはここまでか?、"黒王"」

不思議だとラディッツはおもう、己が喋ってるはずなのにまるで身体の中にもうひとりの自分がいるようだ。
国重を上段の構えでたたき落とす、大太刀ゆえの重さそして力を持って。黒王の身体が崩れかける。

「『地面とキスさせてやるぞ、と言ったよな?黒王』」

2000年前、カリグラが黒王に言い放った言葉。それをラディッツは彼と己の意思のもと言い放つ。

「とーと!、すごーい!!!」

周りのものたちも息を飲む、2000年ごしに彼は勝ってみせた。そうおもい、皇嵐もカリーたちも泣き出しそうになる。
ラディが駆けつけようとしたところ、地面は蠢いた。ラディッツによって撃ち落とされたレイピアがラディに襲いかかったのだ。

「えっ」
「「ラディッッ!!???」」
「っお嬢様アアッッ!!!」

国重も半憑依を解いて庇わんと動く、だがそれよりはやくラディッツが動いて身体を突き刺される。

「っがは!!??」
「ラディッツッッ!!!」

カリーも動いて無意識に手に結界をまとい引き抜いて止血する。ターレスは大泣きするラディを抱え、騒ぎに起きたリンも抱えた。
皇嵐も泣き出してラディッツの身体を動かし、なおさんとする。

「生意気ッ!、起きて!!!。ねえ!!、ラディッツッッ!!!」
「ックソ!、なんだよこいつはあああ!!!」
「……さすが、あのカリグラの器。我が人型の弱点を見抜きやりおったわ」

ゆっくりと立ち上がり、かくんっと首を動かして皇嵐たちをみる。

「だが所詮、それはこの姿ゆえ……。大したものではないわ、……所詮カリグラの器。やつと比べれば霞よ」

姿を解き、ゆっくりと本来の黒王の姿へとなっていく。喉が締まる、乾燥している惑星フリーザの空気がより砂塵のようになる。
カリーもターレスも息苦しさに嗚咽しかける。

「っぐぇ!?(なんだよ!!、これっっフリーザとか破壊神様の比にならねえじゃねえか!)」
「そこのもうひとつの反乱分子(カリー)もようやったものよ……、このような才も力も封じられた器(ラディッツ)をここまで育ておったからなぁ。いやそれは、鈍もあってか」

黒王はゆっくりと迫る、そしてラディへと手を伸ばした。ターレスはラディを後ろに追いやりかばい、早くリンを連れて逃げろ!という。

「ラディ!、早くリンを連れて!。早く行きなさいな!!!」
「そうだっ!、早く逃げろ!!」
「っあ……あ!」

ターレスはラディが恐怖から震えて泣いて、動けないことを悟る。国重へと目をやり、彼に抱えさせた。

「お嬢様ッ!!、はやく!」
「やだ!、かーか!!。とーとッッ!!!」

がしっっ!、と意識を失ってたはずのラディッツが黒王の身体の一部を握り締め潰さんとする。

「誰がっ……!、愛しい妻をきさまなんぞに渡すか!!」
「……明け渡さぬか?、負けザル共が」
「っぐは!!?」

ラディッツの背中へとレイピアを刺して、どこでくたばるかと黒王は実験のようなものを始める。

「ほういいな、このあそび……。山猿と同じツラのものが!、どこでくたばるかとな!!」
「誰のっ……!、話をしてやがるっこのクソジジイが!!」
「騒がしい、やはり消すか」

黒王はその身体を動かしラディッツを殺さんと動いた。もうつまらん、つまらんあきた。
ならば消そうと。

「お願いです……ッ!、私が悪かったのです!!。これ以上ッッ夫と子供を傷つけないでください!」
「っ、皇嵐……!?」

ラディッツにとどめを刺さんとした黒王の前に皇嵐は涙を流して震えて立ち上がった。
己の身を差し出さんと、これしか道はない。

「…っ私は、元々2000年前……ッ貴方様に封じられるはずだったもの。なのでいいのです!、私が戻りますっ代わりにラディッツたちには手を出さないでッッ!!!」
「皇嵐さまっ…!、なにをいわれるのです!?。そしたらっ主が何のために身をはられたのですか!!」

国重はラディたちを抱えて激高する、そうだ己も何よりラディッツがその身を削り魂を燃やして戦った意味がないではないか。
だが皇嵐はゆっくりと首を横に振る、そんなことはもう分かっているのだ。

「でもねっ……!、私はもうっっ素直になれなくて大事な人を死なせたくないの」
「……ほう?、我が元に来るか??。皇嵐」
「はいっ……!、なのでっどうか我が子達と!。どうか!!、みなをお許しください!!」

皇嵐はゆっくりと頭を下げる、ラディッツはその姿を見てふざけるなッッ!!と怒りを顕にした。

「皇嵐ッ!、お前が去るくらいなら俺は!!」
「誰がラディたちを育てるのよ!?、いいこと!。私がここにいてもこの方はくるわッ!、それくらいならッッ……!。分かりなさいよ!、ラディッツ!!」
「っだが!、俺はやっとお前を見つけたのだぞ!?。俺は……ッ!、お前と生きたかったんだ!!」
「……っ!、そんなの私もよ」

皇嵐の辛そうな泣き顔、それは初めて見るものだ。
皇嵐自身もこのような顔をしたのは──カリグラと別れた時以来だろうかと思い出す、もう十分に楽しませてもらったと言いたげに彼女は笑う。

「生意気ッ、あなたと出会えて私は幸せだったわ。あんな幼かった男が、今ではこんなにかっこいいもの」

だからお願い、あなたは生きてください。気高く孤高で、誰よりも……カリグラ以上に人の弱さを知り生きてきた最高の戦士否無冠の皇帝よ。
皇嵐は優しくラディッツの元に行き、最後の加護をと彼の額に口付ける。

「愛してるわ、ラディッツ」
「……ラディ、リン。しあわせに生きなさいね」
「皇嵐ッ……!?、皇嵐っっ!!!!!」

黒い煙のような物に皇嵐は包み込まれていく、やがて彼女の華やかな香りがその場から消えた。

「行っちまったのかよ……ッッ!!!」
「っクソがああああッッッ!!!!」

その日、ラディッツの元から覚めぬ春の夢は去り来たのは絶望の日没だった。
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